「コンテンツは王様」ではない、信頼こそが王様だ――コンテンツマーケティングを成功に導く10のヒント(前編)
コンテンツマーケティングの目標は「見込みのありそうな客と親しくなって信頼を築くこと」だというのは、誰だってもう知っているだろう。この場合、コンテンツの狙いは特定の製品やサービスを売ることではない。コンテンツの狙いは、関心を持ってくれた潜在顧客にあなた自身を売り込むことにある。
人は物を買うときに、「自分が知っている人」「好きな人」「信頼している人」から買う。そんなの初耳だという人がいるかもしれないけど、ここで言いたいのは「親しさ」が信頼を生むということだ。
コンテンツマーケティングは、実際には目新しいものではない。でも最近オンラインで新たな関心を(しかもいい意味で)たくさん集めるようになってきた。世界中で、小規模企業の経営者たちがこうした実効性のあるマーケティング手法を再発見し、これを使って競争で優位に立とうとしている。
小規模企業の経営者が同業の大企業に対して持っている非常に大きな利点の1つは、対象のオーディエンスとはるかに個人的な関係を築けることだ。あなたには顔があり、声がある。人としてオーディエンスとやり取りできるし、そのためにとりわけ優れた方法は、顧客と話をすることだ。業界内のベストプラクティスをいくらかでも感じ取るには、他の人がどうやって成功しているかを追跡し、観察してみるのが非常に有効な方法だ。そこで、専門家たちがウェブ上で公開しているコンテンツマーケティングのヒントの中から、私が気に入っているものをいくつか拾ってみた。
1.他人のドメイン名にコンテンツを置かない
あなたの最高のコンテンツは、あなたが個人で保有しているウェブ資産(つまり、自分でホスティングしているウェブサイト)で公開しよう。
ビジネス界において、ソーシャルメディアは大量の情報を安く運ぶ貨物列車のような存在であり、そういった安価なメディアチャネルを通じてメッセージを広く発信することには大きな価値がある。それは間違ってはいない。
しかし、ソーシャルメディアで交流する目的は、集まった人たちの目をあなた自身のサイトに向けることであるべきだ。
誰か関心を持ってくれる人がいたら、次は顧客になってもらうか、あるいは少なくともメールマガジンを購読してもらおう。ソーシャルメディアは、交流して会話する(もちろんマーケティングも大切)ためにある。あなた自身のサイトこそが、魔法を起こす場所であり、潜在顧客の質問に詳しく答える場所であり、忠誠心を創造する場所なのだ。
ソーシャルメディアはすばらしい。積極的に使おう。ただし、何のために使っているのかを決して忘れないように。みんなの目をあなた自身のサイトに向けさせて、そこで会話をするためだ。
コンテンツを1つ作る前に、そのコンテンツをどこに置き、オーディエンスにどうやって見てもらうか考えてほしい。
効果的なコンテンツマーケティングは労力を要する。すぐれたコンテンツを作るには、エネルギー、思考力、時間が必要だ。だからこそ、あなたが作るコンテンツのほぼすべては、自分の思い通りにできるプラットフォームを使って、自身が管理するドメイン名に置かなくてはいけない。
Facebook、Twitter、Google+のためにたくさんのクリエイティブなコンテンツを作ってはならないし、「20分で作るウェブサイト」のようなサービスで、誰か他の人のドメイン名を使わざるを得ないような場所に公開してもならない。
ドメイン名が「www.(あなたのサイト名).com」でなければ、自分のプラットフォームを持っていることにはならない。あなたの好きなコンテンツを、好きな言い回し、キャッチコピー、画像で公開できなければ、自分のプラットフォームを持っていることにはならない。
2.顧客をだますのではなく、顧客の役に立とう
コンテンツマーケティングの目的は、潜在顧客と信頼関係を築くことにある。そうした信頼を深める最も効果的な方法の1つは、はっきりと正直に、包み隠さず、顧客の質問に答えたり、情報を提供したりすることだ。
顧客へのメッセージの中で、あなたの提供している製品やサービスにどうしても触れる必要があるなら、自由に言及すればいい。ただし、あなたのコンテンツが広告やセールスレターのように受け取られてしまうと、それではコンテンツマーケティングにならず、セールスや宣伝になってしまう。
信頼は、強引に売り込むことで醸成されるのではなく、助けを求めている人たちを純粋に下心なく助けその役に立つことで育まれる。
実際のところは、押し売りさえしなければ大丈夫だろう。個人的な話をする人もいれば、楽しませようとする人も、情報を伝えようとする人もいる。これはすべて、対象のオーディエンスによって異なる。「相手は何に関心があるだろうか」「何について気にかけているのか」を意識し、売り込みさえしなければ、可能性は実に無限に広がっている。
