『BtoC向けマーケティングオートメーション CCCM入門』 Web担特別公開版

CCCMとは何か ~One-to-Oneマーケティングを実現するCCCM

クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)とは、複数のチャネルを横断して顧客とOne-to-Oneコミュニケーションするための仕組みだ

CCCMとは何かを、「複数のチャネルを横断」「顧客とのOne-to-Oneコミュニケーション」という観点で解説し、さらに、マーケティングオートメーション(MA)との関係についても解説する。

このコーナーでは、書籍『CCCM入門』の一部を、許諾を得てWeb版として公開しています。

この記事では、書籍の第1章 「One-to-Oneマーケティングを実現するCCCM」 から、第1節 「CCCMとは何か」 の内容をお届けします。

クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)とは、複数のチャネルを横断して顧客とのOne-to-Oneコミュニケーションを実現するためのソフトウェアである。CCCMは広い意味でのマーケティングオートメーション(MA)の一種である。一方で狭義のMAは本来、BtoB向けの見込み客管理を目的としたソフトウェアを指すことが多い。その境界がかなり曖昧になっているとはいえ、BtoB向けとBtoC向けでは作られた目的も重視される機能も異なるので、混乱を避けるために本書では主に、BtoCビジネスで使われるMAをCCCMと定義する(図1)。

広義のマーケティングオートメーション(MA)
CCCM
主にBtoC
クロスチャネルOne-to-One
狭義のMA
主にBtoB
見込み客管理
図1 本書におけるMAとCCCM

CCCMはさまざまなデータを基に顧客セグメントを作ってセグメントごとのコミュニケーションシナリオを設計し、そのシナリオに従ってチャネルを横断したコミュニケーションを実行する。顧客一人一人に最適なタイミングでコミュニケーションを行うため、多くのシナリオは自動実行される。コンテンツもパーソナライズされることが多い。

CCCMにおける代表的なコミュニケーションのチャネルは、Eメール、ダイレクトメール(DM)、電話(コール)などだが、One-to-Oneコミュニケーションが可能なチャネルであればオンライン/オフラインを問わず利用することができる(図2)。以前はDMやコールが主だったが、インターネットの普及後にはEメールが中心となった。ごく最近になってスマホアプリのプッシュ通知やLINEのようなメッセージアプリなどOne-to-Oneコミュニケーションに対応したオンラインチャネルが増えたため、施策展開の可能性が大きく広がりつつある。


データ
顧客データ
購買データ
ウェブアクセスログ
位置情報
↓
CCCM
e-mail
push
DM
call
↓
チャネル
Eメール
ウェブサイト
プッシュ通知
DM
電話
図2 CCCMにおけるコミュニケーションのチャネル

クロスチャネルOne-to-Oneコミュニケーションの場面

では「チャネルを横断した顧客とのOne-to-Oneコミュニケーション」とは、一体どんなコミュニケーションを指すのだろうか。消費者の目線から、顧客体験の具体的なシーンをイメージしてみよう。

■シーン1

シューズメーカー「X」のECサイトで気になるスニーカー「X100」を見つけて「お気に入り」に登録しておいたところ、Eメールが届いた。

先ほどお気に入りに登録された「X100」をお買い上げいただくと累計ポイントが5020ポイントとなりますため、岡本様はゴールド会員になります。1か月有効の500円クーポンを差し上げますので、この機会にぜひご利用ください

週末に渋谷の街に出ると、スマートフォンにプッシュ通知が届いた。

本日、渋谷店に「X100」の25.5cmの在庫がありますが、お試しになりませんか?

アプリのボタンをクリックして、渋谷店に電話。店のスタッフにも情報が伝わっていてすぐ話が通じたので商品をキープしておいてもらい、その足でお店に行き、試し履きしてみる。店員から「岡本様は、今なら500円クーポンもご利用いただけますね」とやんわりプッシュされるが、ちょっと考えることにした。

3日後にEメールが届く。

「X100」の25.5cmの在庫があと3点になりました

今度は迷わず購入ボタンをクリックした。

■シーン2

最新型のスマートフォンを購入してキャリアも切り替えた。

多機能すぎてあまり活用できないなと思っていると、2~3日後、「ようこそ」というプッシュ通知がアプリに届いた。「機能の使い方をいろいろ教えてほしい」というボタンをクリックすると、週に1通、プッシュ通知が届くようになった。そのたびに1つずつ、まだ使っていない機能について設定や使い方を丁寧に説明してくれ、少しずつ使える機能が増えてきた。

請求書は郵送で受け取っているが、4か月目の請求書には請求金額に下線が引かれ、注釈が添えてあった。

岡本様はデータ通信のご利用が多いようです。岡本様のご利用状況に合ったもっとお得なプランがございますので、よろしければこちらにお電話ください。簡単にプランの変更を承ることができます

電話してみるとコールセンターの女性がすべて承知済みで、私の利用状況に合わせた最適な料金プランを説明してくれた。そちらの方が安くなりそうなので、料金プランを変更してもらうことにした。

シーン1では「『お気に入り』に商品を登録した人」という顧客セグメントに対して、顧客のステータスやリアルな行動に応じたシナリオが展開されている。データとしてはウェブアクセスログやポイント残高データ、スマホアプリの位置情報、ECサイトおよび店舗の在庫情報などが活用されている。チャネルとしては、Eメール、アプリのプッシュ通知、店頭端末(店員)という3つが使われている。

シーン2では「スマートフォンのエントリーユーザー」という顧客セグメントに対して、顧客のスマートフォンの利用状況やアンケート回答内容に応じたシナリオが展開されている。アドバイスを希望している顧客に対して、まだ使っていない機能を1つずつ詳しく説明することによって分かりにくいスマートフォンの利用を促進し、さらに利用状況を分析して自動的に最適な料金プランを案内する。このような一連のコミュニケーションを通じて顧客との信頼関係を醸成し、長期的に継続利用してもらうことを狙っている。チャネルとしてはアプリのプッシュ通知や請求書(DM)、コールセンターなどが活用されている。

このように、各種データを基に作られた顧客セグメントに対し複数のチャネルを駆使して最適なタイミングでOne-to-Oneコミュニケーションを実施する、その仕組みの中核となるのがCCCMである。

  • 著:岡本 泰治、橋野 学
  • 価格:1,600円(Kindle版)、1,814円(オンデマンド印刷版)
  • ASIN:B012CIAYXK
  • 発行:インプレスR&D

BtoC向けマーケティングオートメーション
CCCM入門』

顧客データを分析してセグメントごとにシナリオを設計し、さまざまなチャネルを組み合わせて顧客の行動に応じたコミュニケーションを自動的に行うクロスチャネル・キャンペーン・マネジメントCCCM(シーシーシーエム)。

急成長するマーケティングオートメーション分野のソフトウェアの中でも主にBtoCビジネス向けに高度なパーソナライゼーションを実現するソフトウェアとして注目されています。

本書は、そのCCCMの成り立ちや機能、選定から運用までの実践方法、DMPをはじめとするアドテクノロジーとの連係や主要ベンダー動向まで、使いこなすための知識を網羅したCCCMの教科書です。

単なるEメールの一斉配信やオウンドメディアの発信から一歩抜け出し、顧客の行動に応じたデータドリブンなマーケティングを実現したい人におすすめの一冊です。

本書の詳しい目次やレビューを見てみる

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