敏腕Web担当者が発揮する「7つの力」とは? ビジネスもキャリアも成長させるために実践すべきこと
敏腕Web担当者が発揮している7つの「力」を理解し、自社のオンラインビジネスを成功へと導いてWeb担当者としても高い評価を獲得する。Web担当者には、「考える」力と「動く」力、それらを組織に響かせ「巻き込む」力が求められると説くのは、複数の大規模Webサイト運営を経験し、事業戦略や集客戦略の設計を支援するシンプルシーンの床尾一法氏。できるWeb担当者が発揮する7つの力を理解し、実践するための考えを解説した。
Web課題の「共通認識」と「自分ごと化」が一番の壁
Web担当者が自社のマーケティング施策を推進していくためには、社内のさまざまな部門の担当者と連携し、力を合わせていく必要があるが、言葉で言うほど簡単ではない。
床尾氏は、自分自身が感じている課題を例に挙げた。たとえば、戦略支援を手がけているWebサイトでは、集客課題の解決に向けた新規ユーザーの獲得を狙うプランニングや、獲得したユーザーを見込顧客として育成するためのコミュニケーションプランの準備はすでにできている。調査に基づく仮説の導き出しや、アクションプランの立案に苦戦しているわけではないが、実行に向けて立ちふさがる大きな課題がある。何に苦戦しているのか、それは自分の感じている課題意識を関係者と共有することだという。
自分の感じている課題意識を関係者との間に共有すること、すなわち、課題の「共通理解」と「自分ごと化」に苦戦している。Web担当者がいくらマーケティング課題を説いても、各施策の担当者が集客課題の解決を自分のミッションであると認識しなければ、自分とは関係ないことだと思ってしまう(床尾氏)
ここでいう「自分ごと化」とは、個別の施策担当者が業務全体のなかで、自分がどの部分の役割を果たすのか、自分のこととして考えることだ。これが一筋縄ではいかないという。
なぜWeb担当者に選ばれたのか、上司の「期待値」を知る
Web担当者には「その人が推された理由」が必ず存在する。上長や決裁者は、担当者に対し、何かしらの期待値や可能性を見出しているはずだ。Web担当者として評価を得るには、その期待を知らなくては始らない。床尾氏自身も、コンサルタントを請け負っているクライアント企業で部署異動があったときには、必ず新人のWeb担当者がなぜ選ばれたのか、上長や決裁者に「想いや願い」を聞くようにしているという。
その期待値に応える仕事をすることで上長や決裁者の信頼も増し、ひいては自身の査定評価へとつながる。つまり、自分が何を期待されているかという「期待値」を知ることが評価を得るために必要なポイントといえる。
いろいろな現場で体験した限り、それらの期待値に共通している理由は、「考える力」や「動く力」。特に、重要なプロジェクトになればなるほど、自分で考えて物事を推進できる人がWeb担当者に選ばれる傾向が強い(床尾氏)
その意味からも、自分がなぜWeb担当者に選ばれたのか、Web担当者自身が率先して上長や決裁者と話す機会を持つようにしたい。
そして、仕事のできる敏腕Web担当者には、次の7つの力があると床尾氏は解説する。
- 考える力
- 動く力
- 説く力
- 示す力
- 共有共感させる力
- 決断する、させる力
- 響く力
1. 数字から「見えること、言えること、できること」が何かを思考する
1つ目は「考える力」だ。
足りない知識は後からいくらでも補えるし、周囲の経験者から助言ももらえる。問題は、自分で養っていくしかない「思考」と「調査」の習慣と行動だ(床尾氏)
何が課題かを理解しないまま膨大な知識や情報を処理しても、気づきもないし、情報の取捨選択すらできない。つまり、「考える」というのは、Web担当者自身が自社のサービスとユーザーの関係をとことん考える習慣を身に付けるということである。自分たちのサービスが市場でどういう評価を受けているのか、Webサイトには検討中の人や比較段階の人など、どのステージのユーザーが来ているのか考える。
そして、購入に至るまでのプロセスにはどういうものがあるのか。自分たちの商品、サービスはどこで調査されて、認知、検討、購入されているのか。
