アフィリエイトは“広告”と示さないと米国では違法? ソーシャルメディアでは? (前編)
オンラインマーケティングについて、米連邦取引委員会(FTC、日本における公正取引委員会)は、意外だとも思える規則を適用しようといる。少なくとも僕には意外だった。
先日、SEOmozのサラ・バードが、契約や法律に関する幅広いトピックについてエリック・エンゲ氏からインタビューを受けた。僕は誇らしい気持ちでその記事を読んだんだけど、特に興味を引かれたのは、サラがソーシャルメディアを利用したマーケティングについて語った箇所だ。
(FTCは)オンライン広告業者に対して、いわゆるステルスマーケティングに関する規則を適用する方針を明確に打ち出しました。これは要するに、何かを宣伝している人物がそれによって報酬を得ている場合、報酬を得ていることが明確にわからないのならば、注意書きを入れて、報酬を得ている事実を明かす必要があることを意味しています。
タイガー・ウッズがゴルフボールの広告に出たとしても、彼がそれによって報酬を得ていることは明白ですから、「この広告でタイガー・ウッズ氏は報酬を得ている」などと注意書きを入れる必要はありません。しかし、もっと微妙なケースもあります。もし誰かがチャットルームに入ってきて、ある商品を紹介したブログについてコメントを残し、そのブログにリンクを張った場合、その人物が商品の売り手と金銭的な関係があるかどうかは必ずしも明白ではないため、そのことに関する情報を開示する必要が出てきます。これは消費者が判断する上で重要な情報とみなされます。その人物や、その人物が当該商品について述べていることをどの程度信用してよいのか、消費者にはわからないからです。
その人物が商品のメーカーから報酬を得ていることがわかれば、消費者の受け取り方も変わってくるでしょう。したがって、もしあなたが売り手と提携してその商品を評価する好意的な記事を書くのならば、その商品が売れるたびに自分にも報酬が入ることを、サイトのどこかに明記しなければなりません。このことに、人々はかなり不安を覚えているようです。
現在のオンラインマーケティング業界には、この規則を公平性に欠けると考える人々がいます。個人的な考えとして、おそらくマーケティングがはるかに難しくなるだろうと思うし、人々の創造性を妨げるような気もしますが、商品に言及することでその人物が報酬を得ているかどうかわかることは、おそらく消費者にとっては有益なことでしょう。したがって、嬉しい規則ではないものの、おそらくEビジネス全体のためになります。結果として市場への信頼が増すでしょうし、市場への信頼が増すのはいつだってすばらしいことだと思います。
商品や広告メッセージについて定めたFTCの公式ガイドラインは、その一部がこちらで読めるし、それに関してジョン・ベル氏が秀逸な記事を書いてもいる。しかし正直なところ、上記のサラの回答を読んだとき、僕は不安を覚えた。
これらのガイドラインは厳密にどこで、どんなときに、どのような形で適用されるのか。僕の頭にたくさんの疑問が浮かんだんだ。
僕たちSEO業者がソーシャルメディアマーケティング(SMM)に関与する場合、あからさまに何かを宣伝するようなこと(そんなことをしたら効果がない)をしないウェブ活動も多いんだけど、こうなってくると、Diggにリンクを投稿することも、ブログにコメントを残すことも、FacebookやTwitterで企業アカウントを使った活動を拡大することも、何もかもが危険をはらんでいるように思える。
だが幸いにも、これらの問題の多くについてサラに質問し、すばらしい回答を得ることができた。以下に、僕の質問とそれに対するサラの回答を紹介する(各質問のすぐ下にあるのが彼女の答えだ)。
Qこれはつまり、企業から報酬を貰ってSMMを行う場合、アカウントの作成、投稿、コンテンツの提供、人間関係の構築(友達の登録)といった活動をするのに、逐一、企業との関係を開示する必要があるということなのかな?
