フォロー返しでユーザーとコミュニケーションする姿勢を伝える
フォロー返しでユーザーとコミュニケーションする姿勢を伝える
@miraikanでは積極的にフォロー返しをしているようだが、フォローやフォロー返しの方針はどのように決めていったのだろうか。
「当初からTwitterを未来館のなかで最も活用していた担当者が『Twitterはコミュニケーションツールなのだからフォローされたらフォローを返すのが当然だ』と強く主張こともあり、フォロー返しをすることにしました。著名人のアカウントでは、フォロワーは多くてもフォローはゼロというのをよく見かけていましたので、そのほうが未来館らしいのではないかという考え方や、JAXAや文部科学省といった関係のあるTwitterアカウントだけをフォローするというポリシーも考えてはいました。いまは未来館のTwitterアカウントでフォロワーとコミュニケーションをする姿勢を伝えるという意味合いが強いですね。タイムラインを使ってすべては見られないとしても、フォローしてくれているユーザーの普段のツイートを見ることは大切だと思っています
」(桑子氏)
興味を持っているユーザーを探し、積極的にフォローしていくことは考えていないのだろうか。
「他の企業アカウントでは、メンションではなくても自分の企業名をツイートしているユーザーをフォローしているケースもあるようですが、@miraikanでは、今のところフォロワーさん以外はフォローしていません。うまく表現できませんが、日本科学未来館らしくないと思っています。また、フォロワーだけをフォローしていると、フォローを解除された(リムーブ)ときの動きも把握できるんですよね。@miraikanでは、リムーブをされてもフォローは解除しませんので、フォロー数とフォロワー数の差がリムーブされた数になります。ツールでもわかる数値だとは思いますが、一目瞭然なのがいいんですよね
」(桑子氏)
効果測定
Twitterはお客様の声を聞くことができるツール
運営予算などはあるのだろうか。
「私たち内部スタッフの人件費以外にはほぼないですね。費用として発生しているのは、Twitter管理ツールのつぶやきデスクのSOHOプラン利用料ぐらいです。機能としては、日時指定予約と自動フォロー返し機能の利用を希望していました。同じような機能は海外の無料ツールでも見かけたのですが、そちらは日本語への対応状況が悪く、バグが多い印象を受けたので、他の日本のツールと比較したうえで非常に安い価格で安心して利用できるつぶやきデスクに決めました
」(桑子氏)
Twitterの効果指標はなにか設けているのだろうか。
「評価はTwitterに限らず難しい部分だと思っているのですが、フォロワー数の増加数と公式・非公式のリツイート数を主に見ています。ただ、それが来館者数の増加や科学コミュニケーションの普及にどの程度つながっているのかというレベルではまだ数値化できていないのが現状ですね。新しい企画展など、イベント対応に関する運用結果はそれぞれの担当者にフィードバックしていて、たとえば最近リバイバル上映した『暗やみの色』というドームシアターのコンテンツは、Twitterでものすごく反響があった一例です。Twitterでの大きな動きは経営者層にも直ぐに伝えるようしているので、上映期間の延長などの判断材料にもなっています。また、Twitterでされている未来館に関する会話は批判的な内容も含めて、具体的な業務改善に役立てようとしています
」(桑子氏)
「このリバイバル上映は、音楽を担当してくださったレイ・ハラカミさんが夏に急逝されたときに、『前に未来館で見た暗やみの色は素晴らしかった。また見たい』といった内容のツイートが非常に多く、それが再演決定の一因になったという経緯もあるんです。私のなかでは、Twitterは来館者数の増加のためというよりは、お客様の声を吸い上げるツールという見方のほうが強いかもしれません
」(詫摩氏)
その他に何かツールは活用しているのだろうか。
「フォロワー数の推移を把握するなど、解析のためにTwilog(ついろぐ)を使っています。もっと良いツールもあると思うのですが、ツールごとに仕様が微妙に異なるせいか数値の差が大きいため、運営開始当初から利用していたTwilogを利用しているという点で数値にブレがないと考え現在も利用しています
」(桑子氏)
質問を気軽にやり取りできるのは、
Twitterだからこそできる重要なお客様サービス
公式アカウントの運営から1年が過ぎようとしているが、Twitterを始めたことで生まれた活動などはあるのだろうか。
「少し小さい事例になってしまうのですが、@miraikanへの問い合わせで『ドームシアターのチケットを予約するときに、代表者がまとめて発券してもいいのか』というツイートがありました。実際には、まとめて発券いただけるので、その旨をすぐにリプライしました。こういった、ウェブ上には記載されていないけれど、電話で問い合わせるほどでもないような質問を気軽にやり取りできて、その結果を未来館に関心があるユーザーの方と共有できるというのは、Twitterだからこそできる重要なお客様サービスなのかな、と感じています。また、未来設計会議というイベントのように、ネット上で意見収集するコンテンツの企画は、公式Twitterがあることでよりスムーズに実現できていると思います
」(桑子氏)
「未来館では震災のときに天井の一部が落ちてしまったのですが、4月下旬にテレビ局がその取材に来てくださったんです。私たちとしては、天井が落ちてしまったという事実だけでなく、より安全な天井に作り替えていますということを伝えたかったのですが、実際の放映では未来館をはじめ、あちこちの施設で天井が落ち、その危険性を伝えることに終始した内容だったんです。これはまずいと思ったのですが、より安全な天井にしますという内容を伝える文書は放映が始まる前にホームページにアップしてあったので、その文書へ誘導するためのツイートをしました。タイムラインを見ていると、放送直後から『未来館はこんなことになっていたのか』『怖い』などで埋められてしまいましたが、『新しい天井に作り替え中です』とツイートした後は、『どんな天井だか楽しみ』などと流れが変わりました。あのときは本当にTwitterがなかったらどうなってしまっていたのかなと思いましたね。その後、改めて新しい天井についてもたくさんの取材をしてもらえまして、現在も多くの方にお越しいただけていることにホッとしています
」(詫摩氏)
最後に今後の抱負を伺った。
「フォロワーのみなさんに愛される未来館公式Twitterになりたいですね。探してみると『未来館に行って楽しかった』と、本当に嬉しいツイートがたくさんあるのですが、なぜかメンションでいただけないんですよね(笑)。リプライが全体的に少ないために固そうなアカウントのように感じていられたり、いろいろな理由があると思うんですけれど、何とか愛されるアカウントになりたいと思っています。今後は、現場の生の情報をもっと多く出していきたいと思っていますし、ウメサオタダオ展や世界の終わりのものがたりという面白い企画展も今年の終わりから来年にかけて控えていますので、それに合わせてTwitterも活用していきたいと思っています
」(桑子氏)
東日本大震災をきっかけに、見直された@miraikanの運営体制。地震・原発など未来館が取り扱う科学技術に関する正確な情報をなるべく早く届けることが多くのユーザーから望まれていたあの状況は、普段Twitterを利用していないような上層部のメンバーにTwitterの役割や重要性を伝える良い説得材料になったのかもしれない。10周年を迎えた日本科学未来館では、先端の科学技術を伝えるため今後も積極的にウェブを活用されていくとのこと。今後も同館の取り組みを見守っていきたいと思う。
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