【レポート】Web担当者Forumミーティング 2014 Autumn

広告から脱却し、新規顧客を獲得できるコンテンツマーケティングの3つの成功ポイントと4つの成功事例

コスト削減、顕在化していない市場の取り込み――多くのメリットを得られるコンテンツマーケティング
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オウンドメディアマーケティングやコンテンツマーケティングに注目が集まっている。実際に実践を始めている企業も増えてきた。初期コストの削減や、ソートリーダーシップの獲得、まだ顕在化していない市場の攻略など、コンテンツマーケティングにはさまざまなメリットがある。コンテンツマーケティングを成功させるポイントとは何か、成功事例を交えながら解説する。

コンテンツマーケティングの特長とメリット

株式会社イノーバ
代表取締役社長
宗像淳氏

Web担当者Forumミーティング 2014 秋に登壇したイノーバ 代表取締役社長の宗像淳氏は、「広告からの脱却! 新規顧客の50%を獲得できるコンテンツマーケティングとは? 有益性と3つの成功ポイント」と題して、コンテンツマーケティングの概要や有効性、成功の秘訣などについて、事例を交えながら講演した。

米国Content Marketing Instituteは、コンテンツマーケティングを下記の通り定義している。

コンテンツマーケティングとは適切で価値あるコンテンツを作成し配布する技術である。ターゲットとなる見込み客のことを理解し、これを明確に定義することにより、見込み客を引き寄せ、獲得し、見込み客と関わり合い、見込み客に購買に結びつく行動を促すことを目的とする。

  1. 見込み客を集客し
  2. 顧客のニーズを育成して
  3. コンバージョンし、定着させる

これがコンテンツマーケティングのモデルとなるのだ。

宗像氏はこの定義を端的に「コンテンツマーケティングとは、お客様のために価値あるコンテンツをつくること」と説明している。

コンテンツマーケティングのモデル

手法自体は新しいものではなく、従来から実践している会社も多いが、従来のマーケティングは「商品自体を売り込む」のに対し、コンテンツマーケティングは、「商品に関するアイデアで惹きつける」という点が異なる。米国では、B2B企業の93%がコンテンツマーケティングを行っており、そのうちの73%が何かしらの施策でコンテンツの量を増やそうと考えているという。

一方、日本でも、宣伝会議2014年2月号の調査によると、注目のマーケティング施策として、オウンドメディアマーケティングに次いでコンテンツマーケティングが2位となっており、注目度の高まりがうかがえる。

2014年に注目のマーケティング施策は?(出典:宣伝会議2014年2月号)

なぜコンテンツマーケティングが広がりつつあり、どのようなメリットがあるかについて宗像氏は、下記を挙げる。

  • 少ない投資で始められる
  • ソートリーダーシップを取ることができる
  • まだ顕在化していない市場を攻略できる

まず最初に、コンテンツマーケティングは少ない投資で始められることが大きい。内製で行えば、投資ゼロで行うことも可能で、小さく始めて効果を見ながら投資額を増やしていくこともできる。

価値の高いコンテンツを制作し、興味を持ってもらうことで、ソートリーダーシップ(特定の分野におけるリーダーシップ)を取っていくこともできる。

さらに、まだ顕在化していない市場を攻略できることもメリットのひとつだ。これまでのリターゲティング広告やリスティング広告、販促キャンペーンなどは、企業や商品などを知っていて具体的に検討している「顕在層」にしか効果がなかった。コンテンツマーケティングなら、悩みがあるが商品に対してのニーズを自覚していない「深潜在層」や、ニーズはわかっているが具体的な商品を知らない「潜在層」にもアプローチが可能になるのだ。

 リスティング広告被リンク型SEOコンテンツマーケティング
即効性
(3ヶ月~)

(5ヶ月~)
コスト対効果×
単価高騰
△→◎
コンテンツが蓄積するほど
資産効果でROIが改善
蓄積効果×
育成効果××
良質な見込み客

コンテンツ蓄積に時間がかかるため、リスティング広告や被リンク型SEOよりも即効性は低いが、コスト対効果、蓄積効果、育成効果などのメリットは高い。そのため、競合よりも早く始めてコンテンツを蓄積し、オーガニック検索を呼び込んだり、ソーシャルでシェアされるようにしたほうが有利であると宗像氏は説明する。

