【レポート】デジタルマーケターズサミット2024 Summer

リカバリーウェア「BAKUNE」が発売から3年で70万枚突破! 急成長を支える“ブランド共感を生む”CRM戦略

D2CブランドTENTIAL(テンシャル)が、顧客行動を1st Party DataとAIの活用により可視化し、部門横断で顧客理解に取り組む「n1分析会」や、個人ではなく世帯単位でのロイヤルティの向上を目指す会員プログラムについて解説
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リカバリーウェア「BAKUNE(バクネ)」をご存じだろうか。外見はパジャマそのものだが、遠赤外線を輻射する特殊な繊維で作られており、着ることで血行促進による疲労回復効果が期待できる一般医療機器のパジャマだ。シリーズ累計販売数は2024年8月に70万枚を突破した。

この「BAKUNE」を開発・販売するTENTIALの泉晃治氏(ブランド戦略本部 CRMグループ グループマネージャー)が、CXプラットフォーム「KARTE」を運営するプレイドの池田桃子氏(Sales & Origination CX Designer)と、「BAKUNE」の取り組みとCRM戦略について解説した。

注目のD2Cが掲げるブランド戦略

TENTIALは2018年に創業。自社ECサイトなどを通じて消費者に直接、商品を販売するD2C型のビジネスモデルを展開している。

リカバリーウェア「BAKUNE(バクネ)」https://tential.jp/

アスリートが競技力向上のために普段から行っている「コンディショニング」の考え方を、一般の生活者にも届けようというのがTENTIALのコンセプトだ。D2C企業として生活者(顧客)とどう関係を構築していくか。CRM戦略が重要であることは言うまでもない。

お客さまとの関係性を中長期的なブランドアセットにするべく、コンディショニングブランドとしてお客さまとの結びつきを強化し、ファン化していく活動を推進している(泉氏)

株式会社TENTIAL ブランド戦略本部 CRMグループ
グループマネージャー 泉 晃治氏

ブランドへの共感を促進するためのプロセス

一般的にCRMと言えば、LTV(顧客生涯価値)やリピート購入率の向上のみが目的化しがちだが、TENTIALではそれらに加えて、「コンディショニング意識の向上」「コンディショニングの習慣化」などをCRMの目標にしている。TENTIALがブランドへの共感を高めるための施策設計プロセスをまとめたのが以下の図だ。

TENTIALにおけるブランド共感のためのPDCAサイクル

多彩なデータをもとに顧客を理解する

施策を検討する上での大前提となるのが顧客理解だ。TENTIALでは複数の顧客へのインタビューなどを通じて、顧客が抱えている課題を分析し、解消に向けて動いていく。

週2回実施しているユーザーインタビューから定性データを得たり、アンケートやSNSの投稿などをAIを活用して分析したりすることでお客さまの声を可視化している。こうした定性的なアプローチに加え、自社ECサイトや直営店で得られる購買データ、行動データ、属性データなどの定量データを集積することで、定性データと定量データそれぞれの観点から顧客理解の解像度を高めている(泉氏)

また、プレイドの「KARTE」を用いた「n1分析」も実施している。従来のマーケティング分析では、顧客全体を統計的に捉えることが一般的だが、「n1分析」では特定の顧客に焦点を当て、その行動や思考を深く分析する

KARTE Live」を利用すると、ある1人の顧客のWebサイト上での行動を動画として可視化できる。TENTIALではこの結果をもとに、自社ECサイトにおける顧客行動を観察・分析する「n1分析会」を毎月開催している。CRM部門はもちろん、エンジニアやデザイナーなど、部署を問わず関係者が参加する。

また「KARTE Live」には、意見を机上の空論で終わらせない効果もあったという。実際の顧客行動を目の当たりにできるため、他部署からの理解向上にもつながっている。

これまでは、たとえばマーケティング部署から開発部署に対して、「お客さまがこう感じているので、このように直してください」というような、一方通行的なコミュニケーションが行われていたが、デザイナーやエンジニアがお客さまの行動を実際に見ることで、自発的に改善していくサイクルが生まれている。「KARTE」の利用権限は社内エンジニアにも付与しているので、エンジニアから直接「KARTE」のサポート担当へ質問する機会も多い(泉氏)

インサイトを抽出し、仮説を立てる

こうした分析から得られた知見を元に、仮説を立てていく。ここでは情報共有ツールである「Notion」を活用している。「Notion」では解決のための施策がどこまで進んでいるか、一覧表形式で確認できる。この方式だと、状況が把握しやすいことはもちろん、次に何をすべきかを考えやすく、PDCAサイクルの高速化にも貢献していると泉氏は説明する。

効率的な仮説検証には「型化」が必要だと泉氏は解説する。仮説検証を属人化させず、どのメンバーでも実行できるよう、仕組みとして徹底する。「この施策の結果が出るまで次の施策ができない」というのもありがちだが、そこはマネジメント担当者がスケジュールをしっかりと区切って進行させるようにしているという。

池田氏によれば、PDCAサイクルをうまく回せている企業は、施策を「見える化」する意識がよく浸透しているという。

「Notion」だから良いというわけではなく、ツールは表計算ソフトでも特に問題はない。ただ、このようにデータがまとまっていると、サポートする側は助言しやすくなる(池田氏)

株式会社プレイド Sales & Origination CX Designer
池田桃子氏

施策を実施し、検証する

施策の設計から実行、効果検証までのプロセスには「KARTEシリーズ」のプロダクト群を活用している。「KARTE Message」を使えばメール配信を始めとしたMA(マーケティングオートメーション)全般が、また「KARTE Blocks」を使えばサイトの改善やWeb接客などを機動的に実施でき、その効果検証も容易だという。

