デジタルネイティブの正体と新世代がWeb担当者にもたらす影響
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の394
バック・トゥ・ザ・フューチャーが教えてくれること
元号が平成に改まった年末、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」が封切られました。舞台は1985年のカリフォルニアですが、「2」は30年後が舞台となります。それは「西暦2015年」。つまり、今年です。
昨年末には、作品に登場した宙に浮くスケボー、「ホバーボード」の製品化が発表され「映画に間に合った」と話題を集めました。他にも、「チューブの中をクルマが走る」といった、奇抜な「未来表現」はいくつかありましたが、私にとってもっとも印象的だったシーンは、21世紀のカリフォルニアにも20世紀と変わらぬ「日常」があったことです。テクノ・ユートピアへの「穿った見方」は、この作品がきっかけだったのかもしれません。
だから「デジタルネイティブ」など信じてはいませんし、それは「妄想」だと証明できます。また、その過程からWeb担へ与える2つの影響を発見します。ちなみに映画の2015年では、FacebookもInstagramも登場していません。ネットは「想定外」に発展したツールです。
デジタルネイティブとは
「デジタルネイティブ」とは、生まれ落ちたときからデジタル機器やネットが存在することから、これらを日常的に駆使できる「世代」を指します。ウィキペディアの定義によれば、90年代半ば以降の生まれを対象とし、特徴として、
- 現実の出会いとネットでの出会いを区別しない
- 相手の年齢や所属・肩書にこだわらない
- 情報は無料と考える
と挙げます。「嘘」といえば過言でしょうが、若者への誤解を拡散させる悪質な「レッテル」です。
知人のJK(女子高生)に、ネットでの出会いを尋ねると「気持ち悪い」と答えます。しかし「LINE」などのSNSを経由した「友だちの友だち」は別にカウントします。つまり、知人というフィルタリングを前提としているのです。「ネットでの出会い」とは、不特定多数の人物との接触という意味ではありません。
また、相手の属性にこだわらないのは「若者」の特徴ですし、情報に価値があると知っている若者は昭和時代から少なく、漫画や雑誌の回し読みなど、今風にいう「シェア」によって情報(コンテンツ)を無料で得たものです。
バカでも使える
そもそも、デジタルネイティブの存在自体が「妄想」です。生まれ落ちた時代で技術が身についていることなどあり得ず、技術の習得に練習は不可欠です。ネットが当たり前の今の時代においても、「PCメールの使い方がわからない」という若者も存在します。
また、「団塊ジュニア」が生まれ落ちたころには、自動車はすでに「ネイティブ」でしたが、彼らのだれもがいきなり自動車を運転できるわけではありません。自転車だって同じです。三輪車だっててこずる幼児が近所にいます。これが「証明」の1つです。
スワイプやタップなど、スマホやタブレットの操作方法は「バカでも使える」ように改良されてきたものです。飛躍すれば、「スマホはバカのもの」と言ってもいいでしょう。Web担当者流に換言すれば、「ユーザビリティの勝利」に過ぎません。
現代JKの事情
ここからWeb担当者への影響を見つけます。つまり、「より簡単に、よりわかりやすく」が求められるということです。
キーボードやマウスの操作を、苦労の末に習得した世代がユーザーなら、多少の不便を乗り越えようと「努力」をしてくれることでしょう。しかし「スマホネイティブ」の世代は、これらの苦労は未経験です。多少の不便さえ、我慢してくれないWebの時代になるということです。
先のJKはスマホを操り「LINE」で仲間と連絡を取り合います。しかし、中毒的な利用はしていません。部活にバイトに定期テスト、クラスメイトとのリアルでの「恋バナ」に追われる学生には中毒になるほど時間がない、すなわち「リア充」なのです。また、団塊ジュニアなら「ウォークマン」と「電話」、その後の世代なら「ポケベル」、あるいは「ファミコン」や「ゲームボーイ」に興じ、雑誌や漫画を読んでいたそれぞれの時間が、「スマホ」に集約されているだけのことに過ぎません。
使うツールの変化は、外形的なライフスタイルに影響を与えますが、「人間」という生き物への影響はさほどありません。
可視化から生まれる誤解
ネットで検索をして見つかるのは「ネットの住民」だけです。そこにリア充の若者は含まれていません。一方、ネットにおぼれる若者像は「可視化」されるため、そこから「誤解」が生み出されます。それが「デジタルネイティブ」の正体です。
昭和時代も平成も、21世紀少年もさして変わらないとすれば、現在のWeb担当者の近未来が少し見えてきます。「スマホ」はバカでも操作できるように設計されています。ブラインドタッチを習得する苦労を必要としません。さらにマウスすら過去のものとなりつつあります。
ある大学の准教授が、絵文字入りの卒論を嘆き、まるまる「コピペ」の論文を嘆いたツイートが、ネット界隈で話題を集めていました。すでに卒論すらスマホで書く大学生が増えているのです。最終的には「ワープロソフト」で仕上げますが、それも「ワープロが得意な友だち」に依頼するといいます。ちなみに、こうしたリアルにおける人間関係の存在も「学生はリア充」という仮説を裏付けます。
Web担当者の未来
「デジタルネイティブ」の増加は、「マウスを操り、キーボードを叩ける人材の不足」へとつながり、加えて少子高齢化が進む現代では、採用市場は売り手優位が進みます。手に職、技術がなくても、「若い」というだけで採用される時代が到来すれば、一定の知識や技術を求められる「Web担」志望者は激減するのは自明。すると、自己研鑽を惜しまなければという条件付きですが、Web担当者は「安定」した職種になるかもしれません。
もっとも、生まれ落ちた「世代」で人を分類するのは年寄りの「思考停止」。新しい風俗に習慣から落ちこぼれた、自分を慰めるためのレッテル貼りとは、社会人になった当時「新人類」と呼ばれた経験からの結論です。
今回のポイント
デジタルネイティブは幻想
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