難関ビックワード「DX」で検索1位表示! リード獲得を2倍にしたBtoB企業のSEO施策とは
コロナ禍でオフライン展示会などが制限され、デジタルマーケティングを強化するBtoB企業が増えている。リスティング広告などで集客をしようにも、人気のあるキーワードの広告費は高騰し、リード獲得に難儀する企業も少なくない。
企業のDXを推進するモンスターラボは、コロナ禍前からSEOも意識したコンテンツマーケティングに着手し、リード獲得を2倍に増やすなど高い成果を上げてきた。「Web担当者Forumミーティング 2022 春」のセミナーでは、同社の野本氏による実施した施策の解説と、その施策を後押ししたFaber Company(ファベルカンパニー)の岡氏による、ビッグワードで1位を獲得するためのコンテンツ分析法と改善手法が紹介された。
DXの単ワードで1位を獲得するも2つの課題に直面
世界各国でデジタルコンサルティング事業やRPAツールなどのプロダクト事業を展開するモンスターラボ。上流のビジネスモデルの設計から、デジタルプロダクト開発までワンストップで企業のDX推進に寄与し、多くの顧客を擁する企業だ。
もともとコンテンツマーケティング施策のリードジェネレーションツールとして、オウンドメディア「モンスターラボ DXブログ」を2019年より運営し、同社のサービス領域に近い、DXやAI、IoT、UXデザインなどのキーワードで、Google検索の上位を獲得してきた。それによって従来のアプリ開発会社のイメージ払拭に成功し、DX推進企業としての立ち位置をアピールすることで、リード情報や案件問い合せの獲得にも成果を上げてきた。
モンスターラボの対策キーワード「DX」は、月間検索数が18万もある“ビッグキーワード”だ。モンスターラボでは、ブログ開始から数か月後の2019年末には「DX」の単ワードで1位に表示されるようになった。
野本氏は「当時はまだ『デジタルトランスフォーメーション』と表記することが多く、DXが一般的ではなかった。しかし、経済産業省が発表した『DXレポート』で一気に認知が広がり、先んじてDXでのコンテンツを掲載していたモンスターラボが首位を獲得するようになった」と評し、「先行優位性のおかげ」と語る。
その後2020年8月まで順調に上位表示を維持し、サイト流入を増やして認知を向上させることができていたが、2020年9月ごろから順位が下がり始め、検索結果の2ページ目以降、10位以下に表示されるようになった。その頃の心境について、野本氏は「SEOのトレンドに乗れなかったという悔しい思いがあった。対策も行なっていたが効果的な施策が見つからず、歯痒い思いをしていた」と語る。
このSEOでの順位低下への対応とともに、流入ユーザーへの適切なアプローチ方法という2つの課題に直面することになった。
課題①
「DX」という言葉が浸透し、先行優位性だけでは順位をキープできなくなった
多くの企業がDXをテーマにサービスを展開し、SEOの観点でも競合が乱立するようになった。そのため、自然検索流入を起点としたマーケティング施策が難しくなり、流入の改善に工数を取られて、目標達成に向けた前向きな施策ができなくなってしまった。
課題②
「DX」というキーワードが広義的すぎて、ユーザーに最適なアプローチができない
DXに関する課題は業界・業種はもちろん、所属部署や担当サービス単位でも異なる。しかしながら、「DX」の単ワードでは訴求範囲が広すぎて、サイト流入ユーザーそれぞれに最適なアプローチができなかった。そのため、問い合わせにつながっても傾向が見出せず勝ちパターンが見つからない、問い合わせ内容が漠然としていて成約につながりにくい、などの問題を抱えていた。
リード獲得を2021年比200%にアップさせた4つの改善策
こうした2つの課題に対して、モンスターラボでは、Webサイトの目的そのものを、案件の問い合わせを誘発するものから、リード情報獲得へシフトすることを検討。また、SEO順位アップのために、DXの記事だけを作成するのでなく、サイト設計やコンテンツ構成を見直し、次の4つの解決策を実施した。
解決策①
自社ブログのリニューアル(SEO施策)
SEOに適した土台作りを目的に、サイト設計の改善を実施。ユーザビリティに寄与することも意識した。またE-A-T(専門性・権威性・信頼性)向上のため、記事監修者を設定したり、サイトポリシーを設けたりするなどの改善を行なった。
解決策②
事例ベースのDXと業界記事の制作(SEO施策)
1つの記事で順位を獲得するのではなく、複数記事での順位アップを目指した。そこで、自社事例を差別化要素として活用。順位を獲得するとともに、案件誘発およびリード獲得につながった。
解決策③
