編集長交代! 四谷さんはWeb担をどう変えていきたいの?(新旧編集長スイッチインタビュー・後編)
Web担当者Forumは、サイト立ち上げから丸12年の2018年7月24日、初めて編集長が交代する。
現編集長の安田英久は、12年間、何を考えてきたのか。
新編集長の四谷志穂は、これからWeb担をどう変えていくのか?
前編と後編で、聞き手と語り手をスイッチしながら、Web担の過去・現在・未来について語り合う、新旧編集長のクロスインタビュー。今回は後編。
現編集長の安田が、新編集長の四谷に訊く。
前編を読む
前職は物流会社のWeb担当者だった
安田: 先週公開した前編に引き続いての対談です。今度は現編集長の私・安田が聞き手になって、新編集長の四谷さんにいろいろ聞いていきます。
四谷: お手柔らかにお願いしますよ(汗)。
安田: 読者のみなさんは、「四谷さんってどういう人なの?」って知りたいんじゃないかと思うのね。なので、いろいろ経歴的なことから聞いていきます。四谷さんって、インプレスに来る前に編集の経験ってあったの?
四谷: 全然ありません。
安田: 前職は物流会社で、Web担当者をやってたんだよね。
四谷: そうです。新卒で物流、というか倉庫会社に入って、ずっとそこに勤めていました。営業と兼務でWeb担当者もやっていたんです。
学生時代からずっとダンサー
安田: 学生の頃からWebとか出版メディアとかに興味があったの?
四谷: 全然ないです。大学のときは、ダンスしかしてなかったし(笑)。ダンス歴は結構長くて、3歳から小学6年生まではモダンダンス、大学生のときはヒップホップとパンキングをやっていて、ダンスチームを組んだり、ダンスイベントを主催したりしていました。
安田: あのー、Webとの接点が出てこないんですが(汗)。
四谷: いや、あると言えばあるんですよ。大学は数学科なんですが、4年生のときにWebのゼミに行きたくて。でもそのゼミは物理学科の一般教養の先生のゼミだったので、数学科だと卒業の単位として認められなかったんです。
安田: えー、初耳。なんだ、やっぱりWebに興味はあったんだ。ゼミに入りたいって、かなり興味津々じゃん。
四谷: そういえば、学部の講義にもWebに関するものがあったので取っていましたね。振り返ると、確かにWebにはそれなりに興味があったのかも。でも希望のゼミにいけないってわかってから、なんかどうでもいいやと思って、謎の公務員試験対策をするゼミに入りました(笑)。一応、学校の名誉のために言っておくと、学問としての数学を極めるゼミ以外にも、C言語やPerl、VBAとか学べるゼミはありましたよ。でも興味がなくてねぇ……。
安田: なんだそれ(笑)。
四谷: もう大学最後の1年は、バイトとダンスばっかり。
安田: ダンサーだったのね……。
四谷: そうなんです。就職も、ダンスを続けたかったから、ほどほどに働けるところを選んだっていう……。先々のことなんか何も考えてませんでしたね。
理系でしょ! Web担当者やって!
安田: 出版社に来る人って、何か1つのことに夢中になっちゃうってタイプが多いよね。で、最初の会社でWebに携わるようになったわけだけど、そのきっかけは?
四谷: まさしく、あれですよ。「理系でしょ? Webできるでしょ? やって!」というパターン。入社2年目のときに言われたので、たぶん12~13年ほど前。
安田: なんだWeb歴長いじゃん。
四谷: そうでもないですけど。XOOPS(ズープス)って知ってます?
