登場人物
筆者
某プラットフォームベンダーに勤務する係長K氏
iPhoneが発売されて約一か月。いよいよ市場に出回り、落ち着いて来たところだ。iPhoneの行列に並ぶと宣言して有言実行した筆者とその友人が、ある夜、五反田の飲み屋で語り明かしていると…。
■iPhoneはどうなの?
K氏「今日はお疲れさまでした」
筆者「お疲れさまでした。乾杯」
K氏「ところでどうですか、iPhoneは?」
筆者「どうもこうもないですよ」
K氏「…というと?」
筆者「最高です」
K氏「なあんだ」
筆者「まあ、ただ、世間がいささか騒ぎすぎの感はありますけどね」
K氏「たしかに凄いブームだよね。実際のところ、どうなんです?」
筆者「まあ端末としては売れてると思いますよ。いま、発売から一週間経ったけど、まだ簡単には手に入らないみたいですからね」
K氏「しかし驚いたな。清水さんほんとに並ぶんだもの」
筆者「実は行列に並ぶってことはこの連載の第一回で言ってるんですよ。誰も信じなかったけど」
K氏「そりゃそうだ」
筆者「まあ大きなトラブルもなくて良かったです」
K氏「あれだけの行列になるとはね。たかが電話の新機種で」
筆者「いやいや、iPhoneは電話じゃないと思うんですよ」
K氏「ネット端末?」
筆者「そうです。僕なんかいま“こいつだけでほとんどの仕事ができるんじゃないか?”と思ってるくらいで」
■AppStoreで商売するって大変なの?
K氏「AppStoreってどうなの?どうも手続きが大変そうだけど」
筆者「大変でしたね。お金を取ろうとしなけりゃ簡単なんですが」
K氏「清水さんとこのアプリ、かなり評判いいよね。ビジネスアプリでダントツの一位だって」
筆者「いやいや、まあそうでもないんですよ。あのランキングは国ごとに集計してるので。日本では売れすぎましたね。本来は使う人を選ぶアプリなので、もっとニッチなターゲットなんですよ」
K氏「海外ではどうなの?」
筆者「zeptopadのほうは英国のメディアに結構とりあげていただいて、ドイツ、ベルギー、ルーマニアあたりで好評のようです。ゲームのほうはメキシコ、ペルーなど南米を中心に世界中でランクインしてますね」
K氏「凄いね。ほんとに世界中で売ってるんだ?」
筆者「実感はまだないんですけどね」
K氏「iPhoneのダイナミズムって、ある意味そこなんだよね。気が付かないうちに売れてる」
筆者「それはウェブ全体に言えることかも。ただ、iPhoneの場合、ウェブと違ってタイムラグがあります」
■iPhoneアプリの意外な宣伝方法
K氏「今回、世界中にプロモーションしたと思うんだけど、具体的にどんなことをしたの?」
筆者「お決まりの方法ですよ。リリースを流して、Google AdWordsで広告。ワールドワイドで」
K氏「そうか、まさにAdWordsの出番だね。結構コストが違うの?」
筆者「そうでもないですね。日本のほうが割高なくらいかな。ただ、iPhoneってキーワードが1000円超えてて驚きましたけど」
K氏「たいていのアプリより高いね」
筆者「そう。なかなかの激戦区」
K氏「一番効果あったのは?やっぱりAdWords?」
筆者「それがねえ、プレスリリースなんですよ」
K氏「それは意外だね。どうして?」
筆者「いま、欧米で新サービスをうまく立ち上げるにはブロガーの支持を得るのが不可欠と言われてるんですが、ブロガーの一次情報ってやっぱりリリースなんですよね。日本の新聞に掲載されると、iPhoneのネタは世界中に配信されるみたいで」
K氏「海外から見ても、携帯電話先進国である日本の動向は気になるのかなあ?」
筆者「それはあるかもしれません」
■iPhoneの登場でコンテンツ業界が受ける影響
K氏「こうもiPhoneが売れちゃうとね、僕なんかは単純だからこれからコンテンツで商売していくのはきついのかなぁって思ったりしちゃうんだけど」
筆者「それは誤解されがちなポイントだけどむしろ逆ですね」
K氏「というと?」
筆者「実はすでにケータイであってもPCとまったく同じ情報を提供して課金しているサイトはほとんどないんですよ。みんな携帯電話の新機能や独自機能に対応したコンテンツで課金しているんですよ」
K氏「そうなんだ。でもたしかに言われてみれば、PCのウェブサイトで見られるようなものはそもそも課金されていないかもしれませんね。課金されるものといえば、ゲームやデコメみたいな携帯ならではのものが多い気がしてきたなあ」
筆者「その点だけみると、iPhoneといえども大きな違いはないですね。実際、地図アプリなどの一部は課金するものもありますし、ものによってはクレジットカード番号の入力が必須の場合もあります。ただ、PCのサイトを見るという用途については格段に良くなりましたね」
K氏「なるほどなあ」
■PCサイトのiPhone対応は是か非か?