Web解析で一番大事なことは、数字から「見えること」「言えること」「できること」が何かを「思考する」習慣である。そのために今できるアクションは、現状で得られるデータやアクセスログを徹底的に集計し、数字から「起きていること」を発見し、そこから考えられる「仮説」を洗い出すことだ。そして、これらから考えられる行動のアイデア出しを行うなど、思考する能力を鍛えていく。
2. 周囲を巻き込む努力をする
2つ目は「動く力」だ。自分の課題意識が周囲の共感を得ているかを見直してみよう。そこで、まず実践してほしいことは、周囲を巻き込む努力である。周囲を巻き込むためには、組織への目配せが欠かせない。自分が苦手な施策は、その分野が得意な人に任せるのが一番だ。
組織を見渡し、どんなタイプの人がいるかを把握する視点は、役職に就いていない人も持つように実践してほしい(床尾氏)
人を知り、仲間を知る。社内には外部の人が常駐しているケースもある。そういう人と食事に行くなどして、積極的に交流して施策に協力してもらうことが大切だ。
「動く力」のために今できるアクションは、ともに働くスタッフの業務状況を把握するなど、組織全体を見渡すことだ。そして、お互いに不満や課題を話し合い、得意分野を理解し共通点を見つけ出すなど、協力し合える関係を築くことがポイントだ。これはキャリアアップにも重要な要素になる。
3. 相手に理解してもらえなければ意味がない
3つ目は「説く力」だ。どんなにすばらしい施策案でも、理解されなければ意味がない。課題意識を共有するためには、自分の考えを相手に理解してもらうような「説き方」をしているか考える必要がある。担当者が感じる課題を組織全体で理解してもらうためには、「課題の共通言語化」をしなくてはいけない。
今、我々には何が課題としてあり、何が強みで、どのような行動目標を持てばいいのか、だれもが理解できる「象徴的なテーマ」で示す。なるべくシンプルで象徴的なメッセージであるほどよい(床尾氏)
たとえば、「特定層のユーザーにしかアプローチできていない」「女性顧客の獲得拡大が重要になる」など、組織全体で共有しやすい課題を示す。
この「課題の共通言語」は、現状を説き、未来を作るための「思考の基準」にもなり、組織全体が「同じ方向を向いて」課題解決に取り組むために重要な要素になる。
4. その施策でなにがどう変わるのか、事業への貢献を明確に示す
4つ目は、「示す力」である。施策提案の際には、必ず数字の論拠を提示する習慣をつけることが大切だ。その際は売上や利益といった、「決裁者が得意とする土俵」の収益性を語る数字だけではなく、事業の課題やマーケティングの可能性を示す数字、論拠を持つようにする。
その施策がどのようなユーザーの何にどのような作用をするのか、これを実施すると、オンラインマーケティングで今まで勝ち取れていないユーザー層とのコミュニケーションが増すといったような、事業が広がる可能性への貢献がわかりやすい(床尾氏)
自分がやろうとしている施策は、「なぜ」「だれのために」「どんな反応を起こすものなのか」。それが見えれば、決裁者が施策の良し悪しを判断する基準が明確になり理解を得やすい。
また、個別の施策担当者を動かすには、役割や目標を明確に示していく必要がある。
ある人には、「商材の気づきやブランド認知をやってください、その際のKPIはこうです」と説き、ある人には、「一度、接点を持ったユーザーに再訪問してもらうコンテンツを作ってください、そのKPIはこうです」と、施策の役割ごとに目標を説く。ここをきちんと設計しておかないと、各担当者に達成感を味わってもらえない。
また、目的を明確に示しておかないと、課題解決のためにどうしても必要な提案であっても、「これだとコストが問題」の一言で片付けられ、せっかくの提案が組織内で一笑に付される可能性もある(床尾氏)
「示す力」をつけるためのアクションとしては、やりたい施策に対する数字の論拠と裏付けを取り、個別の施策を担うメンバーに果たすべき目的と役割の論拠を示すことが重要になる。
5. 経営層ととことん語り合う機会をつくる
5つ目の力は「共有共感させる力」だ。夢や目標を語り合うことはやる気に直結する。大企業ではなかなか難しいかもしれないが、自分たちが取り組んでいる課題や行っている施策について、決裁者や経営層と共有、共感する機会を持ってほしい。
