エンハンストキャンペーンやユニファイドキャンペーン強制移行直前! 8分でわかる新機能と必要な準備
Google AdWordsやYahoo!プロモーション広告のリスティング広告担当者にとって、大忙しになる夏がやってきた。スマホやタブレットに対応するための「エンハンストキャンペーン」「ユニファイドキャンペーン」という新機能がそれぞれのリスティング広告プラットフォームに追加され、既存のキャンペーンも新しいキャンペーン形式に強制的に移行されるからだ。
「エンハンストキャンペーン」「ユニファイドキャンペーン」とは何なのか、既存のリスティング広告キャンペーンと何が違うのか、グーグルとヤフーでまったく同じなのか、そして、強制移行の前にどんな準備をしなければいけないのか。リスティング広告のプロがポイントを押さえて解説する。
- 強制移行直前! 加速するマルチデバイス化に対応した新たなキャンペーン機能
- 移行スケジュール:7月には強制移行が進む
- 新たなキャンペーン機能の特徴を6つのポイントで解説
- エンハンストキャンペーンとユニファイドキャンペーン4つの相違点&比較表
- 移行にあたっての準備と必要な対応4つのポイント
- 6つのよくある疑問とその答
強制移行直前!
加速するマルチデバイス化に対応した新たなキャンペーン機能
近年のスマートフォン、タブレットの急速な普及により、リスティング広告の在り方にも変化が訪れていている。
スマートフォンやタブレットの利用者数やそれに伴う検索数は年々右肩上がりとなっており、「会社や自宅ではPC、外出先ではスマートフォン、就寝前にはベッドでタブレット
といった、シーンや時間帯による使い分けがされるようになっているのは既知の事実である。
このように複数のデバイスを用いた検索行動やサイト閲覧といったユーザー行動は、今後もますます普遍的になると考えられる。そこで登場したのが、リスティング広告をマルチデバイス時代に対応させる新たなキャンペーン機能だ。主要プラットフォームで、それぞれ次のように呼ばれる。
エンハンストキャンペーン(Google AdWords)
ユニファイドキャンペーン(Yahoo!プロモーション広告スポンサードサーチ)
これまではデバイスごとにキャンペーンもしくはアカウントを分けて運用していたリスティング広告担当者も少なくないだろう。
しかし、そうした工夫は今後、不要になる。今回の新たなキャンペーン機能により、1つのキャンペーン内で「デバイス」「時間帯」「エリア」などの複数の要素を考慮して入札単価を管理することが可能となるからだ。
つまり、キャンペーンに対して配信デバイスは設定せず、原則はすべてのデバイスへ配信される仕様へと変更されるのだ。
2013年7月中旬~下旬に迫った移行を前に、新たなキャンペーン機能の概要と、移行スケジュール、エンハンストキャンペーンとユニファイドキャンペーンの違いを整理したうえで、移行前の事前準備と今後の運用のポイントについて解説していく。
移行スケジュール:7月には強制移行が進む
まず、エンハンストキャンペーンとユニファイドキャンペーンのスケジュールと特徴を確認しよう。
AdWordsでもスポンサードサーチでも、新たなキャンペーン機能の利用はすでに可能だ。つまり、今すぐにでもエンハンストキャンペーンやユニファイドキャンペーンの機能を利用してリスティング広告を出稿できる状態であり、従来型キャンペーンと新たなキャンペーン機能の両方が利用可能だ。
しかし、いずれ新方式に統一され、従来型のキャンペーンは利用できなくなる。
具体的には、過去に作成した従来型キャンペーンは、下記スケジュールで新たなキャンペーン機能へ自動移行される。
エンハンストキャンペーン(Google AdWords)の自動移行
→ 2013年7月22日(月)より随時アップグレード
※米国時間ユニファイドキャンペーン(スポンサードサーチ)の自動移行
→ 2013年7月13日(土)から2013年7月21日(日)にかけて順次アップグレード
※一部のアカウントは7月19日(金)より
「自動移行される」ということは、「既存のキャンペーンも強制的に新しい仕組みに移行される」ということを意味する。
仕様変更により意図しない広告配信や成果の変動が発生する可能性があるため、仕様を正しく理解して、事前に準備しておくことをお勧めする。
新たなキャンペーン機能の特徴を6つのポイントで解説
エンハンストキャンペーンやユニファイドキャンペーンは、これまでのリスティング広告キャンペーンと何が違うのだろうか? ポイントは次の6点だ。
- 単一のキャンペーンですべてのデバイスへ配信
- デバイス、時間帯、エリアごとの入札
- スマートフォン向け広告の設定
- サイトリンク機能の強化
- アプリダウンロード向け広告
- キーワード単位でのデバイスごとのURL設定
それぞれについてもう少し詳しく説明していこう。
単一のキャンペーンですべてのデバイスへ配信
