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BtoB編コンテキストあわせた誘導シナリオ、クリエイティブが売上につながるキヤノンマーケティングジャパン 福士 哲司氏

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BtoB編
コンテキストあわせた誘導シナリオ、クリエイティブが売上につながる
キヤノンマーケティングジャパン 福士 哲司氏

キヤノンマーケティングジャパン株式会社
コミュニケーション本部 ウェブマネジメントセンター
コンテンツマネジメントグループ
福士 哲司氏

BtoBセミナーの後編では、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)の福士哲司氏が「お客様のコンテキストをウェブマーケティングに活かす~顧客軸の行動分析からリード獲得と成約率アップを実現するキヤノンMJの取り組み」と題し、大判インクジェットプリンターのマーケティング事例を、詳細な資料とともに解説した。

キヤノンMJは、メーカーであるキヤノンの製品を国内ユーザーに届ける「販売の企業」だ。セミナー冒頭で、福士氏は会社説明を簡単にしたうえで、「サイトを立ち上げたら儲かるのか」「KPIを出せ」と言われた経験はないだろうかと、BtoBサイト担当者の悩みを話す。

オンラインメディアは顧客の反応が具体的な数字になって見える、これが新聞広告やテレビCMとの最大の違い。一方で、BtoB商材の場合は、Webサイトのコミュニケーションだけでは売れない。最終的に営業が商談して完了するため、BtoBのKPIをどうやって設定するかという課題がある。

BtoBのマーケティングの施策は、商品力や価格、コンセプト、広告、営業力、チャネルなど、総合的なマーケティング力に支えられており、オンライン上のコミュニケーションだけでは完結しない。そのため、サイトのKPIに売上を設定することは難しいと福士氏は話し、各商品の事業担当者と次の3つについて共有していると説明する。

  • オンライン上のコミュニケーションのゴール
    資料請求数・商談申し込み数と獲得数
  • KPI
    商談にいたったの顧客の成約率
  • KGI
    販売台数、シェアの拡大

こうしたKPIは、Webディレクターが事業担当者から引き出すことがポイントになる。では、実際に大判プリンターのマーケティング施策はどのような手順で進められたのだろうか。

同じプリンターでも、お客様によって用途がまったく異なります。CADの図面、ポスターや横断幕、グラフィック作品の出力など、ターゲットがまったく違うため、求めるニーズに応じて情報を出し分けることが次の課題になります。

そもそもどういったお客様なのかという、セグメントを作るために、事業部門が定期的に行っているユーザーアンケートを参考にしました。メーカーが思っていることよりも、実際に商品を使って知っているお客様に聞いてみようと始めました。

始めのうちは、アンケートで企業として何を聞けばいいのかわからないものだが、フリーアンサーから質問を探るなど、繰り返し行うことでどんな質問をすればいいのか、アンケートの精度を高められているという。この結果は報告書にまとめられ、クロス集計によって多面的に分析されている。

用途別に重視されている点は何か、選択の決め手は、消耗品の購入頻度は高いのか低いのか、この機種を購入するお客様のポイントはどこにあり、どんな用途に使われることが多いのか。このように多面的に見ることによって、用途別、機種別の戦略が見えてきます。商品ごとにお客さまが評価するポイントは違ってくるため、まずここを調査しました。

次の戦略としては、セグメント化された結果を担当者と共有し、コンテンツにどう反映するかが検討された。具体的には、アクティブコアの行動ターゲティングLPOのad insightを利用し、ターゲットごとの顧客の姿を描きながら、Webサイトの誘導シナリオへと置き換えていった。ターゲットユーザーごとに誘導シナリオを設計し、行動履歴や検索キーワードなどからLPOを行ったのだ。

キヤノンのプリンターを探している方もいれば、メーカーを決めずに探している方もいる。機種の指名買いなど、PCの前でどのように検索するのか、ストーリーを描きながらLPOツールにどう反映していくのか検討した。閲覧履歴や自然検索のキーワードなどを利用し、お客様を想像しながらLPOに反映する作業をしています。

たとえば、商品ラインアップで、ポスター用途で購入されることの多いプリンターのページを何度も見ている方に対して、次回訪問時には、「かんたんポスター作り」というコンテンツで訴求する。

ユーザーの琴線に触れる広告クリエイティブでクリック数が倍に

次に福士氏は、集客施策の1つとして実施しているリスティング広告のクリエイティブ改善について話を進める。広告代理店や宣伝担当者に任せっきりになっていないかと、福士氏はクリエイティブの見直しを勧める。

