消費者の視点に立った広告コンテンツでブランド育成に成功――花王のキーワード広告事例
オーバーチュアスポンサードサーチ[公式ガイド]
使いやすくなったスポンサードサーチ®で
ウェブサイトに客を呼び込もう!
使いやすくなった「スポンサードサーチ®」の活用法をオーバーチュアの専門スタッフが解説する初の公式ガイド。
この記事は、第9章「出稿企業に学ぶ成功戦略」の記事です。
顧客とブランドサイトの橋渡し役を担うスポンサードサーチ
国内有数の消費財メーカーである花王は、インターネット黎明期の1995年に自社のウェブサイトを開設した。早くからインターネットを用いてマーケティング活動を行ってきた企業としても知られている。現在では、フェイスケア用品やヘアケア用品、衛生用品、食品、ペット用品などさまざまなブランドごとに40を超えるブランドサイトを運営している。月間ユニークユーザー数100万〜120万人と、企業サイトとしては特筆すべき集客力を誇っている。同社がスポンサードサーチを活用し始めたのは2002年のことで、スポンサードサーチが日本市場においてサービスインした年だ。
花王では1999年に、乾燥性敏感肌に悩む人に向けたスキンケアブランド「キュレル」を発売している。その「キュレル」ブランドを育成するための広告手法として着目したのが、検索連動型広告だった。ではなぜノウハウの確立された他メディアの広告ではなく、日本では緒についたばかりの検索連動型広告を活用しようと考えたのだろうか。同社Web作成部部長の石井龍夫氏は次のように説明する。
「まず市場規模がニッチだということが挙げられます。乾燥性敏感肌に悩む方は、1億3000万人の人口のうち3000万人程度です。テレビCMをたとえ全世帯にリーチさせたとしても、そのうち実際に商品が必要だと思う方は一握りに過ぎないでしょう。また、そのような狭いターゲット層に向けた商品ですから、取扱店も限られています。弊社が直販でカバーしている小売店は9万店くらいありますが、キュレルを扱っているのはドラッグストアなど1万1000店。するとCMを見て買いたいと思っても、取扱店がなかなか見つからないケースも生じるわけで、マス広告を用いたコミュニケーションは歩留まりが悪く不効率なのです。ターゲット層と効率的にコミュニケーションを取る方法を考えた結果、検索連動型広告を用いてブランドサイトに顧客を誘導していこうということになりました
」
乾燥性敏感肌に悩んでいる人は、対処方法をネットで検索しているはずである。そうした検索ユーザーと、「キュレル」のブランドサイトとの橋渡し役を期待して活用したのが、スポンサードサーチだというわけだ。
広告では商品情報ではなく生活情報を提供
では、同社では具体的にどのようにスポンサードサーチを運用していったのだろうか。まずは入札キーワードの選定と広告の内容について、石井氏は次のように語る。
「当時は、お客様の多くはキュレルというブランド名をご存じない状況です。検索は能動的な行動に基づくもので、お客様の頭の中にないキーワードは検索でも使われませんから、『乾燥性敏感肌』『肌荒れ』『スキンケア』といった一般的な用語を300語くらいピックアップして入札しました。と同時に、広告の見せ方にも工夫を凝らしました。前述の用語で検索したお客様が知りたいのは、キュレルの商品情報ではなく、その用語に関する情報です。ですから広告ではブランド名をダイレクトに打ち出すのではなく、『乾燥性敏感肌のスキンケア情報』のサイトだということを、明確にしました
」
ランディングページ=成約ページでない理由とは?
