アドフラウド対策でCPA改善!「おとなの自動車保険」のデジタル広告が“損失1700万円”を克服するまで
ボットなどの不正トラフィックにより広告費を詐取する「アドフラウド」。その脅威は意外と身近に存在するが、「自分ごと化」できていない企業も多いのではないだろうか?
2023年からアドフラウド対策に乗り出し、成功を収めたのが「おとなの自動車保険」のデジタル広告だ。「デジタルマーケターズサミット 2024 Summer」に登壇したチェク・ジャパン(CHEQ)の廣瀬健一氏とSOMPOダイレクトの鈴木雅享氏は、セキュリティ診断からツール導入、導入後の成果までを余すことなく紹介した。
CHEQの高度な不正トラフィック検知技術
講演冒頭、廣瀬氏からCHEQの事業内容が説明された。CHEQは、世界トップクラスの技術力を持つイスラエルの諜報機関8200部隊の出身者を中心に設立されたサイバーセキュリティ企業だ。マーケティング領域だけにとどまらず、 Go-to-Market(GTM)を網羅したセキュリティソリューションを世界で1万5千社以上に提供し、日本においても、中堅から大企業まで幅広いクライアントが利用している。
CHEQの強みは不正トラフィックの高度な検知技術だ。サイトにタグを設置し、2000を超えるチェック項目でトラフィックを分析することで、ボットなどの不正トラフィックを即時に検出する。
ビジネス全体を不正トラフィックから保護するソリューションを提供しているCHEQだが、今回の講演では、デジタル広告の効果を最大限に引き出すソリューションについて語られた。
そもそもアドフラウドって?
廣瀬氏によると「アドフラウド」とは、不正トラフィックを悪用し、広告収入を不正に得る行為を指す。その手法はさまざまだが、代表的な手法としては、自らのサイトにGoogleやYahoo!などのクリック課金型ディスプレイ広告を配信し、その広告をボットなどを利用して不正にクリックすることで報酬を得るといった手法が挙げられる。この結果、広告主は不正クリックに広告費を支払う形となり、損失を被ることになる。
CHEQは、不正ユーザーをリアルタイムで検知し、広告表示をブロックする。このソリューションを活用したのが、SOMPOダイレクトのマーケティングチームだ。
「おとなの自動車保険」がアドフラウド対策に着手したきっかけ
SOMPOダイレクトの主力商品である「おとなの自動車保険」は、インターネットを中心に販売を行う通販型(ダイレクト型)の自動車保険だ。
伝統的な対面販売とは違い、インターネットを主戦場としていることから、マーケティングにおいてもデジタル広告を積極的に活用している。認知拡大にはマスに加え、YouTubeなどの動画広告を活用。顕在層に対してはEFO(入力フォーム最適化)やLPO(ランディングページ最適化)施策により顧客化を図っている。
セキュリティ診断で驚きの結果が
今回登壇した鈴木氏は、2年ほど前にマーケティング部門に着任した。その当時、鈴木氏はアドフラウドという概念をぼんやりと知っていたものの、自社に対する脅威としては捉えていなかったという。
そんな中でCHEQから提案があり、2023年の初めにセキュリティ診断を受けることになった。セキュリティ診断といっても、非常に手軽なものだったと鈴木氏は言う。
私がやることは、申込書の記入、広告レポートの提供、GTMでのタグの埋め込みくらいで、ほとんど手間はかかりませんでした(鈴木氏)
診断結果を要約したのが以下の表だ。なお実際のレポートには、クリック数などより詳細なデータが記されている。
診断の結果、不正クリック率1位がYahoo!の検索広告、被害額1位がGoogleの検索広告だった。
検索広告で多数のアドフラウドが発生していることに驚きました。アドフラウドというと、ブログサイトに貼られたディスプレイ広告から発生するイメージがあったからです(鈴木氏)
さらに、「年間損失想定額」も算出され、約1700万円という結果が出た。鈴木氏はこの額について「ここで初めて自分ごと化できた」と当時の衝撃を振り返り、続けて機械学習への悪影響も指摘した。
コンバージョンし得ないユーザーがクリックすると当然、自動学習の精度も濁ります。その点も含めると、損失は1700万円以上だったと考えられます。本当に憤りを感じました(鈴木氏)