従来のデバイス別のターゲティング設定はなくなり、原則は単一のキャンペーンですべてのデバイス(PC/タブレット/スマートフォン/フィーチャーフォン)に配信される。
キャンペーンの基軸は、「PC・タブレット+フィーチャーフォン」。
スマートフォンの入札は、PC・タブレットに対する、入札調整率(エンハンストキャンペーンでは「入札単価調整」、ユニファイドキャンペーンでは「入札価格調整率」)を設定することで実現する。
調整率を「-100%」に設定することにより、スマートフォンへ配信しないこともできる。しかし、スマートフォンのみへ配信する設定にはできない。また、PCとタブレットでは入札単価やターゲティング設定の切り分けは行えず、同一の設定が適用される。
フィーチャーフォンのみへ配信する設定や、フィーチャーフォンへの配信をしない設定はできる。
デバイス、時間帯、エリアごとの入札
前述のように、新たなキャンペーン機能では「PC・タブレット」が基軸となり、スマートフォンは「PC・タブレット」の入札単価に対する調整率(±%)で入札単価を設定する仕様となっている。
調整率は -90% ~ +300% の範囲で設定が可能であり、-100% の値を設定するとスマートフォンへ配信されない仕様となっている。
スマートフォン向け広告の設定
設定した広告をスマートフォン向けに配信するか否かの指定が可能。
ただし、広告グループ内に1つの広告しか存在しない場合には、特定のデバイスではなく複数のデバイスへ同一の広告が表示される。
複数の広告が存在する場合は、スマートフォン向け広告の設定を利用することにより、PC・タブレット向けの広告とスマートフォン向けの広告の管理が可能になる。
サイトリンク機能の強化
エンハンストキャンペーンでは、サイトリンクの設定がキャンペーン単位からさらに細かい広告グループ単位で設定することが可能になった。またスケジュール設定により時間帯や曜日でサイトリンクの表示を切り替えることが可能となっている。
なおユニファイドキャンペーンでは、クイックリンクオプションの広告グループ単位での設定は2013年7月22日(月)からの対応が予定されている。
アプリダウンロード向け広告
スマートフォンとタブレットにおいて、アプリダウンロードページへリンクさせるための広告フォーマットが追加されており、アプリが対応しているOS、デバイスのみに配信できる。
Google AdWordsでは従来より類似機能のClick-to-Downloadが存在したが、スポンサードサーチではユニファイドキャンペーンで初めて実装された機能だ。
キーワード単位でのデバイスごとのURL設定
新たなキャンペーン機能では、広告はPC・タブレットとスマートフォンで設定することが可能だが、キーワードはデバイスを問わず同一となる。
ただし、専用のパラメータ(エンハンストキャンペーンではValueTrack、ユニファイドキャンペーンではトラッキング用パラメータ)を利用してキーワードのURLを設定することで、デバイスに応じて異なるURLを適用することが可能だ。
エンハンストキャンペーンとユニファイドキャンペーン
4つの相違点&比較表
次に、エンハンストキャンペーン(Google AdWords)とユニファイドキャンペーン(スポンサードサーチ)で異なる点を解説する。
ポイントは次の4点だ。
- ディスプレイネットワークへの影響について
- スマートフォン向けの入札
- オプション機能の適用単位
- 複数デバイスを横断したコンバージョンの計測
それぞれについてもう少し詳しく説明していこう。
ディスプレイネットワークへの影響について
エンハンストキャンペーンではGoogleディスプレイネットワーク(以下「GDN」)も仕様変更の対象であるのに対して、ユニファイドキャンペーンはスポンサードサーチのみへ適用され、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)は今回の仕様変更の対象外となっている。
GDNでは検索用キャンペーンと同じくデバイスターゲティングには対応していないが、従来型キャンペーンと同様にOS・キャリア・端末の設定が可能であるため、検索用キャンペーンと配信可能なデバイス設定の組み合わせが異なる。
スマートフォン向けの入札
スマートフォンの入札調整率は、エンハンストキャンペーンでは広告グループ単位で設定が可能であるのに対して、ユニファイドキャンペーンではキャンペーン単位での設定となるため、この点を考慮してアカウント設計や調整率の設定を検討する必要がある。
エリア別の入札調整率に現時点で対応しているのはエンハンストキャンペーンのみであり、ユニファイドキャンペーンは2013年夏以降の対応予定だ。
オプション機能の適用単位
エンハンストキャンペーンでは、サイトリンクや電話番号オプションをはじめとする広告設定オプションのアップグレードを行うことにより、従来のキャンペーン単位での設定に加えて広告グループ単位での設定も可能となる。
また、スケジュール設定やサイトリンクごとのレポートが出力可能になるなど、機能が強化されている。
