検索やSNS投稿を増やすポイントは○○だった! 1万人調査データ分析で見えてきた「企業の魅力」とは
今日は、「企業の魅力」に関する分析を、日本マーケティング学会の発表から紹介します。「魅力」を構成する要素の3つの分類とは? そして、ネット検索やソーシャルメディア投稿につながるのはどのような企業の特性なのでしょうか?
日本マーケティング学会で、興味深い資料が公開されていました。「企業の魅力要素と購買行動の考察」と題したペーパーです。
- 東京都市大学 都市生活学部 准教授 北見 幸一 氏
- 電通パブリックリレーションズ 局長 阪井 完二 氏
- 電通パブリックリレーションズ 部長 末次 祥行 氏
の3氏が、「消費者を引き付ける企業の魅力にはどのようなものがあるのか」という観点で、消費者1万人を対象に調査し、その分類や購買行動との関係を分析したものです。
- 企業の魅力要素と購買行動の考察(日本マーケティング学会)
http://www.j-mac.or.jp/oral/dtl.php?os_id=66
この記事では、ペーパーで解説されている分析結果から、次の2つの観点でポイントを紹介します。
- 企業の魅力を構成すると考えられる要素の3つの分類
- 魅力が伝わると、検索やソーシャル投稿などの行動にどのように影響するか
すべての内容を紹介するわけではないので、興味をもった方は、ぜひ日本マーケティング学会のサイトで全文をご覧ください。
企業の魅力は「トラスト(信頼・安定性)」「バイタリティ(活力ある風土)」「提供バリュー」の3つで考える
調査では、あらかじめ用意した36の魅力項目について、消費者1万人を対象に調査しています(10業種150社を提示)。その結果に対して探索的因子分析を行い、36の項目をグループ(因子)に分けたものが上図です。
この分析では、36の項目を次の3つのグループに整理しています(グループ名は、分類した結果そこに含まれている要素から発表者が名付けたものですね)。
- トラスト(信頼・安定性)
- バイタリティ(活力ある風土)
- 提供バリュー
魅力が伝われば「検索」や「企業サイト閲覧」につながりやすい。主要な因子は「バイタリティ」
調査ではさらに、「企業に魅力を感じたあとにどのような行動をとったのか」も調べています。質問したのは次の6項目。
- その企業や,商品・サービスについてネットで検索した(ネット検索)
- その企業のウェブサイトを閲覧した(企業サイト閲覧)
- その企業の商品やサービスを見に行った(視察)
- その企業の商品やサービスを購入した(購入)
- ソーシャルメディアに投稿した(ソーシャル投稿)
- 家族や友人に話をした(リアル共有)
そして、企業の魅力要素としてあげた「トラスト(信頼・安定性)」「バイタリティ(活力ある風土)」「提供バリュー」の3因子がどのような行動に影響を与えているのかを分析したのが、上の図です。
魅力を感じた消費者が行動として起こしやすいものとしては、「ネット検索」「企業サイト閲覧」などが上位です。
また、各行動につながりやすい「魅力」の因子としては、ネット検索やソーシャル投稿は「バイタリティ」で、リアル共有や実際に見に行く行動は「トラスト」ということです。
広報のWeb担もマーケのWeb担も、「企業の魅力」について改めて考えるべし
個人的に、非常に興味をもって読んだペーパーでした。
ふだん我々が考えているのは、こんなことではないでしょうか。
- Webサイトをどのようにするべきか
- 検索エンジン対策はどうするのがいいか
- ソーシャルメディアにおけるユーザー行動をどうビジネスに活かせるか
- 広告をどう活用すべきか
- ビジネスを進められるテクノロジー活用とはどういうものか
しかし、企業自体に魅力があれば、こうした施策に汲々とする必要もないですし、行った施策の効果も高くなるはずです。
実際に、Appleはソーシャル活用もSEOもほとんど無視しているという話を耳にします。まぁ、Appleの名前を出すとみんな「それは無理」と思ってしまうかもしれません。でも、そこまでいかなくても、
- 「目の前の成果」のためのアクション
- 「地力を上げる」ためのアクション
のバランスは、ちゃんと考えるべきですよね。
そして、「地力を上げる」ために必要な「企業の魅力」について、これまで漠然としか考えていなかったのであれば、その要因を掘り下げて、かつグループ分けして影響をまず分析したこの資料は、役に立つのではないでしょうか。
さらに言うと、分析結果に加えて、ペーパーの前段で解説されている次のようなポイントも、興味深かったものです。
- 企業の魅力に関する言及が、2011年の東日本大震災のあとに増えている
- 魅力とレピュテーションの違い
- 魅力は、実態に基づいていることが重要(「イメージ」ではなく「ファクト」)
また、消費者の行動に影響を与える要因として、(日本企業が重視しがちな)「提供バリュー」よりも「バイタリティ」や「トラスト」のほうが強かったという点も、注目すべきではないでしょうか。「顧客体験」「カスタマーエクスペリエンス」の重要性が高まっている背景にあるのは、こうした消費者の意識なのですから。
ちょうど最近、Forbesで「『社内カルチャー』が企業の明暗を分ける」という記事が公開されていました。ウーバーやフェイスブックといった企業のトップの人間と企業のカルチャーという観点から、戦略・CEOの性格・社内カルチャーに関して述べている記事です。
- シリコンバレーの裏事情 「社内カルチャー」が企業の明暗を分ける(Forbes JAPAN)
この記事の最後は、次のように結ばれています。
“Organizational culture eats strategy for breakfast, lunch and dinner(戦略が伸るか反るかは、社内カルチャーで全てが決まる)”はドラッカーの言葉だけど、これまで米国大企業に勤めた経験からこれは名言だと心から思うよ。
マーケティング学会のペーパーでは、「企業の魅力」とは「作り出すイメージ」ではなく「実態(ファクト)」に基づくものであるとしています。つまり、本当に企業が魅力を増すには、トップがメッセージを発信するだけでなく、社内のスタッフすべてが企業活動として魅力をもった行動をしなければいけないということです。
そしてドラッカーは、企業の戦略がうまくいくかどうかは「社内カルチャーによる」と(以前から)言っています。
なんとなく、つながる話ですよね。
消費者にとって魅力のある企業となるための道は、なかなか難しいものかもしれません。特に「企業活動全体で」「社内カルチャーとして」なんてことは。
しかし少なくとも、自分の部署や自分の担当商材において、こうしたことを念頭においた行動をすることは、今日からでも、あなたにでも、できるのではないでしょうか。
ソーシャルもやってます!