電通デジタルコラム特選記事

顧客理解プロセスの再定義とデータプランニングの重要性 【電通デジタルコラム】

限りあるデータ偏重のマーケティングの限界を理解した上で顧客とどう向き合うべきか、ベースとなる考え方を解説します。

顧客の解像度は、手元にあるデータを見ているだけでは上がらないもの。顧客の解像度を上げるために、限りあるデータ偏重のマーケティングの限界を理解した上で、顧客とどう向き合うべきか、またどのようなデータプランニングやソリューショニングが必要となるのでしょうか。そのベースとなる考え方を電通デジタルの大船良が解説します。

※本記事は、2024年3月18日に開催されたセミナーの内容を採録し、再構成したものです。
 

 

データだけでは顧客のことは分からない

マーケティングご担当者の皆さんが施策設計時に抱えるお悩みとして、次のようなものがあるのではないでしょうか。
 

  • 開封/クリック/セッション数/CVRを定点観測しながらPDCAを回しているけれど、本当に効果があったのか、顧客をより深く理解できたか確証が無い
  • MAやCRMなどツールは入れているけれど、ROIとして妥当なのか判断がつかない
  • 顧客の解像度を上げるために、CDPの導入を検討しているが、コストが高く投資に見合う効果が得られるか不透明で、二の足を踏んでいる

 

データから顧客を捉えてパーソナライズされた施策を実施すれば、事業に貢献できるはず、とツールとデータさえあれば何か施策ができると考えてしまいがちですが、手元に十分なデータがあり、顧客心理に迫れる場合はそれでもよいでしょう。しかし、十分なデータがない場合、施策の良し悪しの判断は半ば決めつけに近いものになりがちです。 

例えば、キッズメニューのフードデリバリーを利用した方に、そのデータから家族の利用と判断、キッズ向けクーポンをリコメンドしたとしましょう。しかしその注文は、たまたま子どもが熱を出したからかもしれませんし、なんとなくご飯を作るのが面倒くさかったからかもしれません。キッズメニューを注文したというデータだけで、次回もキッズメニューを注文するか予測することは難しいと言えます。

人間は不合理で、予測不能な存在です。そのため、データだけで捉えきるのは難しいといえます。

デジタルマーケティングとして、本来実現したい姿は「顧客のあらゆるタッチポイントで、手を差し伸べられる状態である」で、顧客の困りごとや欲求に対して、「手を差し伸べられる状態でありたい」と言い換えることができると思います。 この姿を目指して、顧客を深く理解し、LTVの向上につなげることは重要です。ここまでは誰も異論がないでしょう。

では、この理想の姿を実現する上での課題とはなんでしょうか。

それは、手元の限られたデータだけを頼りに、顧客のことを理解できたと思ってしまう点です。限定的なデータで、顧客のあらゆる困りごとや欲求に手を差し伸べられる施策が実行できるでしょうか。 また、そうした限られたデータでプランニングされた施策の結果の良し悪しについても、相関関係があるのかどうかや評価軸が曖昧なまま、CRMを運用してきたことも問題だと私は考えています。

電通デジタル,テクノロジートランスフォーメーション第1部門,ソリューション&アーキテクチャデザイン事業部,マネージャー,大船良インタビュー

データと人間に対する洞察を共に重視する「二律創生のマーケティング」 

ここで「経営」について考えてみたいと思います。我々は何を経営対象と考え、何を結果として捉えてきたのか、についてです。経営における経営対象は当然、あらゆるマーケティング活動やプロモーション活動のことを指します。

新規顧客の獲得や、そのためのプロモーション、マーケティング活動がそれに当たるでしょう。また、既存顧客の維持や育成のためのCRMの施策運用なども含まれると思います。そして、その結果としてどれだけ利益が出たかが重視されるわけです。

二律双生のマーケティング

しかしここで見ているのは、施策にかかった費用と、売り上げからそれを引いた利益という数字の結果のみ。「なぜその結果になったのか」というプロセスも「経営対象」として見るべきという、大切な視点が抜けてしまっています。