コンテンツマーケティングの成功事例

宗像氏は、コンテンツマーケティングの成功事例をいくつか紹介した。

1. 従来は書籍を買わなければ知ることができなかった情報を配信する「mintlife」

資産管理をテーマにした「mintlife」

まず挙げたのは、米国の個人向け資産管理サービス「mint.com」だ。同社は2007年から個人の資産管理をテーマに20代のビジネスマンに向けたコンテンツを、オウンドメディア「mintlife」で毎週2~4本掲載してきた。スライドショー、動画、インフォグラフィックスなどのリッチコンテンツを充実させ、節約や生活の知恵、貯蓄・ローン、投資・財テクなど、従来は書籍を買わなければ知ることができなかった情報を配信することで集客し、自社のサービスの紹介に誘導する形だ。

FacebookやTwitterで伝播されやすいコンテンツを作れば、新たな集客の入り口となる。共感されやすいコンテンツで人を呼び込めることも、コンテンツマーケティングの重要なポイントだ(宗像氏)

mintlifeのコンテンツマーケティング

2. ユーザーの20%をECページへ誘導、メガネ専門Webマガジン「OMG Press」

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メガネスタイルマガジン「OMG Press」

2012年にオープンしたメガネ専門ECサイトの「Oh My Glasses」では、メガネに関する情報を配信するWebマガジン「OMG Press」を運営し、メガネ専門Webマガジンが他にないこともあって好評を博している

月間17万ユニークユーザー(UU)を稼ぎ、そのユーザーの20%をECページに誘導することに成功している。Oh My Glassesの全体売上の20%がOMG Press経由の流入で、訪問者の30%がリピーターになっているという。OMG Pressでは、記事に関連のある商品のバナーを目立つように配置し、オーガニック検索で訪れた潜在顧客が何を探しているのかを考え、徹底したユーザー目線で作成されているという。

OMG Pressのコンテンツ

3. ビジネスハックなど仕事に役立つ情報を配信する「Salesforce Social Success」

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企業のマーケ担当者がターゲットの「Salesforce Social Success」

CRMソリューションを中心としたクラウドコンピューティングサービスの「Salesforce.com」もコンテンツマーケティングに先進的に取り組んでいる。同社が運営している英語圏向けの「Salesforce Social Success」では、企業のマーケティング担当者をターゲットに、仕事に役立つ情報を多数発信している。同サイトからの誘導により、サイトアクセス数と資料のダウンロード数が増えるなどの効果が出ているという。

日本のSalesforceのサイトでも、例えばビッグデータなど最近話題になっていることに関する記事や、動画などのコンテンツを使ったマーケティングが行われており、最終的に関連する事業のSalesforceの事例に落とし込むことによって、一定の効果を上げている。

Salesforce Social Successのコンテンツ

4. 会社全体の取り組みとして記事を作成する「ソフトウェアセキュリティの気になる話」

セキュリティに詳しくない人に向けた「ソフトウェアセキュリティの気になる話」

ソニーデジタルネットワークアプリケーションは新規事業としてセキュリティソフトウェアの開発・商品化を行っており、プッシュ型営業からの脱却やコスト削減のためにコンテンツマーケティングを行っている。オウンドメディア「ソフトウェアセキュリティの気になる話」では、専門性が高く、提供価値が一般化しておらず、ニーズが顕在化していないマーケットを創出するため、セキュリティに詳しくない人に向けた記事を配信。当初は外注で記事を作成していたが、社内のセキュリティの専門家が興味を持って自らが記事を書くようになり、会社全体の取り組みとなって記事が増えるようになったという。

宗像氏は、「Web担当者だけで記事を増やすことはなかなか難しいため、外注をうまく利用することも1つの作戦。また、社内の他の部署に協力を求めながら記事作成の体制を整えていくこともポイントとなる」と話す。

コンテンツマーケティングを成功させる3つのポイント

宗像氏の語るコンテンツマーケティング成功の秘訣とは、「運用体制×戦略的なコンテンツ×場所」である。つまり下記の3ステップだ。

  1. 書き手をうまく確保して運用体制を作る
  2. 集客してコンバージョンさせるコンテンツを戦略的に考える
  3. ソーシャルでの拡散やオーガニック検索での流入を狙うためのSEOなどを行う

中長期の施策であるため、社内の理解とある程度の忍耐は必要になってくる。「これまで実践してきた企業の中には、飲み会に行くたびに上司にコンテンツマーケティングの話をして、少しずつ刷り込んでいくようにしたという話もある。事例などを参考にしながら社内の理解を得てほしい」と宗像氏は語り、いち早くコンテンツマーケティングに取り組みを始めることが重要だと説明して講演を終えた。

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