安田: うん、知ってる。
四谷: その会社では当時、XOOPSでホームページと社員用のコミュニティページを作っていたんですが、担当者が辞めてしまったんです。手がつけられないからどうにかして、と言われたうえに、関連会社やお客様たちが集まる会があるから、新しくそのWebサイトも作ってくれと言われて。「えっ!?」って感じでしょう。その流れで会社のWebリニューアルのプロジェクトメンバーに選ばれまして、それからずっとWeb担当者ということに。
安田: 流れでWeb担当者に就任。
一番役に立ったのがWeb担だった
四谷: 自分の意志はなかったですね。そのプロジェクトは、外部のITコーディネーターの他に、社内から各事業部1人ずつと私というメンバーで1年がかりで行ったものでした。これはこれで大変でしたが、問題はこの後。会社のWebリニューアルの目的は、新卒採用や新規リード獲得ですから、つまり、日々の運用が重要になってきますが、当然ながら、外部のWeb制作会社やITコーディネーターはWebを作ったら終わりで、運用に関する情報はまったくくれないわけです。1人残された私は、本当にWebの知識がなかったので、まず「検索エンジンって何?」から勉強です。
安田: そこからか……。たった1人で、大変だったね。
四谷: にも関わらず、社内では「Webに詳しいのは四谷」といったありがた迷惑なポジションが確立されちゃって、頻繁に社内からの問い合わせがやってくる。聞いてくる人はみんな先輩ですから、「ググれよ!」とは言えないわけで、こっそり検索したり、本を読んだり。そのときに一番役立つ情報を乗せてくれていたのが、Web担当者Forum(Web担)でした。
安田: ありがとうございます(笑)。助けになっていたのかしら。
四谷: なりましたよ! ただ、最初の頃は、とにかく難しくて……。Web担を読むために、別の本で勉強しました。そのうち、Web担の記事を一読するだけで理解できるようになると、「お、私、やるな!」とモチベーションが上がって、ますます知識を得るのが快感になっていく。その繰り返しで課題を解決していくうちに、徐々にWeb周りの知識が溜まっていったという感じでしたね。
安田: あ、それ、なんかうれしい……。そうやって仕事に活かしてほしくて、Web担を作ったからねぇ。そういえば、セミナーもよく来ていたよね。
四谷: だんだん、Webや本だけでは飽き足らなくなってきて、セミナーもよく行きましたね。Web担だけでなく、日経とか、ベンダー主催のセミナーを見つけ次第行っていました。
Web編集者にへ転職しようと考えたきっかけは?
安田: 話を聞いていると、とにかく四谷さんって、真面目で仕事熱心なのねという感想しか出てこないのですが、なぜ転職しようと思ったんですか?
四谷: うーん、何と言いますか、7年ほど同じ会社でWeb担当者をやり続けてきて、今の環境で、1人でやれることは全部やってしまったな、と言う気持ちになってしまって。ただ、もっとWebを知りたいという野望もあって、それで当初は制作会社やコンサルへの転職を考えていたんですが、いろいろあってこちらに来ることになりました。
安田: 僕自身は、Web編集者としての経歴はまぁ長いんですが、Web担当者の経験はまったくない。四谷さんはその逆で、そこが本当に魅力だし、その経験が読者にとっても価値になるはずだと思いましたね。ところで、ゼロから編集者をやってみてどうでした?
四谷: 文章を書くということがあんなに難しいなんて(笑)。前職では、会社のWebサイトでコンテンツづくりもやっていて、案外似たようなこともしていたのに。
安田: 文章力はあるに越したことはないけど、編集のメインの仕事は書くことじゃない。考えることが仕事。そういう意味では、今のWeb担って、数学科出身(四谷)に編集をさせて、文学部出身(安田)がコードを書いているというおかしな状況だよね。
四谷: そう言えばそうですね(笑)。
入社して2年で産休に
安田: ところで、Web担で3年現場をやった後に、1年2か月産休と育休を取って、復帰して約1年になるわけですが、産休を取るタイミングについては何か考えた?
四谷: 30歳での転職ですからね。年齢的なものもあるし、入社して2年で産休を取ってやるって思ってました。逆に言えば、2年の間で、何かしらの形になるように仕事をしなきゃいけないと思ってがむしゃらに仕事してました。だって、仕事を優先するあまり、家庭が後回しっておかしな話でしょ。
安田: いや、それでいいのよ。
四谷: 復帰後も、フルタイムで戻っているので以前に比べて圧倒的に時間が足りないです。でも、後ろ指さされてクスクス笑われるような仕事はしない、という意識でやっています……が、原稿が遅かったり、返事が遅かったりしていろんな方にご迷惑をおかけしていると思います。
安田: いい心がけなんだけど、私の考えとしては、子育てはあなたにしかできないことなので、やはりそっちを優先させてほしい。とはいえ、仕事はお手軽でいいってことじゃなくて、仕事って、この人にしかできないというものもあるんだけど、反面、誰がやっても問題ないというのもある。そこをうまく振り分けて働いてほしいし、我々もそれを意識して働くべきだと思っているの。やれること、やれないこと、やらなきゃいけないこと、やらなくてもいいことにうまく優先順位を付けて、それぞれで補い合える組織でありたいとは思います。
四谷: 産休、育休を取る人だけにじゃなくて、誰に対してもそのスタンスで仕事を回していける組織にしたいですよね。
安田: それで復帰して1年経ったら、編集長をやってくれという話が来て。率直な思いは?
