【レポート】Web担当者Forumミーティング 2022 春

マーケターがぶつかる「データ準備の壁」を乗り越えろ!―1か月でLTV向上を実現した成功事例から学ぶ

新しいマーケ施策を打つにあたって企業がぶつかるのが「データ準備の壁」。施策に必要なデータを準備するには、専門的な知識と膨大な工数が必要となる。そのような状況においても、わずか1か月でLTV向上を実現した成功事例とは?
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自社ECサイトの売上アップを目指し、LINE公式アカウントとの連携や、セグメント分けしたコンテンツ配信といった新規施策に取り組もうと考える企業の多くがぶつかるのが「データ準備の壁」だ。既存データや新規データを抽出/統合し、施策実現に必要なデータを準備するには、専門的な知識が必要になり、膨大な工数が発生する。

Web担当者Forumミーティング 2022 春」のセッションに登壇したデータXの宮川雄希氏は、とあるアパレル企業が、データ準備という大きな課題を、データマーケティングツール「b→dash」を用いて解決し、わずか1か月でLTV(Life Time Value)向上を実現した成功事例を紹介した。

宮川雄希氏
株式会社データX Marketing Unit Manager 宮川雄希氏

データがあればすぐに新たな施策を打てるわけではない

EC企業であれば、もちろん顧客データも受注データも、アクセスログのデータもすでに持っているだろう。元となるデータがあるのだから、それを活用すれば簡単に新たなマーケティング施策が打てるはずだと考えてしまいがちだ。しかし実際は、ただデータがあるだけではすぐにはマーケティング施策に活用できず、あらかじめデータを使える形にする必要がある。

宮川氏は、実際の事例をベースに、企業がマーケティング施策を打つにあたってのデータに関する課題を説明した。事例に登場するA社は、会員数約33万人のECサイトを運営し、アパレル用品を販売している。

A社では、ECサイト開始当初から全顧客に対して、LTV向上を目的としたメールを配信していた。さらに、1年前からは、顧客が利用するチャネルの多様化に応えるべくLINE公式アカウントの運用を開始し、同様のコンテンツを配信していた。LINEの会員数も順調に増加したため、さらなるLTV向上を目的に、メールとLINEを組み合わせて、セグメントを細かく切った販売施策を計画したという。その際に検討していた施策は、以下の2つである。

  • 施策① メールの開封/未開封に応じて、配信チャネルを出し分けたい
  • 施策② 複数データをかけ合わせてセグメント別にコンテンツを配信したい
A社が検討した施策

施策実施のために必要な「データ準備」

これらの施策を実施するには、以下の9個のデータが必要となる。Excelで9つのカラムにそれぞれデータが入っているイメージだ。

  1. 顧客ID
  2. 顧客名
  3. 性別
  4. メールアドレス
  5. LINE ID
  6. 商品ID
  7. 最終サイトアクセス日時
  8. 最終購入日からの経過日数
  9. 累計購入金額
施策実現に必要となるデータ

このデータを準備するには、2つの作業が必要になる。

作業その① 社内システムやツールに存在しないデータを作成する

必要なデータのすべてが社内にあるとは限らない。まずは、社内にあるのはどのカラムで、存在しないのはどのカラムかを確認する。A社は、以下の3つのデータを保有している。

  • 顧客データ:「顧客名」「性別」など顧客の属性情報を記録したデータ
  • 受注データ:どの顧客から「いつ」「どこで」「いくら」の受注をしたのかを記録したデータ
  • アクセスログデータ:アクセス解析ツール等で取得するユーザーのWebサイト上の行動に関するデータ

これらのデータの中身を確認したところ、顧客データには①から⑤までのデータが、受注データには⑥のデータが存在していることがわかった。しかし、⑦から⑨のデータはA社が持っているデータのなかに、そのままでは存在していなかった。

つまり、既存のデータを加工し、⑦から⑨のデータを新しく作る作業が必要になるのだ。

作業その② 社内システムやツールに散らばっているデータを統合する

また、すでに社内データに存在している①から⑥も、複数のシステムに分散している状態だ。そのままでは活用できないため、ひとつに統合する作業が発生する。

必要なカラムがバラバラのデータファイルに格納されているため統合しなければならない

データ準備に必要な9個のタスク

以上のデータ準備には、具体的に以下の9個のタスクが必要となる。

データ準備に必要な9個のタスク

たとえば、タスク①の「顧客ごとに累計購入金額を算出する」には、必要なカラムのうち社内データに存在しなかった⑨の「累計購入金額」データを作る作業だ。このタスク1つだけでも、加工前のデータを顧客IDでソートし、顧客IDごとに購入金額を合計し、それらを累計購入金額カラムに入力するといった複数のステップを踏んでデータを加工しなくてはならない。

このように、9つあるタスクごとに、データを抽出したり統合したり加工したりといった作業を何度も繰り返すことで、ようやく施策実現に必要なデータが準備できるのである。

CDPツールを導入しても、データの加工/準備作業は必要

ここまで説明したデータの加工や統合を行うために、一般的に活用されるのがCDP(Customer Data Platform:データ統合基盤)だ。ただし、「CDPを導入すれば、簡単にデータの加工/統合ができるというわけではありません」と宮川氏は警鐘を鳴らす。

