Tableauのビジュアル分析で実現するデータドリブンなマーケティングの世界
コロナ禍で生活全体がデジタルシフトしたことにより、マーケティングデータの重要性はますます高まっている。一方で、マーケティング部門で用いるさまざまなツールを活用するためには、データの加工整形に多くの時間を取られてしまうことが課題だ。「デジタルマーケターズサミット 2021 Summer」のセッションでは、セールスフォース・ドットコム Tableau ソリューションエンジニアの小島清久氏が、マーケティングデータの効率的・効果的な活用方法を解説した。
マーケティングデータの利活用を阻む4つの壁
小島氏は、マーケティング部門におけるデータの利活用の課題として、以下のような点を挙げた。
①膨大なデータ量とソース
さまざまなツールを使っていて、データが一元管理されていない。データの更新・処理速度が遅い。データ利用前のクレンジング作業に時間がかかる。
②人材・スキル
データ分析やAIを活用できる人材が限られ、顧客ニーズの変化に対する迅速なデータ活用が困難。
③データのサイロ化・データの不足
他部門のデータを組み合わせた分析が非常に困難。
④企業文化
データドリブンな文化を確立したくても、データを部門連携で使えない。
Tableau(タブロー)は、これらを解決するため「ビジュアル分析により、ユーザーのデータに対する疑問を即座に(人間の思考スピードと同じ速さで)解消することを目指している」と小島氏は言う。人間の思考スピードと同じとはどういうことか、小島氏はその場でセミナー参加者の情報をさまざまな軸で比較したグラフを作って見せた。
「Tableauの操作の基本はドラッグ&ドロップ」(小島氏)で、登録者データのExcelファイルをTableau画面にドラッグ&ドロップし、比較軸やグラフのタイプ、色の設定、凡例の置き方などをクリックしていくと、その場でシート(グラフ)が作られる。それをダッシュボードにまとめると、分析結果として誰にでもわかりやすいレポートができあがる。
Tableauマーケティング部門における活用法
企業には、現場担当から経営層まで、さまざまな立場の人がいる。立場によって見たいデータの軸や粒度などのニーズは異なるが、それぞれが別のデータを見ているとビジネス上の意志決定ができない。つまり、ニーズが異なっていても、誰もが同じデータを見ている状況で、分析にアクセスできることが重要だ。
セッションでは、Tableauのマーケティング部門での活用方法を例にとりTableauの機能を紹介した。Tableau社内で使っているマーケティングツール群は以下のようなものだ。
かなり多数のツールを使っている印象だが、これだけのツールから得られるデータが、未整理のままただ蓄積されているのは使い勝手がよくない。そこでTableau社内では、以下の図のように4種類のデータソースに分類している。「分析目的によってデータを仕分けしておくとスムーズなので、参考にしてほしい」と小島氏は語る。
これらのデータを活用して、リーダー層向けのダッシュボードにまとめたものが以下の図だ。
KPIは「獲得リード数」、営業に渡した「プライムドリード数」(いわゆるホットリード)、プライムドのうち商談化した「クオリファイドリード数」の3つだ。線の濃淡によって、今年、1年前、2年前という3年分を表示している。また、マウスオーバーでそのデータが何を意味しているかが表示されるようになっている。
Excelで作ってパワポに貼ったものだと、それを見て追加質問があったときに答えられない。Tableauはインタラクティブに、受け取った側が追加の深掘りができるように作っている(小島氏)
次に、現場担当者が見るダッシュボードが以下の図だ。
こちらは、営業担当に何件のリードを渡し(薄い色の棒グラフ)、そのうち対応しているのは何件か(棒グラフの中の濃い色の部分)を示している。マネージャーの名前をクリックすると、営業担当者名まで絞り込める。
また、Tableauがセールスフォース・ドットコムと統合されたことにより、新しく加わったTableau CRM(旧称 Einstein Analytics)では、AIを使った予測をビジュアル分析のダッシュボードに追加できるようになっている。
ユーザー事例からみるTableauの活用法
セッション後半では、導入企業での使われ方や効果なども紹介された。
導入事例①
SNS分析サービス「Pixial」を提供するJapan Current
Pixial(ピクシャル)は、Instagram上の膨大なデータからハッシュタグの分析ができるクラウドサービス。利用者自らがセルフサービスで分析できるサービスとなっている。
もとはJapan Current社がPython(パイソン)を用いて自社開発したツールでスタートしたが、現在はTableauの埋め込み分析を使っている。Pythonでの開発コストが高まることを懸念したことから変更を検討し、初期学習の敷居が低くダッシュボードの見栄えや表現力が高いTableauを採用したという。
導入後、以下のような効果・評価を得られた。
- 個々の投稿からでは見えなかったことや感覚的にしか把握できなかったことがより鮮明になった
- 消費者の「素の姿」を浮き彫りにできるようになった
導入事例②
ファッションECのZALORA
アジアの複数の国で数百万人が利用するファッションECプラットフォームのZALORA(ザロラ)では、マーケティングからマーチャンダイジング、オペレーションに至るまで、あらゆる意思決定にTableauのダッシュボードと分析結果を多用している。また、トランザクションデータから得られた分析結果を出店企業にも提供している。
Tableau導入により、以下のような効果があったという。
- グローバルブランドとして、東南アジア市場全体の顧客層や閲覧データから需要をリアルタイムに把握し、対応策を実施することが可能になった
- 複数部署のユーザーが日々Tableauでデータにもとづく意思決定を実施できるようになった(以下実例)
マーケター:消費者のセグメントと購買行動を深く理解することで、適切な顧客層へのアプローチを効率化
デザイナー:次シーズンのコレクションに取り入れるべきトレンドの色、素材、スタイルについての洞察を得る
営業部門:ドリルダウン分析により、さまざまな市場の中から、次にオープンすべきポテンシャルのある市場を導出する
Tableauが選ばれる理由
Tableauは、ビジネスインテリジェンス(BI)と呼ばれる分野のツールだが、「表現力の高いダッシュボード上で、データの探索をインタラクティブに実行」できるビジュアル分析を特長としている。それが高く評価される理由として、小島氏は以下のような点を挙げた。
- 人の思考と同じスピード感でビジュアライズできる
- データ整形、データ可視化、社内共有というすべてのフェーズを担う商品展開
- 個々の分析にとどまらず全社的な分析プラットフォームとして使える
- 大規模利用で重要となるセキュリティも担保している
- コミュニティ活動が活発で、コミュニティから上がってくる要望に応える製品開発を行っている
- セールスフォース・ドットコムの他のツールと連携することでさらに快適になる
オンプレミス型とSaaS型の2パターンで提供されるが、SaaSのTableau Onlineであれば、MAのデータからダッシュボードを作れるテンプレートを「ダッシュボードスターター」として提供している。
小島氏は、「Tableauを使ってみたいと思った場合は、無料トライアルやトレーニング動画、オンライン/オフラインのユーザー会があるので、利用してほしい」と締めくくった。
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