RFP不要! サイトを作ってCMSを選ぶ 第5回
前回までで、サイトのコンセプト、コンテンツ構成、名前が決まった。次はデザインや運用フローの決定、システム(CMS)の選定と実装が必要になるが、本連載の趣旨である「小さく作って速く改善!」という方針の場合、あまり要件定義や設計に時間をかけず、いくつかのCMSでサイトをラフに作りながら考えるほうが効率が良い。
ただし、この進め方を間違えると、ツールの制約が原因で理想のサイトを実現できかったり、無理なカスタマイズによって運用負荷やサイトのパフォーマンスが落ちたりすることがある。
そこで今回は、時間と予算を節約しつつ適切なCMSを選定するための、方法と留意点について紹介する。
今回の想定真似コスト 10~72時間
万能ではない、「RFP」による王道的なシステム選定
前回までは、サイトのコンセプトとコンテンツの決め方を見てきたが、ここからは具体的なシステムを導入する段階に進むこととなる。伝統的なウォーターフォール型の進め方では、サイトのコンセプトとコンテンツを決めた後は、次のように進めるものだ。
メニューやナビゲーションなどの情報設計を行ってからユーザーインターフェイスやビジュアルのデザインに進み、
どのような体制で誰が何をどう更新していくのかの運用を明確にした上でCMSの要件定義を行ってから、
RFP(要求仕様書)にまとめてCMSのコンペや評価、選定を行い、その後にようやくCMSの設計や実装を行う。
大規模なシステム導入においては、この進め方はうまく機能する。手戻りが少なく、スケジュール通りに進めやすい。ドキュメントとして成果が残るので、関係者が多い場合でも人に依存しない形で情報共有を行える。たとえ選定や設計に失敗しても、「きちんとここまでやった」という証拠が残る。システム導入プロジェクトは「すぐにツールに飛びつくのではなく、しっかりと要件定義を行った上で選定を行う必要がある」とコンサルタントはよく発言する。
ところが、本連載の趣旨である「小さく作って速く改善!」という方針の場合、次のような課題が発生する。
- 要求リストが膨らみ、オーバースペックなシステム(CMS)を選んでしまう
- どの製品も概要としては同じような機能を持っているため、結果的に、
- プレゼンが上手なベンダーを選んでしまう
- 知名度や導入実績を過大評価してしまう
つまり、不適切または最適ではない製品を選んでしまうリスクがあるのだ。
※今回の記事は、「RFPによるウォーターフォール型のCMS選定」を否定するものではない。あくまでも「小さく作って速く改善」することが前提である場合の提案と捉えてほしい。
作りながら要件を固めて選ぶ
そこで、今回提案するフローでは、順序を入れ替える。それは、次のような3ステップとなる。
まずCMSをいくつか選び、違いを表にまとめる。
良さそうなCMSを選び、実際に運用してみるとどうなるかを想像しながらCMSを絞り込む。
最後に、選ばれたCMSを使ってメニュー構造の作り込みやテンプレートのレイアウト定義、CSSデザインなどによるブラッシュアップを行う。
「馴染みのあるCMS(たとえばMTやWordPress)ありきで進めてしまっても良い」というわけではない。複数のCMSを実際に使いサイトをラフに作ってみることで、スペックや価格、知名度などに惑わされずにCMSを評価できるようになる。さらに、ラフなサイトを自分で体感しながら運用フローも疑似体験することで、「こんなサイトにしたい」「サイトでユーザーとこんな関係を作りたい」といったWeb担当者の想いやイメージが具現化されていく。
成功するサイトを構築するためにユーザー視点が重要なのと同じように、社内システムであるCMSもそれを使う人の視点やエクスペリエンスが重要なのだ。
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