以前は、「大判プリンター」と検索した人に、総花的なリスティング広告を出していましたが、本当にクリックしてもらえるのか疑問がありました。一例として、先ほどCAD用途の出力があると話しましたが、調査からCAD用途のお客様は「CADプリンター」ではなく、「プロッター」と呼ぶことがわかりました。そうしたお客さまが、大判プリンターと検索してくれるかというと難しい。

実際にユーザー調査から見えてきたシナリオをもとに、「プロッター」を織り込んだクリエイティブを作成すると、リスティング広告のクリック数は倍ほどにまで増えたという。福士氏は、試しにやってみたと話すが、実際のキーワード検索数がどれくらいあるのか、事前にグーグルのキーワードツールを使い、しっかりと分析を行っている。

また、リスティング広告の文言に「お客様の琴線に触れるキーワードがあるかどうかは非常に重要」だと福士氏は話す。ユーザー調査から、用途別に評価される機能を広告クリエイティブに織り交ぜており、「代理店とは、キーワードの掛け合わせも検討し、複数クリエイティブを用意するようにしている」とも説明する。

検索キーワードの掛け合わせに応じて複数クリエイティブを用意しています。また、クリエイティブ別にIDを割り振り、クリエイティブ別の流入数や直帰数、初回訪問ではなく3回目に資料請求したというアトリビューション効果も、ac cruiser(アクティブコアのアクセス解析・広告効果測定ツール)を使い見ている。単純なクリック率というよりは、CVにつながるものを1つずつ検証する。

ここを代理店任せにしていると、本当はCVに貢献している広告なのにクリック率が低いというだけで評価されなくなってしまう。代理店のレポートだけでなく、自分たちできめ細かく対応していく地道な作業が非常に重要です。

BtoBの商材が一度の訪問で買われることはほとんどないため、再訪問してもらうための仕掛けも重要だ。福士氏は、「ターゲット別のリスティング広告、LPOによるコンテンツレコメンドに加えて、Googleのリマーケティング広告が効果的な施策の1つと考えています」と、リマーケティング広告の活用を説明する。具体的は、キヤノンのサイト訪問した後、グーグルの広告ネットワークに接触した顧客に対し、セグメント分けした広告を再配信している。

セグメント分けした人にだけ配信するため、非常に無駄がない。リマーケティングで再集客したお客様には、ランディングページでカタログ請求や資料請求といった次のアクションをしやすくしている。セグメント分けでは、評価のポイントになる項目を拾い出して整理し、CVにつなぐ取り組みをしている。

セグメントごとのランディングページを作るには手間もかかるが、「BtoBではランディングページの最適化をしないと、コンバージョンに結びつけるのは難しいだろう」と福士氏は話す。また、ac cruiserで取得した接触履歴をSalesforceに登録し、営業をアサインしている。訪問のきっかけは何か、どの製品を見ていたのか、再訪問で見ていた事例はなど、コンタクト事例を営業に渡すことで、客先に訪問したときには具体的な商談から入れるという。

これらは営業効果にも数字として現れており、営業からは「Webという名のセールスを実感した」との声もあった。

実際に資料請求や商談申し込み数は格段に上がりました。今までは、電話での資料請求のみ受け付けていたが、資料請求・問い合わせ窓口を設けるだけでなく、購入のモチベーションがあがったタイミングでコンバージョンに至るボタンを表示することによって、申し込みが非常に高まった。受注確度に改善余地はあるものの、商談申し込みから3割~4割ぐらいの受注確率になっている。営業担当者からは、受注スパンが短くなり、営業が楽になったという声をもらっています。

2005年から開始した1つひとつの積み重ねによって、当時は3位だった大判プリンターのシェアは、今では1位になっているそうだ。「私が担当するサイトのうまくいっている例といえますが、他の製品サイトにも展開し始めているところです」と、福士氏は最後に今後の展開を話し、講演を終えた。

まとめ
  • 顧客基点アプローチのサイト設計がマーケティング成果につながる
  • ユーザーシナリオに適した目的別の入り口を用意し、ニーズ充足度を高める
  • ニーズに応じたコンテンツの出し分け、琴線に触れるリスティング広告でシェアNo.1へ
  • Webのコンタクト情報を営業に渡すことで、商談効率を向上

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