【レポート】Web担当者Forumミーティング 2014 Autumn

Googleアナリティクスを今すぐユニバーサルアナリティクスに移行する5つのメリットと注意点

早めに移行を行うことで大きなメリットを得るサイトの5つの特徴についても解説
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多くの人が利用しているアクセス解析ツール「Googleアナリティクス」(GA)は、2016年には新たな「ユニバーサルアナリティクス」(UA)に完全移行することが発表されている。ユニバーサルアナリティクスは、どのような点が既存のGoogleアナリティクスと異なり、移行にはどのような注意が必要なのか。「早くユニバーサルアナリティクスに移行すべき」サイトの5つの特徴もあわせて紹介する。

ユニバーサルアナリティクスのコンセプトは“Agility”(俊敏)

株式会社メディックス
ソリューション部
次長
於保真一郎氏

Web担当者Forumミーティング 2014 秋のランチセッションに登壇したメディックス ソリューション部 次長の於保真一郎(おほ・しんいちろう)氏は、「ユニバーサルアナリティクス移行攻略~Google アナリティクスの新バージョンの特長・活用方法~」と題し、アクセス解析ツールの有効活用方法と、2016年にGoogleアナリティクスから完全移行されるユニバーサルアナリティクスの特徴とメリット、移行方法について講演を行った。

多くの人が利用しているアクセス解析ツール「Googleアナリティクス」の既存のタグ「ga.js」は、2016年にはその機能が停止され、新たな「ユニバーサルアナリティクス」(UA、analytics.js)のタグに完全移行することが発表されている。2014年5月に、アメリカで開催されたグーグル主催のアクセス解析カンファレンス「グーグルアナリティクスサミット2014」にて、今後の強い展望として掲げられたコンセプトが「Agility(俊敏)」である。時間のかかるデータ収集と加工処理を俊敏にして、PDCAサイクルを高速に回すための機能がユニバーサルアナリティクスには追加されているのだ。

「ユニバーサル」(包括的)という名前のとおり、従来のGoogleアナリティクスに比べてより広い範囲で分析を行え、他のデータとの統合が行えることもユニバーサルアナリティクスの特長だ。

既存のタグ(ga,js)を使ったGoogleアナリティクスのデータ収集は2014年4月以降の2年間で使用できなくなり、GAタグではデータ処理が行われなくなるため、2016年3月までの間にすべてのアカウントでユニバーサルアナリティクスのタグに移行する必要がある。

於保氏はユニバーサルアナリティクスの特徴として下記の3つを挙げる。

ユニバーサルアナリティクス3つの特徴

  1. Googleアナリティクス標準機能
  2. レポート反映のパフォーマンス向上
  3. 独自の分析機能

1つめに、ユニバーサルアナリティクスはGoogleアナリティクス機能を基礎として新たな構造で再構築されている。そのため、現在のGoogleアナリティクスの機能は利用することが可能だ。

2つめが、レポート反映のパフォーマンス向上だ。前述したとおり、構造自体が改善されているため、データ処理プロセスの高速化と、計測を行うためのトラッキングコードの軽量化が実現されており、特にスマートフォンのアクセスなど通信が遅い場合でも高いパフォーマンスを実現できる

そして3つめが、ユニバーサルアナリティクスに移行する最も大きなメリットとなる、独自の分析機能の搭載だ。深く多角的に分析したいというニーズに応える「深堀り分析のためのデータ取得枠追加」、スマートフォンやタブレット、PCなどの相互利用状況を分析する「マルチデバイス分析機能」、外部データを取り込むことのできる「各種データのインポート機能」、Eコマースサイトの分析に有益な「Eコマース機能拡張」などが用意されているほか、今後の新機能はGAではなくユニバーサルアナリティクスに搭載されていることが発表されている。

新機能を必要とするなら、Googleアナリティクスの使用停止を待たずに早期の移行を検討することも考えられる(於保氏)

さまざまな機能拡張で迅速に深堀分析が可能

ここからは、ユニバーサルアナリティクスの機能拡張についての詳細を説明する。

1. カスタムディメンション

「ディメンション」とは、指標をつけて分析を行う際の「分析軸」のことを指す。カスタムディメンションは、分析軸をカスタマイズするものだ。Googleアナリティクスの5枠(カスタム変数)から最大20枠(カスタムディメンション)に増やされ、より多彩なデータ取得によって深堀り分析を行いやすくしている

たとえば、人材サイトの検索条件項目を細かく設定することによって、サイト利用者の行動把握に活用したり、ユーザーの入力内容を把握して特定のワードでの検索回数や特定のページへの到達割合・コンバージョン率などを見たり、職種などのセグメント別にレポートを出して行動の比較を行ったりできるようになる。

カスタムディメンションとは

2. 拡張Eコマース

Eコマース機能の拡張では、全訪問、商品閲覧、カート投入、チェックアウト、購入完了などにおいて簡単な操作でKPIを設定でき、デバイスごとの比較もできるようになった。「商品の販売状況」レポートもグラフでわかりやすく、閲覧回数やカートの商品の追加/削除などをチェックでき、ユーザーのショッピング行動を深掘りして見ていける。

3. カスタム指標

Googleアナリティクスではページ移動を計測できる指標が用意されていたが、ユニバーサルアナリティクスではページ移動しないアクションについても任意に指標を設定することができる

たとえば、サイト内検索結果ゼロ件ヒット数や、PDFのダウンロードボタンのクリック数を取得できる。もし、「皮財布」と「レザー財布」のサイト内検索結果数で皮財布が110件、レザー財布が0件という結果が出れば、レザー財布で検索しているユーザーを取りこぼしていることがわかり、サイト内検索を調正するといった施策につなげることができるのだ。

