CMSはただ導入しても意味はない! CMSツール6分類と、実現したいこと別に考える最適CMSの心得
CMSツールを機能や性能だけで検討するWeb担当者と業者に喝!
ユーザーにどんなサービスを提供するために導入するのかが明確でなければ、CMSツールは無用の長物。
「どのCMSが最適ですか?」とWeb担当者は気軽に言うけれど
市場には、さまざまな特徴や機能を持ったCMSツールがあふれている。そのため、CMSツールの選定は、プロにとっても難しい課題になりつつある。
それは、すべてのCMSツールを使用したことがある人はおらず、さらにCMSツールごとに、機能だけではなく用途そのものにも違いがあるためだ。
つまり、どのCMSツールが最適かどうかは、ユーザーであるあなた自身にしか判断できないということだ。
今回は、7月30日に開催されるイベント「第3回 CMSカンファレンス」との連動企画として、CMSツールの選び方を解説する。この連載でもCMSツールを何度か取り上げてきたが、それらを整理した内容になっている。
3回目になるCMSカンファレンスでは、代表的な4製品を一度に比較できるので、CMSツールの選定のためのヒントが得られるセミナーだと自負している。ぜひ、ご参加いただきたい。
※この記事の最後にイベントの詳細情報があります
心得その壱
CMSとは概念であると理解すべし
まず、CMSとは、お客さまにより良いサービスを提供するための必須ツールであるとともに、概念でもあるととらえることが重要だ。
単に「コンテンツを更新するため」だけに導入するのでは、CMSがもたらす価値を十分に活かしきれない。
たとえば「One to Oneのサービスを成し得るために」とか「『いつでも、誰でも、どこででも』を成し得るコンテンツ管理を実現するために」など、マルチデバイス時代にこそ必要になる考え方がある。CMSとは、これらを実現するための基本的な考え方であり、具体化するためのベースとなるツールなのだ。
だからCMSツールをどんなに入念に選んでも、この概念に基づいて設計されていなければ、さらにお客さまにどんなサービスを提供するのかを検討していなければ、意味はないし、有効に機能するわけもない。
CMSは、コンテンツをユーザーニーズに最適化するための概念であり、Webサイト構築の根底を担うものだと確信している。
だから、この概念は、CMSを導入しなくても実践可能だ。
心得その弐
ツール選びは「お客さまへのサービスレベル向上」の思いから始まる
CMSツールの導入を検討する場合、そのほとんどは、お客さまと関係ない理由から始まるといっても過言ではないだろう。たとえば、
- 運用や更新の問題
- 商品やサービスの管理の問題
- 承認フローの問題
などだ。
CMSツールの選定作業が、往々にして機能のリストアップから始まるのは、そのためだ。
しかし、そのような場合の「やりたいこと」は、Webサイトそのものの改善ではなく、社内の問題を解決することを最優先にしてしまっている。
もちろん、社内の問題を解決することは、結果としてお客さまの利便やメリットにつながることも多い。しかし、強く意識してそれを行おうとしなければ、なかなか有効な成果にはならない。
自社の問題解決のためだけにCMSツールの選定が行われ、そのツールでどんなサービスを提供するのかという議論がないと、導入してもWebサイトそのもののサービスレベルはまったく変わらないままだ。
この状況は、家族構成がわからないまま家を選んだり、社員数がわからないのに事務所を借りたりするようなもので、まさに本末転倒もいいところである。
しかし、Webサイトでどんなサービスをするかまったく決まっていないのに、CMSツールを選択する人がいる。これは事実であり、これこそがCMSがビジネスシーンで有効に活用されていない最大の要因なのだ。
「こんなことがしたい!」「あんなことがしたい!」という強い目的意識と、成功への執念があれば、最適なCMSツールを選択することはそれほど難しくはない。さらに、「やるべきこと」と「やりたいこと」が明確なら、最高のコストパフォーマンスを出せるCMSツールを探し出せる。
CMSツールを有効活用したいのならば、まず何をやりたいのかを明確にすることだ。
更新や運用を楽にするだけなら、WordPressやMovable Typeといった更新ツールで十分目的を達成できるかもしれない。
CMSツールがビジネスで有効に機能するのは、お客さまへのサービスレベルの向上を目指した場合だ。もしあなたが、ユーザーへのサービスレベルを向上させたいと思っているのならば、CMSツールがその望みをかなえてくれる可能性は大いにある。
