プレス/消費者×広報サイト―ネガティブな報道に迅速に対応するための法則
この記事では、企業のWebサイトが持つ役割を、対象とするユーザー(ステークホルダー)とサイトのビジネス目標の2軸に分け、それぞれのケースに合った事例と対策を具体的に紹介していきます。各記事の最後には、チートシート形式としてまとめたPDFファイルを掲載しています。全17パターンの業務に直結する実践的なノウハウの中から、あなたのサイトに合ったものをぜひ活用してください。
背景 | テーマごとのWebサイトの現状を説明 | |
---|---|---|
課題 | そのテーマに関して、Web担当者の多くが抱える問題を提起 | |
サイト構築のポイント | データ全体を通しての重要ポイントを解説 | |
コンテンツの具体例 | 数ある具体的なコンテンツの例を提示 | |
リスクと解決策 | 陥りやすい間違いやそれらをうまく回避するためのヒントなど | |
サイトの要素 | サイトに必要な要素の洗い出し | |
サイト構造図 | サイトの構造図や位置づけなど | |
成果の判定指標 | サイトの成果を判定するために確認する指標 | |
補足事項 | その他補足事項 |
対象ユーザーとサイトの目的ごとにまとめた全17パターンの記事一覧はこちらからどうぞ。
プレス/消費者×広報サイト―ネガティブな報道に迅速に対応するための法則
テレビや新聞で、保険料の未払いやリコール、食品偽装などの不祥事がクローズアップされる昨今ですが、そのとき企業のWebサイトはどのように活かされたのでしょうか? 今回はネガティブな事態が起きたときに備え、企業の広報活動としてWebサイトにどういった準備が必要かをお話ししていきます。
社会の厳しい目
日本のインターネット利用が一般家庭にも広まりをみせた2000年代は、「ディスクロージャー」「コンプライアンス」といった社会への企業責任に対する関心が世の中に広まった時期でもありました。インターネットの普及は、同時に企業に対する社会の監視の目をより厳しくシビアなものにしたといえるでしょう。インターネットは匿名性の高い媒体であり、つまりはクレームの言いやすい媒体であるということは以前もお話ししました。この媒体特性が、不祥事などのネガティブな要因に有効に機能してしまうのです。残念なことに企業Webサイトのアクセス数が飛びぬけて増えるのは不祥事が起きた直後なのです。それだけ社会全体が企業に対して厳しい目をもっているといえるでしょう。
- 不利益をこうむっている消費者
- 情報開示を求めるメディア
- 不安になった個人株主
- 就職を希望している学生
情報開示のスピード・深さが明暗を分ける
私はWebサイトのディレクターとしてさまざまな業種・業態の企業サイトを日々チェックします。中でも必ず行うのは、企業の不祥事がテレビのニュースで取り上げた際にその企業のWebサイトがどうなっているのかを確認することです。不祥事に限らず、台風上陸にともなう飛行機の欠航情報やホテルのアナウンスなど、大きな自然災害が起きた時にも企業サイトをチェックしています。ネガティブな事態に陥ったときの対処法として、企業サイトの傾向は大きく以下のように分類されます。
- Webサイトのトップページに「緊急のお知らせ」などのエリアを設け、お詫びとともに事態の詳細を記したコンテンツへのリンクが掲載されている
- 緊急の告知情報が「News」「お知らせ」「プレスリリース」などにまぎれて掲載されている
- マスメディアで取り上げられているにもかかわらず、Webサイトに変化はなく何の情報も掲載されていない
- トップページに1ページだけ「お詫び」情報が表示され、その他すべてのコンテンツが削除されている
あなたが担当しているWebサイトはどうでしょうか? ネガティブな事態を想定していない場合は「2」「3」または「4」になるでしょう。何の対策も行わない「3」は論外ですが、Webサイトの担当部署が総務や広報と連動していないと起こりうるケースです。ユーザーや社会に対して説明責任を放棄した最悪な状態だといえるでしょう。
「4」は全ての企業活動が停止するような事態(たとえば、9月11日に起きたテロ事件発生時の米国航空各社や保険料未払いが問題となったときのいくつかの保険会社)であれば致し方なしですが、そうでない場合、不祥事以外の情報を見たいユーザーをシャットアウトしてしまうためあまりお勧めしません。確かにすばやく対応できる方法ではありますが、お詫び以外の情報全てがアクセスできなくなることで、「店舗の連絡先を知りたい」「約款を見たい」「自分の契約内容を確認したい」といったユーザーのニーズに対応するコンテンツが閲覧不可になってしまい、結果としてより大きな混乱を招いてしまいます。ネガティブな事態であればあるほど、企業サイトにはより早く深い情報開示が求められるのです。
自社媒体としての責任を果たす
企業サイトは、他のどんな媒体よりも鮮度や量、詳しさが求められると前回お話ししました。情報開示のスピードや深さという点で最も優れた施策は、前述のなかでいうと
- Webサイトのトップページに「緊急のお知らせ」などのエリアを設け、お詫びとともに事態の詳細を記したコンテンツへのリンクが掲載されている
の状態でしょう。この記事を執筆している最中にも、花王株式会社で商品販売自粛のニュースが報道されました。報道とほぼ同時に花王のWebサイトには下記のように告知文が掲載されました。
販売自粛自体は残念なものですが、第一報としてのニュースリリースに止まらず、対象商品の詳細リストや自粛の前提となる分析数値、消費者対応窓口などがしっかりと案内されていて、Webサイトを通して誠意をもった対応が伝わってきます。別のニュースとの兼ね合いでテレビや新聞でこの情報が大きく取り上げられることはなかったようですが、Webサイトで継続的に詳細な情報を開示することで、花王のWebサイトは十分に自社媒体としての責任を果たせたといえるでしょう。
ソーシャルもやってます!