WebサイトのCVRを上昇させるための4つの課題とその解決策
デジタルマーケ時代のWebサイト4つの課題
Web担当者Forumミーティング 2015 春のランチセッションで登壇したアカマイ・テクノロジーズの伊藤崇氏は、同社のソリューションに基づき、「購買行為の動線を止めないデジタル配信-なぜ消費者は快適に情報を取得できないといけないのか-」と題し、デジタルマーケティング時代の情報配信における新たな課題と、その解決策について講演した。
近年、デジタルマーケティングの重要度がますます高まっていく中で、戦略の要となるWebサイトには次のような4つの課題が浮上している。
- Webサイトの可用性の確保
- モバイル向け配信の高速化
- グローバル対応
- セキュリティ対策
これらの課題に対して、アカマイのソリューションはどのような解決策を提示しているのだろうか。
全世界に設置された17万5000台以上のサーバーが
スムーズなコンテンツデリバリーを実現
米国マサチューセッツ州に本社を構えるアカマイ・テクノロジーズは、コンテンツデリバリーネットワークに関する多彩なソリューションを提供する企業である。
同社のシニアテクニカル・アカウントマネージャーを務める伊藤崇氏が、「インターネットが抱える本質的な問題を解決し、高速なコンテンツデリバリーを実現するためにアカマイは設立された
」と述べるように、1998年の設立当初から、インターネットにおける通信経路の最適化や、キャッシュ技術、プロトコルの最適化などを通じ、Webサイトにおけるレスポンス向上のためのソリューションを展開してきた。
その要となっているのが、世界中のISP(Internet Service Provider)/IX(Internet Exchange point)のデータセンターに分散配置されている「アカマイサーバー」である。
インターネットは1万2000以上の個々のネットワークの集合体であるが、それを構成するほとんどのISP/IXにアカマイサーバーが設置されており、各サーバーが相互に接続することで、高速道路のような経路を作り出している。アカマイのユーザーはこれらのサーバーを自社サーバーの代わりに利用することで、世界中のユーザーにコンテンツを高速配信することが可能だ(伊藤氏)
現在、アカマイでは、世界中のデータセンターに17万5000台以上のアカマイサーバを設置、108か国2790以上の地域をカバーする分散型コンテンツデリバリーネットワークを展開している。これにより、世界中のWebトラフィックの15~30%がアカマイのネットワークを経由して配信されているという。
こうしたアカマイのサービスを利用することにより、BtoCの事業者であれば、下記のメリットを享受できるようになるのだ。
- ユーザー体験の向上によるCVR(コンバージョン率)および収益の向上
- サイト可用性の向上による機会損失の低下とユーザー満足度アップ
- ピークトラフィックのオフロードによる最適なROIの実現
- 高品質な動画/ソフトウェアのさまざまな端末への配信
- Webセキュリティの提供
1. Webサイトの可用性の確保
では、冒頭で説明した4つの課題について、アカマイのソリューションがどのような解決策を提示しているかひとつずつ説明していこう。
まずは、Webサイトの可用性の確保についてだ。
先述したとおり、17万5,000台以上のアカマイサーバーが世界中のデータセンターに分散配置されており、万が一、いずれかのサーバーがダウンしたとしても、即座にバックアップされる仕組みが構築されている。したがって、自社で管理しているサーバーや、データセンターに何らかの障害が発生してダウンしてしまったとしても、アカマイのユーザー企業であれば、常時稼働しているアカマイサーバーを利用し、コンテンツ配信を継続して行えるのだ。
24時間365日、Webサイトを停止させない、100%のサービスの可用性を保証するSLAを享受できる(伊藤氏)
2. モバイル向け配信の高速化
「モバイル向け配信に限った課題ではないが、近年では、Webサイトのさらなる高速化が求められている
」と伊藤氏は強調する。
なぜWebサイトは高速であるべきなのか。伊藤氏は、世界最大のスーパーマーケットチェーンである米国ウォルマートの事例を基に解説した。
ウォルマートでは実店舗のみならず、Webサイトでの販売も行っているが、パフォーマンスとCVRの関連性について調査を実施したところ、両者は密接に関係しており、Webサイトの表示速度が早ければ早いほど、ユーザーのCVRも高いことが示されたという。つまり、Webサイトのレスポンスを向上させれば、売上増に直結するということになる。