自分たちが課題と感じていることが、経営層も課題に感じているということを知ると、自分たちが信じてやっている施策の自信へとつながり、新たな課題の気づきの場となる。ポイントは、施策のディテールや収益の話ではなく、自分たちの事業はユーザーにとってどういうもので、市場でどう見られていて、ユーザーにどういうものを届けていくのかという、事業のあり方を話すことだ(床尾氏)
もちろん、ただ夢やロマンを語り合うだけでなく、現実的な解決策まで議論するべきだが、「共有共感」のためにまず必要なのは、互いにとことん語り合うことだ。共通の夢や目標、課題が見えると、施策の是非についての判断基準が明確になり、スピーディに物事が進むようになる。
6. 不安材料を取り除き、自信を持って決断する
6つ目の力は、「決断する、させる力」だ。あなたは事業運営のなかで、決断し、決裁を得るための情報整理と判断材料が提供できているだろうか。
ここまで説明してきたポイントと異なり、非科学的だが、最後は自分の言葉や行動に覚悟や信念を持てるかどうかが重要だ。また、決断する、させるためには、不安材料を細かく分解し、明確な判断ポイント、不安を断ち切る理由を可視化することが求められる(床尾氏)
決裁者は不安な人に任せたくないものだ。見えていることは何か、そこから言えることは何か、やるべきことは何か。確信を持って施策を実行できることが重要だ。
「決断する、させる力」を養うためには、自分がやりたいことに自信と確信を持ち、数字の裏打ちと同時に意志の強さを持つことだ。自信を持って明確な判断ポイントを提示できる人は、決断のキーマンとして頼られるようになる。
7. あなたがWeb担当者に選ばれたということ
最後に、7つ目の力は「響く力」だ。改めて、なぜ自分がWeb担当者に選ばれたのか考えてみてほしい。Web担当者に選ばれたということは、業務遂行の適性以外に、発揮してもらえるかもしれない力を期待されているのだ。
その力とは、周囲の刺激となる行動や言動などの、組織に及ぼす影響力だ。そして、影響力を持っている人材は、成長を担っていく人材として先行投資の対象になる。
たとえば、営業担当者がWeb担当者になって期待されていることは、営業現場の経験で培った、お客様の声や購入に至るまでの心の変化といった肌感覚を、マーケティング施策に反映することだ。それが競合サイトに対する自社サイトの強みとなっていく。
「響く力」を養うには、信頼される人間になることが重要だ。そのためには組織全体を考えた思考と行動が必要になる。事業理解を備え物事を推進できる人材は、常に組織で求められ、相談と案件が集中する。その姿の先には華々しいキャリアが待っているのだ。
バリバリ仕事をするWeb担当者になるために、明日からはじめよう
行動力を備え、事業の未来を託せるWeb担当者になるために、明日から実践してほしいことは何か。床尾氏は、社内や事業内の想いや願いを紡ぐことは、特定のだれかの仕事ではなく、自分が主導して取り組んでしまえばよいと、次の4つのポイントを挙げた。
- 自社のサイトは、だれの、なぜ、何のためのものかをメンバーで語り合う。
- その際、解析数字で過去と今を皆で振り返る。
- そして、過去の施策のどれが成功して失敗したか、成功と失敗の要因はそれぞれ何だったのか討議する。その際、成功したか否かのつるし上げにならないよう、失ったものと得たものの要因分析に注力する。
- メンバー全員で見えてきた課題を象徴的なテーマで共通言語化し、目的の最大公約数を導き出す。
これらに自主的に取り組むことで、施策の立案と判断のスピードが組織単位で向上し、スムーズな仕事環境が得られるというメリットがある。そして、その推進の先には施策の成功という対価と、将来のキャリアが待っている。
影響力を発揮して、周囲を動かしいていく力、導いていく力は、事業会社が一番求めていることであり、その力はどこに行っても通用すると床尾氏は語り、セッションを締めくくった。
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