心得その参
ツールの種類とそれぞれが「できること」「得意なこと」を理解すべし
CMSツール選びで最初に判断すべきことは、導入の目的が「更新ツール」としてなのか、「お客さまへのサービス向上のための施策」としてなのかだ。この切り口で、CMSツールを6つに分類すると次のようになる。
- 更新ツールとして設計されているCMSツール
ページ配信スピードが遅く、ほとんどの場合、デフォルトでは承認フローが存在しないものが多い。また、管理者は数人程度を想定していて、同時アクセスのパフォーマンスなどが考慮されていないものも多い。
- 更新ツールだが企業利用が想定されているCMSツール
更新ツールに、承認フローなどの企業ユーザーに必要な要素を付加したもの。Aのツールをもとに、カスタマイズやアドオン追加などによって対応することもできる。
- 一対多の更新が可能なCMSツール
コンテンツとページが一対一で対応するのではなく、登録したコンテンツをサイト内のさまざまな場所でさまざまな形で表示できるもの。
コンテンツの一元管理が前提で、テンプレートなどの管理も可能。企業ユーザーのニーズにも対応している。一部であれば、動的配信もできるものが存在する。
- (ほぼ)常に同じコンテンツを動的に配信するCMSツール
単に表示スピードが遅くなるだけで、何のメリットもない。フリーの更新ツールより、承認や配信面で少しばかりアドバンテージがあるのみ。
- バナーやランディングページなど特定パーツのみお客さまごとに出し分けられるCMSツール
簡単な出し分けは可能だが、現実的なお客さまへのサービスの向上と考えると、はなはだ心もとない。ただし、このクラスのツールは、設計、制作の仕方によっては、お客さまごとにコンテンツを最適化することもできる。ただしその場合は、制作費がツールのライセンス料より高額になるだろう。
- すべての情報をID管理してデータを保持するCMSツール
設計や制作の敷居はとても高いが、お客さまへの最適化を目指すためには、最適なツールであることは言うまでもない。本格的な商品管理ツールとしても有効に機能する。
さらに、この分類をもとに目的に対しておすすめのCMSツールのタイプを挙げると、次のようになる。
- とにかく自社の情報を好き勝手に出したい!
→ A 「更新ツールとして設計されているCMSツール」あたかもカタログの会社案内のようなWebサイトを作りたいのなら、Aの「更新ツールとして設計されているCMSツール」がおすすめだ。オープンソースのツールも多く存在するので、ライセンス料は無償のものが大半。
動作確認やセキュリティを問わなければ、さまざまな機能追加のアドオンなども豊富に存在する。また、制作会社に知見がある場合が多く、制作費をおさえて構築できる。
とにかくWebサイトを立ち上げたいというニーズに沿って、「早い」「安い」を完璧に実現できる。ただし、運用更新がページ単位なので、大規模Webサイトや複数ページにわたって同じコンテンツの修正が必要になる場合は、覚悟が必要だ。
- 情報を出したいだけだが、承認フローは必要な企業サイト
→ B 「更新ツールだが企業利用が想定されているCMSツール」おすすめは、Bの「更新ツールだが企業利用が想定されているCMSツール」だ。「安い」「早い」に加えて、企業サイトで最低限度必要な承認フローも実現できる。ただし、Aと同様の問題は発生する。
- 一元管理しなければならないほどの情報量があるか、Webサイトのページ数が1000ページ以上ある
→ C 「一対多の更新が可能なCMSツール」おすすめはCの「一対多の更新が可能なCMSツール」だ。このクラスのツールになると、CMSツール本来の役割であるデータの一元管理ができるものや、静的ながら必要に応じて動的配信できるものも存在する。
会社案内などで出し分けがほとんどなく、商品やサービス側でデータ量が多い場合には最適だ。
- お客さまへのサービスレベルを上げたい!
→ E 「バナーやランディングページなど特定パーツのみお客さまごとに出し分けられるCMSツール」お客さまへのサービスレベルを上げたいなら、最低でもEの「バナーやランディングページなど特定パーツのみお客さまごとに出し分けられるCMSツール」以上のクラスが必要だ。
このクラスのCMSがあれば、お客さまへのサービスでも社内の制作管理でも、ともに十分な対応が可能になる。さらに、それぞれのツールでお客さまへのサービスを向上したCMSツール導入の事例を持っている制作会社に発注することもお忘れなく。どんなにツールが良くても、設計と制作がだめだとAよりひどい結末が待っている。
- One to Oneマーケティングをしたい!
