指一本でオンとオフを切り替えるボタン!? 行動観察でつかんだ真のインサイトとは?・第13話
前回までのあらすじ!
顧客の真のインサイトがつかめずに焦っているルリに、虎は「無知の知でお客様の目線に立ち戻れ」と檄を飛ばした。ルリと和尚は優良顧客比率の高いパイセンの店に着目し、実店舗で顧客の行動観察をすることにした。
第13話のまとめコラム:インサイトを得るための行動観察調査のススメ(中澤伸也)
こんにちは、「デジマはつらいよ」原案者の中澤です。マーケティング支援企業のReproでCMOをやっています。
今回、主人公のルリと和尚さんは、虎さんから「『無知の知』の意識でお客様の目線に立ち戻れ」という指示を受け、優良顧客のインサイトを見つけるべく、店舗で「行動観察調査(エスノグラフィとも呼ばれます)」をすることとなりました。今回のコラムでは、この行動観察調査について解説します。
行動観察調査とは何か?
行動観察調査とは、もともと民俗学などで研究対象を観察する手法として発達してきたエスノグラフィ(民族誌学)をビジネスに適用した調査手法のこと。早い話、消費者に「聞く」のではなく、直接その行動を「観察しちゃおう!」という手法です。
「第11話のまとめコラム:IVVフレームワークと顧客インサイト」でも書いたとおり、インサイトとは消費者が言語化できない「潜在的な欲求」であるため、アンケート調査やグループインタビューといった、従来の手法ではなかなか発見するのが難しいものです(株式会社デコムさんなどは、そのための特殊なフレームワークを有しているため、必ずしも発見できないわけではない)。
よって、消費者も意識していないインサイトを発見するために、その「行動」に着目し、直接観察およびヒアリングを行うことで、インサイトを導き出そうという動きが多く見られるようになりました。
また、最近では、特に新規事業やプロダクト/サービス開発の領域で、新たな着想を得る手段として「デザイン思考(Design thinking)」という手法が注目を浴びており、このフレームワークの一番重要なポイントが「行動観察」であることから、より行動観察が重視されつつあります。
デザイン思考を世に広めたのは、米国のデザイン会社IDEO(アイディオ)であると言われています。IDEOはAppleの最初のマウスをデザインしたり、その他さまざまなメーカーや企業の支援で卓越したプロダクトを生み出したりすることで、世界的に有名になりました(同社のことを書いた書籍『発想する会社!』は大変勉強になりますので、ぜひお読みになることをオススメします)。
デザイン思考とは、卓越したデザイナーの思考法を活用し、(1)観察、(2)問題の定義、(3)解決策の創造、(4)アウトプットというプロセスでイノベーションを生み出します。
この手法は、そのままビジネスの課題解決にも利用できるため、マーケターとも縁のないモノとも言えず、ましてや、DX(デジタルトランスフォーメーション)を行っていく上では、重要なフレームワークになるのではないでしょうか?
インサイトを見つけるための行動観察調査のポイント
行動観察調査で意味のある発見を行うのには、正直言えば、それなりの経験とコツが必要なのですが、「インサイトの発見(洞察)」という点に絞った場合には、いくつかのポイントがあります。
①エクストリームユーザーに注目する
エクストリームユーザーとは、簡単に言うと「平均的な行動をとらず、極端な行動や、変わった行動をしている人」です。
その理由はいくつかあるのですが、変わった行動をとっている人とは、何か大きな感情が動いているケースが多く、インサイトという潜在的な欲求が感情と結びついている可能性が高いと考えられます。そのため、その行動からヒントを得やすく、また、観察の後にヒアリングした際にも、有益な情報を捉えやすくなる可能性が高いからです。
また、特に新サービスや、新製品といった、「これまでにないイノベーティブな何か?」の着想を、インサイトから導きたいと考えている場合には、自分たちの常識や固定観念からは思いもよらない気づきを得るために、意図的に、極端に偏った、そして自分たちの常識から遠い人たちの話を聞くことが重要になります。
②行動の理由や文脈に注目する(妄想しながら見る)
消費者の行動をただ漠然と見るのではなく、なぜその消費者はそのような行動をとっているのか、その背景にある文脈(ストーリー)を妄想しながら見ることが重要となります。
文脈を構想する際には、できるだけ「感情」にフォーカスすると、より妄想しやすくなります。その消費者の「表情」にもできるだけ注目しましょう。ワクワクしているのか、難しい顔をしているのか、それらを通して感情を想像し、その背景にある文脈に対する仮説を立てていきます。
そして、観察後にヒアリングする際に、仮説を頭に起きつつ、それらの行動をとった背景を探っていくことで、インサイトに近づいていきます。
行動観察調査も、インサイトの洞察も、決して簡単ではありません。しかしながら、何事もやってみなければ経験を積むことはできませんし、何よりも、「やって何も得られなかった。無駄だった」ということは、まずないと思います。必ず何がしかの得るものはあるはずですので、ぜひ機会がありましたら、チャレンジしてみることをオススメします。
noteで定期的に情報発信もしているので、興味ある方はそちらも覗いて見てください。
それではまた、次回お会いしましょう!
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