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マーケターの戦略的な基礎力、思考力、伝える力を磨くオススメの書籍10冊!

オススメの課題図書。今回は、これまでの記事のなかから、マーケターに知ってほしい基礎力、思考力、伝える力に関する本を10冊、ピックアップして紹介する。

業界のエキスパートにインタビューし、基本的な考え方・知識・スキルが身に付く本(課題図書)を紹介してきた本連載も、丸4年を迎えた。今回は、これまでの記事のなかから、マーケターに知ってほしい基礎力、思考力、伝える力に関する本を10冊、ピックアップして紹介する。年末年始にかけて、ぜひじっくり読んでみてほしい。

マーケターの基礎力を身に付けるための本

『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』(安宅和人:著 英治出版:刊)

マーケターはあらゆる情報から本質を見極めて、マーケティングの目的、戦略、戦術を立案して仕事を進めていくことが大切になる。そこで、重要な問題を見極める方法を伝授する本として、花王の辻本光貴さんがこの一冊を紹介してくださった。

辻本さん

大学時代に本書を読んで以来、本当に解くべきイシューは何かを考えるようになりました。順を追って、論理立てて解説されているのでわかりやすいです。普段の業務ではさまざまな仕事を割り当てられますが、何が問題なのかを考えてから対応するようにしています。問題を見極める力は、今の社会人に求められるスキルだと思います。

『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』(森岡毅:著 KADOKAWA:刊)

続いて辻本さんがオススメしてくれたのが、P&G出身者でUSJのV字回復を達成させたことで有名な森岡毅さんの本著作だ。森岡さんの著作は複数あるが、この一冊は初心者に最初に読んでほしいと辻本さん。

辻本さん

マーケターの思考法として、目的に沿った戦略、戦術立案をしていくことが大切になります。それが学べる一冊なので、学生にもオススメです。マーケティングの目的がぼやけていたら、その後の戦略の組み立てがうまくいかないので、『イシューからはじめよ』と併せて読んでほしいですね。

特にB2Bマーケターに読んでほしい本

『思考・論理・分析―「正しく考え、正しく分かること」の理論と実践』(波頭亮:著 産能大出版部:刊)

マーケターにとって論理力は必須の力。本書は、まさに「論理的思考を身につける」ための書籍だ。普段から後輩や部下に良書をオススメしているという安藤健作さんに、B2Bマーケティングの初心者が読むべき書籍として紹介していただいた。

安藤さん

B2Bビジネスでは、購入決定までに複数の意思決定者が関わるため、B2Cよりも論理的に判断がなされます。また、マーケティング部署は、会社の組織においてお金を稼ぐのではなく、お金を使う部署なので、常に投資対効果が求められます。優れたアイデアであっても、感覚だけでは承認されないのがB2Bビジネスで、論理的なアプローチで社外・社内を説得していく必要があります。

書名を見ると難しそうにみえるが、文系でも理系でも理解しやすいように書かれている。「一度読むだけでなく、参考書として何度も読んでみてほしい」と安藤さんはいう。なぜなら、「論理的思考は、筋肉と同じで、鍛えれば必ず身につく」からだ。

『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件』(楠木建:著 東洋経済新報社:刊)

本書は、先ほどの『思考・論理・分析―「正しく考え、正しく分かること」の理論と実践』のあとに読んで、考えを補強してほしいという書籍だ。安藤さんは、ページ数は多いが、「この本自体がストーリー仕立てで語られているので読みやすい」と紹介してくださった。

安藤さん

マーケターは、仕事を進めるためにステークホルダーを巻き込む必要がありますが、ストーリーがあると人を巻き込むことができます。人を巻き込める人は、論理的思考に基づいて引き込める話ができる人です。本書を読めば、人を巻き込めるストーリーとは何かということがわかるはずです。

『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?』(垣内勇威:著 日本実業出版社:刊)

こちらは、有効なB2Bマーケティングの実践法を学ぶ本だ。WACULの代表である垣内勇威さんが執筆した本書。マーケターがすべきことが明快に書かれている一冊だ。

安藤さん

「マーケターが忙しいのは、やらなくていい仕事をしているから。まずはやるべきことに注力して80点を目指そう」という本書の主張に共感しました。本書には、現在行うべきは何か、大切にすべき仕事は何かが書かれて、何度も読んでいる本です。

プロモーションを企画するときに役立つ本

『1秒でつかむ 「見たことないおもしろさ」で最後まで飽きさせない32の技術』(高橋弘樹:著 ダイヤモンド社:刊)

本書は、元テレビ東京社員で「家、ついて行ってイイですか?」などの人気番組の企画・制作を務めた高橋弘樹さんの書籍だ。CHORDの明坂真太郎さんが紹介してくださった。この本には「企画者の熱」「受け手の理解」「伝え方の引き出しを増やすテクニック」という企画に必要な3つの要素がすべて入っている。