→ F 「すべての情報をID管理してデータを保持するCMSツール」One to OneマーケティングのためのツールとしてCMSをとらえるならば、理想的なのはFの「すべての情報をID管理してデータを保持するCMSツール」がおすすめだ。
このクラスなら、コンテンツの一元管理は言うに及ばず、PIM(製品情報管理)としても社内イントラとしても実用レベルで対応できるはずだ。Webサイト専用のCMSとはまったく次元の違うものだと理解してほしい。だからこそ、設計制作における負担が重いのもこのツールの特徴になる。さらに、制作コストも「それなり」にかかる。
ちなみに、Dの「(ほぼ)常に同じコンテンツを動的に配信するCMSツール」は、誰にもおすすめできない。おそらくこれを選択する人は、将来に期待を抱いて「いつかはOne to Oneを!」と想定して動的ツールにするのだろう。
しかし、このクラスの動的ツールでは、やりたいことは(ほぼ)できない。まず静的配信のCMSツールか、きちんと整理したコンポーネントを基本にしたテンプレートで普通にWebサイトを制作しておくほうが、EやFのツールを導入する段階になったときにメリットがある。
心得その四
ツールの良し悪しを機能比較表だけで判断するべからず
CMSツールに関して、毎回聞かれるのはコストの質問だ。
フリーのツールから、ライセンスのみで億単位になるツールまで存在する。
そもそも、これらをひとくくりに「CMSツール」と呼んでいる現状に違和感がある。
とは言え、呼び方はツールベンダーの自由なのでどうしようもない。利用者が、それぞれのツールを見極めるしかないのだ。
車であれば、スポーツカーとトラックの違いがわからない人はいないだろう。CMSツールにおいても、そのレベルの見極めができるようになる必要がある。
さらに高額なCMSツールには、一見機能として備わっていないようでも、そもそも何でも一から設計して独自に機能を追加できるように作られている製品が多い。それを考慮せず、単純に機能比較表(機能の有無を○×で示したあの表だ)を作ると、高額なツールのほうが見劣りすることになる。
「最低限の機能はひととおりそろっているので、そのまま利用してください」
なのか、
「何でも好きなように作ってください。そのための土台は用意しています」
なのか。
この違いが理解できていないと、機能比較表で「○」が多いツールを選んだはずなのに「やりたいことがまったくできない!」という結果になってしまう。
どんなツールにせよ、お客さまへのサービス向上のために導入するのであれば、設計や制作の工程は必須だ。この工程がなければ、どんなに高機能なCMSツールを導入しても、真価を発揮することはない。
CMSツールを導入するだけで、すべてを解決できるかのような幻想は捨てなければない。
お客さまへのサービス向上を実現するために最適なCMSツールを選定し、それを自社の企画したサービスに適用するように設計、制作する。
これがなければ、CMSツールは有効に機能しないのだ。
【7月30日(木)開催】キノトロープ主催 第3回 CMSカンファレンス
ビジネス成果を上げる!CMSの有効活用法
~商用CMS 主要4製品を有効に機能させるために~
Webサイトの管理・運営の業務効率向上やマーケティングなど企業のビジネス戦略に必須のツールとなっているCMS。しかし、その特性や概念を正しく理解しておかなければCMSを有効に活用することはできません。
そこで、20年に渡るCMS構築実績を持つキノトロープと商用CMSで主要な4製品の各ベンダーが集結し、CMSを有効に機能させるために押さえておくべきポイントや各製品の機能や特徴、活用方法について、お伝えします。
開催概要
- イベント名称: 第3回 CMSカンファレンス
ビジネス成果を上げる!CMSの有効活用法
~商用CMS 主要4製品を有効に機能させるために~ - 日時: 2015年7月30日(木) 14:00~17:30 (13:30 開場)
- 場所: ソラシティ カンファレンスセンター 2F Sola City Hall 【WEST】
東京都千代田区 神田駿河台4-6 御茶ノ水ソラシティ 2F - 定員: 200名
- 参加費: 無料(事前登録制)
- 主催: 株式会社キノトロープ
- 共催: 日本オラクル株式会社/株式会社ジゾン/株式会社のれん/株式会社ミックスネットワーク
ソーシャルもやってます!