リンク先のコンテンツも、あくまでも検索ユーザーの視点で構築した。まずは検索ユーザーが最も知りたい乾燥性敏感肌に関する情報を提示し、商品情報はその次のステップで見せるようにしたのだ。
「検索したお客様が知りたい情報と、私たちマーケティングサイドがお客様に見せたい情報は異なります。せっかくアクセスしてくださったお客様を失望させないためには、まず前者をきちんと提供し、そのうえで、私たちは『ゴールページ』と呼んでいますが、消費者の態度が変わると想定できるページまで誘導する必要があるのです。ゴールページまでたどり着くお客様が少なければ、離脱率などを調べてコンテンツの見直しを図っていきます
」
実は同社の検索連動型広告からゴールページまでの導線は、現在でもこのキュレルのパターンが基本になっている(図表9-1参照)。一般的にはランディングページ=コンバージョンページ(同社のゴールページ)にするのが望ましいと言われているだけに、「1995年のウェブサイト開設当初から生活情報の発信に力を入れてきた」という同社ならではの特色だと言えるかもしれない。またブランドサイトに信頼できる生活情報を置くことは、「インターネットユーザーからの被リンクも獲得でき、結果としてサイトの検索エンジン最適化にもつながる
」という効果も期待できるそうだ。
「キュレルの場合、検索連動型広告を2005年まで約3年間活用し、おかげさまでテレビCMを打てるくらいのブランドに成長しました。『キュレル』というブランド名で検索してサイトを訪問するお客様も増えています。『乾燥性敏感肌=キュレル』という構図がお客様の頭の中にできてきた段階で、私たちが期待していた検索連動型広告の効果は十分に得られたと考えており、現在はキュレルに関しては出稿をしていません。私たちは、検索連動型広告はマーケティングの要所で用いるものだと捉えており、他のブランドについてもスポット的な利用がメインになります
」
顧客とのコミュニケーションの初速を上げるツール
石井氏が「マーケティングの要所
」というのは、他のブランドの場合、具体的には次のようなポイントになる。
「たとえばテレビCMなどで、お客様に新しいコンセプトを提案する際、そのコンセプトの浸透を加速させるために検索連動型広告を活用します。最近では『スタイルフィット』という衣料用洗剤で、『夜洗い』というコンセプトを提案しており、テレビCMの放送スケジュールに合わせて『夜洗い』というキーワードで検索連動型広告を出稿しました。テレビCMを見た多くの検索ユーザーを誘導し、コミュニケーションのスピードを極力速くしていこうという狙いです。コミュニケーションを取ることに成功し、お客様が当社の生活情報や商品情報をブログなどで紹介してくれるようになれば、ブランドサイト自体が自然検索で上位に表示されるようになっていきます。コミュニケーションの初速を上げるツールが、検索連動型広告だと言えます
」
テレビCMと検索連動型広告とのクロスメディアは、大手企業ならではの広告手法だろう。しかし中小企業においても「SEOの成果が現れるまで集中的に用いる」「コンセプトの浸透を加速させる」といった検索連動型広告の使い方は参考になるはずだ。
「テレビCMは幅広い層に動機づけできる反面、歩留まり率はよくない。しかし検索連動型広告は検索したユーザーの大半が見込み客であり、テレビCMとは違って“深さ”が確保できる
」と石井氏は語る。他メディアの広告の長所と検索連動型広告の長所を組み合わせ、両者の効果を最大限発揮できる広告手法を考えていくことも、「マーケティングの要所」なのは間違いない。
この記事は、書籍『オーバーチュアスポンサードサーチ公式ガイド』の内容を、Web担向けに特別にオンラインで公開しているものです。
検索連動型広告
オーバーチュアスポンサードサーチ公式ガイド
スポンサードサーチをより上手に活用するために必要な考え方を中心に、なるべく平易な言葉を用いてオーバーチュアスポンサードサーチを説明している公式ガイド。
オンライン版では紹介した内容以外にも、利用申し込みのステップ、基本となるアカウント構造についての理解、キャンペーン管理、さまざまな広告主がスポンサードサーチを活用しどのようにビジネスを発展させているのかの事例などがある。
オンライン版で紹介する、キーワードの選定に必要な発想法や広告作成のヒント、また運用に必要なレポートの見方やパフォーマンスの改善に関する情報、費用対効果の改善などの実践的なアドバイスと併せて、手元に置いておけばオーバーチュアスポンサードサーチでのキーワード広告の大きな助けとなるだろう。
ソーシャルもやってます!