【レポート】Web担当者Forumミーティング 2016 Autumn

Webサイトに必要な「おもてなし」を実現する「カスタマーエクスペリエンスマネジメント(CXM)」とは

運用者の知識と経験を加味して精度を高める
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Webサイトの運用担当者やマーケティング担当者は日々、「効果的なデジタルマーケティング」「WebサイトのCVR向上」といった課題を抱えていることだろう。しかし、根本的にデジタルマーケティングを成功させるためには、サイトの管理や運用方法を変えていくことが欠かせない。

神野(かんの) 純孝 氏
株式会社ジゾン
製品戦略部 部長 神野(かんの) 純孝 氏

国内で400社以上の実績を擁するエンタープライズ向けCMS「HeartCore(ハートコア)」の販売を手がけるジゾンの神野氏が「Web担当者Forum ミーティング 2016 秋」に登壇、「デジタルマーケティング時代のWEB管理とは 顧客経験管理の事例と実践方法」と題して、デジタルマーケティングをキーワードに、カスタマーエクスペリエンスマネジメント(CXM)の重要性を紹介した。

CXMには、まず顧客を知ることが大事

スマホの普及、進化をはじめ、消費者はインターネットを通じて情報に接する機会が爆発的に増えた。検索行動自体にも変化が起きており、消費者は知りたい情報にすぐたどり着けなければ、直ちにサイトを離脱し再度検索する行動を繰り返している。

こうした状況について、神野氏は次のように指摘する。

顧客が知りたい情報が表示されないWebサイトは、顧客をつなぎとめることができない

これまでのWebサイトは、いわば「カタログ通販」のように、誰がいつ見ても同じ情報が表示されることが基本だった。しかし、上述した消費者の購買行動の変化を受け、これからのWebサイトは「見る人によって異なる情報が表示されること」が求められている。

では、こうしたパーソナライズされたWebサイトを実現するために必要なことは何か。神野氏は「お客様を知ること」を第一に挙げる。

神野氏は次のように述べる。

様々な計測ツールが登場し、自分たちのWebサイトに来訪しているのがどんな人なのか、ある程度追跡が可能になったからだ

また、神野氏は次のように説明する。

たとえば、初めて来訪したお客様でも、世代と性別を推定する仕組みはすでにある。あるいはIPアドレス、企業であれば企業名、代表者名、売上、業種業態、従業員数などの情報を取得することは可能だ

さらに、DMP(Data Management Platform)やソーシャルメディアなどのプラットフォームを活用することで、サイト来訪者である顧客の属性情報や、趣味、嗜好などが把握できるようになってきた。

神野氏はこれらを組み合わせて次のように語る。

CXMを実現することが、今後のWebサイト運営には欠かせない

CXMは、企業(ブランド)とお客様との間のさまざまなデジタル上の接触機会において、一貫性ある「顧客体験」を提供していこうという考え方がベースにある。

実際に市場がその方向に動いていることを、神野氏は次のように示す。

CMSだけでなく、カスタマーリレーションマネージメント(CRM)、マーケティングオートメーション(MA)などさまざまなベンダーがこの市場に参入し、2016年の米国における市場規模は1200億ドルにのぼる

Webサイトのパーソナライズには「運用者の知識と経験」が欠かせない

神野氏は、デジタルマーケティングを次のように位置づけた。

サイト内行動データやソーシャルデータ、サードパーティのオーディエンスデータなどを組み合わせ、顧客を知り、一貫性のある顧客体験をデジタル上で提供すること

そして、こうしたデジタルマーケティングを実現するCXM基盤が、ジゾンが手がける「HeartCoreCXM」だ。

神野氏は次のように語る。

これにより、たとえば、これまでは誰が見ても同じ情報が表示されていたWebサイトで、ユーザーごとに最適化された情報が表示されるようになる

BtoBマーケティングであれば、購買周期、企業の業態、規模に応じて、それぞれの顧客がWebサイトに求める情報は異なる。見込客が欲する情報を見せることで、サイトからの問い合わせや資料請求といったコンバージョン率を高めることが可能だ。

神野氏は次のように説明した。

これまでは、何度サイトに訪問しても同じ情報が表示されていたが、今後は、1年半のセールスサイクルの中で、サイト訪問のタイミング、回数に応じて表示するコンテンツを変えていくことができるようになる

さらに、デバイスによって情報を最適化することも可能になる。神野氏は次のように述べる。

たとえば、ホテル予約のサイトでは、デスクトップPCから訪問した顧客の動機は、宿泊場所を前もって探して準備していると考えられる。一方、スマホから訪問する来訪者は、外出先からその日の宿を探している可能性がある

すなわち、「スマホ向けには先々の予約情報は優先度が低い」というように、表示するコンテンツを、顧客の置かれた状況、デバイスに応じてコントロールすることが可能になるのだ。もちろん「スマホを家で閲覧する」という状況もあるだろう。この場合は、「IPアドレスから位置情報を推定するなどしてコントロールが可能になる」ということだ。

