デジタル広告に触れた「時間」に着目した新指標「タイムインビュー」とは?
アドベリフィケーションは、デジタル広告の透明性を担保するために活用できますが、デジタル広告の効果をさらに高めるプラスの要素を生み出していくことは現状できていません。プラスの要素を生み出していくための第一歩として、広告に触れた「時間」に着目した新指標「タイムインビュー」の有効性を追っていきたい。
と語るのは、IAS最高経営責任者(CEO)兼社長 スコット クノール(Scott Knoll)氏。
本記事では、インテグラル・アド・サイエンス・ジャパン(IAS)主催の「An evening with IAS ~アドベリ業界のグローバルリーダーが語る 日本のデジタル環境のこれから~」で語られた「メディアクオリティレポート」の一部を紹介する。また、アドベリフィケーションに新しく追加された「タイムインビュー」という新指標、メディアおよび広告会社のキーパーソンを交えてのパネルディスカッションの様子をレポートする。
広告のエコシステムを構成する各プレイヤーの協力がさらに重要に
冒頭、IAS日本法人のマネージング・ダイレクターを務める藤中太郎氏より、オープニング・スピーチが行われた。
藤中氏は2015年の日本法人立ち上げから現在までを「私のキャリアの中でも最も速く過ぎた3年半で、ずっと走りっぱなしという感じだった」と形容。当初はナショナルクライアント(大手広告主)もアドベリフィケーションにほとんど興味がないという状況だったが、ブランド広告予算のデジタルへのシフトや、広告によるブランド毀損リスクへの注目が高まったことを背景に、2017年後半からアドベリフィケーションの導入が進んだと述べた。
また、インターネット広告の品質を担保するために、エコシステム(生態系)を構成する多様なプレーヤーが協力し合うことの重要性を指摘。広告主、広告会社、メディア、ツールベンダーなどキーとなるプレーヤーがこのイベントに来場していることへの感謝の意を伝えた。
広告に触れた「時間」に着目。新指標「タイムインビュー」を提唱
続いてIAS最高経営責任者(CEO)兼社長であるスコット クノール(Scott Knoll)氏が登壇し、「最新版メディアクオリティレポートから読み解く、インプレッションの本質的価値」と題したプレゼンテーションを行った。
「メディアクオリティレポート※」はIASが半年ごとに公開している、ビューアビリティや不正インプレッション、ブランドリスクなどアドベリフィケーションに関する各種数値のレポート。クノール氏からは最新の2018年上半期に関する数値が紹介された。
- Unsafe inventory(ブランド毀損リスクのある広告在庫)
- デスクトップ:5.5%
- モバイルウェブ:12.8%
- Non-viewable impressions(見られていないインプレッション)
- デスクトップ:50.2%
- モバイルウェブ:59.4%
- Fraudulent impressions(不正なインプレッション)
- デスクトップ:14.7%
- モバイルウェブ:9.8%
これらの現状をもとにクノール氏は、デジタルならではの難しさと、信頼性を高めることの重要性を指摘。アドベリフィケーションはマイナスの要素を取り除き、透明性を担保するために活用できるが、広告効果をさらに高めるプラスの要素を生み出していくことは現状ではできておらず、今後の課題として考えていきたいと述べた。
この一歩としてIASは、広告のクオリティを定量的に計測するために、広告に接触した時間に着目。今回のメディアクオリティレポートにおいて初めて「タイムインビュー(Time-in-view)」に関するページを設け、今後、その有用性を追求していく考えを示した。
同じくIAS米国本社から、製品担当副社長のマイク キム(Mike Kim)氏も登壇。アドフラウド(広告詐欺)目的で行われる各種偽装の検知およびブロック、YouTubeでのブランドリスク計測など、これまでに多くの機能を実装済みであることを報告するとともに、今後リリースを予定している機能など、プロダクトのロードマップを紹介した。
信頼性が生む価値を可視化し、デジタル広告の未来を創る
最後に行われたのは、「キーパーソンが語る! マーケットリーダーが担うアドベリ戦略と現状の課題」と題したパネルディスカッション。パネリストとして電通デジタルの高田了氏とヤフーの葭沢光伸氏が登壇し、モデレーターはIASの山口武氏が務めた。
ディスカッションは、9月に放映されたNHK「クローズアップ現代」(インターネット広告の闇)の影響について言及する形でスタート。市場へのアドベリフィケーションの浸透を妨げているものについての考察や、質の高い広告を実現するにあたってのコスト負担やインフラ整備を誰がどのように実行すべきかの議論などが交わされた。
またクノール氏のプレゼンテーションでも触れられた「マイナスをゼロにすることにとどまらず、ゼロをプラスにしていく」という方向性について、広告会社(電通デジタル)、メディア+広告プラットフォーム(ヤフー)それぞれの立場からの取り組みを紹介。「信頼性が生む価値を可視化し、クライアントとともに活用を考えたい」(葭沢氏)と述べた。
最後に今後について問われると、次のように述べディスカッションを締めくくった。
現在の危うい状況は、デジタルが拡大する中で必然的に起きたこと。特定の企業だけの取り組みではスピードが遅くなるため、さまざまな立場の人たちと思いや意見をぶつけあい、一緒に未来を創っていきたい(葭沢氏)
テクノロジーは日々進化するが、不正を行う側もどんどん巧妙になり、いたちごっこは避けられない。疲れる部分もあるが、新しい考え方や技術・機能を理解いただけるよう、真摯に説明・提案していきたい(高田氏)
※ 2018-11-19 人名の日本語表記を修正しました。
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