4. インポート機能

外部データ取り込みができるインポート機能も追加され、効率的・多角的な分析が行えるようになった。商品データベースなど基幹システムのデータを組み合わせた分析を同じプラットフォーム上で行うことができる。

たとえば、商品情報番号に商品名を紐付けて分析をわかりやすくしたり、広告コストや払い戻し金額を取り込んだりでき、そうして作成した深堀り分析のレポートをブラウザー上で閲覧できるようになるというわけだ。

5. マルチデバイス分析

従来のGoogleアナリティクスの場合、同じユーザーであっても、モバイルでアクセスしたユーザーはユーザーA、PCでアクセスした場合はユーザーB、タブレットならユーザーCといったように、アクセスした端末ごとに別のユーザーであるという計測しかできなかった。マルチデバイス分析では、会員登録の際に同一のユーザーIDをキーにして、異なるデバイスでアクセスした場合も、同じユーザーであることを認識でき、デバイスの重複レポートやデバイス経路、ユーザー獲得デバイスなどを分析できる

マルチデバイス分析とは

これらによって、多く詳細なデータも一括管理で素早く処理でき、「ユニバーサル」な分析が可能となるのだ。

移行方法と注意すべき点

ユニバーサルアナリティクスへの移行方法について於保氏は、「適切な分析を行うためには、設定が重要だ。適切なデータ環境を整備するように移行する必要がある」と話す。特にドメインをまたいでいる場合などは、しっかりと設定を行って移行しなければ、データがつながらず、適切なデータを取得できない。

移行する場合は、管理画面での設定作業のほかに、ユニバーサルアナリティクスのタグに入れ替える作業が必要となり、この作業に大きな労力が必要となってくる。於保氏は、早めに移行の対応を行ったほうがよいサイトとして、以下の5つのサイトを示している。

早めの移行を行うべきアカウント

早めの移行を行うべきアカウント
  1. サイトリニューアルを直近で予定している
  2. 会員用のログイン機能がある
  3. 複数デバイスでのユーザー利用を想定している
  4. 複数ドメインにまたがっている
  5. ECサイトである

特に、複数ドメインにまたがっているサイトでは、リンクの修正を管理画面で簡便に行うことができたり、ECサイトでは拡張された機能を有効に利用できたりするので、Googleアナリティクスの使用停止前に移行するメリットがあるという。

また、アカウントによっては自動的にユニバーサルアナリティクスに移行されている場合もある。自動的に移行されているかどうかは管理画面で確認でき、設定内容は引き継がれるが、過去のデータは手動で移行させて、タグの張り替えを行う必要があるので注意したい。また、移行の際には、セッション定義がGoogleアナリティクスとユニバーサルアナリティクスで異なるため、データの前年度比が激しくなる場合がある。ECサイトのカートシステムの対応の確認も必要だ。大規模サイトの場合は、大量なタグの修正が必要となるため、実装漏れがないようにすることも気をつけたい。

於保氏は最後に、「移行作業には十分な要件定義や実装対応を伴う。タグマネージャーの利用を推奨したい」と語り、講演を終えた。

データをアクションにつなげられないウェブ担当者が多い

ちなみに於保氏は、講演の最初に、現在のアクセス解析について、ウェブ担当者は「データからアクションできない症候群」にあるとも指摘していた。コロンビア大学ビジネススクールによると、マーケッターの36%が、「多くの顧客データがあっても扱い方がわからない」と回答しており、多忙な中でしっかりとPDCAを回せずにいる企業が多いという。データを加工処理するだけで多くの時間が取られることも、アクションを起こせない一因となっているのだ。

アクセス解析ツールで適切なデータを取得し、的確かつ俊敏にデータをチェックするためには、以下の図の9つのステップがある。

データからアクションへつなげる9つのステップ
  1. 解析の目的を明確化する
  2. 分析要件を決める
  3. データをとる
  4. データをみる
  5. 原因や対策を考える
  6. 何を実行するか決める
  7. アクションを実行する
  8. 価値を判断する
  9. 組織展開/継続化する

これらのステップはドミノに例えることができる。連動していかなければアクションまではつながらず、どれか一つでも欠けてはいけないのだ。分析してリニューアルのアイデアが出ても予算が取れなかったり、システムの改修ができなかったりするなどのネガティブな要因が発生することは多いが、アプローチを工夫し、目的を見据えて優先順位を付け、アクションにつなげることも重要となる。

「ユニバーサルアナリティクス」では、データが大量かつ迅速に取得できるが、その際にデータをカスタマイズして取得することによって、より本質を見極めやすくなると於保氏は語る。基本的なデータの取得のみでは憶測情報が多く事実が見えづらいが、しっかりとカスタマイズ取得することで憶測が減って事実が増え、的確な判断ができるようになってくるのだ。

どんな高機能ツールを導入したとしても、活用しなければ意味がない。また、適切なデータを取らないと価値が半減する(於保氏)

そのため、アクセス解析ツールを利用する際には、まずビジネスの目的を明確化し、用途を見極めて適切にデータを取り扱うことが重要となる。目的ありきで考え、「WHY」(なぜ導入するのか)、「HOW」(どのように解析するのか)、「WHAT」(何をすべきなのか)と進めていく必要があるのだ。

PDCAを回すにしても、同じところを回るのではなく、スパイラルのように回るごとに上昇していくようなイメージでなければならない。単純にPVが伸びた、コンバージョンが上下したというのではなく、中身が重要なのだ。より深くまでデータを取得して活用し、他のデータも取り込んで統合データとして、多角的に俊敏に見ていく必要があるのだ。

UA移行コンサルティングサービスを行う「メディックス

用語集
Googleアナリティクス / KPI / UA / アクセス解析 / コンバージョン / コンバージョン率 / スマートフォン / セッション / ダウンロード / ヒット / リンク / 訪問
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