映画、ライブ、テーマパーク――体験を充実させるために「予習」は必要か?
先日、家族で外出したときのエピソードです。
映画館に貼られていた『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!』のポスターを見た次女(3歳)が、目を輝かせながら「見に行きたい!」と言い出しました。
実は、次女はテレビアニメの『わんだふるぷりきゅあ!』(2024年2月4日から毎週日曜朝に放送)を一度も見たことがなく、ただ「プリキュア」という作品の存在を知っているだけでした。
映画館デビューの作品として「プリキュア」は良い選択だと思い、次女の願いを叶えることにしました。
ただ、シリーズの内容をまったく知らない状態で映画を見ても、十分に楽しめないのではないかと思い、映画鑑賞までの間、『わんだふるぷりきゅあ!』の予習を次女に提案。快諾されたので、親子で一緒にテレビアニメ版をネット配信で視聴することにしました。
全エピソードを見ることはできませんでしたが、シリーズの世界観やキャラクターたちの魅力を知ることができました。この「予習」のおかげで、映画館では次女と一緒に物語の展開に一喜一憂し、なぜか私が一番泣いておりました。
入念な予習で挑んだディズニーランド
改めて振り返ると、私は新しい体験の前に「予習」することが習慣になっています。それは、限られた機会をできるだけ充実させたいという気持ちが強いからかもしれません。そんな私の「予習魂」が再び火を噴いたのは、ディズニーランドに行くことになったときでした。
コロナ禍前は、毎年長女の誕生日にディズニーパークを訪れていましたが、ここ数年は足が遠のいていました。今回は次女にとっては生まれて初めてのディズニーランド。楽しい1日にしたいと思い、「予習」として最新のガイドブックを選ぶところから始めました。
実はディズニーランドのガイドブックには、パークの写真が掲載されているものとそうでないものがあり、価格に大きな開きがあります。写真付きの方が子どもたちにとってイメージがつきやすく、より具体的に想像できるのではないかと考え、ここはケチらずに写真付きを選びました。
長女は、ガイドブックを隅々まで読み込んで「行きたいリスト」を作成。私はプリンセス(白雪姫、シンデレラ、オーロラ姫、アリエル、ベル、ジャスミン、ラプンツェル)に憧れる次女のために、プリンセスが登場するショーをチェック。どの順序で回れば効率が良いのか、いつスタンバイパス(記載された時間帯に対象施設の列に並ぶことができる整理券)やディズニー・プレミアアクセス(パーク内施設等の体験時間や入場時刻を指定して予約できる有料のサービス)を取得すべきかなど、できるだけ多くの体験ができるよう、計画を練りました。
当日は、思いどおりにいかないこともありましたが、予習と事前の計画があったからこそ、迷うことなく行動でき、充実した1日を過ごすことができました!
アトラクションを楽しむために作品理解は必要か
事前の計画のおかげで充実した1日ではあったのですが、予習足らずな部分もありました。それはディズニーの映画を十分に見られなかったことです。子どもの頃に当時の映画はたくさん見ていたのですが、最近のディズニー映画は視聴していないものも多く、アトラクションやショーを120%楽しめたかと言われると難しいところです。
たとえば、ディズニー映画『ベイマックス』をテーマにした世界初のアトラクション『ベイマックスのハッピーライド』に乗ったときのこと。アトラクションそのものは楽しめましたが、アトラクションのコンセプトや登場するセリフの意味が理解できず、「ちゃんと映画を見ておけば、もっと楽しめたのに」と後悔しました。
ライブに予習は必要か? NewJeansファンミーティングでの気づき
6月に『NewJeans Bunnies Camp 2024 Tokyo Dome』というNewJeansのファンミーティングに行きました。長女と2人で行くことにしたので、YouTubeでミュージックビデオやパフォーマンスを見たり、音楽を聴いたりしてみっちりと予習し、「もう知らない曲はない!」という状態にはなりました。
しかし予習に必要なのは音楽だけではないのです。NewJeansの公式サイトには応援方法が掲載されています。ライブをより楽しむために必要な要素だと理解していたのですが、時間的な制約もあり、そこまでは手が回らないまま当日を迎えることに……。
当日、東京ドームに響き渡るNewJeansの歌声とパフォーマンスは圧巻でした。5人のステージを目の前で見られることだけでも感動的で、あっという間に時間が過ぎていきました。ただ、周りのファンの方々が息の合った掛け声やコールを送る中、私たちは耳を傾けながらその場で真似てみる程度しかできず、少し心残りとなりました。予習の必要性はわかっていたので、NewJeansに対しても、ファンのみなさんに対しても申し訳ない気持ちが残りました。
予習をしないことへの不安
予習は必要かというよりも、予習をしないことに対して不安を覚えます。これは私だけではなく、現代の消費者に共通して言えそうです。その背景には、お金も時間も有限であること、SNSでの体験共有が当たり前になった現代社会の環境があります。「投資した時間やお金に対して最大限の価値を感じたい」「失敗したくない」という消費者心理は、特にZ世代に顕著だと言われ注目されていますが、実際のところは年齢を問わず広がっているのではないでしょうか。
また私自身の体験から、予習には両面性があることに気づきました。プリキュアの映画では予習が効を奏し、作品への理解が深まったことで感動も大きくなりました。一方で、ディズニーランドのアトラクションやNewJeansのファンミーティングでは、予習不足を後悔しながらも、楽しめた面もありました。
企業側は、消費者の「失敗したくない」という心理に寄り添い、予習をしやすくするための適切な情報提供が求められる一方で、予習の有無に関わらず満足できるような体験も提供する必要がありそうです。
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