コンテンツマーケティングは、単にメッセージを強調して顧客に伝えることではなく、顧客が探しているものを見つけられるよう手助けすることだ。
顧客ニーズを掘り起こすために、顧客がネット上で何を探していて、あなたの業界やセクターについてどう言っているか探ろう。あなたのビジネスに直接影響があるかないかにかかわらず、これらのニーズを満たすサービスを顧客に提供することだ。
その支援が役に立つことをオーディエンスが認識してくれれば、あなたのセクターで誰かを探しているときは真っ先にあなたを思い浮かべるようになる。
それから、実際に顔を合わせることや、ちょっと「質問してみる」こともポイントだ。そういったことの効果を忘れないでほしい。
3.自分が書きたいものではなく、人々が読みたがるものを書く
コンテンツマーケティングの取り組みで成功したいなら、まず大事なことを理解しておく必要がある。それは、自分本位になってはならないということだ。
重要なのは決してあなたではない。あなたの会社でも、あなたの製品でも、あなたのサービスでもない。あなたの会社や製品がどんなにすばらしいか、ということが問題なのではない。あなたの会社の社長がどんなにすばらしい慈善活動をしているかということでも、あなたの会社で働くことがどんなに楽しいかということでもない。あなたのことは一切問題ではない。自分のことを持ち出したとたんに、あなたは信頼を失う。その瞬間、また1人、潜在顧客を失うことになる。
では、私の言うことを復唱してみよう。重要なのは常に顧客であって、決してあなたではない。それがコンテンツマーケティングというものだ。セールスでもなければ、宣伝でもない。もしセールスや宣伝をやりたいなら、それはそれで結構なことだが、コンテンツマーケティングの中でやることだけは避けたい。コンテンツは読者のために書く、それはいつだってそうだ。
コンテンツは、常にオーディエンスのことを考慮しなくてはならない。
これは、あなた自身のニーズではなくオーディエンスのニーズを考慮する必要があるということでもある。コンテンツマーケティングは、人々に何か価値あるものを提供すべきであることを思い出そう。
あなたとしては、その日がどんなにひどい1日だったかについて書いたり、あるいはスーパーの売り場にできる行列をどうにかしてほしいと書いたりしたいかもしれないが、そういったことは人々が読みたくなるような内容ではない。
人々は、自分が考えていることについて書かれたものを読みたがっている。そこで、オーディエンスが何について心配したり喜んだりしているのか自問してみよう。そうして、そこから先に進もう。
4.業界のインフルエンサーに言及しよう
あなたが、自分の属するニッチや専門分野において自他共に認めるソートリーダー(思想の先導者、実践的先駆者)であったとしても、価値ある話題の持ち主がほかにいないということにはならない。実際、他の市場プレイヤーに言及すれば、自分自身の信頼性や信用を高められる。
だからと言って、直接の競合相手を引き合いに出すべきだと言いたいわけではない(そうすることが効果的な場合もあるけれど)。しかし、最近の顧客は想像以上にずっと詳しい情報を持っている。顧客は賢い。あなたが唯一のエキスパートでないことを知っているのだから、あなたがあたかも専門家は自分だけであるかのように振る舞ったら一体どうなるだろう? 当然のことながら、あなたの信頼は失われていくだろう。
他のエキスパートに言及するということは、あなたの意見に賛同する人が他にもいることを示す優れた方法だ。この効果は大きい。
この手法には、ほかにもメリットもある。そう、検索エンジンへの対策としても有効だということだ。まだ半信半疑だと言うのなら、試しにやってみるといい。あなたが言及した人々は、言及されたことに感激して、あなたのコンテンツをタダで紹介してくれるかもしれない。こうしたバイラルマーケティングや共有のすばらしいところは、皆が利益を手にできることだ。
コンテンツマーケティングの記事で、あるテーマに関して論じる際には、オーディエンスに認知されていてそのテーマについて信頼されている個人に言及したり、その発言を引用したりすると効果的だ。
人は自分の名前が人目に触れるのを好むので、自分のサイトでそのコンテンツを無償で紹介し、あなたのブランドや専門知識の露出機会と影響力をさらに高めてくれるはずだ。
5.あらゆるタイプの読者に対応するコンテンツを作成する
自分の得意なニッチから手を広げて、関連する多様なニッチの読者もターゲットにしよう。中核となるオーディエンスを置いてきぼりにしろというわけではないが、人はたいてい専門以外のことにも関心を持っているものだ。一例を挙げるなら、会計士が感心をもっているのは、会計だけではない。
たとえば、あなたが不動産業者だったとしよう。新しい街に引っ越してくる人たちが家の購入以外に関心を持つことは何だろう?
