明日から使える! ChatGPT×マーケティングの業務効率化テクニック
ChatGPT・生成AIはマーケターに欠かせないツールになってきた。どんどん活用して業務効率の改善や外注費の削減を実現している企業もあれば、まだ様子見の企業もある。マーケティングにおいて、今後生成AIが不可欠になることは間違いない。
「デジタルマーケターズサミット 2024 Winter」では、何ができて、どのようなスキルが必要なのか。ユースケースとポイントについて、AIの実装支援を提供するCynthialy株式会社 代表取締役の國本知里氏が紹介した。
業務でChatGPTを使うとどうなる
2023年は「生成AI元年」と言われている。生成AIは新しい言葉ではなく、数年前からある概念だが、ChatGPTの登場で誰でも使えるようになった。とはいえ、業務に活用するとなると、どのように使えばいいかよくわからないという人もまだ多い。そこで國本氏は、事例を挙げて使い方を紹介した。
事例①失礼のない丁寧なメールに書き直してもらいたい
普段書かない文章を丁寧な文章に書き直してもらうことが可能だ。プロンプトには、次のようなポイントを意識して、簡単な文章を記載すると良いだろう。
- 謝罪相手やトーンを指定する
- ミスした内容を書く
- 今後の対応を書く
事例②顧客視点でのアピールポイントなどを整理したい
企業側がメリットだと思うポイントと、顧客視点でのアピールポイントのズレを直し、顧客に届けたい情報を整理するのを手伝ってもらう。少ない情報でも次に挙げた3点に注意してプロンプトを入れると、思考の整理やロールプレイングにも活用できる。
- 提案内容の詳細を明示する
- 提案する対象を指定する
- アピールする点やおさえておくべき点を教えてほしいと指示する
事例③文章のリスクチェックをお願いしたい
プレスリリースやSNSなど、対外的に出す文章のリスクチェックも可能だ。ChatGPTを活用することで、自分にない視点でチェックができる。これまでなら別の人に見てもらう必要があったが、ChatGPTと会話することで一人で完結できる利点がある。
- 文章の内容を明示する
- 炎上リスクのある表現がないか確認してほしいと具体的に指示する
- 作成した元の文章を入力する
事例④文章を表形式にアウトプットしたい
文章を表形式にすることも可能だ。手作業での修正はミスも起こりやすく、時間もかかる。ChatGPTに指示するだけで、表形式にしたり、漢数字をアラビア数字に変換したりもできる。
- 表形式にすることを明示する
- (元のデータで漢数字が使われているならば)漢数字をアラビア数字に変換するという指示を出す
- 元となるデータを入力する
ここまで紹介したのはCynthialyが監修している書籍『ビジネスパーソンのためのChatGPT活用大全』『クリエイターのためのChatGPT活用大全』(Gakken)の一部だが、業務に役立つイメージができたのではないだろうか。
マーケティング業務における生成AI活用範囲は広い
生成AIにはテキスト生成以外にも、画像生成、動画生成、音声生成といったさまざまなものの形式を同時に生成することができ、これらを「マルチモーダル生成AI」と呼ぶ。マーケティング領域において、生成AIの活用範囲は広く、たとえば、バナー広告のキャッチコピーや画像生成も可能である。人間が作ったメルマガよりも、生成AIで作った方がコンバージョンが高いという例も生まれている。
便利で効果がある一方で、業務での導入障壁はまだ高い。ChatGPTの利用を許可している企業や、セキュリティが担保された生成AIのシステムが入っている企業は増えているが、本格的な生成AI導入は“これから”という企業が多いだろう。
そこで、日本における先進的な企業を2社紹介しよう。
先進事例①パナソニックコネクトの活用例
日本でいち早くChatGPTを全社導入したパナソニックコネクト※。次の3つの目的で、マーケティング領域での利活用が進んでいる。
コンテンツ制作のサポート:
メルマガ用の文面作成や、CTA(Call To Action:行動喚起)の低いメールを改善してくれる。キャッチフレーズの作成、広告文のタイトル制作をサポートする。アイデア出しとシミュレーション:
マーケティング戦略を立てるときの業界分析やペルソナ作成、顧客インタビューのシミュレーションも可能。データ整備と分析:
企業名の名寄せ作業やデータ分析など。
先進事例②伊藤園の活用例
次に紹介するのは、伊藤園の「お~いお茶 カテキン緑茶」のテレビCMにAIモデルを日本で初めて起用した事例だ。
AIモデル・AIアンバサダーを起用することで、撮影時間に縛られることなくスピーディに制作が可能になる。また、モデル側からの要望や調整の必要がなくなるため、業務効率化が進むだけでなく、CVRの向上も期待できるという。
生成のパターンは3つ
生成AIが動作するパターンは3種類ある。この3つのうちどれを使うかを考えると、活用のポイントを掴みやすい。
- 0→1の生成:アイデア出しやタイトル生成など、ゼロから作るとき
- 1→10の生成:元の文章をもっと長くするのは生成AIが得意な領域
- a→bの生成:文章の調整や変更、言い換えの生成
思い通りの答えを得る:プロンプト6つのヒント
