リンクビルディングは「脱キャンペーン」がこれからの姿(前編)
わたしは長年、リンクビルディング(SEOのためのリンク構築)の仕事について話すときにはたいてい「キャンペーン」として説明してきた。これは間違っているわけではないが、完全に正しいとも言えない。リンクビルディングは、ほかの作業と連携した継続的な日常業務であるべきで、業界は意識を変えてこの点に力を入れる必要があるとわたしは考えている。
リンクビルディングのなかでも、いまブランドに有効で、これからも機能するものは、仕事のほかの部分との距離を詰める必要がある。それには、ほかの分野との連携を強化するべきだ。そこまででなくとも、少なくとも、リンクビルディングはかつてのような「そのチーム独自の活動」でも「謎の技」でもないという認識が必要だ。
この記事では、次のことを目指す:
リンクビルディングについてどう考えるべきかを提案する
リンクビルディングを持続可能な、もっと効率的で効果的なものにするための方法を少し紹介する
キャンペーンの問題点
はっきりさせておきたいのは、リンクビルディング“キャンペーン”が悪いわけではないということだ。この点はこの記事を通じて繰り返すことになる。わたしの主張の核心は、キャンペーンはたくさんあるピースの1つだということだ。時間と注意をすべて注ぎ込むべきものではない。
「キャンペーン」という言葉には、リンクビルディングやデジタルPRの文脈では次のような含みがある:
始まりと終わりがある
1回限りの活動である
トピック、プロダクト、コンテンツなど、特定の「ものごと」に関係する
このようなリンクビルディングが間違っているわけではないが、このようにしか考えられないのは困る。リンクビルディングを「1回限りの活動の連続」や「特定のものごとに関する始まりと終わりがあるもの」と見ていると、本来あるべき形でビジネスに取りこめない。その結果、リンクビルディングというアクションがいつまでもマーケティング活動の周辺にとどまることになり、収益に十分な貢献ができない。
ここまで読んできて、次のように考えている人がいるかもしれない:
うちは、キャンペーンをたくさん手配しているから大丈夫だ
しかし、キャンペーンが週に1回でも月に1回でも四半期に1回でも、根本的な問題は消えない。それどころか、問題が小さくなってしまい見えにくくなるだけだ。
われわれデジタルマーケターは、リンクビルディングについて次のことを目指すべきだ:
企業内においてSEOの支援に役立つ有効な戦術として真剣に考えること
他の分野と連携させて効率化し、メリットを大きくすること
企業の包括的なデジタル戦略にうまく組み込むこと
測定可能で安定した成果を残すこと
最後の点について、次のグラフで説明しよう。Airaのクライアントの、6~8週間にわたるキャンペーンについて毎月のパフォーマンスを示したものだ。
一見したところ、とてもいい。1年で200件を超えるリンクを構築し、個々のキャンペーン目標を上回っている。
このグラフはリンクビルディングキャンペーンの現実だ。クライアントにはこの結果について、正直にありのままを語った。このように上下するのはまったく正常だ。
しかし、ちゃんとやれば大幅に改善できるし、仕事としてやる以上、そうした改善はしなければならない。
一歩引いて考えてみよう。
リンクビルディングの不都合な真実
多くのリンクビルディング担当者にとって不都合な真実がある。次のようなものだ:
リンクビルディングは本来、積極的な施策として意識して行うように苦心するべきものではない。
リンクとは、すばらしいプロダクトやサービスに対して、マーケティングとブランディングをしっかりやった結果として生まれるべきものなのだ。
しかし、そうなっている企業はむしろ例外だ。つまり、リンクビルディング担当者の仕事はまだなくならない。
わたしに言わせると、リンクビルディングを気にする必要が本当にない企業はごく一部だ。アップル、マクドナルド、アマゾン、コカコーラといった定評のある企業を考えてみればいい。こうした企業は本当に例外であり、当たり前の存在ではない。
例外になろうと努力し、リンクビルディングを積極的に意識する必要がない理想の境地に至ることは、絶対に目指すべきだ。リンクビルディングという観点で見れば、
- プロダクトの開発
- 顧客サービス
- コンテンツ戦略
- ブランド構築
といった分野への取り組みは、すべて恩恵をもたらしてくれる。しかし、いずれも時間がかかる。ビジネスを成長させるためには、オーガニックなトラフィックを短期間で生み出す必要がある。
そこでアドバイスだ。リンクビルディングよりももっと大きい、統一的で強固なデジタル戦略をつくり、その一環としてリンクを構築するのだ。そうすることで、理想の境地にたどりつく時間を短くできる。
