PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)の役割とは? PdMと比較
みなさん、こんにちは。村石怜菜です。
前回の「(プロダクト開発とマーケティング ~マーケターもPRDを書いてみよう)」では、プロダクトマネージャー(PdM)がプロダクトを開発する際に利用するツールの1つであるPRD(Product Requirements Document:プロダクト要求仕様書)について紹介しました。
「PRDという言葉を初めて聞いたけど、役立てることができそうだ」「フォーマットを知らなかったので、参考にしたい」などのコメントをいただき、プロダクト開発に関するマーケティング情報にはニーズがあるんだな、と感じることができました。
ということで、今回は「プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)という職種の役割紹介」をテーマにしました!
PMMの情報はまだまだ少ない?
「PMMの役割」をテーマに選んだ理由は、プロダクトに関するマーケティングの重要性が年々高まる一方で、プロダクトマーケティングを担うマーケターの職務内容や手法などの情報がメディアであまり見かけないからです。
実際に、検索サイトで「マーケティング 職種」や「マーケティング 種類」と検索しても、ヒットするのは、マーケティングファネルでいう「認知」や「興味」 の段階のマーケティング活動に関する記事が大半でした。プロダクト開発においてマーケティングは非常に重要な項目であるのにも関わらず、指名検索でないとプロダクトマーケティングについての知見を得ることができないことを実感しました。
近年、日本でも耳にすることが多くなったPMM。Web担当者Forumを読んでいる方であればご存知の方も多いと思いますが、PdM(Product Manager:プロダクトマネージャー)の実務経験がある私の視点で、改めてPMMについて、その役割を中心に考えてみました。
プロダクトマーケティングマネージャーとは?
PMMの役割
PMMとは、従来PdMの役割とされていたプロダクトマネジメントのマーケティング部分を担う職種です。つまり、私なりの解釈でPMMに求められる役割を端的に説明すると、「プロダクトマネジメントにおいてマーケティングを企画・推進・実行する人」のことになります。
今までプロダクト開発においてPdMが一貫して担当することが一般的にセオリーであったプロダクトマネジメントのマーケティング部分をPMMが担うということです。
PMMの必要性が高まった背景には、PdMの業務範疇が広範に渡り、Go to Marketの場面でマーケティングに注力できなくなったことがあります。そこでPMMという役割が独立したわけです。この辺りの詳細については、次回以降で紹介できればと思います。
PdMとPMMの役割
プロダクトマネジメントは、曖昧で定義が難しいといわれ、企業や個人で認識・定義が異なることがあります。そのため、わかりやすく説明するのが難しいのですが、シンプルに説明するために多く引用されている図に、「プロダクトマネジメントトライアングル」というものがあります。PMMが存在しない場合、「プロダクトマネジメントトライアングル=プロダクトマネージャーの役割の範囲」として認識される図です。
このトライアングルは、プロダクトを中心とし、開発者/ビジネスサイド/ユーザーという3つの領域を頂点とした三角形を形成しています。スタートアップやベンチャーなどは、このトライアングルに記載されている項目・施策を実施し、プロダクトをスケールさせ、自分たちのプロダクトが市場に適合する「プロダクトマーケットフィット(Product Market Fit)」フェーズを目標に開発を進めます。
もちろんスタートアップ・ベンチャーといった投資ラウンドフェーズの企業だけでなく、大企業や大規模サービスの開発にも適用できます。それぞれのプロダクトライフサイクルに合わせて、各施策や開発、維持などを行うのです。
企業・小規模サービスの場合は、PdMが上図のA・B・Cすべての領域を担うことも多いですが、サービス規模が大きくなると、一人で全サービス・全領域をカバーするのは、とてつもなく負荷が高くなります。たとえば次の表のように、対象が新機能か、既存機能かによってプロダクトライフサイクルが異なり、プロダクトマネジメント内容は大きく変わったります。
新機能・サービス | 既存機能・サービス | |
