ネット広告やWebサイトに迫る規制の影、措置命令や規制見直しは他人事ではない
今日は、最近あった「うその比較サイトに措置命令」「美容医療のビフォー・アフター写真をサイトでも規制への動き」という動きから、「業界がちゃんとしないと、もっとヤバい規制が入るよ」というお話しを。
ここ最近、ちょっとした「広告」「サイト表現」関連で、措置命令や規制強化という話題が2つ連続してありました。
これを「大変だなー」と他人事のように思っているあなた、ちょっとマズいですよ! 世の中の動きは「よろしくないものは正す」方向に動いています。このまま「そういうものでしょ」と思っていたら、いずれあなたの業務に関係する部分で面倒な規制が入ってしまう可能性があります。
だから、よろしくないこと・あるべき形に関して、我々は議論し、声を上げていかなければいけません。
まず、最近あった2つの動きをざっと説明しますね。
やらせの比較サイトに措置命令
1つ目は、自社のサービスが優れているように見せかける表現を自社サイトや「うその比較サイト」でしていた2社に、消費者庁が再発防止の措置命令を行ったという件(11月2日)。
- 景品表示法関連報道発表資料(消費者庁・PDF)
- うその「比較サイト」開設で都内の業者2社処分(NHKニュース)
- 業者比較も「日本一」根拠なし…2社に措置命令(テレ朝news)
鍵トラブル・水まわりトラブル・パソコントラブルなどへの対応サービスを提供する企業なのですが、次のような優良誤認の問題があるとしての措置命令です。
- サービス拠点が全国各地に1000か所(以上)あるという表示(虚偽)
- トラブル解決の実績が年間10万件(以上)あるという表示(虚偽)
- 「最大手」「業界No.1」「日本一」などの表示(根拠なし)
- 作業員の現場到着時間が短いことを示唆(根拠なし)
- 満足度が高いことを示唆(根拠なし)
- 依頼されたことがない企業や官公庁の名前を掲載
- 取材されたことがないメディア報道をねつ造
- 比較サイト作って自社サービスを1位に見せる優良誤認(しかも他社が作成したように見せかけていた)
医療機関ウェブサイトなどの規制強化方針(ビフォー・アフター写真など)
2つ目は、医療に関する広告規制の件。医療機関のウェブサイトにおいて、術前術後(いわゆる「ビフォー・アフター」)の写真掲載を原則禁止する方針で議論されているという件(10月25日)。
- 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会審議会資料(厚生労働省)
- 「ビフォー・アフター」原則禁止に=美容医療トラブルで広告規制-厚労省方針(時事ドットコム)
術前術後の写真は修正や加工を行っていたり、一部の症例を取り上げるものだったりするほか、個々の患者の状態によって結果が異なることなどが議論されてきています。実際にこうした写真が消費者トラブルのきっかけになっているとして、サイトなどでの掲載を規制する方向で議論が進んでいるということです。
またこの検討会では、「医療情報に関する広告規制を、これまで対象外だった医療機関のウェブサイトにも適用していく」ことに関しても話し合われています。
これまで医療情報に関する規制(限定的に認められた事項以外の記載・虚偽・誇大など)は、広告には適用されていたのですが、医療機関のウェブサイトは広告とはみなされておらず規制の対象外でした。
しかし、消費者トラブル相談件数の増加などをふまえ、適正化するために、医療機関のウェブサイトなども規制の対象とすることがすでに決まっています。現在は、どのような規制内容にするかを検討会で議論している段階です。
ここでは、ランキングサイト、クチコミサイト、医療情報検索サイト、SNS、アフィリエイト、バナー広告、リスティング広告などもふくめて議論されているようです。
業界が自浄作用をもたないと、待っているのは規制の世界
最初にも書きましたが、これは他人事ではありません。
以前に「Webも広告もECも、業界で自浄しなきゃ法律でがんじがらめにされちゃうよ」というコラム記事でも書きましたが、いまのネット業界は自由すぎて、放置していると、いろんな業種で(それどころか全体で)どんどん規制が強化されていく可能性があるのです。
Web担を含め、表に出てくる情報には、
- 「いかにして顧客をひきつけるか」
- 「いかにしてコンバージョンを上げるか」
- 「いかにして効率的にマーケティングするか」
といった話題が多いですよね。
これ自体に問題があるわけではないのですが、結果としてその向こうにいる消費者が、
- 「思ってたのと違う」
- 「だまされた」
- 「そんなつもりじゃなかった」
と思ってしまう結果になるコミュニケーションになっていませんかね。または、そうしたコミュニケーションを見逃していませんかね。
「いや、ウチはちゃんとやってる」というところも多いと思います。でも実際には、そうではない人たちが多いわけですよ。
そのせいで実際に、2015年には消費者契約法改正の話し合いにおいて、「『勧誘』に広告を含めるようにし、不当勧誘にもとづく取消権(注文キャンセル)をECサイトでも認めるべきではないか」という議論がされていました。
これはかなり大きな規制の動きでしたが、結果として、この決定は当時は見送られました。
- 徹底追跡 消費者契約法・特定商取引法の見直し動向(ネットショップ担当者フォーラム)
しかしその後、「不特定多数の消費者に向けた広告であっても、それが勧誘にあたらないとは限らない」という趣旨の最高裁判決が出ています。
- ネット通販&広告業界などは影響大? 「広告も『不当勧誘』の取消対象」の最高裁判断とは(ネットショップ担当者フォーラム)
現状、社会全体としてはすでに、次のような方向性が見えています。
消費者に不利益のある広告は規制される方向
(業界によってはすでに具体的な規制がある)「広告」にウェブサイトも含む動きが進んでいる
規制の厳しい「勧誘」に「広告」を含む動きがみられる
消費者が声をあげやすい時代であり、消費者庁が仕事をどんどん進めている時代に、我々の業界は今のままでいいのでしょうか。
- えげつない表現の広告
- CVさせるために、過度に盛りすぎたLP
- クリックされればいい広告
- 知識のない消費者をだます販促
などなど、問題のある部分に関して声を上げて、業界で議論していく必要があるのではないでしょうか。
そして、そうした議論から業界がしっかりとルールをつくり、守っていくようにすることで、行き過ぎた面倒な規制を新たに作る必要をなくすべきなのではないでしょうか。
また、そうして声を上げて議論していくことで、少しずつ世間にも理解が広まり、ちゃんとやってないところを消費者が判別できるようになっていけば、まっとうにやってるところにビジネスがまわってくるのではないでしょうか。
医療情報関連の“キュレーション”メディア問題も、人々の声で動きました。
アフィリエイトの「偽ランキング」問題も、メディアの取材で動きました
一気にすべてを変えることはできませんが、このネットを、みんなでもっと良い場所にしていきたいと思いませんか? 少なくとも、私はそう思っています。
あ、そうそう。これに(ちょっと)関連して、デジタル広告の広告主がこれからちゃんと考えておかなければヤバいことのセッションを、Web担の秋セミナーで予定しています。
イベント自体は11月14日(火)と15日(水)の2日間、虎ノ門で開催していますので、みなさんぜひご参加くださいませ。もちろん参加無料ですよ。
→ クレディセゾン栗田氏、ソニー損保片岡氏、アイレップ渡辺氏、スマニュー菅原氏など全50講演
Web担当者Forumミーティング2017秋(11/14+15@虎ノ門)
ソーシャルもやってます!