メール、サイト改善、Web接客などを素早く実行できる

ロイヤルユーザーの情緒的価値をライトユーザーにも波及させるには

TENTIALでは、ブランドとして提供できる価値を「機能的価値」「情緒的価値」としてそれぞれ定義している。「BAKUNE」を身に付けることで疲れが取れるのは機能的価値、コンディショニングに対する企業哲学は情緒的価値、といった具合だ。

実際に製品を利用した顧客からは機能的価値を評価する声が非常に多い。しかし、それだけで終わらせず、情緒的価値の評価も高めたいというのがねらいだ。

ファクトとしてまず、ユーザーインタビューやデータ分析を実施してみると、ロイヤルユーザーとライトユーザーではTENTIALに対する考え方がまったく違っていた。ロイヤルユーザーの方は、ブランドのフィロソフィーやミッションステートメントへの共感度が高い傾向にあった(泉氏)

ロイヤルユーザーはTENTIALが発信しているコンディショニング関連の記事をよく読んでいたり、「BAKUNE」以外のジャンルの商品も購入していたり、さらにはギフトとして他人によく贈っているという傾向が見られた。これに対してライトユーザーは特定ジャンルの製品だけを購入しており、ロイヤルユーザーとは行動に明らかな違いがあった。

ロイヤルユーザーとライトユーザーの行動の違い

ロイヤルユーザーが日ごろ体験している情緒的価値を、ライトユーザーにも波及させる意義は大きいのではないか」。この仮説を元に、初回購入した顧客へ、数日後に、ステップメールで創業ストーリーを伝えたり、ギフトとしてどんな製品が選ばれているかを紹介する施策などを始めた。効果は上々だという。

プロモーションに依存せず、情緒的価値を中心に据えたコミュニケーションを行うことで、お客さまのF2転換率はしっかり上がってきている。我々のようなブランドビジネスの場合、ロイヤルユーザーを育てるためには、ブランドメッセージを発信していくことがとても重要だと感じている(泉氏)

この施策の運用には、KARTEで解析したサイト内行動データと、Googleの「BigQuery」に蓄積しているTENTIALの社内データの2種類を「KARTE Datahub」で統合している。統合されたデータを基盤にすることで、よりリッチな顧客データに基づいて一人ひとりに合わせたコミュニケーション設計が可能となる。アクションには「KARTE Message」を活用することで、簡単にリスト作成からコンテンツの作成、配信まで実行できる体制になっている。

施策実施のシステム体制

「KARTE Message」の利用効果は大きかった。SQLを書かなくてもGUIで感覚的にリストを作成・管理することができ、業務工数の大幅削減につながっている(泉氏)

購買以外のつながりを生む会員プログラム

2024年5月、TENTIALでは会員プログラム「TENTIAL Club」を開始した。開設のねらいはさまざまだが、泉氏が今回紹介したのは「個人単位ではなく世帯単位でのロイヤルティを向上させたい」という視点だ。

会員プログラム「TENTIAL Club」の設計コンセプト

これも複数のロイヤルユーザーへのインタビューから得られた知見だが、ご自分用にいくつもご購入いただいた次の行動として、パートナーへのプレゼントとしてTENTIALの製品をお選びいただく事が大変多くあった。さらには、ご自分の両親へのプレゼントや、お子さまにインソールやサンダルを選んでいただいていることもあった。1世帯の中でプレゼントとしてTENTIALが広がっていく傾向が共通して見えてきた(泉氏)

家庭内でプレゼントとしてやりとりされれば、そこには感謝の言葉や感想が付随する。つまりSNS上でなくとも世帯全体で口コミが循環し、ブランドへの共感や信頼が高まるということだ。

製品の購買などに対してマイルを付与するのが「TENTIAL Club」の柱だが、ギフトの購入や家族の誕生日の登録でもマイルを進呈している。開始から3か月が経過したが、メールマガジンの受信許諾率、LINEアカウントとの連携率などが徐々に高まってきているという。アンケートなども実施しており、全般的に取得できるデータ量が増えたことで、購買以外の部分で顧客を理解するための材料が増えたという。

現代のユーザーの行動を正確に把握するための「KARTE」とは

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「KARTE」の概要

TENTIALだけに限らず、プレイドは「KARTE」を通じてさまざまな企業を支援している。顧客企業の業界ごとに支援チームを分けるなど、「現場視点」を徹底しているものの、業界の垣根を超えて共通する今後のキーワードとして池田氏が挙げたのが「パーソナライズ」だ。

「KARTE」は、メールやSNSといったチャネル別の軸ではなく、顧客軸で行動データを解析できる。PCやスマホ、そしてアプリをいくつも使い分ける現代のユーザーの行動を正確に把握し、そのうえで一人ひとりに最適なコミュニケーションをとるための機能がそろっていると池田氏はアピールする。

パーソナライズされた顧客体験が求められている

さらに2023年秋からは「PLAID ALPHA」のサービスも開始した。「PLAID ALPHA」ではコンサルティングだけでなく、各種ツールの導入にあたっての設計、要件定義、システム開発、さらにはシステム開発後の運用などもプレイドがワンストップで支援する。「KARTE」の提供にとどまらず、顧客企業の複雑な事業課題の解決のために、人的支援も含めて価値提供できるのが同社の強みだ。

「PLAID ALPHA」の概要

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用語集
BAKUNE / CRM / CX / D2C / EC / KARTE / LINE / LTV / PDCA / SNS / SQL / TENTIAL / プレイド / ロイヤルティ / ロイヤル顧客 / 会員サービス / 顧客体験(CX) / 顧客生涯価値
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