スマホサイトとアプリのプロモーション施策を徹底解説、3つの攻略ポイントとは
同じスマートフォン(スマホ)のプロモーションでも、Webサイトとアプリでは施策がまったく異なるため、広告の特性を理解することが重要となる。第3回月例セミナーの第三部では、スマートフォン広告市場と広告施策の特徴について、GMOアドパートナーズの高橋信太郎氏とGMO NIKKOの谷本秀吉氏が講演し、解説を行った。
スマートフォンサイトとアプリにおけるプロモーションの違い
本セミナーでは、ソーシャルメディアやWeb広告戦略の情報を提供する「アド論」の編集長でもある、谷本氏が中心となって解説が行われた。まず谷本氏は、スマートフォンのユーザー動向について、ニールセンの「Smartphone Media Insight Report vol.8(2013年3月版)」のデータを示しながら、男女別年齢分布では男性が20代と40代、女性は20代と30代にスマートフォンユーザーが多いことを示す。また、10代などの若年層ほどスマートフォンからインターネットを長時間利用していることを示し、10代から20代がよりヘビーに利用することによって、スマートフォン広告が盛り上がっていくとした。
スマートフォンの利用頻度については、PCと比較して出勤途中、昼休み、帰宅途中、休日の外出中に多く使われているとし、サイト利用ではGoogle検索、YouTube、LINEなどが多く、GoogleやYahoo!のサービス、Facebookなどが多く利用されていることが示された。谷本氏はこれらの調査結果を踏まえ、日本は海外に比べて圧倒的に通信環境が整備されているため、さまざまなことをPCではなくスマートフォンで行っているユーザーが増えてきていることや、電車通勤が多く、その際にスマートフォンを利用しているユーザーが増え、通学中の利用などによって10代が増えている、という仮説を立てている。
オンラインショップにおいては、コンバージョンとなる購入はまだまだPCのほうが多いが、スマートフォンは主に情報収集のために使われ、購入行動までをスマートフォンで決めてから、実際の購入をPCで行っていることも考えられるという。
続いて谷本氏は、スマートフォン広告市場について解説を続ける。CyberZ社が2013年3月に発表した「スマートフォン広告市場動向調査」では、2012年のスマートフォン広告市場はネット広告全体の約13%となる856億円となっており、2013年は1,116億円に達する見込みだ。
856億円のうち、約62%がリスティング広告で、ディスプレイ広告が約24%、成果報酬型広告が約13%となっている。出稿量としては、各媒体とも上位は「ゲームコンテンツ」で、次いで「書籍・コミック」「ライフスタイル」「ビジネスツール」「エンタメ」などの広告主が出稿しているという。これについて谷本氏は「ゲームや書籍・コミックなどのコンテンツ以外の広告主にいかに出稿してもらうかが今後の課題」と説明する。
スマートフォン広告の種類については、第二部のグーグルと同様にWebサイトとアプリの2つのプロモーションがあることを示す谷本氏は「この2つは仕様も広告の手法もまったく違う」と説明する。これらの違いと特性を谷本氏は、ポジショニングマップを示しながら解説した。
アプリ向けのプロモーションでは、一定の効果が見込めることからリワード広告が盛り上がっているという。ただし、獲得したユーザーがそのままアプリを利用するかどうかは疑問が残るため、顕在ニーズを持つアクティブユーザーを獲得するためには、検索連動型やコンテンツマッチ型の広告を活用することが重要となる。その他のスマートフォン広告としては、純広、アドネットワーク・DSP、アフィリエイト、リワードなどが各プレイヤーとともに解説された。
スマートフォン向けリッチ広告の期待が高まる
続いて谷本氏は、スマートフォン広告にも新しい潮流が来ていると話す。認知や興味を獲得するきっかけとなるメディアとしての活用が期待されているスマートフォンでは、動画などリッチな表現が可能な広告メニューが増えてきていると説明する。
