マーケターは「脱 媒体別戦略」を掲げるべし Web広告研究会が2015年WAB宣言を発表
脱 媒体別戦略
~媒体別戦略から、生活者別戦略へ~
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会Web 広告研究会は、これからのマーケティング戦略として、「脱 媒体別戦略 ~媒体別戦略から、生活者別戦略へ~」を2015年Web広告研究会宣言として発表した。
3月23日に開催した、第29回WABフォーラムで発表したもの。
同会では、会員社で共有する意識をWeb広告研究会という「組織」のなかの閉じたものとせず、同じような課題を抱える会員以外の企業・個人・研究者にもディスカッションを通じて広げていきたいという趣旨のもと、2002年より「WAB宣言(Web広告研究会宣言)」を発表しており、今回が16回目の宣言。
「脱 媒体別戦略」の背景
このWAB宣言の背景を、Web広告研究会の発表内容をもとに、編集部の見解もあわせて解説しておこう。
2015年WAB宣言の背景にあるのは、
- 企業の戦略は、変化していく生活者の行動に合致しているべきだ
- そのためには組織の構造も変化が必要だ
ということ。
生活者はすでに、「テレビ」「雑誌」「ネット」など媒体にこだわらず、情報に触れたり、欲しい情報を得ようとしたりしている。
それに対して、企業のコミュニケーション戦略の立案は、まだまだ媒体別に設計・実行されていることが多いのが現状だ。
そして、多くの企業において、広報・広告に携わる組織が、媒体別の設計や実行に合わせる形で縦割りの組織になっていることが多い。
生活者を取り巻く環境に目を向けると、インターネットやスマートフォン、さらには今後さらに増えていくであろうスマートデバイスなど、新しいメディアやデバイスが生まれ続けている。
そして、企業がそうした変化に対応するよりも先に、生活者がそれらの新しい環境になじみ、日常に取り入れているのが現状だ。
昨今「UX(ユーザーエクスペリエンス)」や「CX(カスタマーエクスペリエンス)」といった言葉を聞くことが増えているが、前述のような生活者の変化に対応し、潜在顧客を含めて企業とのコミュニケーションのなかで「良い体験」を顧客にしてもらえるようにしようとすると、媒体別の設計や戦略では、対応しきれないのが現状だ。
そうしたこともあり、「オムニチャネル」と呼ばれる、メディアやチャネルに対して透過的に顧客とコミュニケーションする方向性にも注目が集まっている。
しかし、オムニチャネルでの顧客コミュニケーションを実現しようとすると、前述の「組織内における部署間の壁」という問題に妨げられることが多いのが、現実だ。
デジタル関連の部門だけでは、本当のオムニチャネルは実現できず、必ずさまざまな部署との連携や協力が必要になる。
にもかかわらず、既存の部署には、既存の収益構造があり、長くなじんでいる数値指標があり、その世界では当然となっている“言葉”や常識や慣習があり、部署間のパワーバランスがあり、管轄する役員や役職者の好みや“定年までの逃げ切り願望”がある。
そもそものオムニチャネルでのコミュニケーション設計が難しいことに加え、そうしたことが、顧客とのコミュニケーションを、本来あるべき姿に変えていくことを難しくしている。
そうした課題を解決すること、さらには、媒体別・チャネル別ではないコミュニケーションを考察・設計・実行できる人材を育成していくことが、日本のマーケティングを良い方向に発展させるには必須であり、先送りすべきことではない。それが、2015年WAB宣言の背景にあることだ。
「Web担当者」の方のなかには、デジタル世界での顧客コミュニケーションにおいて重要な役割を果たしている人が多いだろう。
しかし、なじんだ「Web担当者」という言葉にとらわれることなく、統合的なマーケティングコミュニケーションを考え、それを実現できるように社内を動かしていける人材になっていくことが、現在、そしてこれから、求められる。
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