MAツールとの連携も非常に重要なポイントだ。MAの考え方は、スコアリングによって、来訪者(見込客)の中から、購入決裁権のある上位職者に高いポイントを付与し、また、閲覧行動から、たとえば購入意思の高い人が閲覧するページに高いポイントを付与する。

これにより、一定のしきい値を超えた見込客を営業に引き渡し、案件化につなげる考え方だ。神野氏によれば、次のようだという。

CXMを使えば、見込客のスコアに応じてランディングページを変えることも可能になる

こうしたランディングページ最適化は、アメリカでは当たり前になっており、「Google Analytics 360 Suite」などの無償のデジタルマーケティングツールも公開されている。

神野氏は、パーソナライズを行ううえで重要なポイントを示した。パーソナライズには「サイト訪問者のデータ収集・分析」と「データをもとにしたペルソナ作成」が欠かせないが、これらが上手くいかないケースに共通していることがある。それは、「運用者の知識と経験の不足」だ

次のように神野氏は語る。

ツールは万能ではない。何のデータを使うかを決めるのは、結局は使う人だ

さらに、神野氏は次のように述べた。

たとえば、医師は、長年患者を見ているので、患者の顔色、様子、仕草を見るだけで、どこが悪いかがわかる。こうした知識と経験に裏打ちされた「勘」を生かすことが、これからのデジタルマーケティングには欠かせなくなる

機械処理が得意な分野はAIに任せ、効果的なデジタルマーケティングを

ECサイトの運用にもデータ活用の波が押し寄せている。たとえば、サイト閲覧データを見れば、「商品ページを閲覧した」「商品を購入した」という情報はすぐにわかる。しかし、「顧客がなぜ購入したのか」「購入決定要因」「顧客の嗜好性」などは、データだけではわからない。

そこを補うのは、データだけを鵜呑みにしない運用者の「経験と勘」だ。たとえば、あるECサイトでは、右開きの冷蔵庫を購入した顧客に、左開きの冷蔵庫をおすすめしている。

購入履歴などのデータをもとに合わせ買いを勧めてくるのは最近のECサイトの潮流だが、神野氏は次のように述べる。

普通は冷蔵庫を2台購入する顧客はいないと考えるのが妥当

これは、データがそのまま使われていることの弊害だ。

一方、Amazonでは、「よく一緒に購入されている商品」として、電子レンジや炊飯器などがレコメンドされている。神野氏は次のように言及した。

どちらが売上が上がるかは明白

HeartCoreCXMには、AI機能として、機械学習プラットフォーム「PredictionIO」が搭載されている。これにより、サイトのデータだけでなく、さまざまなビッグデータを分析し、上述したAmazonの関連商品のレコメンドが可能になる。運用者の「勘」を補うテクノロジーとの位置づけだ。

たとえば、ジゾンのWebサイトでは、トップページを閲覧した来訪者が、サイト内検索でキーワード検索をすると、トップページに戻ったときに、検索内容に応じた商品などに情報が変わる。

神野氏は次のように説明する。

これが、「お客様に探させない」「探さなくても欲しい情報が出てくる」施策だ

クリック1回ごとにサイトの離脱率は上がる。たったこれだけの施策でも、離脱率を下げ、CV率を高めることができる

また、HeartCoreCXMの管理画面では、サイト来訪者のデータがダッシュボードから確認できる。神野氏は次のように述べた。

たとえば、初回訪問では、誰かは分からないがアクセスがあったことがわかる。

その人が次の訪問で、特定の商品情報を見た後、SNS(Facebook)のいいね!を押したとする。すると、その人がどんな商品に興味があるのかがわかり、さらに、Facebookのアカウント情報から、来訪者の年齢、性別、勤務先などを把握できる

売れるECサイトは顧客を知っている。HeartCoreCXMを使えば、顧客が誰かがわかり、顧客の欲しいものがわかる。「おもてなし」が可能になるというわけだ。

HeartCoreCXMは豊富なキャンペーン機能も特徴だ。サイトのアクセスデータの他にも、CRMの顧客データ、基幹システムに記録された購買データなどと連携可能だ。これにより「売上5000億以上の企業」というようにセグメントを切り、キャンペーンに活用することができる。

上述したPrediction IOは、パーソナライズの他にも、A/BテストをAIにより自動化することができる。

パーソナライゼーションやA/Bテストは、人間が設定、検証する必要がある。AIに得意な分野は任せて自動化し、運用者の知識と経験を加味することで、デジタルマーケティングの精度をさらに高めていくが可能になる

神野氏はこのように述べ、CXMプラットフォームを上手に活用し、Webサイト活性化やデジタルマーケティングの効果を高めて欲しいとセッションを締めくくった。

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