私たちが注目した展示はこちら 〜大企業から大学、スタートアップまで日本勢の勢い〜
例年参加している方からは「今年は参加者もブースも今までとは少し違う」という発言も出るほど、今や過去のアングラなイメージとは違い大企業ブースがひしめくSXSW。例年日本ブースは注目の的で、今年もとても目立っていました。
異彩を放っていた“The New Japan Islands”
これは、今年もっとも注目を集めたといっても過言ではないのでしょうか。コンベンションセンターから離れた場所に、メディアアーティストの落合陽一氏がプロデュースしたこの日本館は存在し、異彩を放っていました。SXSW 2019 Creative Experience “Arrow” Awards で「Best Immersive Experience」にも選ばれたとのこと。展示している各企業が個別に主張するのではなく、あくまで“The New Japan Islands”として独特な世界観で作り上げられていたことが受賞の理由ではないかと思います。
ちなみに、この日本館のオープンに合わせて、なんと遮光器土偶(……!)がオースティンの街を練り歩いていたのをご存知でしょうか?
無料で配布されていた和柄のタトゥースリーブ。着用するとこんな感じです。
昼の12時過ぎのオースティンを練り歩く土偶。とてもシュール(笑)。街行く人が立ち止まり、思わず写真をとる姿が多数見られました。告知を狙って……とは思うのですが、昼の12時……意外と人がいなかった。
クールで安定のSONY「WOW Studio」
毎年必ず話題に挙がるSONYのハウス。もちろん筆者も行ってきました。今年のテーマは「テクノロジー×クリエイティブ」。テクノロジーは人間の想像力を拡張するのだろうか?という課題についてセッションや展示を通して取り組んでいました。
ジミヘンのクリエイティブがかっこいい。
なんとaiboが「操作できるロボット」に! 夏ごろをめどにAPIが公開予定とのこと。ブースでは「吠える」「ピンクのボールを探す」などaiboに行動を指示するAPI画面のデモが展示されていました。
「Fragment Shadow」を体験。「影=黒いもの」という暗黙の概念をテクノロジーを通して変化(自分の影の上にさまざまな絵柄が現れたり)させることで知覚の変化を感じることができるブース。難しいことをさておいても、ちょっとした知覚の違和感とMVの中に飛び込んだようなクリエイティブで楽しい。
「Superception」は、コンピュータ技術で人間の感覚に介入し、知覚や認知を拡張、変容させる、ソニーCSLの研究です。この一つ「Fragment Shadow」は、自らの影に起きる視覚変化による身体感覚の変化を体験できるシステムです。#SonyatSXSW#SXSW#SonyStories pic.twitter.com/tN4AkVMhil
— Sony–Stories(Japan) (@storiesbySonyJP) 2019年3月25日
トレードショーで目立っていた日本勢
SXSWのメインコンテンツの一つであるトレードショーは中心会場のコンベンションセンターで4日間にわたって開催されます。会場はさほど広くはないのですが、世界各国の大企業からベンチャー企業、学生までさまざまな粒度のものが展示されている楽しい見本市です。
(Interactiveセッションの開始日から少しずれて開催されるので注意! 筆者はすっかりここ見落としていて現地で戸惑いました。渡航日程検討の際にはそのあたりも考慮するほうが良いですね)とても目立つ位置にかなりの数が出展している日本勢。その中でも特に筆者の心をつかんだのはSpiber Inc.が提供していた人工で作られたクモの糸。
人工クモの糸は繊維素材にすることで鋼鉄の340倍の強度を持つとか。(なんだか分からないけどすごい!)
その繊維を利用して作られたジャケットがこちら。すでにTHE NORTH FACEとこのクモの糸を利用したアパレル商品の開発などが実際に行われているそうです。とはいえ、アパレル商品ではその素材の真価(強度)が活かしきれないので、今後は自動車等の素材としての活用が期待されているとのことでした。素晴らしい取り組みだと一同感銘を受けました。
ちょっとギョっとする展示も中には
うわぁ、これはなんだ!!!!
引いてみるとこんな感じ……非常にシュール。でも実はこれ寄付なのです。手持ちのUSBをこちらに寄贈するとデータを削除した上で、中に電子書籍や映画などのコンテンツを入れて北朝鮮に送ってくれるそうです。北朝鮮の政府のプロパガンダから市民を解放することを目指す活動であり、その展示のポップさと志の高さのギャップがなんともSXSWらしいと感じた展示。
良い意味で期待を裏切ってくれたBOSE
いやいや、ただのサングラス型のワイヤレスヘッドホンでしょ?と思ったBOSE FRAMES。
そう。実際そうなんですけど、とてもいい感じ……! かけた時のクリアな音質と、意外性(かけるまでほとんど音が聞こえない)で、試した人の多くが「これは欲しいぞ」と口をそろえて言うほど。(ちなみに日本発売は今のところ予定なしだそう。残念すぎる)
技術的には骨伝導……と思いきや、実はスピーカーの向きを工夫をしているだけだそうで、二度驚きました。
おまけ:移動手段は電動スクーターに決まりっ
UBERやレンタルサイクルなど毎回移動手段が進化しているSXSW。今年はとにかくこれ! 電動スクーターです。UBERが提供するJUMPにLyftにLIMEに……各社が提供するスクーターが街のあちこちに所狭しと点在。「危ない」の声も多数聞こえましたしたが、実際に乗った感想としては「とにかく楽しい」「楽ちん」日本にも欲しい。
朝はきちんと整列モード(左)。なのに、昼ごろにはこんな感じに(右)。運営の課題はありそう。ただ、街全体で開催されるSXSWにはとてもマッチしたサービス。ちなみに筆者はUBER提供のJUMPを利用。既存のUBERアプリで電動スクーターも借りられるスグレモノでした。
おわりに:SXSW2020へ行かれる方へ
完全に独断と偏見でご紹介してきた本記事ですが、最後に来年行きたいなと思っている方へのアドバイスを。BACKYARDのこちらの記事でも準備についてはいろいろと書かれているので、今回は参加する際のスタンスについて。
いろいろな海外カンファレンスやイベントに参加してきましたが、SXSWの持つその独特なムードは唯一無二のもので、それゆえに参加するスタンスがとても重要なイベントだなというのを、今回初めて参加して強く感じました。
具体的には以下のようなスタンスで参加するのがよいと思いました。
1.一緒に課題に立ち向かう
→誰かに何か教えてもらおうなんてスタンスで行くと、得るものは極端に少ないです。
2.明日の仕事 < 人類の未来
→明日の自分の小さな仕事のためではなく、視野を広げて未来について思考しましょう。
結果、自分の明日の仕事に役立つ気づきが得られるはず。
3.とにかく全力で楽しむ、ハックする
→カオスの中イベントは進行します。情報収集と体力が命……!
ネットワーキングもとても貴重な持ち帰りなので、殻に閉じこもらず絡むが吉。
テキサス州オースティンという限られた場所に10日間だけ世界中から当事者意識を持った(また実行するパワーを持った)人々が集うというとても貴重なイベントだと思います。ぜひ来年参加する方がこの記事を参考にしていただけると嬉しいなと思います!
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