多様化するタッチポイントでリッチな体験を提供するためにマーケターがするべきこと
顧客とのタッチポイントが多様化するなかで、顧客体験を向上させ、購入につなげるために企業は何をすればいいのか。Web担当者Forum主催のセミナーで行われた、「Adobe Marketing Cloudで描く、お客様中心のマーケティングエコシステム」と題した講演では、アドビ システムズ コンサルタントの船井宏樹氏が、プロファイルデータをマーケティング施策の立案や実施につなげるためのエコシステム構築法について、Adobe Marketing Cloudが提供するさまざまな機能を基に解説した。
デジタルマーケティングではリッチな顧客体験が企業のブランドになる
近年、Webサイトにアクセス可能なデバイスの多様化に伴い、消費者とのタッチポイントはますます広がっている。今年アドビ システムズが発表した、1,000人の消費者を対象としたWebアンケート「消費者行動調査2014」の結果によれば、テレビや新聞、雑誌といった従来型のマスメディア広告を見て興味を持った商品の情報を、Webサイトで調べる消費者は88.3%に到達している。
また気になった商品の情報は、店頭に足を運んで店員に聞く消費者が47%であったのに対して、スマートフォンやパソコンで調べる消費者は52%も存在する。このように、Webサイトは消費者との重要なタッチポイントとなっており、「必要な情報が見つからない」など、Webサイトが来訪者の期待に応えていない場合、情報収集や商品の購入を中断する人が62.6%も存在することが報告されている。
顧客は、Webサイト等のタッチポイントでどのような体験ができるかによって企業を評価するようになっている。例えば、「商品を様々な角度から見たり、色を切り替えられたりする」「オプションなどを含めた見積もりができる」といった機能に魅力を感じている。つまり、そうしたリッチな顧客体験こそが、企業のブランドとなっている(船井氏)
そして、顧客が満足できるような体験を提供していくためには、従来のマスを相手としていたものから、個々の顧客、すなわち“個客”の要望に応えられるよう、Webサイトを変革していくことが重要になるという。「そのためには一人ひとりのプロファイルデータとコンテンツを連携させることが重要であり、この2つが分断されてはならない」と、船井氏は補足する。
しかし、多くの企業では十分なプロファイルデータが収集できていない。また、データを収集し、Web解析を行っていたとしても、KPIの推論の確認だけに利用しているケースがほとんど。これからは、顧客一人ひとりの姿を表すプロファイルデータに応じて、最適なコンテンツを提供し、ピンポイントでの接客を実現していくことが不可欠となる(船井氏)
マーケティングサイクルではデータとコンテンツをいかに連携させるかが鍵
マーケティング活動では、「分析」「施策」「コンテンツ」「コミュニケーション」という各サイクルを回していくことになる。顧客に応じた接客を行うには、このサイクルの各フェーズにおいて、データとコンテンツがシームレスに連携可能な仕組みを構築しなければならない。
はじめにデータ分析の結果を施策に落とし込まなければならないが、単にサイト全体のトラフィック量を参照しただけでは、顧客対応に繋げることは難しい。まずはWeb解析ツールを活用して、来訪者が初回訪問なのか、リピート訪問なのかでカスタマーセグメントを分類し、そこから閲覧ページや流入経路の傾向の違いを見つけてほしい。そうした分析を行うことで、各セグメントにおける傾向のギャップが発見でき、顧客対応に向けた適切な施策立案が可能となる(船井氏)
Adobe Analyticsは、一人ひとりの行動に関するあらゆる情報を収集、整理、分析し、顧客の行動に対してセグメントを作成できる。そのセグメントは、Adobe Marketing Cloudの共通のオーディエンス情報として取り扱うことが可能だ。さらに共通化されたオーディエンス情報は、Adobe Targetにも反映されるので、分析結果をそのままターゲット条件として設定できる。
これにより、セグメントに応じた商品やキャンペーンを表示するターゲティングを行う場合でも、「初回訪問か」「リピート訪問か」「購入者か非購入者か」といった分類を、Adobe Targetを用いて簡単に設定できる(船井氏)