プロダクトライフサイクル | 導入期、(成長期) 0→1 | 成長期、成熟期、(衰退期) 1→10、10→100 |
概要 | まだ顕在化していないニーズを具現化し、市場・競合調査、法令確認や規約作成、MVP(Minimum Viable Product、必要最低限の製品)でのプロダクト検証 | リリースされているサービスに対して、ユーザーのニーズや市場の変化、法令遵守等の社会的状況といった様々事情を加味して、機能を追加・改善、マーケティング活動を行う |
私も新機能と既存機能を並行して担当したことがありますが、まったく異なるものを同時に、要件定義・開発~リリースまでの工程を考えるというのは、頭を切り替えるだけでもかなりの負荷がかかりました。
そのなかで、PMMは主にプロダクトマネジメントトライアングルのBの領域、ビジネス側の役割を担うポジションとして必要となるのです。PMMは、市場や競合分析をし、市場要求定義書(Market requirements document)を書いたり、プロダクトを市場に投入するタイミングで、そのプロダクトを届けたい消費者がユーザーとなるように、然るべきマーケティング施策を打ったり、といったマーケティングのスキルとノウハウが必要な業務を担当します。
PdMとPMMという二人体制の場合で、自分が今PdMだったらという状況を想像した場合、以下のような役割分担にするといいのではないかと思います。
- PdM:プロダクトマネジメントトライアングルのプロダクトサイドの領域を担当。主にエンジニアやデザイナーといったプロダクトチームとのコミュニケーションが多い。 ステークホルダーとも連携し、プロダクト全体のKGI/KPIの責任を負う。
- PMM:プロダクトマネジメントトライアングルのビジネスサイドの領域を担当。主にマーケターやセールス担当といったビジネスサイドのチームとコミュニケーションをとる。
プロダクトマネジメントトライアングルのCは、プロダクトロードマップやビジネスのビジョン、予算など、ビジネスサイドとプロダクトサイドに関するものが多いので、PdMとPMM双方で連携して進めることが多い領域になると思います。
なお、二人体制になった場合に気をつけたいのが、両者の思い込み・認識齟齬による業務重複もしくは欠落です(特にCの領域)。前述したように、ただでさえ役割が曖昧になりがちなプロダクトマネジメント。日本人が得意といわれる阿吽の呼吸、ハイコンテクストなコミュニケーションで濁さず、コミュニケーションを積極的にとり、明文化することが大事だと思います。
また両者とも垂直型の組織(機能特化型組織)に属しますが、プロダクトという全社組織を横断し、円滑にプロダクトマネジメントを推進するため、幅広い知識のほか、コミュニケーション能力は重要なスキルになるでしょう。
プロダクト開発に関わるのは面白い
PMMは海外では一般的。日本でも増加傾向にある職種
PMMは、GAFAM(*1)やFAANG(*2)と称されるビッグテックを筆頭とした海外IT企業では、一般的な職業として存在しているようです。かたや日本ではどうかというと、Twitter上で「プロダクトマーケティングマネージャー」「PMM」と日本語で検索してヒットするのはまだまだ少なめ。2019年頃から徐々に認知されるようになったようです。
*2 FAANG:Facebook(現Meta)、Apple、Amazon、Netflix、Google
求人サイトでPMMの求人状況を調べてみたところ、全体的にPdMの求人が多い印象ですが、PMM単体で募集している求人も存在しました。私が転職活動をしていた時期(2020年末~2021年頭)よりも、PdM、PMMともに求人は多いように感じました。このトレンドは今後も継続していくのではないでしょうか。
プロダクトマーケティングの認知度と重要性はさらに高まることは間違いないと思いますし、何よりもプロダクト開発に携わることはとても面白いです。生みの苦しみもあると思いますが、その後の達成感はひとしおです。
私はマーケティングとプロダクト開発の根底に流れるものは、同じであると思います。マーケティングとは「売れ続ける仕組みづくり」であり、プロダクトの根本も同様に、「市場に受け入れられ、多くのユーザーに継続して利用してもらうこと」だからです。PdMのキャリアパスとしてPMMが語られることもありますが、マーケターのキャリアパスの一種としてのPMMも多く語られるようになるといいなと思っています。
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