情報アーキテクチャについて、映画『007/慰めの報酬』が教えてくれること(前編)
以前にも話したことがあるが、もう一度、確信を持って言おう。オンライン上でWebサイトが失敗するのは、情報アーキテクチャの貧弱さが最大の理由だと僕は考えている。
007シリーズの最新作『007/慰めの報酬』を例として、新作アクション映画の分類のように単純な作業が、サイトのアーキテクチャにおいて重大な問題につながりかねないということを説明してみよう(念のために言っておくが、僕は「サイト」と「情報アーキテクチャ」という言葉を同じような意味に使って話を取り繕う傾向があるんだ)。
検索に適したWebサイトを構築するための図解入りガイド(英語版SEOmozの有料コンテンツ)は、情報アーキテクチャとその重要性について説明している。僕は、情報の流れをほとんど、あるいはまったく考慮していないサイトを本当にたくさん見てきたが、このガイドの説明にあるとおり、この問題は潜在的な検索順位に大きな影響をもたらすことになる。
僕がいちばんよく見かける情報アーキテクチャの問題は、検索エンジンがWebサイト内のすべてのページに到達する方法がないという状況だ。これはたいてい、新しいコンテンツ(多くの場合はユーザー生成コンテンツ)がしょっちゅう掲載されるような場合に発生する。うまくやれば、検索スパイダーにすべてのページをクロールしてもらえるような理論的な方法くらいは見つかるものだが、それは多くの場合、リンクを通じてページの深い階層に達してもらわなくちゃいけないことになる。
僕が話をした顧客の多くは、情報アーキテクチャというコンセプトを理解するのに四苦八苦している。今回は、僕がWebサイトのアーキテクチャを考える際の思考過程を説明することで、その理解を手助けしようと思う。さらに、みんなが直面する一般的な問題についても少し触れてみるつもりだ。
僕が手がけているサイトの多くは膨大な数のページで構成されている。そういった場合、適切なアーキテクチャとして考えられるのは、ある種の階層構造だといってほぼ間違いない。人は、階層という観点で考えること自体にそれほど抵抗は感じないものの、サイトのアーキテクチャを階層として捉えることはそれほど容易じゃないらしい。
パンくずリストの利点
「階層」という視点で考える場合、僕としては、サイトの構造を樹形図で表現したときに各枝の先端部分に当たるページから取りかかるというやり方がいいと思っている。こういうページは、当然「葉」と呼ばれることが多い。「葉」に当たるページがわからないというのなら、情報アーキテクチャ以上に懸念すべき大きな問題があるということだ。「葉」は販売を行ったり、あるいはユーザーの求めている情報を提供したりするページであり、「マネーページ」(お金になるページ)と呼ばれることもよくある。
例として、映画サイトを考えてみよう。英国では『慰めの報酬』が米国より2週間早く公開された。まぁ、それはこの記事の話題とはあまり関係がないんだけど、そのおかげで僕はとってもご機嫌になったから、この映画を例として使用するに十分な理由となるってわけ。さまざまな映画の情報を掲載しているサイトの場合、作品そのものに関するページがマネーページとなる。おそらくそういうページは、DVDや映画チケットを販売しているページだったり、(広告収入を目標として)その映画に関するあらゆる情報だけを掲載しているページだったりするだろう。
自分のマネーページがわかったら、そのページにとっての理想的なパンくずリストについて考えてみよう。使い回しのできるものにしようとか、どのように機能させるかについては気にしなくていい。理想とするパンくずリストについてだけ考えればいいんだ。『慰めの報酬』の場合だと、次のようになるんじゃないかな。
これだと短いので、あまりクリックしなくてもトップからこのページにたどりつけるし、『慰めの報酬』がアクション映画であることに異論をはさむ人もほとんどいないだろう。上記のようなパンくずリスト構造なら、好きなだけ映画を詰め込むことができる。さらに、この階層内のカテゴリ、つまり「アクション映画」というキーワードに対しても、ある程度の検索量があることもわかっている。
あるカテゴリに属するコンテンツが多い場合の問題
問題は、どこかのレベルであまりに多数の選択肢がある場合に生じてくる。
たぶん、トップページは問題ないだろう。IMDb.comの場合、27個のジャンルに分かれている。これは、階層のトップレベルにおけるリンク数としてはまずまずだといっていい。だが、各カテゴリに属する映画の本数を考えると問題点が見えてくる。IMDbでは、アクション映画のカテゴリに2万6469本の映画が登録されている。1つのページに何とか詰め込めるリンクの最大数はサイトによって異なるが、経験から考えるとだいたい100以内に留めておかなくちゃいけない。間違いなく、2万6469というのは限界を超えている。
1つのカテゴリにあまりに多くのリンクがある場合、利用できる選択肢は2つある。
最もわかりやすい方法は、サブカテゴリを追加してカテゴリを分割するというものだ。映画サイトの場合は、サブジャンルを追加することになる。一般的に通用している映画のサブジャンル分けなんて僕は聞いたことがないので、これはうまくいきそうにない。サブカテゴリの追加によってユーザーの混乱を招かないようにすることが重要だ。ある映画がどのサブカテゴリに分類されるのかがわからなければ、ユーザーはいろいろと推測しなければならなくなって、それはつまり、この階層構造が失敗であることを意味している。
2つ目の選択肢は、問題のあるカテゴリの上層に、新たなレベルを追加するということだ。たとえば、映画ジャンルの上に公開日を1つのカテゴリとして追加できるだろう。階層の上層部分にカテゴリを追加する場合は、キーワードの共食い(カニバリゼーション)について考える必要がある。公開日のカテゴリを追加して、どのようになるか見てみよう。
こうした階層構造では、2008年公開のアクション映画のページ、2007年公開のアクション映画のページ、2006年公開のアクション映画のページなどができる。これは、さまざまな理由から好ましい状況だとはいえない。まず、「アクション映画」をターゲットとするページを1つ設定するのではなく、映画の公開された年ごとに「アクション映画」のページを設けることになり、そこからキーワード・カニバリゼーションという問題が起こると思われる。2つ目の問題は、年ごとにアクション映画のページ用にコンテンツを作成しなければならなくなるということだ。この場合、説得力のあるコンテンツを作成しようと思えば、重複コンテンツの問題を避けて通ることは難しいだろう。最後に、「2008年公開のアクション映画」というキーワードでは、検索量がかなり少なくなるんじゃないかという気がしてならない。
上層にカテゴリを追加すると常に問題が生じるというわけじゃないんだ。僕が、1つのカテゴリとして「映画」をこっそり忍び込ませておいたことに気付いただろうか。こういうカテゴリの追加なら、公開年という階層を追加した場合と異なり、キーワード・カニバリゼーションの問題が発生することはないと思う。
この記事は2回に分けてお届けする。次回も引き続き、情報アーキテクチャに関するアドバイスをお伝えしよう。→後編を読む
ソーシャルもやってます!