[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

マーケターとして成長したいなら、プロジェクトマネジメントを学ぶべき3つの理由とは?

マーケターによるリレーコラム、今回は瀬川義人氏。マーケターになぜプロジェクトマネジメント能力が必要なのか、自身の経験を踏まえて解説します。
 

みなさん、こんにちは。
岐阜でB2Bマーケティングの仕事をしています瀬川(@motoy0shi)です。

突然ですが、あなたはマーケターにとって重要な能力は何だと思いますか。おそらく人によってさまざまな答えがあると思います。最近私が思う答えは、「プロジェクトマネジメント」のスキルです。

かつての私は、マーケティングの知識やスキルを磨くことばかりに専念していました。しかし、ある時に自分の至らなさのゆえに、プロジェクトをプチ炎上させかけてしまったのです。その時に、プロジェクトマネジメントの大切さを身をもって感じ、今も日々勉強しているところです。

そこで今回の記事では、過去の自分の反省を踏まえて、マーケターにプロジェクトマネジメント能力がなぜ大切かについて、私の考えを紹介します。なぜかマーケティングの現場ではその重要性があまり語られませんが、私はとても重要なテーマだと思っています。

現状の自分からもう1段ステップアップしたい若手のマーケターさんは、ぜひお読みください。

プロジェクトをプチ炎上させかけた、かつての経験

時は遡ること数年前。まだ駆け出しのマーケターだった私が、とあるクライアントのデジタルマーケティング支援をしていた時のこと。当時、クライアントからLP(ランディングページ)制作の依頼を受けていました。

制作期間は約2ヵ月。企画とワイヤーフレーム作成は私、デザインとコーディングの制作フェーズは外部パートナーと進める座組みでした。プロジェクトが始まった当初は順調でした。しかしワイヤーフレームの段階になって雲行きが怪しくなってきました。クライアントからワイヤーフレームの内容に違和感があるという声が上がってきたのです。なんとかその違和感を払拭すべく修正を繰り返した結果、予定より1週間近く遅延が起き始めました。

さらに状況は悪化します。制作フェーズに入り、外部パートナーにデザインやコーディングを依頼しましたが、私の発注がよくなかったため、何度か修正をお願いすることになりました。

結果として、納品期限まで猶予がほぼない状態になってしまい、クライアントにもタイトなスケジュールで確認していただくことに。最終的には、みなさまのご協力があったおかげで、なんとかスケジュールどおりに納品はできましたが、関係者のみなさまには本当に申し訳ないことをしたなと反省しています。

原因を振り返ってみると、お恥ずかしい話ですが、すべて自分の読みの甘さに起因していました。プロジェクト冒頭で、きちんとクライアントと要件を詰めておかなかったこと。工程ごとのスケジュール管理が甘かったこと。外部パートナーとコミュニケーションが十分できていなかったことなどです。

この失敗を機に、プロジェクトマネジメントについてきちんと学ぼうと思ったのでした。

マーケターにプロジェクトマネジメント能力が重要な理由

改めて、マーケターにとってプロジェクトマネジメント力が重要な理由を考えてみましょう。私は、大きくは3つの理由があると考えています。

①不確実性をマネジメントして、目標を目指す必要があるから

マーケティングには、売上アップや商談獲得といった目標があります。そして、その目標を達成するためのKPIがあり、KPIを達成するために施策に取り組んでいます。

一方で、マーケティング施策を実行し、目標を目指すうえでは、さまざまな要因が影響してきます。社会や市場の変化、競合他社の動きといった外部要因もあれば、社内方針の変更、予算の増減、メンバーの異動といった内部要因もあるでしょう。

特に外的要因は不確実性が高く、事前には予想もできないことが多いはず。実際、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大は、ビジネスにも大きな影響を及ぼしました。

そうすると、どれだけ綿密に計画を立てていても、軌道修正せざるを得ないことがあります。そこでマーケターに求められるのは、その場その場で現状を分析し、いま何にフォーカスすべきかを見定める能力なのではないかと思っています。

②限りあるリソースを最適に管理する必要があるから

もし仮に膨大な予算があり、豊富な人材がいるなら、事前に深く考えなくてもプロジェクトの遂行には問題ありません。しかし、たいていの場合はマーケティングに対する予算や稼働できる人数は限られています。

すると、限られた人や予算をどのように使うかがポイントになります。社内の人間だけで内製するのか、外部のパートナーに支援してもらうのか。新たにツールを導入するのか、現在のツールでやってみるのか。こういった判断が数多く存在します。