ユニファイドキャンペーンでは、現在はキャンペーン単位での設定のみだが、2013年夏以降にエンハンストキャンペーンと同等の機能改善が予定されている(クイックインクオプションの広告グループ単位での設定は7月22日から対応予定)。
複数デバイスを横断したコンバージョンの計測
エンハンストキャンペーンではスマートフォンで広告に接触した後にPCでコンバージョンに至った場合など、複数デバイスを横断したコンバージョン計測(クロスデバイスコンバージョン)に対応予定となっているが、ユニファイドキャンペーンでは同様の機能への対応は発表されていない(本記事の執筆時点)。
これらの内容をわかりやすく表で示すと、次のようになる。
エンハンストキャンペーン | ユニファイドキャンペーン | |
---|---|---|
ディスプレイネットワークへの影響 | あり | なし |
スマートフォンの入札調整率の設定 | 広告グループ単位 | キャンペーン単位 |
エリア別の入札調整率の設定 | 可能 | 不可 |
スマートフォン向け広告の設定 | 可能 | 可能 |
サイトリンク・クイックリンク オプションの設定 | 広告グループ単位 | キャンペーン単位 |
サイトリンク・クイックリンク オプションのスケジュール設定 | 可能 | 不可 |
クロスデバイスコンバージョン | 可能 | 不可 |
キーワード単位での デバイス別のリンク先URL設定 | 可能 | 可能 |
配信デバイス | エンハンストキャンペーン | ユニファイドキャンペーン | |
---|---|---|---|
検索 | GDN | ||
PC・タブレット・スマートフォン | ○ | ○ | |
フィーチャーフォンのみ | ○ | ○ | |
PC・タブレット | ○ | ○ | |
PCのみ | × | × | |
タブレットのみ | × | ○ | × |
スマートフォンのみ | × | × | |
タブレット・スマートフォン | × | ○ | × |
移行にあたっての準備と必要な対応4つのポイント
ではこのような変更内容を踏まえ、7月下旬の自動移行前の事前準備のポイントは4つある。
まだ準備をしていない人は、次の内容を参考に、準備を進めてほしい。
配信デバイスの決定
現在のキャンペーンにおける配信デバイスと、新たなキャンペーン機能の仕様を踏まえたうえで、配信するデバイスを決定する。
キャンペーンの新規作成/アップグレード
自動移行を待たずに新たなキャンペーン機能へ移行するには、次の2通りの対応がある。
- 新規キャンペーンの作成
- 既存の従来型キャンペーンのアップグレード
いずれの対応も、移行前・移行後のアカウント設計や既存の広告の品質を考慮し、自社に合わせたメリット・デメリットを踏まえたうえで検討することをお勧めする。
スマートフォン向け入札調整率の設定
従来型キャンペーンにおけるスマートフォンへの配信実績を元に、入札調整率を決定する。
強化される機能の検討
前述のとおり、エンハンストキャンペーンではサイトリンクをはじめとする広告設定オプションを広告グループ単位で設定できるようになるため、広告グループ内の広告やキーワードに合わせて適切なサイトリンクを設定することを検討する。
6つのよくある疑問とその答
最後に、エンハンストキャンペーンとユニファイドキャンペーンに関してよくある疑問とその答を示しておく。
Q1PCとタブレットのみに広告を配信することは可能か?
A1 スマートフォンの入札調整率を「-100%」に設定することで実現できる。
Q2PCのみに広告を配信することは可能か?
A2 PCに加えてタブレットへの広告配信が必須となるため、実現できない。
Q3スマートフォンのみへ広告を配信することは可能か?
A3 PCとタブレットへの広告配信が必須となるため、実現できない。
Q4スマートフォンの入札単価をキーワード毎に設定することは可能か?
A4 キーワード単位での設定はできない。エンハンストキャンペーンでは広告グループ単位、ユニファイドキャンペーンではキャンペーン単位で、PC・タブレットの入札単価に対する入札調整率を設定する。
Q5フィーチャーフォンへの広告配信へ影響あるか?
A5 基本的な仕様に変更はない。フィーチャーフォンのみへの配信、フィーチャーフォンへの配信をしないこともできる。
Q6コンバージョンタグの貼り替えは必要か?
A6 これまでと同一のアカウントで運用する場合は、コンバージョンタグの貼り替えは不要。ただし、移行に合わせて複数のアカウントを統合する場合には、コンバージョンタグの貼り替えが必要となる。
新たなキャンペーン機能に関して、変更の概要や移行のポイントについて把握いただけただろうか。
今後も継続的に機能がアップデートされると想定されるため、それらの機能を活用した運用・最適化が重要となってくるだろう。
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