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『Webコンサルは眠らない #1 駆け出しWeb担当ひかりのPDCA相談 』
Lesson 2
英会話スクールに入社し、自社Webサイトの改善を任せられたひかり。Webコンサルタントである真須の力を借りてKPIを因数分解し、分析を行ったひかりは、Webサイトの課題が「フォームの完了率」にあると断言。改善策を講じ、英会話スクールの各Web担当者が集まる会議に参加したひかりだったが、Web担当部署を束ねるリーダーの二階堂から横やりが入った。
登場人物
桐嶋ひかり(23)
大手英会話スクールに新卒入社し、Web担当部署に配属された新米Web担当。Webマーケティング戦略で資料請求や入学者数を増加させることがミッション。バイタリティーが旺盛で、逆境にめげず目標を成し遂げようとする負けず嫌いなタイプ。時おり周囲を顧みずに発言するクセがあり、自分自身で困難な状況を作りがちな一面も。
真須翔平(27)
IMJのWebコンサルタント。あらゆる業界・業種のWeb制作や運用、プロモーションなどに携わり、Webを中心に、事業拡大へ貢献してきた。趣味はお酒全般。行きつけのバーで1人お酒を飲むのが日課。ひかりが憧れる大学時代の先輩でもある。
二階堂正(32)
元営業部課長。英会話スクールのWebマーケティング強化のために抜擢され、ひかりが所属するWeb担当部署のリーダーに就任。曲がったことが嫌いで正しいと思ったことをとことん貫く猪突猛進タイプ。趣味はラグビー。
なんでフォームの完了率が「低い」って言えるんだ?
フォーム完了率は高い?低い? 見極めるポイント
で、今日の会議はどうだった?
はい。フォームの改善を提案したんですけど、上司から「なんでフォームの完了率が低いって言えるんだ」って言われて、全然話を聞いてもらえなかったんです。それよりもトップページのビジュアルを変えた方がいいって言われてしまって……。
なるほどな。資料請求数や体験入学数、つまり、コンバージョンに直結するフォームから改善しようとしたのはいいと思うよ。問題はその担当者とひかりの間で「低い」の認識が違うのかもな。
「低い」の認識!?
自社サイトばかり見てると、数値が低いのか、高いのかわからなくなるってことがあるんだ。ちなみに今フォームの完了率はどれくらい?
えーっと……5%くらいですね。
え?5%!?だいぶ低いな。お前がいるスクールって、確かキッズ部門のサイトも持っていたと思うけど、そっちのフォーム完了率は?
KPI分析レポートによると……同じくらいですね……。
あっ!!
そう! その担当者は5%が低いのか、高いのか判断できていないかもしれない。だからその数値が低いってことを理解してもらう必要があるんだ。
でも、どうやったらわかってもらえるんでしょうか?(あの上司、頑固そうで……。)
改善が必要かどうか、つまりフォーム完了率が低いのか、高いのかをジャッジするポイントはいくつかあるんだ。
【フォーム間比較】
資料請求や体験入学など、Webサイト内の同様のフォーム間で数値を比較し判断する。
【前年比較】
前年、前々年の同月のフォーム完了率と比較する。
そっか、比べる対象があると、その数値が問題ないのか、それとも改善したほうがいいのかすぐにわかるんだ。
そうだね。だけど、比較する妥当なデータがない場合も多いんだ。そういう場合、俺らみたいなWebコンサルタントに相談するという手もあるよ(笑)。
Webコンサルタントなら、複数の企業のデータを見られる場合が多いから、フォームの完了率ぐらいだったら、高いか低いか、ジャッジできるんじゃないかな?
なるほど、そういうこともあるんですね。ちなみに今回の場合だと、フォーム完了率はどれくらいあればいいんですか?
業界によっても異なるし、資料請求や体験入学といったコンバージョンによっても異なるけど、俺の経験から言って、5%は低いと思う。20~30%ぐらいのサイトが多い気がする。
えっ! 20%!! それは大変……。
Webサイト改善はコンバージョン直前から攻める
うちの英会話スクールのフォーム完了率は低いんですね。でもなんでここまで低いんですかね?
物は試し。実際にやってみたほうが早い。ひかり、実際に資料請求フォームに入力してみて。
お任せください! タイピング(だけ)は自信ありますよ。まずは名前を入れて、次に住所と電話番号……っと。はい、できました!
入力が終わったら「完了」をクリックしてみて。
あれ? おかしいな……。住所と電話番号に「エラー」が出ました。間違えていないはずですけど……。
入力した内容を見て何か気づくことはない?
あっ!!住所の「-」(ハイフン)と電話番号の数字が半角になってたのがエラーの原因みたいです。このフォーム、全角で入力しないとエラーになっちゃうみたい……。これはもっと説明を分かりやすくしたほうがいいですね。
そうそう。入力内容が分かりづらかったり、必須の入力項目が多すぎたりするだけで、ユーザーはストレスを感じてしまい、途中離脱の原因になってしまうんだ。完了率が下がる代表的な項目は、住所や電話番号、他には家族の情報とかもあるよ。
家族の情報? あ、確かキッズ部門のサイトでは家族構成で兄弟がいる場合に、その名前や年齢も入力が必須になっていました……。
企業側にとっては、兄弟の個人情報があると営業機会が増えるからな。でも、資料請求や体験入学を申し込む本人にとっては、入力が面倒だし、不審から、離脱する要因になる。 あと、この入力フォーム、すごく気になるとこがあるな……。
「データ」だけでは気づけない精度の高い改善施策を
え?どこですか?
