初代編集長ブログ―安田英久

W3CがアクセシビリティガイドラインWCAG 2.0を勧告として発表

Web担のなかの人

ウェブの標準仕様を定める団体W3C(ワールドワイドウェブコンソーシアム)が、Webコンテンツのアクセシビリティに関するガイドライン「WCAG(Web Content Accesibility Guideline)」のバージョン2.0を12月11日にW3C勧告として発表しました。

高齢者や障がい者など、何らかの理由で通常のWebサイトではうまく利用しづらい人にも、こうすれば利用してもらいやすくなるというアクセシビリティの具体的なサイトへの適用の仕方や、正しくできているかの検証の仕方などが説明されているドキュメントです。

ちなみに、「W3C勧告」とは、その文書がW3Cによって承認され、内容が(いったん)確定したことを意味します。一般的な表現を使うと「正式版のリリース」ですね(ちなみに、その前の段階のものは、順に「ワーキングドラフト(草案)」→「最終草案」→「勧告候補」→「勧告案」と呼ばれます)。

WCAG 1.0がW3C勧告となったのが1999年5月ですから、約10年ぶりの改訂となります。WCAG 2.0の勧告に伴い、補助的な文書となる、「WCAG 2.0を満たすには」(クイックリファレンス)、「WCAG 2.0を理解する」(詳細なリファレンス)、「WCAG 2.0のためのテクニック」(開発者向けの具体的解説)などが、WAI(Webアクセシビリティイニシアティブ)から発表されています。WCAG 2.0の本文からも、それぞれの文書への参照が付けられていますので、併せて読むとわかりやすいでしょう。

同様にアクセシビリティの標準規格であるJIS X 8341が制定されたのが2004年でした。企業ではJISが制定されているのならばそれに従うのが良いと判断することが多いと思いますが、アクセシビリティに詳しい人に話を聞くと、「アクセシビリティに関してはJIS X 8341よりもWCGAを参照するほうが適切だ」という声を聞くことも多くなっていました。

実際にWCAG 2.0では、「よりテスト(検証)可能であること」が特徴となっているとのことです。自動化されたテストであれ人間が判断して確認するのであれ、より客観的に判断できるような内容になっているというのは、属人的なスキルに頼りがちなWebの世界にとっては望ましいことです。

WCAG 2.0での解説の基本は、次の4点。

  • 認知可能であること
    • 非テキストのコンテンツには代替テキストを提供する
    • 音声やビデオのコンテンツにはキャプションを提供する
    • 補助技術に対応した形式でコンテンツを提供する
    • 見たり聞いたりするのに十分なコントラストを確保する
  • 操作可能であること
    • すべての機能をキーボードで利用できるようにする
    • コンテンツを読んだり使ったりするのに十分な時間を与える
    • 発作を引き起こすようなコンテンツを使わない
    • コンテンツを見つけるためのナビゲーションを助ける
  • 理解できること
    • テキストは読めて理解できるようにする
    • コンテンツの出現したり操作したりする方法は予測可能なものにする
    • ユーザーが失敗しにくく、また失敗を修正しやすくする
  • しっかりと
    • 過去や将来の技術に対して互換性を最大限に保つ

アクセシビリティというと、「官公庁や大きな企業が仕方なく対応するもの」だという印象が強いかと思いますが、ニッチな分野であっても、そこに対応することで、一定の市場に対してロイヤルティの高い顧客を得られる可能性があるものです。

WCAG 2.0を機に、改めてアクセシビリティについて学んでみるのはいかがでしょうか。

この記事は、メールマガジン「Web担ウィークリー」やINTERNET Watchの「週刊 Web担当者フォーラム通信」に掲載されたコラムをWeb担サイト 上に再掲したものです。

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