この間25歳を迎え、僕も「昔はこうだった」という類の記事を書いてもいい年になったと思う。ただ、「僕の若いころは」とか「古きよき時代」とか、あるいは「僕らは浄化槽の中で新聞紙にくるまって3か月を過ごした」なんていうフレーズは使わないようにしてみるよ。
僕が初めて足を踏み入れたころのSEO業務といえば、顧客のサイトに変更を施し(おそらく、今あるようなサイトに比べたらややスパム的だったと思う)、検索ロボットの巡回を待ちつつ、不安な気持ちで結果が出るのを待ちわびているといったありさまだった。実際に、はっきりとわかる程度の効果が検索順位に現われるまで、丸々6週間も待たなければならなかったものだ。titleタグ、サイト内リンク、コンテンツに関するアドバイスをしたはいいが、その結果が出るまでにどれくらいの時間がかかるのかは、よくわからなかったんだ。
また、明確な答えが示せないような疑問もあった。たとえば、
- title要素では、ブランド名とキーフレーズのどちらを先頭に持ってくるべきなのか?
- トップページに対してリンクを張る場合、アンカーテキストは「ホーム」とすべきか、それとも収益に結びつきそうなキーフレーズを使用すべきか?
- そのページに配置すべきリンクの数を、10個で提案すべきか、それとも20個か?
といったものだ。
僕らがやってたのは、あらかじめひねり出しておいた最善の回答をアドバイスとして提案することで、それ以外の解決法があるかもしれないなんて、顧客には知らせることすらしないのが普通だった。そういうアドバイスについて、半年から1年後に再検討することも時にはあったが、基本的には一度サイトのレビューが終わったら、それはもう済んだことだった。
Distilled社には、数学の学位保有者が思いのほかたくさんいる。そしてDistilledの社員は、分析的手法と緻密な実験が大好きだ(オークション理論も好きなんだけど、その話は別の機会に)。だから、憶測や直感ではなく、確かな情報に基づいてアドバイスを行うよう常に努力している。だが、古きよき時代においては、すぐれた分析データは、なかなか手に入れにくいものだった。Google Analyticsが登場する前の日々を憶えているかい?
だが、そういった状況はもはや変わってしまった。分析データは思いのほかたくさん入手できるし(今回の記事では「思いのほか」という表現が思いのほか多いね)、それと同じぐらい重要なのは、今の検索エンジンが、新しいコンテンツやサイトの変更を迅速にインデックス化できるようになっていることだ。昔のインデックス化のスピードが人力車なら、今のインデックス化は新幹線のスピードだ。
これが何を意味するかって? 基本レベルの話としては、検索エンジンがサイトの変更をはるかにすばやくインデックス化してくれるようになった(Live Searchは別だけどね……やれやれ)ということなんだけど、それはつまり、変更の影響をいち早く確認できるということだし、同じく重要なのは、マイナスの影響が出た変更を迅速に元に戻すことができるようになったということだ。
僕にとってこれは、SEOが実験の時代に突入したことを意味する。これは、別に僕が言い出した話ではない。SEO業界では、しばらく前から実験が行われてきたし、僕らだってこの1年間で、自分たちの作業プロセスにだんだん多く取り入れるようになってきた。だけど、最近になってようやく、僕は一歩退いてより大局的に物事を見て、これが古いスタイルのSEOからの根本的な脱却だと認識することができたんだ。
実験の対象になりそうなアイデアをざっと挙げておこう。
- 情報構造をどうすべきか。
- 製品ページに配置する関連製品のリンクは3個にすべきか、それとも10個にすべきか?
- サイトにはサブ・サブ・カテゴリのレベルがあった方がいいのか、あるいはサブ・カテゴリでもっとたくさんの結果を表示するべきなのか?
- サブ・カテゴリから他のサブ・カテゴリにサイト内リンクを張るべきか、あるいは1つ上のレベルにリンクするだけでいいのか?