筆者「PCサイトと一口に言っていますが、実は一年前からiPhoneが発売されている、いわばiPhone先進国の米国では、PCサイトのなかでもiPhone専用のページを用意しているサイトも増えてきました」
K氏「へえ。たとえばどんなサイトですか?」
筆者「Gmailなんかはその代表格でしょうね。iPhoneで見るとPCとはぜんぜん違う画面になります。驚くほど違和感がないので気づかない人も多いのですが」
K氏「日本でもiPhoneが認知されていくと、だんだんとそういうのが当たり前になっていくのかもね」
筆者「やはり読みやすいページというのはモバイル向けに最適化されたものが多いのですよ。そういう意味で、日本ではモバイルサイトが発展しているので、iPhoneが増えたとしても同じノウハウを活かして配信できるのが強みですね」
K氏「モバイル向けCMSを使うとiPhone向けにもできるってことか」
筆者「そうです。iPhoneを使うようになって思ったのは、たまにiPhoneで見られないページ、たとえば会社やお店の公式サイトで、地図がFlashだったりしてiPhoneで上手く見られなかったりすると、少し困るなあということです」
K氏「たいていのページはそのままでも読めるけど、少し凝ったページは読めなくなってるっていうのはありそうだね」
筆者「日本では圧倒的にInternet Explorerが普及しているので、iPhoneに搭載されているSafariでは見れなかったり形が崩れてしまうページも多いんですよね」
■iPhoneとどう対峙すべきか
K氏「iPhone、国内ではどのくらい売れているの?」
筆者「関係筋に近い知人に聞いた感触では、予想外に売れているみたいですねえ」
※行列
iPhone発売では、各地で行列が見られた。ちなみに筆者が並んだソフトバンク表参道では、前日夜十時過ぎの時点で約800人、発売当日は最終的に1,500人以上の行列となった。
K氏「そりゃあんな行列ができるくらいだもんね」
筆者「そうですね。あれには僕も驚きました。並ぶと言ってもせいぜい200人くらいかなと思っていたんですけど」
K氏「iPhoneを無視してはモバイルは語れないっていう感じになってきたかな」
筆者「まだ日本ではそこまでのものではないでしょう。ただ、業界の人は確実に影響を受けていますね。いまどこに行ってもiPhoneの話ばかりですよ。まずは使ってみないと、これをどう処すべきかわからないんじゃないですかね」
K氏「AppStoreに出ているアプリは本当に玉石混淆だよね。けど、いろいろとおもしろいチャレンジのものも多い。これは見ておいて損はないと思うよ」
筆者「そうですね。良くも悪くも品質にバラツキがあるので、最初は“こんなものか”と思って適当に買ってみて、ショボくても怒らないでいろいろ試してみると良いですね」
K氏「思えばiモードの初めの頃も、わけのわからないサイトが300円で課金しまくっていたっけ」
筆者「時間とともに淘汰されていくんですよね」
K氏「なんにせよ、モバイル業界もまた盛り上がっているというわけだ。乾杯!」
※写真はイメージです。
その二! 使ってみないとどう処するべきかわからない
AppStoreは玉石混淆。投資と割り切り使い倒すべし!
筆者のお気に入り居酒屋情報
ごっつい
住所:東京都品川区西五反田2-5-8野津ビル2F(地図)
電話:03-5436-0538
五反田のお好み焼き屋(渋谷店・吉祥寺店・新橋店などもあり)。お座敷は最大20名まで利用可能。鉄板の臨場感を味わえるテーブル席など、店内はいつも熱気に溢れている。ちょっとレトロな昭和ヒーローのおもちゃが目印だ。
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