続いて、施策とコンテンツの連携について見ていこう。
例えば、Webサイトへの訪問者情報やセグメント条件に応じて、表示するバナーをパーソナライズ化したいという要望は多い。Adobe TargetやAdobe Experience Managerでは、Adobe Marketing Cloudに保存されている画像やバナーを表示し、選択できるため、顧客に合わせたコンテンツを簡単に提示できる。「これにより、初回来訪者には『初めてのお客様へ』のような説明コンテンツを表示したり、VIP顧客には『特別なオファー』を提示することが簡単に行えるようになる
」と、船井氏は説明する。
より効果的なマーケティング活動を目指すために
さらに船井氏は、施策とコミュニケーションの連携についても説明した。
ある特定の顧客に対して、Webサイトだけでなく、電子メールなどでのコミュニケーションを図りたい場合には、さらに深く顧客を理解することが重要となる。具体的には、その顧客がどういった趣味を持っているのか、どういった行動をとっているのか、様々な情報を複合的に組み合わせてその顧客の顔を明らかにする必要がある(船井氏)
しかしそうした情報は、Webにおける行動情報だけでは得ることが困難だ。したがって、Adobe Analyticsで取得したWebからのデータに加え、顧客データベースに保管されたCRMデータや、外部データをもり込み、データ管理プラットフォーム(DMP)上で統合管理するとともに、複数のデータソースを横断したセグメントを構築することが必要となる。そうした要望に対しても、Adobe Audience Managerを活用することで、データソースを横串で貫いた複雑なセグメント設定が可能となる。
セグメンテーションを行うだけでなく、アウトプットしてアクションに繋げていくこともできる。パーソナライズ化されたWeb表示だけでなく、DoubleClick Bid Managerなど外部の広告配信プラットフォーム(DSP)との接続や、複数のデータソースと繋がったデータに基づいたエコシステムを構築することで、より効果的な広告配信が行えるようになる。このほかにも、電子メールやDMにも、オーディエンス情報を活用することができる
マーケティングとクリエイティブの連携も容易に実現
Adobe Marketing Cloudは、バナー作成といったコンテンツ制作業務の効率化も実現する。例えば、Adobe PhotoshopやAdobe Illustratorなど、Adobe Creative Cloudを用いて制作担当者が作成したバナーやクリエイティブは、Adobe Marketing Cloudを介して、いつでもWeb制作やターゲティング設定の作業に利用することができる。
Adobe Creative Cloud上で、制作担当者が作成したバナーを、マーケティング担当者が確認し、修正箇所などについてコメントもできるため、制作担当者とマーケティング担当者のワークフローが省力化される(船井氏)
これまで説明してきたようなソリューションの他にも、Adobe Marketing Cloudには、広告の入出稿管理を担う「Adobe Media Manager」、SNSの投稿管理やソーシャルリスニングを行う「Adobe Social」、マーケティングオートメーションを担う「Adobe Campaign」、そして、オンデマンド動画の管理や分析、マネタイズを行う「Adobe Primetime」が含まれている。
これらのソリューションを複合的に活用することで、あらゆるデータを計測、収集、分析してインサイトを導くとともに、パーソナライズや、効果的なキャンペーンを展開することが可能だ。
最後に船井氏は、次のように述べ、講演を締め括った。
アドビ システムズは、単なるツールベンダーではない。製品の提供以外にも、デジタルマーケティングを推進していくための人材の育成や教育、プロセスの構築やワークフロー整備など、企業のマーケティング活動の成功を支えるパートナーとして、多面的な支援を展開している。デジタルマーケティングを推進していくうえで、悩み事や相談があれば、ぜひ一度、私達に声掛けしていただきたい(船井氏)
参考情報:
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