SERPで検索順位ではなくブランド露出を測定するには? 古いSEO脳を超えたイマドキの手法
今回のテーマは「企業や製品のブランド測定」について。
「君の企業・製品・ブランドを、人々がどう捉え、どう接するか」は、消費者体験をコントロールできるかどうかにかかっている。SEOの担当者が最もコントロールしやすいのはSERP(検索結果ページ)だが、SERPでのブランドリーチを従来の方法で測定するだけでは、不十分なことが多い。
そこで今回は、Piped Outの創設者であるドミニク・ウッドマン氏が次の2点を解説する:
- 検索順位だけのSERP測定がどう不十分なのか
- SERPでのブランド測定方法を改善するにはどうすればいいか
SERPの要素と従来の測定方法
製品を販売しているなら、そのブランドの消費者体験をコントロールすることは非常に重要だ。消費者はその製品をどのように見て、どのように接するだろうか。
ここで例に挙げるのは、cyberpunk.netだ。少し前に発売されたアクションロールプレイングゲーム『サイバーパンク2077』のサイトである。これを、ブランドの評判に大きな問題をもたらした製品の例として挙げたい。
このゲームは公開時に少しつまずいた。もし君がこのサイトのSEO担当者だったら、ブランド体験をどうコントロールし、その効果をどう測定しただろうか。ここに図で示したのが当時のSERPだ:
SERPには、次のような要素がある:
- ごく普通の青字のリンク
- タイトルとmeta description
- 動画セクション
- 「他の人はこちらも質問」セクション(PAA)
横にあるのはナレッジパネルだ。
まず、従来の順位ベースの測定方法で考えてみよう。検索順位のトラッキングツールでこれを見ると、僕たちが管理しているプライマリドメイン名であるcyberpunk.netの順位は、時間の経過とともに5位から4位に上昇している。すばらしい。
ブランドでなかったら、こうしたやり方でもそれほど悪くない。ちなみに、示した2つのグラフのうち、上のグラフはキーワード1件の場合で、変動している様子がよくわかる。キーワードが複数ある場合は集計して平均を出すため、下のグラフのようにもう少し滑らかな線になるだろう。
このグラフにはおそらく、直接現れないデータとしてさまざまな順位が混在している。「1位のキーワードの件数」「2位のキーワードの件数」など、もう少しリッチな経時的情報を得ることも可能だ。しかしそうの場合でも基本的には、ブランドのSERPをごく簡単に示した図であることに変わりはない。
だが、私たちが考えなければならないのは、人々のSERPに対する見方が時間の経過とともに少し変化してきていることだ。
SERPがリッチになるにつれて、ニールセンなどは、僕たちがもはや単に上から下へ読むだけではないことを認識した。
検索ユーザーはあちこちに目を移すようになり、SERPのより多くの部分を確認するようになった。ブランドのSERPでは、グーグルは「ドメインクラウディング」プロジェクトの下、それぞれのSERPで1つのドメイン名に属するページのURLをあまり表示しすぎないようにすることを理想としていると想定される。
しかし企業や製品のSERPにおいて、目標は1件のURLを上位に表示させることではない。理想は多くのURLを上位に表示させることであり、通常とは異なり、実際に多くのURLを上位に表示させられる。ブランドのキーワードは、次のようなものかもしれない:
- 「Cyberpunk 2077」
- もう少し意味をもたせて「is cyberpunk good」
※サイバーパンクはおもしろいか - あるいは、もう少しシンプルに「is cyberpunk out」
※サイバーパンクはもう発売されたか
これらはすべてブランドのキーワードで、パブリッシャーやメーカーのページは複数の場所に表示される可能性が非常に高いと思う。
改めて検索結果を見てみよう。
メイン領域で4位の位置に緑色で示したリンクがcyberpunk.netだが、実は3位も僕たちのコンテンツだ。これはゲームメーカーのサイトからのコンテンツで、ゲームを販売している会社のものだ。したがって、3位と4位にゲームのサイトとゲームメーカーのサイトがある。
それから、7位に紫色で示したリンクも、僕たちにとって成功とみなせるかもしれない。非常に優秀で、本当にすばらしいジャーナリストが書いてくれた好意的な記事だ。こういったジャーナリストがこのゲームをとても気に入って、とても好意的な記事を書いてくれると、それが検索結果に表示される。
その上にオレンジ色で示したリンクがある。これは否定的な記事だ。このゲームをあまり楽しめていない人が書いたものだ。
ホワイトボードの図では示していないが、TwitterのアカウントやYouTubeのアカウントなどのさまざまなリンクも、ブランドのSERPに表示される可能性がある。
検索順位だけで測定していると、こうしたあらゆるリッチな情報を1つの数字で片付けてしまうことになる。これではブランドとして十分ではない。では、どうすればいいだろうか。
検索順位だけではないSERPの測定方法とは?