また、Webサイトの離脱率についても調査を行った結果、レスポンスが遅いと離脱率が高くなることが判明したほか、1セッション当たりの平均ページ閲覧数も、表示速度が速いほど増えることもわかった。
「この事例はごく当たり前の話だが、現実にはWebサイトのパフォーマンスを重要なKPIとして捉えている事業者は多くない
」と伊藤氏は言う。
その他にも、AmazonやGoogleをはじめとしたさまざまな事業者が、Webサイトのパフォーマンスがユーザーの行動に大きく影響するという結果を示している。
一方で、Webページのリッチコンテンツ化に伴うレスポンスの低下という課題も生じている。伊藤氏によれば、2012年のWebサイトの平均ページサイズは788KBであったが、2014には1,622KBに増大、平均ページロード時間も2012年の6.6秒から、2014年には10.7秒にまで増加しているという。
これらのパフォーマンスに関する課題について、アカマイでは次のような機能により、解決している。
ベーシック機能
- コンテンツ/Webページのキャッシュ(高速化、ピーク対応)
- ルート(経路選択)の最適化
- TCP/HTTPの最適化(TCPコネクション終端、ウィンドウズサイズ変更)
アドバンス機能
- フロントエンド・オプティマイゼーション(Front-End Optimization:FEO機能)
- モバイル端末向け、動的な画像圧縮機能(Adaptive Image Compression :AIC機能)
- RWD対応した画像のリサイズ、クロップ機能(Image Converter)
例えば、FEO機能では、Webページの表示処理の80~90%がリクエストや画像のダウンロードといったフロントエンド処理によって占められていることに着目。読み込み並行処理やリクエスト/送信バイト数の削減、レンダリング速度の向上といったフロントエンド処理の最適化を行うことで、表示速度を向上させている。
こうした最適化のための処理をアカマイサーバーは自動的に行っている。あるユーザーのケースでは、オンロードが9.32秒から3.52秒まで短縮、リクエスト数も103から78に削減された。この結果、読み込み時間が従来の3分の1に改善された(伊藤氏)
また、アクセスするデバイスやネットワークに応じて、元画像のファイルサイズを圧縮して配信することを可能とするAIC機能や、端末に適した画像サイズへの変換処理を実施するImage Converterにより、モバイル端末では表示に時間を要する画像の多いWebサイトであっても、スムーズかつ高速な表示を可能としているのだ。
3. グローバル対応
ユーザーの地理的情報に基づく、コンテンツの振り分け機能が「Contents Targeting」だ。
例えば配信元サーバーが日本にあって、英国のユーザーが英国のサーバーを経由してアクセスしようとした場合、インターネットの複数の経路を辿るためレスポンスに遅延が発生する。しかし、Contents Targeting機能に基づき、各地域のアカマイサーバーが多国語に対応したコンテンツをキャッシュしており、アクセスした地域に応じたコンテンツで迅速なレスポンスを返すことを可能としているのだ。
4. セキュリティ対策
また、近年、DDoS攻撃やSQLインジェクション、クロスサイトスクリプティングなどの脅威による被害が多発している。アカマイでは、ネットワーク内における多段的なセキュリティ対策の仕組みや、24時間365日の監視を行うマネージド・セキュリティ・サービスなどのソリューションにより、外部からの脅威にも包括的な対策を実施している。
- 階層1: DDoS対策(ウェブシステム)
- 階層2: WAF
- 階層3: DDoS(データセンター)
- 階層4: DNS
こうした対策により、外部からの攻撃によるWebサイトのダウン、サービス停止の回避が可能となっているのだ。
最後に伊藤氏は、「ここまで、Webサイトにまつわる課題と、アカマイのソリューションを活用した解決法について解説してきた。Webサイトに対するパフォーマンスと可用性がこれまで以上に求められる中で、その解決策として、アカマイのソリューションを検討していただきたい
」と述べ、講演を締めくくった。
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