それなのに、理想の境地が来るのを待つばかりで、チャンスを無駄にしている企業が多すぎる! 待っていれば、いつか目標を達成するかもしれないが、その時間を早めるためにできることは、もっとあるのではないだろうか。
すると問題は、次の2点になる:
- 理想の状態に早く近づく方法
- その間のリンクビルディングのありかた
キャンペーンを打つと役に立つのは確かだが、実はもっと迅速に上昇曲線を描くことは可能なのだ。
これがわたしの心配の核心であり、リンクビルディングキャンペーンを実施して、あまりにもキャンペーンに依存した戦略を続けることの問題点だ。
根本的な問題点は、ここにある:
キャンペーンが止まると、リンクビルディングも止まってしまう。
みなさんが言いたいことはわかっている。Airaは始終キャンペーンを立ち上げていると。
その通りだ。Airaは長年、リンクビルディングキャンペーンをたくさん立ち上げてきたし、キャンペーンを対象とする賞にノミネートされたこともある。それにわたしはキャンペーンについて何度もブログに書いてきた。キャンペーン主導のリンクビルディングは、リンクビルディングの世界でとても重要な役割を果たしている。
しかし、われわれはその考え方を見直し、キャンペーンを「企業に対するリンクを生み出す主要な手段」だと考えるのをやめる必要がある。
企業活動全体を通じて適切な行動を推進する
私がリンクビルディングを「キャンペーン」として行うのをやめるポイントは、それが生み出す結果だけが理由ではない。企業における正しい行動の推進も大切な点だからだ。
リンクビルディングを1回限りのプロジェクトやキャンペーン主導の活動に追いやると、リンクビルディングが日常の活動にならない。次のような望ましくない行動や考え方を促すことになる:
リンクビルディングはスイッチのオンとオフが可能なものだ
リンクビルディングをやるには社内プロセスの修整や中断が必要だ
リンクビルディング担当者がやっていることを学びたいという希望や意欲を、ほかのチームメンバーがほとんど持たない
リンクビルディングは他の業務と連携することのない孤立した活動だ
リンクビルディングは結果が安定しない(パフォーマンスが激しく上がったり下がったりして、リンクビルディングに回されているマーケティング支出に疑問の目が向けられるかもしれない)
このようなプレッシャーの下では働きにくいし、力を尽くした最高の仕事につながらない。
われわれは業界としてキャンペーンを繰り出すことにばかり集中してきた結果、仕事を通じて組織内に変化を生み出すことをおろそかにしすぎているのではないかと、わたしは心配している。
われわれはデジタルマーケターとして、行動に影響を及ぼそうとしている。究極的には顧客を動かすことが大切だが、その前段階として利害関係者を動かすことが大切だ。エージェンシーでも社内SEOの担当者でも、最初の仕事は「とにかくやる」ということだ。そのためには、リンクビルディングを通常の業務(Business-As-Usual:BAU)だと考えてもらう必要がある。
キャンペーンにも役割はあるが、それはもっと大きな全体の一部にすぎない。コンテンツへのリンクを構築するのは「特別」なことではなく、とにかくやるものだというところまでこぎつける必要がある。そこまで到達できたら、われわれはリンクビルディングの理想の境地に向けてクライアントの動きを加速させるし、一方でわれわれがクライアントにもたらす価値も大幅に増える。
通常業務としてのリンクビルディング
リンクビルディングが業界として、また活動として成熟するためには、リンクビルディングとは何なのかについて、今よりもっと理解してもらう必要がある。SEOがまだほんとうに謎の技術で、手探りで進んでいた初期段階に、SEO担当者が長年苦しめられていた諸問題に、リンクビルディングはいまも苦しんでいる。
誤解してほしくないが、リンクビルディングは、特にペンギンアップデートのおかげでコンテンツ主導の活動に変わりはじめた2012年4月以降、大幅に進歩した(あれから8年以上たつなんて嘘みたいだ)。
しかし、まだ先は長い。
「キャンペーンを立ち上げる」という考え方から脱却し、ビジネス側の人から、
リンクビルディングはここでどう役に立つのか?
この活動にはリンクビルディングの機会があるか?
といった質問が出てくるように、上司やクライアントを導いてあげる必要がある。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回は、キャンペーンに依存しないリンクビルディングのケーススタディと、筆者が用いているコンテンツ戦略の枠組みについて紹介する。→後編を読む
ソーシャルもやってます!