今すぐ試せる! 最新ChatGPT活用のコツ:生成AIマーケティングで“差を生む”考え方
ChatGPTの勃興からまもなく2年が経過する。日々進化を遂げる生成AIを使いこなせている人と、うまく使いこなせない人の違いは、一体どこにあるのだろうか?
「デジタルマーケターズ・サミット 2024 Summer」では、Hakuhodo DY ONE DXコンサルティング本部の中原柊氏が登壇。今すぐ試せるChatGPT活用のコツを紹介しながら、変わりゆくマーケティングの最新現場を語った。
目が見え、耳が聞こえる! 最新のChatGPTはここまで進化した
デジタルやAIの領域に長年携わり、2023年には博報堂DYグループにおいてDXコンサルティング事業を立ち上げ、企業のDX化や生成AI活用の支援を行っている中原氏。
2023年頃から生成AI、とりわけChatGPTに注目が集まっているが、昨今のChatGPTの進化を3つのポイントで紹介した。
- 目が見え、耳が聞こえるように
- 短期記憶力が向上
- 人の曖昧な言葉がわかるように
1. 目が見え、耳が聞こえるように
まず中原氏は、ある男性が自分の飼い犬を撮影し、それをスマホの通話で自慢している動画を紹介した。電話の相手は女性で、感情豊かに会話しているが、実はその女性の声は生成AIによるものだ。
このように、ChatGPTがカメラで外の様子を見て、ユーザーが話している内容を聞き、音声で反応を返すことができる時代は、すぐそこまで来ている。ビデオ通話では、こちらの表情を読み取ったり、声のトーンから感情をくみ取ったりすることも可能だろう。中原氏はこれを「目が見え、耳が聞こえるようになった」と表現しており、専門用語では「マルチモーダル」と呼ばれている。
2. 短期記憶力が向上
続いて「短期記憶力の向上」だ。1年半前のChatGPTは、長く会話していると前の会話の内容を忘れて、文脈を見失っていた。しかし、GPT-4ではトークン数(AIで扱えるデータ量)が約8倍に進化し、記憶力が飛躍的に向上した。
3. 人の曖昧な言葉がわかるように
さらに、これは感覚論だが、GPTは人間の曖昧な言葉がわかるようになったという。
1年半前のChatGPTでは、曖昧な質問をすると「条件を指定してください」と返すような場合もあった。しかし今は、質問者の意図を予測して返答できるようになり、コミュニケーション能力が向上している。
さらに、AIにIQテストを受けさせた結果、スコアは「101」だったという研究結果も出ている(2024年3月5日時点)。IQ 100が平均的な人間の知能なので、AIは平均よりも少しだけ賢いということになる。
平均的な人間より少し賢い人(AI)が一緒に働いてくれるなら、もう自分に無関係とは言えないでしょう。実際、世の中にはすでに、生成AIと一緒に働いている人がたくさんいます(中原氏)
ハーバードビジネススクールでは、GPT-4活用による生産性の向上に関する実験も行われている。GPT-4を使うグループ・使わないグループにわかれ、仕事の成果を比較したところ、ChatGPTを利用したグループでは顕著に生産性が向上したという。
- 業務完了速度が約25%速くなった
- 成果物の質が40%以上向上
- 平均して約12%多くの業務を完了
ChatGPTを業務で使いこなせるのは、日常使いが上手い人
AIを業務でうまく使いこなしている人は、口をそろえて「日常から変わっていく」と語る。ここでは、中原氏が日常でどのようにChatGPTを使っているかを紹介しよう。
Scene1:肌ケアに「ビタミンC配合のクリームが良い」と言われても、わからない
最近、肌ケアに気を使っているという中原氏。ビタミンC配合のクリームを購入したいと思ったが、商品の成分表示を見てもよくわからない。そこで、商品のパッケージに書いてある成分表示の写真を撮り、
とChatGPTに質問したところ、
と返ってきた。さらに、
と質問すると、次のように詳しく答えてくれたという。
この使い方は、化粧品だけでなく食品や日用品など、さまざまなシーンで活用できるだろう。
Scene2:好きな柄のシャツを探したい
「シュプレマティスム」という現代的な幾何学模様に惹かれ、それに似たシャツを着たいと考えた。そこで、ChatGPTに
と頼んでみたところ、白地をベースに赤、青、黄色、黒などの原色を使った、アート風のシャツの画像を出力してくれた。とはいえ、このデザインでシャツをオーダーメイドするのはハードルが高い。そこで、ChatGPTがデザインしたシャツをGoogleの画像検索をしたところ、似た画像がいくつか表示された。そこからECに遷移して、気に入ったシャツを無事購入した。
なお、ECサイトがアメリカのビンテージ服を販売している通販サイトだったため、サイズの表記がわかりにくく、プロダクトサイズのキャプチャーをChatGPTに送って以下のように質問したという。
すると、次のように回答したという。
ちなみに今日着ているこのシャツが、エピソードで話した服です。私としては結構しっくりきているので、精度が高かったんじゃないかなと思います(中原氏)
Scene3:この食事で栄養素が足りているか判別してもらう
日々の食事について、「何か足りない栄養素あるかな」「夕飯どうしよう」と考えることはよくあるだろう。これも、食事の写真を撮って、
とChatGPTに質問すると、何がどのくらい含まれているかを教えてくれる。数値で出されてもピンとこない場合は、
と質問すれば、栄養素の過不足を教えてくれる。さらに、
と質問すると、足りていない栄養素を補えるメニューを出してくれる。
ChatGPTの日常使いで得た着想が、そのまま仕事に活きる
ChatGPTの日常使いの例を3つ紹介したが、それぞれの使い方には「大元にある着想」が存在すると中原氏は語る。