その1つが、米国で非常に伸びてきているインタースティシャル広告だ。自動的に次ページにジャンプする広告ページを挿入する広告手法で、アプリの起動時やゲームの終了後などで掲載されていることが多く、日本でも今後利用が拡大することが予想されている。
動画広告の利用も広がっている。豊かな表現でユーザーに大きな印象を与えることが可能で、スマートフォンとの相性も良く、YouTubeでは動画視聴直前に広告を配信している。GMOグループとしても、動画広告の取り扱いは非常に増えているといい、若年層にアピールできる広告としても注目されているという。また、バナーをタップすることで広告表示領域が拡大し、全画面広告などを表示できるエクスパンド広告も、認知拡大やブランディング効果を期待できる新たな広告手法だ。
さらに、スマートフォンはロケーションや時間と密接に連動するモバイルデバイスであるため、O2Oを加速させる広告手法への期待も大きいと谷本氏は説明する。たとえば、国内ではLINEの公式アカウントやスポンサードスタンプが活用されており、企業のLINE公式アカウントは平均200万人の友達を獲得しているという。クーポン発行で来店を促進したり、スタンプをコミュニケーションに使ってもらったりすることで、認知度やブランディングを向上させる試みが増えてきている。
モバイルデバイスの特性を理解したサイトプロモーションを企画
スマートフォンサイトのプロモーションでは、SEO、アドネットワークやリスティング広告など、「誘導手段はPCとそれほど変わらない」が、モバイルデバイスという特性を理解し、時間やロケーション、他のデバイスとの連動を意識してプランを立てることが重要だと谷本氏は説明する。たとえば、スマートフォンの利用頻度が高い出勤や帰宅の途中、昼休みなどにアプローチできる手法が効果的だ。
また、スマートフォンに最適化されたサイトが望ましいのは当然だが、グーグルが提供するスマートフォン最適化サービス「GoMo」や、PC用サイトのURLを入力するだけで簡単かつ安価にスマートフォンサイトを作成できる「DudaMobile」というサービスも紹介された。これらを利用すれば、コストを抑えてスマートフォン専用のランディングページを作成することができ、気軽にスマートフォンの広告コミュニケーションにトライできるという。
アプリプロモーションでは2大ストアの上位獲得が鍵
アプリプロモーションでは、ダウンロードしてもらうための施策として、主要マーケットであるApp StoreとGoogle Playのランキングで上位を狙うことが重要だと谷本氏は説明する。両者はアプリのダウンロード数をランキングの要素としているが、何らかの広告手法を利用しなければ上位獲得は難しいという。
プロモーションのステップは主に2つ。リワード広告などでストアの順位をアップして自然流入ユーザーの拡大を狙う「ストアランキング施策」と、アドネットワークやサーチなどの運用型広告中心の施策で、ニーズの高いユーザーの効率的な獲得とその後のアクティブ化を狙う「ライフタイムバリュー(LTV)向上施策」の2つがあり、最近ではLTVをより重視する傾向にあると谷本氏は説明する。
ストアランキング施策は、App StoreとGoogle Playで少し異なるという。App Storeではダウンロード数がリアルタイムにランキングへと反映されるため、リワード広告などでとにかくダウンロードにつなげることで効果を上げられるが、Google Playはダウンロード数だけでなく、ユーザー評価や起動数も加味されている可能性があり、App Storeよりも攻略が難しいという。
コントロールがしやすいApp Storeでのアプリプロモーションは、以下の3つのパターンに大別して順位施策を行うことができ、目的やメリット/デメリットで使い分ける必要があると谷本氏は説明する。
各タイプの施策は、上位ランクをどのように維持するかによって、リワード広告にかけるコストや効果も異なる。コストはかかるが、複数回に分けてリワード広告を出し、常に50位以上を目指す(50位ほどからダウンロード数が伸びてくる)ことで、自然流入ユーザーを増やしてランキングを上げていくスーパーロングタイプが最近では注目されていると谷本氏は説明する。