DL資料の拡充/自社ウェビナーの開催(リード獲得施策)
検索のキーワードに対して最適なダウンロード資料を用意。なお、ダウンロード資料は、次の3点を意識して作成された。
- SEO記事との連動:キーワード群と親和性の高い資料を制作し、ユーザーの検索意図と提供資料をマッチさせる。ダウンロード数も率も向上した。
- ウェビナーとの連動:社内の有識者がウェビナー用に作成した資料を再活用することで、専門家が監修した質の高い資料に仕上がる上に、時間短縮が可能になった。
- インサイドセールスとの連動:資料選択を分岐させることで、ダウンロードするユーザーの属性などを推測。資料ごとのトークスクリプトを用意することで、よりユーザーに合ったアプローチを実現できた。
解決策④
インサイドセールスチームの拡充と連携強化(リード獲得施策)
同時にインサイドセールスチームをマーケティンググループとして拡充。獲得したリードに対するアプローチを強化した。
こうした施策を行なった2022年までのリード獲得数の推移を見ると、その効果は歴然としている。
ブログを開始した2019年に比べ、「DX」単ワードで閲覧されるようになった2020年にはリード獲得数は500%もアップした。しかし、前述した2つの問題から、2021年には約60%ダウン。そこで前述の4つの解決策も影響して、UU数の増加とともに、DX単ワード検索結果で1位を奪還。関連ワードでも上位を獲得したことで、2022年は前年対比で約200%のリードを獲得できる見込みだ。
リード情報獲得数は、ダウンロード資料の種類を増やしたことで増加につながった。さらにサイト改善で資料ダウンロード率も向上できた。同時に広告費用を昨対比で30%カットすることにも成功し、良質なリードを効率良く獲得することで、ROIを大幅に改善できた。またトラッキングが厳しくなりつつある中、リマーケティングからの脱却に成功し、自然検索流入を活用した施策にシフトできたのは喜ばしいこと(野本氏)
1位を取るためのSEO施策①
勝ちパターンを見出すまでの試行錯誤と実施した施策
続いてモンスターラボの施策の提案・支援を行なったFaber Companyの岡氏が加わり、「ビッグキーワードで1位を取るSEO施策」に焦点を絞り解説が行われた。
SEO順位の再浮上を狙って実施したのが前述の「解決策①と②」だが、その具体的な施策の一部が下の図だ。
- リライトして検索意図をおさえたが検索順位が変わらない
- コンテンツ量は競合サイトに負けていないはずだが検索順位が変わらない
- コンテンツ以外にも課題がありそうだが何を直すべきかわからない
などの悩みを抱えつつ、少しでもマイナス要因となりそうなものを見つけ、その全てに手を入れる「しらみつぶしの手法」といえるだろう。
しかし、ページ・Webサイトの課題をしらみつぶしに対策し続けるのは、リソース、時間、コストなどの面で難しいだろう。そこで有用と思われるのが、Googleの「検索品質評価ガイドライン」をベースとした「ミエルカ式コンテンツ分析方法」だという。
1位を取るためのSEO施策②
Googleの「検索品質評価ガイドライン」をベースにした評価&改善
検索順位で1位を取るためには、「サイト設計」「リンク」「検索意図との一致」「ユーザビリティ」「E-A-T」など、さまざまな要素が必要になる。しかし、ビッグキーワードで上位表示できているサイトの場合、こうした対策はほぼできていることが多い。
そこで考えるべきなのが、「ユーザーの満足度を上げるためのコンテンツ改善」だ。つまり、基本的な要件を満たした上で、コンテンツによってユーザーを満足させることが重要というわけだ。
Googleでは、検索結果の品質がユーザーに提供できているかを「クオリティレイター」と呼ばれる評価者にチェックさせており、クオリティレイターが採点するポイントをまとめたマニュアルが「検索品質評価ガイドライン(General Guidelines)」である。ここには検索結果の品質を向上させるために必要な評価方針が明示されており、この項目を満たすことがユーザーの満足度を上げる指標となる。
最新版の「検索品質評価ガイドライン」は170ページ以上、内容も多岐にわたる(2022年5月時点)。そして、評価で重視されるのは以下の3分野だと考えられるという。
- 「ニーズメット(Needs Met)」:需要にあった質・量の情報を提供できているか
- 「ページ品質」:高品質で信頼できる 情報を提供しているか
- 「ユーザビリティ」:サイトの操作性
岡氏は「ニーズメット」を例に挙げ、どのようにコンテンツを分析・評価しているかを説明した。
ニーズメットは「検索結果がユーザーの検索ニーズをどれだけ満たしているか」を見る評価指標であり、以下の5段階で判断している。
