「Web文章入門」では、ウェブサイトで求められる文章表現とコピーライティングのエッセンスを解説します。おかげさまで、第2回「わかりやすい文章の10大原則※「はじめてWEB」は
サービスを終了しました」が好評でしたので、特別編として「+5原則」をお送りします。
もう一歩、読み手への気づかいを
第2回「わかりやすい文章の10大原則※「はじめてWEB」は
サービスを終了しました」では、
- 論旨を明確に伝える(理解しやすさの向上)
- ストレスを感じさせない(読みやすさの向上)
のふたつの観点から、それぞれ5つずつ、合計10個のコツを解説しました。
これから解説する「+5原則」は、「さまざまな読み手に気づかう」ということです。読み手への配慮によって、いっそうわかりやすく、内容のよさが際立つ文章になるでしょう。
では、+5原則を見ていきましょう。
+1. 固有名詞を正確に
固有名詞を間違いのないように書くのは基本中の基本とはいえ、意外と気をつけていない人が多いものです。固有名詞の間違いは、単に失礼なだけではなく、厳密にいえば書かれている対象が異なること、気づかいの不足が如実に感じられることで、文章全体の価値を大きく損なってしまいます。
固有名詞では、特に次の点に気をつけましょう。
- マエカブかアトカブか(株式会社など法人種別の位置)
- 拗音や促音(小さな「ツ」や「ヤ」)
- 長音(音を伸ばす棒「ー」)のありなし
- 英語であれば、大文字と小文字の区別、スペースの位置
自信がなければ、正式名称をきちんと調べることが大切です。その会社のサイトにアクセスし、次の部分を確認するとよいでしょう。
- ページタイトル
- 会社概要
- コピーライト(特に英語の場合)
ロゴはデザイン(意匠)であり、必ずしも正式名称を体現しているわけではありません。特に英語の社名やブランド名にそのようなケースが多いといえます。たとえば「Sony」のロゴは「SONY」と全部大文字に見えますが、正式な表記は「Sony」です。「Google AdWords」は「google adwords」でも「Google adwords」でも「Google Adwords」でもなく、きちんと「Google AdWords」と書かなければなりません(G、A、Wを大文字にし、単語間のスペースが必要)。
有名企業を例にあげると、特に気をつけたい会社名は次のとおりです。
× | ○ |
---|---|
キャノン | キヤノン |
キューピー | キユーピー |
富士フィルム | 富士フイルム |
文化シャッター | 文化シヤッター |
オンキョー | オンキヨー |
シャチハタ | シヤチハタ |
ブリジストン | ブリヂストン |
トイザラス | トイザらス |
ビッグカメラ | ビックカメラ |
+2. 語尾を繰り返さない
語尾の繰り返しは、読み手に単調な印象を与えます。
- 「思います」を「でしょう」に変えられないか
- 前の語句も含めて異なる表現に変えられないか
- あいまいな「思います」という表現ではなく「です」と言い切れないか
を検討しましょう。
+3. ら抜き、い抜き、さ入れ言葉に注意する
ら抜き言葉、い抜き言葉は、少なくとも書き言葉としては標準的ではありません。地域によって、また、世代によっては気にならない人が多いとはいえ、文章の印象を損なう可能性があるので気をつけたいところです。
ら抜き言葉の代表例は次のとおりです。
× | ○ |
---|---|
見れる | 見られる |
着れる | 着られる |
来れる | 来られる |
食べれる | 食べられる |
起きれる | 起きられる |
考えれる | 考えられる |
覚えれる | 覚えられる |
信じれる | 信じられる |
生きれる | 生きられる |
一方、い抜き言葉については、家族や友人とのカジュアルなコミュニケーションで、たとえば「見ている」を「見てる」、「向かっている」を「向かってる」と書くのはそれほど珍しいことではなく、そのクセが出てしまう恐れがあります。きちんとした文章を書くときは、ら抜き言葉と同様に気をつけましょう。
さ入れ言葉は、「休まさせていただく」「読まさせていただく」など、「~させていただく」と書くときに思わず出てしまう表現です。ら抜き言葉、い抜き言葉と同じく、気になるかどうかは地域差、個人差がありますが、「さ」を入れずに「休ませていただく」「読ませていただく」と書くほうが望ましいといえます。
ただ、そもそも「~させていただく」は過剰敬語であり、ほかの表現のほうがふさわしいかもしれません。「休ませていただいております」を「休んでおります」に、「読ませていただきます」を「拝読します」に変えたほうが、文章がすっきりとします。
+4. 文字の並びに気を配る
読み手は、文字をある程度のかたまり(チャンク)ごとに認識しながら読み進めます。「今出発」と書かれていると、「今・出発」ではなく「今出・発」と誤読してしまう可能性があります。「今、出発」と読点を入れるか、「今」をひらがなにして「いま出発」と書いたほうが誤読を防げます。
また、「ギリギリバス」は、そのような名称のバスがあるかは別にして、視覚的にひとかたまりに読めてしまいます。「バスにギリギリ間に合いそうです」と書いたほうが、読み手が理解しやすいでしょう。
+5. 言葉のかかりに気を配る
語句の順序によって、意図の伝わりやすさが大きく変わります。「ひとつの店舗経営のあり方」という表現では、「1店舗の経営」なのか「ひとつのあり方」なのかがはっきりとしません。「店舗経営のひとつのあり方」とすれば、「1店舗の経営ではなく、店舗経営一般に関する、ひとつの方法として」ということが明確になります。
さらに、「アルバイトを飲食店で大学時代に」は、言葉それぞれの「広さ」を考えると、広いほうから順に「大学時代に飲食店でアルバイトを」とするのが自然です。話し言葉ではそれほど気になりませんが、それでも、語尾伸ばしで「アルバイトをー飲食店でー大学時代にー」と読むのと、「大学時代にー飲食店でーアルバイトをー」と読むのとで、どちらのほうがよい印象を抱くかといえば、後者という人が多いでしょう(前者からは、文章というより、語句をぶつ切りで話しているような印象を受けます)。
まとめ
わかりやすい文章の「+5原則」は、次のとおりです。
- +1. 固有名詞を正確に
- +2. 語尾を繰り返さない
- +3. ら抜き、い抜き、さ入れ言葉に注意する
- +4. 文字の並びに気を配る
- +5. 言葉のかかりに気を配る
ウェブで公開する文章には、ある決まった読み手だけでなく、さまざまな読み手がいます。自分にとっては当たり前の表現が、読み手にスムーズに伝わるとは限りません。気づかいの積み重ねによって、さらに洗練された文章を目指しましょう。
表現に気を配ることは、けっして読み手のためだけではありません。自分の書いた文章を、より多くの人に届けるための、とても大切な取り組みです。
ひとりでも多くの人が納得してくれること。心を動かしてくれること。文章を書く楽しさやよろこびは、そこにあると考えます。
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このコーナーのコンテンツは、KDDI提供の情報サイト「はじめてWEB」掲載の「エキスパート(専門家)コラム」の情報を、許諾を得てWeb担の読者向けにお届けしているものです。
※「はじめてWEB」のオリジナル版は掲載を終了しました
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