アパレル業界にとって2121年は、早く過ぎ去って欲しい厳しい1年ですが、そんな中、個人の状況に応じてアパレルの購入が加速するかどうかを分析するのは興味深いことです。『Digital Commerce 360』でシニア・コンシューマー・インサイト・アナリストを務めるローレン・フリードマン氏が解説します。
コロナ禍で変化した、アパレル商材の消費行動
コロナ禍の影響で、アパレルやアクセサリーに対する消費行動が変わりました。多くの人にとって、毎日の仕事着はスウェットや、俗に言う「アスレジャー」になったのです。
オンラインやオフラインの店舗で買わなくても、自分のクローゼットに既にあるモノで事足ります。しかし、ワクチン接種が実現すると、消費行動は再び変わるでしょう。買い物に出掛け、自宅オフィスを抜け出しておしゃれをし、トレンドに乗ろうと考えています。そう考えているのは、私だけではないはずです。
『Digital Commerce 360』によると、2020年のオンラインアパレル売上高は2,407億1,000万ドルで、2019年の3,018億4,000万ドルから20.3%減少しました。今後、復活の余地はありますが、どのくらいの量で、どのくらいの速さで復活するのか、という2つの疑問が残ります。
『Digital Commerce 360』は、調査会社の「Bizrate Insights」と共同で、5月上旬にEC利用者1,049人を対象に調査を実施。この調査では、洋服の補充(41%)、衣替え(36%)、ワードローブを一新したい(35%)という理由で、消費者がアパレル、アクセサリーを購入していることがわかり、心強く感じました。
皮肉なことに、これらはコロナ禍が存在しない世界で、消費者がアパレルを購入する理由と同じです。アパレル業界にとって厳しい2021年、個人的な状況によってこの動きが加速するかどうかを見守るのは面白いでしょう。調査対象者の27%が回答した「欲しかった商品のキャンペーン」も見逃せません。また、「気分を上げたい」という回答が多いことを期待していましたが、23%にとどまりました。22%は私同様、スタイルを見直したいと考えていました。
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質問:最近数か月間でアパレル、アクセサリー、靴をオンラインで購入したきっかけは何か?(画像は『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査結果を基に編集部が作成)
「コロナ禍後に購買額が増える」と予測しているのは4人に1人で、大半の回答者は「今と同じ程度の購買額になる」と考えています。しかし、最終的には消費者が外に出れば、異なる感情を抱き、結果的に消費が増えると思います。そうでなければ高級品や、これからも在宅勤務が続けば、仕事用アパレルにも重要な影響を与えるでしょう。
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質問:2020年と比較した時、2021年のアパレル、アクセサリー、靴の購買額はどれくらいになると予測するか?(画像は『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査結果を基に編集部が作成)
EC利用者の約8割が「コロナ禍がオンラインでの行動に影響を与えた」
EC利用者の76%が、「コロナ禍がオンラインでの行動に影響を与えた」と認め、5人に1人は「コロナ禍の影響で、予想されていたいくつかの変化がさらに加速された」と考えています。
消費者は、返品をさらに気にするようになり、コロナ禍以前から利用していた返品送料無料のオプションをさらに活用するようになりました。また、オフラインでは21%が地域社会の活気を維持するためには中小企業への応援が必要で、地元での買い物が重要であると理解するようになりました。
コロナ禍において消費者がECの利便性を実感したことから、ECは長期的にコロナ禍の恩恵を受けると多くの人が考えています。しかし、今回の調査では、コロナ禍後もオンラインでの買い物を継続する人は19%しかいませんでした。
もちろん、買い物には個人的な事情が常に大きく関わっています。実店舗が消費者を呼び戻すために必要な強い存在感のアピールに苦労しているため、コロナ禍後の継続的なトレンドを知るには、1年かかるでしょう。
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質問:今後、アパレル、アクセサリー、靴をオンラインで購入する際、コロナ禍の長期的な影響を受けるのはどんな事か?(画像は『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査結果を基に編集部が作成)
アパレル分野でも強いAmazon
オンラインで買い物をする人は、さまざまな小売事業者から商品を購入しますが、なかでもAmazonが優位に立っています。アパレル分野でもAmazonがトップになるということは、私にとっては複雑です。なぜなら、「Amazonで買えばいいや」と考えるようになってしまいそうだからです。
アパレルの購入場所として、「百貨店」を選んだ回答者が45%というのは、業界の衰退が叫ばれて久しいなか、心強い限りです。「専門店」も28%とまだ重要な役割を担っており、消費者向けのD2Cブランドも、かつて勢いのあった専門店と同様のアプローチを採っています。
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質問:アパレル、アクセサリー、靴をどのオンラインショップで購入したか?(画像は『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査結果を基に編集部が作成)
「サステナビリティへの取り組み」が消費行動に与える影響は?