持ち家に住んでいる人はペットを飼っていることが多い。では、その地域で最高のドッグランはどこだろう?
持ち家に住んでいる人はたいてい子持ちだ。では、その地域でいちばんいい学校はどこだろう?
最高のレストランは?
リフォーム業者、造園業者、医者など、その地域で一番なのはそれぞれどこだろう?
ここで、さっき説明した4つ目の項目「業界のインフルエンサーに言及しよう」をちょっと振り返ってみよう。あなたがこうした建築業者や医者やレストランをマーケティングコンテンツ記事で紹介してリンクを張ったとしたら、先方があなたやあなたの会社にどれだけ感謝するか想像してみてほしい。しかもそれが「ベスト○○」のような記事だとすれば、ひときわ目立つはずだ。
これは単純な例だったかもしれないが、自分が専門とする業界やニッチについて、ターゲット層がそれ以外の何に関心を持っているか想像力を働かせよう。あなたは私よりも自分の顧客をよく知っているはずだ(そうでしょう?)。
もう1つのポイントは、人には友だちがいるという点だ。誰が自分のコンテンツを見てそうした情報を求めていると思われる友人に伝えるか、コンテンツを提供する側には決してわからない。ただ、私自身そうした紹介をいつもしているし、あなたもきっとやっているはずだ。私が家の購入には興味がないとしても、「あなたの町で最高のピザ店」というタイトルで地元の不動産業者が投稿した記事を見かけたら、新居を探している友人に、おもしろい記事を書いているセンスのいい不動産業者がいるよ、と教えるかもしれない。
自分のニッチ以外の分野も視野に入れた行動は、あなたが会社のために営業活動をしているだけではなくて、顧客を大切に考え支援しようとしていることを示す上で極めて有効だ。これによって(たぶん間違いなく)他の何にもまして、強力な信頼関係が構築できる。
コンテンツマーケティングの基本原則は、適切な見込み客と顧客を呼び込むために、理想とする読者を想定してコンテンツを作成することだとされる。どれだけニッチな業界であっても、大半の企業はこのルールを忠実に守っている。
しかし、そうした理想の読者設定のせいで、どんなに優れたコンテンツを作っても多くの人の目に触れることがないという場合もある。
コンテンツマーケティングは成功するまでには時間がかかるため、ウェブサイトやSNSページへのトラフィックを増やすために、理想的な読者以外の人たちに向けてコンテンツを作成するとよい。ターゲットのオーディエンスに向けた1種類だけのコンテンツを用意するのではなく、他の読者にも役立つような一般向けコンテンツも作成しよう
この記事は、前後編に分けてお届けする。次回は、コンテンツマーケティングを成功に導く10のヒントのうち、「コンテンツマーケティングのリンクの意味」「コンテンツの宣伝」「関係の重要性」「編集長として考えること」「他人のコンテンツを参考にすること」についてお伝えする。
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