- Scene1:わからない用語をAIに解説してもらう
- Scene2:下書きを作ってもらう/他のシステムと合わせて使う
- Scene3:画像の読み取り
特に、Scene2は“AIだけで何かを完結させようとしない”ことのわかりやすい例です。服を作るところまでAIにやらせるのではなく、Google画像検索を使って探してみる。他のシステムと合わせて使うというのは重要な発想です(中原氏)
これらの使い方は、そのまま仕事の生産性向上にも役立つ。たとえば、会議や商談でよくわからない用語が出てきたら、それをChatGPTに聞けばいい。
また、Webサイトのラフスケッチを読み込ませて、プロトタイプを作ってもらうこともできる。サンプルページやソースコードをもとにやり取りすることで、クリエイターとの意思疎通が格段にスムーズになるだろう。
画像を読み取らせる使い方は、動画の分析でも役立つ。
と頼めば、1時間の動画を全部視聴せずとも、内容を要約してシーンごとの秒数まで教えてくれる。これを活用すれば、成果の出ている広告と出ていない広告の比較分析もできるだろう。
ここで伝えたかったのは、それぞれの使用例ではなく、日常使いのユースケースで得た着想や肌感が、そのまま仕事での生成AI活用にも活きているということです(中原氏)
AIと共に働くには、AIを「優秀な移民」と思え
一方で、AIが進化すればするほど、「AIに仕事を奪われるのではないか」「AIに支配されるのではないか」と不安に感じる人もいるだろう。中原氏は、「AIに使われたくはないし、AIを作る人になるとも思えない。でも、AIと共に働く人にはなれる」と語る。
皆さんは、AIのことを何だと思っているでしょうか? 東大の研究所や人工知能学会、総務省など、さまざまな機関が独自の見解を述べています(中原氏)
もちろんどれも正解ですが、ここでの目的を「AIと共に働く人になること」だとすると、私は生成AIのことを「異国から来た日本語ペラペラの移民」と捉えるべきだと思っています(中原氏)
つまり、日本語は流暢だが、日本の商習慣や企業文化に疎く、「阿吽の呼吸」や「暗黙の了解」のようなものがまったく通じない相手のこと。たとえば、「営業の提案書」といって思い浮かぶものは、会社によって異なる。長年勤めている社員なら、上司のイメージ通りの資料を作ることができるが、外国から来た人にいきなりそれを求めるのは難しい。
共通するバッググラウンドやコンテキストを持ち合わせていないという意味で、AIは移民です。ただし、日本語を含む言語能力は高く、IQも101ある。AIは単なるシステムではなく、新しい労働力とも言えるでしょう。そう考えると、AIを迎え入れるためには、使う側も変わる必要があります(中原氏)
習うより慣れろ! ChatGPTとの会話頻度を高めるコツ
「生成AIを使うか使わないか」は、「いつまで1人で働くか」という問いと同義だと中原氏は語る。そうは言っても、何から始めればいいかわからないという人も多いだろう。そもそも、AIを使いこなしている人は、日頃何をしているのだろうか。
デジタル庁のレポートによれば、「生成AIを使うことで業務の品質が向上すると感じますか?」という質問に対し、生成AIを頻繁に利用しているユーザーほど、品質向上の可能性を感じていることが明らかになった。
もちろん、因果関係と相関関係は別なので、利用頻度を高めたら必ず業務品質が上がるというわけではありません。しかし、まずは利用頻度を上げることで次第に業務で効果が現れてくるというのが、私の実感です(中原氏)
重要なのは、「3時間がっつりAIを使って勉強しよう」と特訓するのではなく、細切れでもいいから高頻度で使うことだ。そうすれば単純接触効果で、AIが好きになってくる。
では、利用頻度を上げるためにはどうするか。最大のコツは、とにかく簡単な会話(プロンプト)から始めることだ。インターネットには難解なプロンプト例が数多く載せられているが、「会話の頻度を上げる」ために、あえて最初は忘れてしまう方がいいと中原氏は語る。実際の業務においても、中原氏は簡単な質問で何度かラリーをして、出力の精度を高めていくという。
重要なのはAIとラリーをすること。上司と部下のコミュニケーションと一緒です。一度に大量の指示を出すよりも、叩き台をもとに修正していく方が、品質は向上しますよね(中原氏)
では、AIとの短い会話を習慣づけるためには、具体的にどの程度話せばよいのだろうか。中原氏は心理学の「習慣づけ」の研究結果を引用し、習慣化の鍵は「週4回以上 × 3カ月続けること」だと語った。
このルールに従うと、3カ月で約50回ChatGPTと会話すればいいことになる。1回あたり数分だとしても、3カ月で3時間もかからない。
1日に数分ずつ、3カ月で50回会話するだけ。この3時間の投資で、AIを活用する習慣がつくならお得ですよね。これをぜひ試してみてほしいです(中原氏)
とはいえ、何を話せばいいかわからないという人もいるかもしれない。そこで中原氏は、「“ChatGPTに聞いてみてほしい50の質問”を用意してきました」と以下のスライドを示した。
「日常生活の中で自然と触れ合うための簡単なアイデアを3つ教えてください」「仕事中に食べる健康的なスナックのアイデアを3つ教えてください」などの項目がずらりと並んでいるが、実はこの質問集も、ChatGPTに作ってもらったという。AIとの日常的な会話に困っている人は、ぜひ試してみてはいかがだろうか。
中原氏は、「今日の講演が、AIと共に働くことについて考えるきっかけになれば嬉しいです。具体的なユースケースはたくさんありますが、まずは“使う”という習慣をつけましょう」と語り、講演を締めくくった。
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