四谷: うわー、面倒くさいの来たーって。いまだに、天変地異が起こらないかなと心のどこかで期待していたりして。
安田: そこまで言うか(笑)。
四谷: もちろん、だって「Web担といえば安田さん」じゃないですか。読者さんだって、筆者さんだって、クライアントさんだって、社内ですらそう思っている。そのぐらいデッカイ存在なのにその後をやるって相当なプレッシャーですよ。わかります? とはいえ、引き受けたからには、私なりに皆さんに協力してもらいながらやっていきます。と言いつつ、不安と野望が行ったり来たり(笑)。
新編集長が考えるWeb担の課題は?
安田: 前編ではWeb担の来歴とか、私がどういうことを考えてWeb担を作ってきたか、といったことをお話ししたんですが、逆に、四谷さんから見た今のWeb担の課題って何?
四谷: そうですね。まずは、読者が見えないこと、ですね。私たちは誰に向かって情報発信しているのかということが、ちょっと見えづらい状態だなと感じています。
安田: なるほど。
四谷: もう1つは、社内でWeb担に関わる人たちとのコミュニケーション不足かな。営業、企画編集などは、普段から接する機会も多いので今のところ問題ないですが、それ以外の社内の人とも話をする機会を作りたいです。
安田: 企画編集、営業以外でWeb担に関係する組織というと、マーケティング、技術あたりかな。ほかには?
四谷: あと、書籍チームとか。せっかくインプレスっていう、コンピュータやデジタル関連の専門出版社なので、他部署の知見を引っ張り出してうまいこと化学反応させていきたいですかね。良いコンテンツや部署にとって当たり前な情報を積極的に共有していきたいです。
安田: 僕のほうが社歴は長いけど、社内コミュニケーションは四谷さんのほうが100倍うまいから、そこは全然心配してない。社外とのやり取りもどんどんやったらええねん。
四谷: そうですね。失礼のない範囲で皆さんとフランクにやり取りしていきたいです。
安田: インプレスの社内もいろいろ変わっているんで、やりたいことをどんどん口に出していくといいと思うよ。特にWeb担は、長い間ずっと「いつも通り」の手順でやってきたことが多いので、これを機会に、仕事の仕方とか、目標とするビジョンの共有など、改めて擦り合わせてほしいなと思います。
四谷: 読者が見えないという課題に対しては、年1回のペースで、Web担をよく知ってくれている人を集めて、もちろん編集者も交えて、グループディスカッションというか、ヒアリング調査のようなことをやりたいですね。普段どのように情報をキャッチアップしているのかとか、日々どういう生活をしているのかとか。
安田: 以前、少しだけやりかけたよね。
四谷: はい。ただ、Web担というサイトをどう変えるかといった大掛かりな目的ではなく、単純に、読者を知るためにやりたいです。いろいろ考えていることはあるけれど、今は、読者に話を聞いて、社内外の人たちとコミュニケーションするなかで、しっかり固めていきたいので、まだ内緒。どうぞ楽しみにしてください。
安田: 楽しみにしてるよ。では、最後に、Web担をどういうメディアにしていきたいですか? 今の思いをぜひ。
四谷: 安田さんは前編で「現場で働くWeb担当者の役に立ちたい」と言っていましたが、私もまさにそれが一番のテーマなのは変わりません。ただ、Web担当者に必要な技術だけを身に付けられればそれで良しというだけではなく、あいつの話は信頼できるとか、あいつはプレゼンがうまいとか、キャリアアップするための助けになる情報も紹介していきたいと思っています。「Web担を読めば、社内での評価が上がる」と思ってもらえるようなメディアにしていきたいです。
[終わり]
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