また手持ちのリソースだけで本当に目標が達成できるかも考えなくてはいけません。場合によっては、追加予算や増員をクライアントやプロジェクト責任者、経営者と交渉することが必要かもしれません。

だからこそ、目標を達成するために、どれだけリソースが必要か見積もり、最大限成果を出せるように使うスキルが求められるのではないかと思っています。

③多様なタスクとステークホルダーとの調整があるから

そもそもマーケティングの業務は、非常に広範囲に及びます。たとえば、Webサイト制作とSNS運用、MA運用、Web広告運用、記事ライティングは、同じマーケティング業務として一括りにされることが多いですが、実際はそれぞれ専門家がいるくらい、専門性が高い業務です。それゆえ1人がすべての領域に精通していることはありえません。だからこそ、得意・不得意を理解して、うまく連携して業務を進めていく必要があります。

また連携するのは、決してマーケティングの範囲にとどまりません。実際、私はいまSaaSを提供する企業でマーケティングを担当していますが、業務ではさまざまな部署と連携しています。たとえば、商談化率を改善するためにセールス担当者と話したり、既存顧客の声を知るためにカスタマーサクセスチームにヒアリングをしたり、外部との契約にあたってバックオフィスチームと話したり。逆を言えば、社内の各部署との連携なしにはマーケティングは進められないのです。

だからこそ、マーケターはステークホルダー同士の利害を調整して、タスクを遂行する能力が必要になってきます。

マーケティング業務は、まさに困難なプロジェクトそのものです。だからこそマーケティングを成功させるためには、プロジェクトマネジメント能力が必要だと考えています。

どのようにプロジェクトマネジメント能力を磨くか

ここまでマーケターにプロジェクトマネジメント能力が大切な理由を紹介してきました。しかしながら、この能力をどのように身につけたらよいのでしょうか。

書籍や座学で学ぶ

まずは書籍や座学で学ぶことです。幸いにも、プロジェクトマネジメントに関する書籍はたくさん刊行されています。まずは基礎的な本をざっと読んでみると良いでしょう。個人的には、以下の本が読みやすくてオススメです。

これらの書籍で基本的な考え方を知っておくと、無駄な失敗をせずに済むので、まずはここから始めるとよいと思います。

できる人を見て学ぶ

次に、プロジェクトマネジメントの経験が豊富な人から学ぶことです。

あなたの周りには「あの人に任せると、うまくやってくれる」と言われるような上司や先輩はいないでしょうか。私の周りのそういった人は、プロジェクトマネジメントが上手な印象があります。どのように仕事をこなしているのか、ぜひ観察してみてください。きっと多くの気づきがあるはずです。

またフィードバックやアドバイスを積極的にもらうこともよいでしょう。壁打ち的に話してみることで、自分にない視点やアイデアを得ることができるに違いありません。

ともかく現場で実践を積む

最後は、現場で実践を積むことです。いくら本で読んだり、できる人から教えてもらったりしても、自分で最後はやってみないと真の力はつきません。

思ったように上手くいかず、落ち込むこともあるでしょう。私もうまくできず、プロジェクトが座礁してしまうような経験が何度もありました。また今でも「あの時もっとこうしておけばよかったな」と思うこともよくあります。

ただ自分が一番成長するのは、自分で考えて試行錯誤し、苦難を乗り越えてプロジェクトをやり遂げた時です。失敗してもダメージが少ないうちに挑戦してみることが重要なのではないかと思っています。

おわりに

最後に、先ほども紹介した山口周氏の著書『外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』の一節を引用して、記事を締めくくりたいと思います。

プロジェクトマネジメント型の仕事では、仕事そのものが自分の作品になります。(中略)仕事という作品を通じて社会と関わりを持てるアーティストになり得るのです。

ぜひみなさんもプロジェクトマネジメント能力を習得して、マーケティングの世界で仕事という作品を残すアーティストになってみてください。

なお冒頭でも書いたとおり、プロジェクトマネジメントは奥深く、私もまだまだ十分に習得できていない部分も多くあり、日々勉強中です。読者のみなさまで、「自分はこのようにプロジェクトマネジメントを学んだよ!」という声があれば、ぜひ私のX(旧Twitter)アカウント(@motoy0shi)などにお知らせいただけますと嬉しいです。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

用語集
B2B / KPI / LP / SNS / SaaS / ステークホルダー / フィード / ランディングページ / 内部要因 / 外部要因
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