解決策として、まず必要なのがリッチなSERPデータモデル(測定サービス)だ。これはどこでも手に入る。実際、Piped OutではDataForSEOというサービスを使っており、これは非常にリッチなSERPデータモデルを提供するAPIで、かなりオススメだ。ただし、同様のものを提供するサービスはたくさんあるので、どれを選んでも構わない。重要なのは、SERPの各機能をすべて把握できるほどリッチなSERPデータモデルを用意することだ。
たとえば、「他の人はこちらも質問」ボックスを1つのブロックとして考えればいいというわけではない。「他の人はこちらも質問」ボックスの個々の質問について、検索結果に表示されるタイトルと、その下に表示されるURLも考慮する。
動画の場合も同様だ。動画の要素にはリッチなSERPデータソースが必要だ。URLだけでなく、動画ブロックのソースも考えなければならない。グーグルには小さく出典が表示されるが、あれは実はアカウント名だ。
こうしたリッチなデータを取得することで、
- 自分のコンテンツ
- 自分のものだとみなすコンテンツ
を定義できる。たとえば、前に示した例の「ジャーナリストによる好意的な記事」は厳密には所有していないが、僕たちのものとみなしっていい価値がある。このように、価値があると思われるあらゆるものを定義できる。
そのうえで、このSERPデータモデルを使って、それぞれのサイズを計算しよう。
検索結果の各項目は、ピクセル数でいえばどのくらいのサイズだろうか。たとえば検索結果の1位の項目は通常のSERPのブロックなので、高さは180ピクセルほどだろう。
このように、自分が所有しているさまざまな要素の高さを計算し、その高さ(面積でもいいが、高さの方が簡単だ)を、ピクセル単位で測定したSERPの占有率に変換できる。このSERPでの占有率を計算するのだ。
くり返すが、「所有」の定義は好きに決めていい。個々の要素の情報は、極めてリッチなSERPデータソースがあれば取得できる。
ただここで、少し問題が出てくる。つまり、検索順位に関して言えば、もちろん5位より4位の方がいい。それが、占有率のような話になると、単純にそうは言えなくなってしまう。下位に表示されるより上位に表示される方がいいのは明らかだ。しかし、サイズやさまざまな要素を測定する場合はやはり、順位だけで判断するのは文字通り不可能だ。
そこで、検索順位に立ち返ることなく重要度を測るには、ある程度の妥協が必要だ。そうした妥協として優れていると僕が思うのは、次の手法だ:
SERPにおける「所有」しているコンテンツの、
- スクロールせずに閲覧可能な範囲におけるピクセル占有率
- 1ページ目全体におけるピクセル占有率
を、
- デスクトップ
- モバイル
で分けて測定するやり方。
そのデータをもとに、次のようなグラフを作成するのだ。
これが「SERPでのブランド測定」の基準となり、次のように分析できるようになる:
よし、僕たちのサイトcyberpunk.netは、注目している一連のキーワードに対して、モバイルでスクロールしなくても目に入る範囲に表示されるピクセルの割合が増えている。
すばらしい! 僕たちはブランド体験をコントロールし、良い方向にもっていけている
これにより、僕たちがSEO担当者として取り組んでいることがブランドのSERPにどう影響しているのか(どのようにコントロールしているのか)、よくわかるようになる。
プロジェクトでこのサイトをよりリッチに拡充していく場合、上に示したグラフのような結果を得ることを意図しているだろう。実際の成果をこうしたグラフで示せれば、結果を正しく測定することになる。検索順位のようなごく単純化されたグラフでは、それができない。
改めて説明しておくが、こうした測定をするにはリッチなSERPデータソースが必要だ。僕たちPiped Outの場合は、DataForSEOをBigQueryに取り込んでいる。だが何度も言うが、これは何でもいい。多くの優れたSERP APIデータソースで同じことができる。STATでもできるかもしれない(STATはMozの製品なのでMozに確認してほしい)。
説明は以上だ。データソースを入手し、それを使ってこのようなダッシュボードを作れば、自分のブランドをどれだけうまくコントロールできているか、もっと深く理解できるようになる。ありがとう、また次回お会いしよう。
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