若者の7割はPCメールが使えない? ビジネスメール基本のキ
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の356
必須のビジネスツール
との見出しが論壇サイト「BLOGOS」に躍ったのは、年の瀬を間もなく迎えようとする昨年の11月14日のこと。若者の就労支援を行っているNPO法人「育て上げネット」がまとめた『若年無業者白書 ―― その実態と社会経済構造分析』を紹介する記事で、PCメールをできない7割とは、そもそも就職を希望していない層の回答です。
15歳から39歳まで、約2,200人を対象に行ったという同調査のなかで、私がなにより驚いたのは、就職活動の姿勢に温度差※1はあっても、就職を希望する若者のうち45%が「メールを送受信するPCスキルがない」と答えていること。このスキルというのがどの程度のレベルを指すのかにもよりますが、できないと答えること自体、まるで20世紀末のオジサンたちと同水準です。
※1 現在求職活動を行っている「求職型」および、仕事はしたいと思っているが求職活動はしていない「非求職型」の回答
もし本当に使えないのだとすれば、基本的なメール作法も知らないと考えていいでしょう。ですが、ビジネスシーンでは今でもPCメールは現役バリバリ。そこで今回は、新入社員、あるいは新年度よりWeb担当者に任命された新人向けに、ビジネスメールの「基本の基本」を紹介します。
件名は後付け
今の「若者」の多くは、中高生のころには1人1台のガラケーを手にしていました。すると彼らの送信相手は同級生などの友人で、「空メール」と同様、件名を入力せず送信しても無礼にも非礼にもなりません。やりとりの果てに件名が、
RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:
となることは日常でした。携帯メールがコモディティ化したことにより、かしこまって「件名」をつける必然性が喪失したのです。しかし、ビジネスシーンのPCメール(以下、メール)において「件名」は必須です。
ビジネスシーンにおいて、相手が必ずメールを見てくれるというのは妄想です。会社への問い合わせも受信する私のメールボックスには、迷惑メールを含めて毎日4,000通のメールが届いています。そのなかで優先的に「開封」するのは、件名で差出人と用件がわかるメールです。
そこで会社が許せば、所属と差出人わかるようにし、件名に「本題」をいれれば尚良しです。たとえば当社では、
【From Asmode】○月○日の打ち合わせについて
としています。
ビジネスメールの慣用句
ビジネスメールにおいて「(いつも)お世話になっております。」とは、あいさつの慣用句です。実際のお世話の有無は関係ありません。芸能界や水商売のあいさつが、実際の時間を問わず「おはようございます」というようなものです。ただし、面識のない相手に初めて送るメールならば、
初めまして、○○社の××と申します
と名乗りましょう。慣用句にもTPOがあり、会社によってはローカルルールが存在します。慣れないうちは、送信前に上司や先輩に確認してもらうことをオススメしますが、その理由については後ほど。
あいさつの後は、すぐに本題にはいります。本題の前に「つかみネタ」をいれるテクニックもありますが、初心者は基本を守るのが無難です。メールでも普段の人間関係と同様に、段階を踏んで親しくなっていくものですが、まず基本があってこそ。
シグネチャとは名刺
返信を希望する場合「つきましては○月○日までにお返事いただければ幸いです」と希望日時を記載します。タイムリミットを設定することで、先方のスケジュール帳に記載される確率が高まるからです。ただし、数日、最短でも翌日中など、時間的に余裕がある場合に限ります。先方がメールを見逃すこともあるからです。時間がない場合はどうするか、これは次の基本と密接に関係してきます。
メールの最後には「シグネチャ(署名)」を入れます。多くのメーラーには、末尾に定型文をいれる機能があります。それを利用して社名、名前はもちろん、URL、電話番号、FAX番号、住所、つまりは「名刺」に記載されている内容をすべて入れ込みます。
わざわざ連絡先をいれなくても「RE:(返信)」すればよい……とは学生感覚。たとえはじめに名乗っていたとしても、署名に何も書かれていなければ、それは差出人のない手紙と同じ。慣れ親しんだ相手でなければ、不振がられても文句は言えません。
それに緊急時にもっとも役立つコミュニケーションツールは「電話」であり、先方が返信を急ぐ場合、シグネチャの「電話番号」を利用します。もちろん、反対も同じ。つまり、ビジネスシーンにおいて、緊急時の連絡ツールは「電話」です。
画像のやり取りと保存
Web担当者になれば、画像のやり取りをすることも増えますが、メール添付には注意が必要です。画像のデータが大きい場合、プロバイダやサーバーの設定によっては、除外されて相手に届かないからです。また、巨大なデータは相手のパソコン処理速度を低下させる迷惑行為。スマホの「写メ」でも、データが大きくて受け取れない場合があります。
そんなときは「Dropbox」などのファイル共有サービスを利用するのも一手ですし、CD-ROMやUSBメモリによる「実物」で渡すのも確実です。企業によっては、外部サービスの利用や添付ファイルが制限されている場合もあるため、相手先に合わせた方法を事前にうかがうのもビジネスの心得です。
そして最後にもう1つ、メールは可能な限り保存することをすすめています。それは記録や証拠になり、言った言わないの水掛け論を避ける「保険」となります。
メール不要のSNS世代
駆け足となりましたが、ここで紹介したのは「基本の基本」です。他にも、CCとBCCの使い分け、HTMLとプレーンテキストの違いなど、わからないことは上司や先輩に自ら進みでて教えを請います。
ビジネスシーンで「教えてくれない」は当たり前。みな自分の仕事を抱えているからです。それでも頭を下げてまで教えを請うメリットは、上司や先輩を「共犯者」にできることです。先輩や上司に確認作業を依頼するのもこれが理由。指導に従ったという事実は、自分を守ってくれる盾となります。
私も含めた「オジサン」には、PCメールを使えないことが奇異に映るかもしれません。しかし彼らは、Twitter、Facebook、LINEなどのSNSの普及によって、メールを利用する必然性がない環境で育ってきたのです。メールの1つも設定できない、あるいは送れないのは、学生気分が抜けないからだと私は言いません。それは社会人になった平成元年当時、電話の応対、名刺の渡し方まで教わる姿を「新人類」とオジサンたちに冷笑された記憶によります。
いつの時代も、新人はイチから仕事を学ぶモノであり、そこに現代で必須のビジネスツールである「PCメール」が加わったということ。これは「オジサン」へのアドバイスです。
今回のポイント
ビジネスメールには慣用句がある
上司や先輩に確認を取ることで「共犯」に
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