次に、実際の不正クリックの種別データが示された。それによると、無料診断期間2週間で計9万件強もの不正クリックが発生しており、種別の内訳を見ると以下3つが多かった。
- データセンター:クラウド上のレンタルサーバーなどで、一般ユーザーが使用するケースはほとんどない
- スクレイパー:サイトの情報収集に使用されるボット
- オートメーションツール:ブラウザをプログラムから操作するタイプのボット
ボットだけで約4万件。早急に手を打たないと、と思いました(鈴木氏)
ボットによるクリックのメカニズム
ここで廣瀬氏は、ボットが検索広告をクリックする仕組みを解説した。
現在、様々な調査ツールや、調査を自動化するツールが存在する。これらのツールは、プログラムによってGoogleなどの検索エンジンでキーワードを自動入力し、検索結果の上から順にクリックしていく仕組みだ。そのため、検索結果の上部に表示される検索広告をツールが踏んでしまうことになる。
広告を出稿している広告主にとっては、本来のユーザーではないツールによるクリックに広告費が費やされてしまうという問題が生じるのだ。
対策ツールの選定基準
セキュリティ診断によりアドフラウド対策の必要性を認識した鈴木氏は、CHEQの対策ツールの導入を決めた。対策ツールを選定する際の基準は、以下3つだったという。
- プロダクトの完成度
- ダッシュボードの使いやすさ
- サポート体制
フロントエンドの廣瀬さんやバックエンドのサポートスタッフが頼れる方だと感じた点が、一番の決め手でした(鈴木氏)
「どんなに良いツールでも、使いこなせなければその真価を発揮できません」と廣瀬氏は強調した。CHEQでは、ツール導入後にはカスタマーサクセスの担当者がきめ細かくサポートし、導入支援やレポート報告会などのサポートを行う。必要に応じて、お客様だけでなく、広告代理店にもサポートを提供している。
アドフラウド対策の効果
CHEQのアドフラウド対策を導入した「おとなの自動車保険」のマーケティングチーム。肝心の効果は得られたのだろうか?
CHEQ導入後の無効クリック率の推移を示しているのが、下のグラフだ。広告流入が増えている中でも、無効クリック率は一貫して下降傾向であり、導入当初と比較して、不正クリック率は約80%減少した。現在も低い水準を維持しており、不正なクリックによる被害を最小限に抑えている。
さらに費用対効果という観点からも、有効性が示された。下のグラフを見ると不正クリックから保護した広告費(縦棒グラフ)がCHEQの月割費用(線グラフ)を上回っている。これは、CHEQの導入により、不正クリックによる広告費の無駄遣いを防ぎ、費用対効果を高めることに成功したことを意味する。
さらにCHEQの導入は「おとなの自動車保険」のマーケティング全体にも良い影響を与え、契約完了のCPA(顧客獲得単価)は昨年度対比で60%になった。CPA効率化には広告出稿費用の増減など、さまざまな要因が絡んでいるが、アドフラウド対策で正常なクリックが増えれば、当然ながら広告効果は改善しやすくなる。
CHEQ導入以降、広告代理店から上がってくるレポートのCPAがぐんぐんと改善していったことを鮮明に覚えています(鈴木氏)
SOMPOダイレクト社内での意識変化
「おとなの自動車保険」でのアドフラウド対策の成功は、SOMPOダイレクト社内にも影響を与えていく。鈴木氏が社内報に、不正クリックを有効なクリックへと再配分できたことを示す下の図を載せたところ、社内で大きな反響を生んだという。
さらに鈴木氏は廣瀬氏に依頼し、ウェブセキュリティやアドフラウドに関する社内勉強会を開催。40~50名ぐらいが集まった。そして徐々に、アドフラウドに関するリテラシーが社内で高まっていったのだという。
最後に2人は次のようなメッセージを来場者に送り、講演を締めくくった。
アドフラウド対策に取り組む企業が増えることで、不正な利益を得ようとするユーザーは活動の機会を失い、自然と減少していくと考えられます。皆様とともに、より健全な広告業界、ひいては社会の実現を目指していきましょう(廣瀬氏)
最初は勇気がいるかもしれませんが、簡単ですのでぜひCHEQさんのセキュリティ診断を受けてみてください(鈴木氏)
無料のセキュリティ診断は、CHEQのサイトから申し込み可能だ。
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