CDPは基本的に、データを活用しやすいように貯めておく機能がメインであり、マーケティング施策に活用できるようにデータを加工/統合するには、多くの場合は「SQL」というデータベース言語を使える必要があります。つまり、「加工/統合するためのプログラム」が書けないと、施策までたどり着けないのです(宮川氏)

最近は「SQLが書けるマーケター」も増えてきたが、まだそれほど多くはない。一般的には、社内の情報システム部門のエンジニアに依頼するか、社外のシステムベンダーに依頼することになる。

A社の場合も、まずは社内に依頼したところ、「サイト改修や他のシステムの保守などで手一杯ですぐにはできない。2カ月くらいは待ってほしい」という返事だった。やむを得ず社外のベンダーに相談したところ、「初期導入費用が200万円、データを最新化する作業はその都度30万円」という見積もりが出てきたという。

アクセスログや購入履歴のように日々変化するデータは、常に新しい状態にしておかなければ意味がない。しかし、そのデータ準備を内部に依頼すると時間がかかりすぎるし、外部に依頼すると高額のランニングコストがかかるという状況に陥ってしまったのだ。

社内に依頼しても社外に依頼しても課題がある状況

この課題を解決するためにA社が導入を決めたのが、データXが提供するデータマーケティングツール「b→dash」だった。

データのマーケ活用に必要な機能をほぼ網羅した「b→dash」

データマーケティングツール「b→dash」は、自社が持っているデータを、マーケティング施策に活用できる形に整理するツールだ。ここまで説明してきたような、各システムやツールからのデータ取り込み、加工/統合、セグメント化のための抽出、そして活用までの一連の流れをオールインワンかつノーコードで実現できるクラウドサービスである。

CDPとしての活用はもちろん、メール配信、MAツール、web接客、アプリのプッシュ通知、LINE連携、BIなどデータ活用に必要な機能はほぼ網羅しています(宮川氏)

b→dashのカバー範囲

ノーコードというのも大きな特長だ。b→dashのCDPはSQL言語などでプログラムを書く必要はなく、ただ画面上のボタンをクリックしていくだけでデータが準備できる。よく使う分析や施策シナリオはテンプレートとして用意されているため、知識やスキルがなくともやりたいことを実現できる。「ナビゲーションも出るため、バイトの人でも作業できる」と宮川氏は説明する。

b→dashが提供している多様なテンプレート

「b→dash」でデータ準備作業はどう変わったか

A社は、b→dashを活用したことで検討していた新しいマーケ施策を実施することができた。

施策① 閲覧商品のレコメンドシナリオ

まずは、直近1週間以内に商品を閲覧したが未購入であるユーザーに、閲覧した商品をメールでお知らせする。そこからメールの開封/未開封に分岐し、未開封のユーザーには次はLINEでお知らせを行う。また、メールを開封したユーザーはさらに購入/未購入に分岐し、未購入のユーザーには閲覧商品のお知らせと属性別の人気商品をメールで紹介するといった流れで、LTVの向上を狙った。

閲覧商品のレコメンドシナリオ

施策② 休眠顧客引き上げシナリオ

直近90日間未購入のユーザーのみに属性別の人気商品をメールで紹介し、「メールを開封したが未購入のユーザーには後押しで特別クーポンを送付」「メール未開封のユーザーにはLINEで通知」など、細かく分岐を行って休眠顧客の活性化を目指す施策を行った。

休眠顧客引き上げシナリオ

これらの施策はすべて「b→dash」で行いました。社内のエンジニア稼働や外部ベンダーの必要もなく、マーケター自身がマーケ施策のためのデータを簡単に準備できる状態を実現できました。そのため、コスト削減だけでなく、PDCAサイクルを回しやすくなるという成果もありました。

また、顧客ひとりあたりの1年間の利用金額も、「b→dash」導入前の6,298円から、導入後は約7,558円と約1.2倍になるなど、LTVの向上も実現できました(宮川氏)

A社の「b→dash」導入による成果

早期成果創出のための「オンボーディングプログラム」

さらにデータXでは、「b→dash」活用による早期成果創出のため、顧客のデータ活用を支援する「オンボーディングプログラム」も提供している。

  • 業種/業態ごとのベストプラクティスを提供し、施策/分析の企画時間を短縮
  • ヒアリングによってシナリオごとに必要なデータを明確化し、必要データの洗い出し作業を短縮
  • 「b→dash」カスタマーサクセス担当がデータ準備を代行

A社では、このオンボーディングプログラムを利用したことで、通常であれば3カ月かかるデータ準備が数日で完了し、導入1カ月で施策や分析の実施が可能になったという。宮川氏は「貴社データを『b→dash』へ連携いただくのみで施策/分析の実現が可能になります。連携作業はしっかりサポートしますので、複雑な作業は発生しません。ぜひお気軽にお問い合わせください」と力強くアピールした。

  • データマーケティングツール「b→dash
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