「入学希望コース」の選択が必須になっているだろ? マンツーマンか、集団授業か、インターネットレッスンか……。さらに、初心者向けコースか、ビジネス向けコースかというのも選ばなくちゃいけない。
これがフォームの完了率を下げてる要因になってるんじゃないか?
えええ!? どういうことです?
今から資料請求しようとしているユーザーが、「入学希望コース」を答えるのは意外と難しい。まだ、どんな英会話スクールがあるのかを探している段階、つまり、スクールに入学するかどうかを検討している段階だからね。
そうか!コースごとの詳しい内容を知りたくて、スクールの資料を請求する人って多そうですもんね。
そうだね。そういった心理状況にあるユーザーに入学希望コースを尋ねると、「資料請求したいだけなのに入学希望コースを答える必要があるのか、まだ決まってないのに……。」って離脱する。意外とこういうところを見落としているサイトは多いよ。 もしかしたら、ユーザーが選んだ希望コースに応じて、送付資料を変えているのかもしれないけど。
たしかに……。(よくよく考えたら、資料請求したユーザーに対するオペレーションって気にしたことなかった……恥)
まぁとにかく、この「入学希望コース」の選択を必須じゃなくすることで、完了率を上げられるかもしれないよ。
おぉっ!先輩、さすがですっ!
入力フォームはよく「買い物」に例えられるんだ。ひかり、服を買いにいって、店員の接客が不親切だったり、試着するためにすごく待たされたりしたら、どうする?
私だったら、買わずに帰りますね!(待たされるのが嫌いな性格)
Webサイトのフォームもそれと同じで、資料請求や体験入学したいと思ってサイトまで来ているのに、入力フォームがわかりにくかったり、使いにくかったりすればそれだけで離脱するだろ?
じゃあ、入力フォームをわかりやすく、使いやすくすればフォームの完了率は上がるってことですよね!
手間を軽減し、利便性を上げることがフォーム改善のポイント。入力箇所を少なくしたり、必須と任意項目をわかりやすくすることが大切。ひかりがつまずいたように、「-」や数字の全角・半角についてもどちらでも入力できるよう改善した方がいい。
はい!
他にも、「エラーになったときの説明」なんかも重要だよ。例えば、「郵便番号は半角数字、ハイフン無しで入力してください。」みたいに、ちゃんとユーザーが「どの項目をどう間違えて、エラーになったのか、どうすればエラーにならないのか」がわかるような説明にしなければいけない。
今日、一番伝えたいことはね。改善施策を考えるときには、「ユーザー視点での定性分析が欠かせない」ってことなんだ。
てーせーぶんせき??
「具体的な数量や数値で表せない分析」のことなんだけど……。
Webの現場で「定性分析」って言葉が使われる場合、「サイトの見た目や操作感などから、課題抽出や改善施策を導き出すアプローチ」のことを指す場合が多い。実際のユーザーにインタビューしたりするのも、定性分析のひとつだね。
データを見て改善ポイントがわかっても、それだけでは、具体的な改善施策はなかなか出てこない。今回の例で言うと、「実際にユーザーの気持ちになって、資料請求フォームを入力してみる」ってことはすごく重要。これによって精度の高い改善施策に辿りつくことができるんだ。フォームを定性分析をする際に見ておきたいポイントは、ざっとこんなところかな。
【入力項目の数は多すぎないか?】
入力項目が多いと、ユーザーに大きなストレスを感じさせる。名前や住所、電話番号など、必要最低限に絞ることが大切。
【必須項目の表示はわかりやすいか?】
必須項目は「必須」と明確に表示しないと、入力漏れの原因に。必須のマークをつけたり、入力枠の色を変えるなどの配慮が必要。
【間違えやすい「-」や数字の全角・半角入力への配慮ができているか?】
電話番号や住所で「-」を入れるか、数字は全角か半角かなど、入力形式が決まっている場合は例を出すのがいい。また、半角・全角とも受け付ける設定にするにはシステム側との調整が必要。
【ユーザーが答えにくい項目はないか?】
例えば、スクールへの入学を検討し、資料請求しようとしているユーザーに対して、むやみに「入学希望コース」を尋ねるのは危険。答えるのが難しいと感じた場合には、離脱につながる可能性も。
先輩のおかげで、やっぱり入力フォームの改善が重要だってことがわかりました。早速明日の会議でフォーム完了率を上げるための施策を提案したいと思います!うーん。がんばります!(上司をぎゃふんと言わせてみせる!)
翌日の会議……
資料請求フォームに問題ありです!
ユーザーがわかりやすく、使いやすいフォームにし、完了率を改善しましょう!
わ、わかった……。確かにおまえが言うようにフォームを改善したほうが良さそうだ。
やっとわかってくれましたね……。では早速改善にかかりましょう!
いや、、改善したくてもできない理由がある……。
このパンフレットを読んでみろ。
ど、どうしてできないんですか!?
これは資料請求後に届くパンフレットですよね。
あっ……。
ようやくフォーム改善の一歩を踏み出したひかり。納得したはずの二階堂が差し出したのは、英会話スクールのパンフレットだった。次号、ひかりに新たな試練が降りかかる。
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