調査結果によると、消費者は新しい消費スタイルを試しており、13%が「サステナビリティやその他の環境保護の考えに基づいてアパレルを購入している」ことがわかりました。この数字をさらに掘り下げると、持続可能性への関心についてさまざまなインサイトがわかります。
いずれにしても、消費者がこの重要な問題に関心を持っているのは良いことです。39%は「この問題に関心を持っている」と回答する一方、特定の小売事業者は探しておらず、さらに32%は「持続可能な購買行動を考慮していない」と答えています。
金銭面に関して、20%の人は「より多くのお金を払いたくない」と考えており、10%の人は「サステナビリティに関連するコストを受け入れる」と回答。持続可能性という概念は、消費者がサステナビリティに焦点を当てたブランドを求め、地球を守るために代償を払うことを厭わなくなって初めて到達できるでしょう。
オリジナル商品への関心が高まる傾向に
また、海外での買い物や委託販売、自分だけのオリジナル商品を作ることにも関心が高まっており、今後の普及に期待が寄せられています。
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質問:アパレル購入に関して利用したことがあるものは?(画像は『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査結果を基に編集部が作成)
消費者はソーシャルメディアをショッピングの一部として利用
小売事業者は、インフルエンサーやブロガーを活用して、今の時代に適したストーリーを伝えようとしています。30%が「新しいブランドや商品について知るためにソーシャルメディアを利用」し、29%「SNS広告をクリック」し、28%が「マーケティングからインスピレーションを得ている」ことから、消費者はソーシャルメディアをショッピングの一部として利用していることがわかります。
また、「ソーシャルメディアをフォローしていない、利用していない、影響を受けていない」と回答したのはわずか24%であったことも特筆すべき点です。最後に、20%が「特定のアパレルブランドや小売事業者をフォロー」しており、興味のあるブランドとの重要なつながりをソーシャルメディアを通じて作っていることを示しています。
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質問:アパレル、アクセサリー、靴の購入にソーシャルメディアはどんな影響を与えているか?(画像は『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査結果を基に編集部が作成)
ECで自分に合ったサイズを選ぶために、消費者が利用・参考にしているのは?
自分に合ったサイズを選ぶことは、アパレルを購入する際の最大の課題の1つです。小売事業者は、消費者がよりよい選択ができるよう、従来の方法からテクノロジーを利用したツールまであらゆる方法を採用しています。
従来の方法として、48%のEC利用者が「フィット感を示す指標を参考」にしており、46%が「サイズごとの寸法を記載したチャートを利用」しています。
また、消費者はレビューも参考にしており、38%が「フィット感に関する情報をカスタマーレビューから得ている」と回答。消費者のサイズを特定するプロファイリング・クイズは一般的ではないかも知れませんが、そのデータを活用することで将来の顧客につながる可能性が高いサブスクリプションサービスや革新的な小売事業者にとっては、重要なツールです。
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質問:自分に合ったサイズを決める際、どれが役に立つか?(画像は『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査結果を基に編集部が作成)
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アパレル成長の軌跡は、単純かつ簡単には予測できないでしょう。サプライチェーンの問題、在宅勤務の状況、実店舗の復活など、すべてがアパレルのパフォーマンスに影響を与えます。その昔、ドレスカジュアルがスーツを脅かし、その影響が他のカテゴリーにも及んだことを思い出させます。
ブロガーやインフルエンサーは、その勢いとマーケティング効果を維持するでしょう。委託販売やサブスクリプションサービスなどのモデルは、さらなる成長のために改良されるでしょう。若い消費者が主導権を握り、今後何年も続くであろうアパレル業界の流れを作っていくでしょう。
私にとって唯一変わらないことは、私がずっとショッピングを続けることだけです。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:アパレルは「コロナ前」に戻れるのか? データで読み解く消費者行動とニーズの変化 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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