ガイドラインの「Rating」欄にこの5段階評価が記載されて、その隣の枠内にコメントが残される。たとえば、下図の場合は、Ratingは「4. 欠点がある(Slightly Meets)」、隣の枠にはその理由を詳細に述べてあり、評価は低いことがわかる。
この5段階評価とコメントを用いて自社と競合のサイトを比較・分析すると、コンテンツの優劣が明らかにわかりやすくなるという。
「ミエルカ式コンテンツ分析方法」では、この「検索品質評価ガイドライン」の考え方をもとに、独自の5段階評価とコメント作成を実施。セッションでは、岡氏によるモンスターラボのサイト分析例が披露された。
1位を取るためのSEO施策③
「ミエルカ式コンテンツ分析方法」による競合比較分析で効率的に改善点を発見
「ミエルカ式コンテンツ分析」の流れは以下の3ステップである。
- 評価の比較対象となる検索上位サイトを2~3サイト選ぶ
- 1で選んだサイトを検索品質ガイドラインの項目に合わせて5段階評価する(どうしても絞れない場合は3.5など中間値でもかまわない)
- この内容・評価を見ながら、検討すべき内容を検討する
3項目で施策前のコンテンツを評価
評価についてはさまざまな項目があるが、ここでは次の3項目を評価基準とした。
1. 深掘り:情報の深掘りができているか
2. 量:適切な量の情報を提供できているか
3. 簡便性:迅速、最低限の手間で目的達成できるか(達成までのスピード)
SEO順位が下がっていた頃のモンスターラボの場合、競合サイトと比べ「情報の深掘り」は3.5と及第点だったものの、量と簡便性はいずれも「2」評価とやや劣っており、そこの改善が必要であることが明らかになった。
競合サイトのコンテンツを評価
次に、競合A~C社のコンテンツ評価コメントを岡氏は披露した。まず「深掘り」について、A社、C社は詳しい内容が書かれていたので高評価。「量」については3社とも3,000文字以上と多めだが、いずれも検索順位は上位に表示されていることから「適正」であると判断。また、「簡便性」については、図解を踏まえた説明がなされていたB社とC社が高く評価されている。
競合サイトの評価と比較し、問題点を明確化する
これと照らし合わせると、モンスターラボは、深掘りは出来ているが、一部DXではなくアプリ開発の説明をしていたために3.5止まり、また量は9,917文字で情報が多く、適量とはいえない、簡便性も見やすく色付けされてはいるが、量が多く、画像も多くて読みづらい印象があると評価された。
深掘りと量:競合ほどDXに特化できておらず、文字量も多い
これらの分析から、モンスターラボのコンテンツについては、DXに関する「情報の深掘り」が競合ほどできていないことが判明。DXに特化する内容に複数箇所差し替えた。また、情報量については量が多いことがネックになっていることが明らかになり、AIやアジャイル開発など、DX以外の情報を3,000字以上も間引くこととした。
検索順位が下がり、差別化するためにDXの周辺の情報を入れたほうがいいかと思い、焦ってしまったが逆効果だったのに気づいていなかった。こうした判断は事業を行なっている自分たちには難しい。客観的な分析は改善のよい指標となる(野本氏)
簡便性:CTAボタンを一番読まれている場所へ移動
そして、簡便性を高めるために、ページの構成を調整した。一例としては、ヒートマップツールのデータをもとに、ページの下部にしかなかったCTAボタンを一番読まれている部分へと移動。CTAボタンのCTRがアップすることがわかり、ユーザーがアクションを起こしやすいよう簡便性を高めることに成功した。
こうした調整を全体的に行ったことで、深掘りは3.5から4へ、量・簡便性はそれぞれ2から3.5へと評価を上げ、その結果安定した1位表示を実現することができたのだという。
ガイドラインの項目に沿って5段階での評価をしていくと、改善すべきポイント、改善方法が見えてくる。それぞれの改善によってユーザーの満足度が高まり、ダウンロード率が高まり、リード獲得につながり、最終的にビッグキーワードで安定的に1位が獲得できるようになったと考えている(岡氏)
そして最後に、「SEO施策とリード獲得施策の合わせ技はリード獲得増加につながりやすい。BtoB企業は、ぜひ参考にしてリード施策、SEO施策を行ってみてほしい」と提案。「ユーザーの満足度を起点とした分析による施策は順位上昇につながりやすい。特にビッグキーワードなど上位表示を狙うことが難しい場合はこうした方法が効果的。ぜひ、試してみてほしい」と語り、セッションのまとめとした。
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