AFTCの公式な見解は、誰かの商品について言及することで報酬を得ている場合、その旨を開示する必要があるというものなの。(タイガー・ウッズの例のように)それが宣伝であることが状況から明らかな場合を除いてはね。要するに、ある商品を推奨しているのに、それによって報酬を得ていることを明らかにしないのは、消費者に誤解を与える行為とみなされるというわけ。
だから、企業から報酬を貰ってSMMを行い、そこの商品に関する投稿を行ったり、商品へのリンクを張ったりする場合には、同時に自分とその企業との関係も明らかにしなければならない。
単にブログを書いたり、人々と交流したりしているだけで、特に商品について言及しているのでなければ、おそらく企業との関係を開示する必要はないわね。情報の開示は、実際に商品を推奨する場合にだけ関係してくるの。Twitterでつぶやく、友達の申請をする、商品に関係のないブログ記事を書くなど、商品について直接言及しないSMMの活動はほかにもたくさんあるでしょ。
Q企業がマイクロサイトでバイラルコンテンツを発信し、後になって企業名を明かしたり、そこからリダイレクトしたりするといったケースはどうなんだろう?
AFTCの規則では、リンクの購入や設置について言及していないわ(今後そういう規則が加わらなければね)。だから、マイクロサイトを構築して、そこからリダイレクトするような行為にFTCの新ガイドラインは適用されないんじゃないかしら。商品について言及していない限り、情報開示の義務は適用されないの。
そもそも、リンクベイトの中で商品を売り込まなければ、それがお金をもらった宣伝活動かどうかで消費者の側が混乱することもないはずだし。自分が行っているのは純粋にPageRankスカルプティングを目的とした活動であって、関連性のある多様なリンクを集めはしても商品への言及はしていないというのなら、情報開示義務の適用対象には当たらないと思うわ。
Qリンク構築契約についてはどうなんだろう? 業者はリンクを獲得することで報酬を得ていることを、(ディレクトリ、リソースリスト、ブロガーなど)すべてのリンク依頼先に対して、(たとえ個々のパブリッシャーに報酬を支払う必要がない場合でも)開示しなくちゃいけないのかな?
Aこの場合も、リンクを依頼する先のウェブマスターに対し、それによって報酬を得ていることを開示するところまでFTCの新規則は求めていないと思うわ。この種のやり取りは、消費者の商品に対する認識に影響するものじゃないもの。
QFTCの規則では、リンク購入も開示の対象になるのかな? 「サポーター」とか「スポンサー」というセクションに設置されたサイドバーのリンクが有料であることは誰でも知っているけど、グーグルはこのようなリンクにnofollow属性を使用するよう求めている。FTCはどうだろう? nofollow属性の使用は、リンクが有料であることを示すのに十分な措置だと考えているんだろうか?
AFTCは、新規則の中で、リンク購入やリンクベイトのことを具体的には取り上げていないの。リンクを張ることで報酬を得ていて、それが有料リンクであることが状況からはっきり判断できない場合には、おそらく「スポンサーリンク」などの表示をするべきでしょうね。
FTCがnofollow属性の有無を問題にするとは思えないわ。リンクの属性がどうだろうと、消費者の知ったことじゃないから。これはおそらく検索エンジンの関連性にだけ関わる問題で、FTCには無関係よ。FTCは、消費者が誤った印象を持つかどうかだけを問題としているの。
ただ、ウェブマスターがリンクを設置することで報酬を得ているとなると、問題はそう単純じゃなくなるかもしれないわ。そのリンクが特定の商品を推奨しているような印象を与えるおそれがある場合、ウェブマスターはリンクを設置することで報酬を得ていることを明らかにしとくべきね。報酬を得ていることを明らかにしないまま、自分のサイトの「お気に入り」リストにそういったリンクを追加するのもだめ。何らかの形で情報開示をしないまま、ある商品がいかにすばらしいかをブログに書いたり、その商品へのリンクを張ったりしない方がいいわ。
特に商品を推奨しているわけでもなく、アンカーテキストにも推奨するような言葉を使わずに、サイトのどこかに商品へのリンクを張るだけなら、おそらく情報を開示する必要はないでしょうね。すべては、消費者がそれをどう認識するかで決まってくるの。
※注:FTCの規則はあくまで米国内でのみ適用されるものであって、他の地域では規則が大幅に異なる可能性がある。
この記事は前後編の2回に分けてお届けする。今回お伝えしたサラの見解を受けて、次回は、FTCの新ガイドラインの下でソーシャルメディアマーケティングを行う場合、注意すべき点をまとめてみよう。→後編を読む
ソーシャルもやってます!