一方で、Google Playはランキングのアルゴリズムが複雑なため、まずはリワード広告を出し、上昇傾向を見ながら広告予算の配分を考えていく必要がある。
LTV向上施策では、アクティブユーザーであることを判断するKPIが重要となり、継続率(インストールから○日目の利用率)、課金率(アプリ内アイテムなどの購入率)、ARPU(ユーザー1人あたりの課金額)、ARPPU(課金ユーザー1人あたりの課金額)の4つの評価指標を意識しながら、広告を運用・最適化していく必要がある。
実際にGMOグループが手がけたアプリプロモーション事例を示した谷本氏は、初期段階でストアランキング施策を行い、リワード広告を集中投下することでランキングを上げたとしても、必ずそれらのランキングは落ちてしまうため、続くLTV向上施策でアドネットワークを展開し、優良な課金ユーザーを狙う運用で売上ランキングを長期間キープしていったことを明かす。
また谷本氏は、毎月の課金額に制限のあるユーザーもいるため、月初にアプリの売上が増える傾向にあり、月末にかけてプロモーションを行い、月初に質の高い課金ユーザーを囲い込むことも1つの短期集中型のプロモーションテクニックだと説明した。
また、アプリで効果測定を行うためには、アプリ自体に効果測定専用のSDKを導入しておく必要があることも解説。ただし、両ストアともポリシーの改定があるため、一度導入したSDKをそのまま利用できるわけではないことも明かされた。
ネイティブアプリとWebアプリの使い分け
続いて、ネイティブアプリとWebアプリの違いについて説明する谷本氏は、「ネイティブアプリ」「ハイブリッドアプリ」「Webアプリ」の特徴比較を次の図のように説明した。
ネイティブアプリのメリットとしてはパフォーマンスやプッシュ通知が、Webアプリのメリットとしてはアップデートの柔軟性やリアルタイム性によるキャンペーンのやりやすさが挙げられた。また、WebアプリはHTML5が利用できることもメリットとなるが、新たな技術であり、ブラウザや端末にも依存するためバグなどが発生しやすいことも指摘。アプリの目的によってメリットを使い分けることが重要であるとした。また、ハイブリッドアプリについては、ネイティブとWebアプリの両方の要素を理解した人的リソースが少なく、人材確保や育成が課題となることを指摘した。
今後、ネイティブとWebアプリのどちらが主流になるかについては多くの議論が行われている。昨年から今後はWebアプリが主流になるとも言われており、国内の主要プラットフォーマーもWebアプリを中心にサービスを展開しているが、全体を見るとネイティブアプリが全盛で、特にグローバルでのゲームアプリはネイティブが主戦場となっているのが現状だ。これらを踏まえて、谷本氏は「今後はWebアプリがもっと盛り上がってくるのではないか
」と話している。
スマートフォン攻略3つのポイント
谷本氏は最後に、スマートフォン攻略のポイントを3つにまとめている。1つ目は、「エリア(地域)×ロケーション(場所)×時間帯」で最適なプランニングを行うことで、これらの要素をしっかりと考えたコミュニケーション設計が重要であるとした。
2つ目は、スマートフォンが認知や興味のきっかけとなるデバイスであることだ。スマートフォンで完結して商品を購入するといった行動はまだ少なく、たとえば帰宅途中にスマートフォンで興味を持った商品を、帰宅後にPCで調べて購入するといった行動が仮説として立てられる。したがって、興味喚起のパワーが強い動画広告やリッチ表現の広告が今後重要性を増すことが予測できるという。
最後はアプリの攻略だ。必要に応じてアプリを作り、上位ランクを狙ってユーザーの利用を広げることもプロモーションにおいて重要になってくる。スマートフォン攻略において、アプリプロモーションは避けては通れないと谷本氏は説明した。
オリジナル記事はこちら:「スマホサイトとアプリのプロモーション施策を徹底解説、3つの攻略ポイントとは」2013年5月27日開催 月例セミナーレポート(2)
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