明坂さん

著者の高橋さんは没入させることにこだわりがあって、それは「家、ついて行ってイイですか?」にも表れていると思います。街頭でたまたま声をかけた人の話で60分間ひきつけるテレビ番組を作るのは難しいことに思えますが、没入感を起こす工夫があることで、それを実現させています。読んでいて「なるほど!」と思う箇所が多くて、本当にまるごと1冊読む価値がある本です。

トレンドを捉える視点を得るための本

『タイタン』(野﨑 まど:著 講談社:刊)

博報堂DYグループのメディア環境研究所では、テクノロジーやビジネスの変化を追いつつ、それに関わる生活者の変化を調査・研究している。このメディア環境研究所で上席研究員として働く森永真弓さんは、よくSF小説を読んでいるという。

森永さん

現在のテクノロジーや社会状況を踏まえて今後どのように世界が変わるのか、SF作家が思考実験したものをエンタテインメントに落とし込んだ結果がSF小説です。私は、現在の当たり前の生活の中でもSFの世界のような感覚をもっている人が1-2%はいる可能性がある、と考えています。
生活者について研究する際に自分周辺の「普通」から立脚すると見落としがあるので、SF小説を刺激にして、あり得る方向性を広げて考えるようにしています。SFが好きということもありますが、仕事でも必要な感覚だと思って注力して読むようにしています。

森永さんが読まれて、紹介してくれたSF小説の一冊が『タイタン』だ。本書では、人間が働くことが特殊なことという価値観になり、それを支えるのは進化したAIという世界を舞台にしている。そしてそのうち、仕事をすることにAIが疑問をもち始めることになるという展開になる。

森永さん

現在は、ChatGPTに代表されるような生成系AIの登場で仕事がなくなるかもという話も聞こえてくるようになりました。AIがこの先仕事をするようになったら…ということを自分の頭だけで考えると想像の幅が狭くなりがちです。そこでSF小説を読む。すると、さらに想像を広げられるようになります。

『弱いロボット』(岡田美智男:著 医学書院:刊)

森永さんは、医学系書籍の出版社である医学書院の書籍も紹介してくださった。意外な「生活者の思考や行動」がわかる一冊だ。

一般的に、機械やロボットには、自動で清掃する、受付業務をサポートするなど、人が行う仕事をサポートする機能を期待する。しかし、著者の岡田美智男さんは、ロボットの方が人のサポートを必要とするような「弱いロボット」の開発を行っている。

森永さん

人間に必要なのは合理性だけではありません。本書では、弱いロボットがケアにもたらす効果が観察されています。特にアジア人は、友達としてのロボットを求める傾向があるようで、とあるグローバル企業では、会話型タイプのロボット(AI)については、メインの研究地であるアメリカではなく、日本と中国が研究の中心地になっているという話もあったりするくらいです。
広告施策を考えるときは、一般的な価値観や合理性優先で人をグルーピングし、ターゲットを設定しようとすると、多くの人がそこからこぼれてしまうということはよくあります。まったくの別方向からのアプローチのほうが、多くの人が共感できることもあります。そこで私は、セオリーから離れ、合理性、効率性だけではない視点から考えることも重要だと思っていて、そんなとき、こういう「ちょっと変わったこと」をしている方の専門書を参考にすることが多いです。

伝える力を養うための本

『問題解決の全体観 上巻 ハード思考編』『問題解決の全体観 下巻 ソフト思考編』(中川 邦夫:著 コンテンツ・ファクトリー:刊)

この2冊は、アユダンテの寳洋平さんが人に理解してもらう、共感を得るためのビジネスコミュニケーションがうまくいかなくて悩んでいたときに読んだ本だという。

寶さん

この本では問題が起きたときの解決方法の「型」が紹介されています。「空・雨・傘」というのは、有名な型の1つですが、私はこの型を意識してコミュニケーションするようになってから、話が伝わりやすくなりました。

「空・雨・傘」とは、出かけるときに空を見て、雨が降りそうだから、傘をもっていくことを例に、状況を観察して、それを解釈して、行動を起こす流れを指す。書籍では、空・雨・傘の3つがそろわないと、なぜコミュニケーションがうまくいかないのかをわかりやすく解説している。たとえば、十分な解釈無しで状況を見て行動を起こしてしまうと当たり外れが大きく出てしまうし、文脈を無視してアイデアだけを出しても人を動かせないわけだ。

なお、本書は上・下巻に分かれており、空・雨・傘だけでなくさまざまな考え方が紹介されている。上巻では手法、下巻では具体例や戦術的なことがまとまっている。

◇◇◇

ここで取り上げた10冊は、次の記事からセレクトしたものだ。ぜひ、元の記事も読んでみてほしい。

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