この「施策」と「結果(収益)」の過程にある、「顧客心理(欲や喜び)や、それに伴う顧客の行動」が経営対象として重視されるべきであり、その対象に対する深い洞察によって、データ偏重でない仮説立案ができるかどうかが、施策成功への大きな鍵を握ります。CRMは、こうした思考をベースに活用するべきで、だからこそ、データプランニングが重要になってくるのです。

こうした点を踏まえてご提案したいのが「二律双生のマーケティング」です。「二律双生」とは、ご存知の通りレクサスが生んだ造語で[1]、「相反する価値を同時に叶える」という意味を持っています。つまり、デジタルマーケティングにおいても、データという定量的なものと、人間という定性的なものを同時に考える必要があるのです。

既存のデジタルマーケティングから脱却するためには、手元にある具材(データ)のみで料理しようとしてはいけません。デジタルマーケティングはあくまでマーケティングの一部でしかないからです。デジタルの時間だけを過ごしているわけではない顧客の感情に思いを馳せながら、自社データとシステムアーキテクチャを再プランニングすることが、今後重要になってくるでしょう。

この再プランニングを行う上で、必要となるプロセスは次のようになると考えています。
 

  1. ビジネスアーキテクチャの整理
  2. 顧客心理・感情の整理
  3. 顧客の心を動かす施策の再検討
  4. 企業(サービス)との顧客の関係の可視化


ビジネスアーキテクチャを整理するのは、「市場・トレンド調査・ビジネス環境」を理解し、視野を広げていくことが必要となるからです。そのうえで筋の良い仮説を立てていくことができます。

定性的なデータも定量的に計測出来るようにデータプランニングを行い、可視化させていくことが長期的な顧客関係の構築へと繋がっていきます。 そのためにも、既存はRFM(過去の購買履歴などの従来の量的な考え方)のみで顧客のLTVを測ってきましたが、今後は行動や共感(来店・購買・サービス利用・SNS投稿)を汲み取り、複数の軸を取って横断的に考えていく必要があります。

詳しくは、ホワイトペーパー「なぜ顧客の解像度は一向に上がらないのか? デジマアプローチの罠と突破法」をご準備しておりますので、ホワイトペーパーから少しでも皆さんのヒントになればと思います。


電通デジタルが提供するシステムアーキテクチャの診断プログラム

これまで紹介してきた話をまとめますと、まず取り組むべきは、「ビジネスアーキテクチャの整理」「顧客の洞察と喜びのための施策検討」などといった「施策プランニング」。その上で、施策を実行し、顧客を把握するための「データプランニング」へと進みます。既存のデータで足りるのか、足りなければどういうデータを増やすべきなのかを検討します。

そして、次に必要なのがそのデータプランニングに最適なシステムアーキテクチャを整理することです。このシステムアーキテクチャの整理の部分では、ツールが増えて困っているという相談を最近多くいただきます。あくまで、データプランニングを設計した上で、それぞれのツールの意味づけをしていくことが重要になってくるでしょう。

電通デジタルでは、現在、システムアーキテクチャの診断プログラムを提供しています。現在のCRM施策の運用にあたり、施策・システムアーキテクチャ・データのどこに問題があるのかディスカッションさせていただき、CRM環境を診断します。それを元に、方向性を明示し、簡易的なロードマップの策定まで対応いたします。

アーキテクチャのプランニングは当然重要ですが、その設計に意味付けするためにも、事前のデータプランニングがさらに重要となります。データプランニングには生活者に対する洞察が欠かせません。我々には、データからシステム設計、施策までを横断的にプランニングする支援実績が多数あります。

ここまでお話しした内容を図解し、より理解を深められるホワイトペーパーを用意しました。顧客の解像度を高めるべく日々奮闘されている、マーケティングご担当者の新たな気づきになれば幸いです。
 


脚注

 

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「電通デジタル トピックス」掲載のオリジナル版はこちら顧客理解プロセスの再定義とデータプランニングの重要性

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