ChatGPTをうまく使いこなすために重要なのがプロンプトと呼ばれる、指示文の書き方だ。セッションでは、実際にChatGPTを使って、以下のプロンプト6つのヒントを活用したプレスリリース作成の様子を紹介した。
具体例プレスリリースの原稿作成
プレスリリースのたたき台をChatGPTに書かせる時のプロンプトが以下の図だ。このように指示すると、ほとんど違和感のないものが出てくる。
ChatGPTはインターネット上の情報を学習データに使用している。インターネット上にはさまざまな企業のプレスリリースがある。つまり、プレスリリースに関して、ChatGPTは非常に詳しいというわけだ。
注意点としては、「こういうプロダクトのリリースを書いて」のようなざっくりした言い方ではなく、具体的に指示しなければならない。プレスリリースを書かせるプロンプトを例に、6つのヒントについて説明する。
プロンプト・ヒント①役割の明示
「あなたはPRの専門家です」と入れることで、ChatGPTはPRの専門家として答えようとする。
プロンプト・ヒント②テキストと指示を分離
「#お願い」「#目的」などのテキストと、指示の内容を分ける。
プロンプト・ヒント③具体的に入力
「こういう目的で、これをしてほしい」と具体的に書くことによって、欲しいと思ったものが出てくる。
プロンプト・ヒント④段階的に処理
プレスリリースの例では出てきていないが、ステップとして出して欲しい時は段階的にお願いする。
プロンプト・ヒント⑤して欲しいことを入力
最初に「#お願い」と書いたり、「○○してください」と指示したり、して欲しいことを明確にする。
プロンプト・ヒント⑥少数の例を与える
出力の仕方として、このように書いて欲しいという例を与えると、それに合わせて出力する。
「生成AI×マーケティング」への向き合い方
プロンプトを書く6つのヒントの具体例を紹介したが、意識すべき点は以下の3点だ。
- 3つの生成パターン(0→1、1→10、a→b)のどれをさせるのか
- 普段の業務の棚卸し
- 具体的に指示する
生成AIを使いこなせるか否かは、具体的に指示できるかどうかで決まる。つまり、具体的に指示を出すためにも、普段の業務の棚卸しが欠かせない。
AIに指示する力を“プロンプトエンジニアリング”と呼ぶが、AIのマネジメント能力と呼んでもいいだろう。これは、まだ業務を理解していない新人の部下に指示するのと同じで、ふわっと命じると、良いアウトプットは出ない。指示の出し方が最終的なアウトプットの質を左右する。
プロンプト6つのヒントを活用して、ChatGPTに指示を出しましょう。ChatGPTで質の高い回答が得られるようになると、副次的な効果としてチームのマネジメント能力も上がったという声も聞きます(國本氏)
また、「生成AI×マーケティング」とどう向き合うかというマインドセットも重要で、業務で生成AIを活用することで、何が変わるのかを理解する必要がある。
変化①今まで使えなかった非構造化データが使えるようになる
マーケティング領域には、アンケートや長文などのような構造化されていないデータがたくさんある。生成AIによってそれら非構造化データを多く扱えるようになり、社内のあらゆるデータを横断活用できるようになる。
変化②自社だけが持つ一次情報が重要になる
生成AIはインターネット上の情報を学習することで、人間に聞くより早くクオリティ高く答える。このため、生成AIの登場によって、記事のまとめのような二次情報の価値が下がっている。何かを加工した情報は生成AIの方が有効なので、ユーザー情報、現場で取得するデータ、取材データなどの一次情報を取り込むことが重要になる。
世の中にあるデータは誰もが使えるようになったので、自社しか使えないデータをどれだけ持てるかが鍵。AI活用で生産性アップという話がよく聞かれるが、マーケティングにおいては、いかに多くの社内のデータを生成AIのデータと接続してマーケティング戦略に役立てるかが重要です(國本氏)
変化③自社のレベルと到達したいレベルを自覚し、段階的に進める
生成AI活用をしている企業のレベルを、Cynthialyでは5段階で定義している。以下の図にまとめているが、自社は何がやりたいのか、どのレベルなのか整理することも重要だ。
一気にレベル1から5には行けません。自分たちが今どのレベルで、どのように上げていかなければいけないか、ステップバイステップで歩んでいくことが大切です(國本氏)
最後に國本氏は、「生成AIがこれほど強力なら、自分たちの仕事がなくなるのではと心配になる人もいるかもしれませんが」と前置きしたうえで、NVIDIA CEOのJensen Huang(ジェン・スン・フアン)氏の言葉を紹介した。
AIに仕事が奪われるのではない。AIに精通していない人がAIに精通した人に仕事を奪われる――by NVIDIA CEO Jensen Huang(ジェン・スン・フアン)氏
「AIは単なるツール。うまく使いこなした企業や人が、活用範囲を広げています。一方、使わないでいると差が開いていきますので、まずは使ってみる、業務に取り込んでみることから始めてみてほしい」と述べ、講演を締めくくった。
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