- そもそも、製品ページにどの程度のコンテンツが必要なんだろう?
- (ひょっとすると何千もある)製品について、それらが検索上位を獲得できるように、コピーライターを雇うべきだろうか? それはほんとうに必要なことなのか?
- 画像の代替テキストに関して、最良のアドバイスってどんなものなんだろう?
- alt属性は短くしておくべきか、それとも長くして少しキーフレーズを詰め込むべきか?
- トップページへの画像リンクには、どんな代替テキストを使えばいいんだろう?
- キーフレーズの詰め込み、失礼、最適化は、実際にどの程度効果があるのかな?
- サイトにフッターリンクはいくつ必要だろうか? それはどのくらい効果的なんだろう?
- トップページから製品にはるリンクの数は、いくつにすべきだろうか? あらゆる場所に多数のサイト内リンクを張るべきか、あるいは最上位カテゴリーのページに対する少数のサイト内リンクに留めておくべきか?
- title要素の長さはどのくらいにすべきだろうか? ブランド名を入れるのは、キーフレーズの前と後ではどちらが最適だろうか(すごく当たり前のことだけど、クリック率についても心に留めておこう。これを実験するのは難しいけど、不可能ではないんだ。特に、インプレッション数を観察するのと同時に、まったく同じフレーズでPPC広告を実施している場合などはね)?
これらは、答えがすぐに出なかったり、サイトによって答えが変わってきたりしそうで、実験してみるといいんじゃないかと僕がお勧めする事柄の一部だ。
もちろん、上に挙げたのはみんな実験に適した内容なんだが、実験しにくいこともいくつかあるよね。例を挙げてみよう。
- リンクを購入するべきか? 購入しようとしている有料リンクはどのくらい効果的なのか? 短期的な利得は観察できるが、長期的な影響は判断するのがずっと難しいだろう(たとえば、ペナルティを受けた場合など)。
- ユーザーエージェントに基づいてクローキングを行うべきか? 確かに、これによって、短期間で検索順位は向上するかもしれないが、この場合も、結局のところペナルティを受けるという結果に終わる可能性がある。そうなった場合は非常に高くつくかもしれない。
僕は、こういう実験を絶対にしてはいけないと言っているのではなく、こういう実験には慎重を要すると言ってるだけなんだ。
もちろん、実験に不可欠なのは結果を測定することだ。必ず、正確な評価基準を設定し、詳しく調べてみる必要がある。可能な限り、実験から外部的な要因を取り除くようにしよう(これは時に不可能なこともあるかもしれないが、知恵を働かせれば、たいていは何らかの対照実験を考え出すことができるだろう)。
複数のサブ・セクションやサブ・サブ・セクションがある大規模なサイトの場合、僕はスプリットテスト(A/Bテスト)を行うことを強くお勧めする。サイト上の異なるセクションで異なる種類の実験を行い、どれが最も効果的か確認してみよう。一度に複数の実験を行うことにより、最善の答えに行きつくまでの時間をぐっと短縮できる。
一方、あらゆる変更について、ウェブ開発チームを通さなければならず、変更の実施に数か月もかかる小規模な静的サイトの場合、おそらくこうしたスプリットテストは適していないだろう(ただしその場合、心配しなくちゃいけないもっと大きな問題を抱えてるはずだ!)
今日の記事で言いたいことは次のとおりだ。
まだ実験を取り入れていないのなら、SEO業務のサイトレビューで実験を行ってみることを強く勧めたい。特に、はっきりと分かれたサブ・セクションのある大規模サイトで、セクションごと異なる変更を提案して、どれがより効果的かを確認できる場合はなおさらだ。
そして、たいていの変更はすぐ元通りの状態にすることが可能だ(特にサイトの規模が大きく、定期的に検索ボットが巡回している場合は)ということを覚えていてほしい。だから、時には勇気を持って型破りな戦略をいくつか試してみよう。どんなことが効果的か、きっと驚くような発見があるはずだ!
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