BOOK REVIEW ウェブ担当者なら読んでおきたいこの1冊
『テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0』
神野 恵美(編集者、ライター)
混沌としたメディア、広告、消費者の関係性を読み解き
Web2.0時代の広告のあり方を知るロードマップ的一冊
- 『テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0』
- ジョセフ・ジャフィ 著
- 西脇 千賀子、水野 さより 訳
- 織田 浩一 監修
- ISBN:4-7981-1114-7
- 定価:本体1,600円+税
- 翔泳社
旧来の“テレビ支配”の神話が崩壊し、米国の広告業界が直面している現状や将来を指摘した本書。我が日本でもネットの黎明期から同様の理論が長年謳われてきた。だが、ネットがテレビを凌駕する時代を漠然と予測し得ても、それが広告分野にもたらす具体的な変革は、IT業界に身を置く人間でさえも想像力が追いついていなかったように思う。
ところが日本における昨今の広告スタイルでは、本書が指摘するようなネットが既存のメディアを淘汰する、融合するというよう以上の展開を広げている。テレビCMでは多くのドットコム企業が頻繁にスポットを打ち、いまやプロ野球2チームにネット系企業が名を連ねるというのが最たる例であり、ほんの数年前には想像もしなかったことだ。
書名が示すとおり、著者は盛んにテレビCMの崩壊を言及する。また、その神話性を崇拝し続け、旧態依然とした広告担当者や企業は生き残れないとひたすら主張する。さらに本書はマス広告以上の詳細なリサーチ能力や、ブランディング効果をもたらすネット広告の注目すべき有用性を米国の具体例をもとに解説する。
本書の論点が、新旧メディアがヤドカリとイソギンチャクのような微妙な共利共生の均衡の上に成り立ってもいる日本の場合にすべて適合するとは限らない。だが、広告が今後も加速的に新興し続けるという点は、共通して言えるだろう。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.2』掲載の記事です。
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