人事・採用担当者の「困った」「知りたい」に応えて、7か月で自然検索流入8倍、問い合わせ数5倍に!
パーソルキャリアが運営する「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」は、競合が多い人材業界の情報サイトとしては後発だ。同社の齋藤裕美子氏と塚本裕美氏は、未経験からSEO施策に取り組んだにもかかわらず、7か月でサイトへの流入を8倍にアップさせることに成功。そして自社サービスへの問い合わせ数も5倍へと大きく成長させた。その秘訣は「ユーザーのニーズに応えると順位が上がる」というSEOの原則が「ハラオチ」したことだという。施策をサポートしたFaber Companyの大森、加藤とともに成功の要因を聞いた(数値等は2018年取材時点)。
検索流入を増やしたい、でもどうすればいいかわからない
――まずは「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」について教えてください。
齋藤裕美子氏(以下、齋藤): パーソルキャリアでは転職サービス「DODA(デューダ/2018年10月よりdoda)」を運営し、求人情報サービスや人材紹介サービスなどを提供しています。2年前に「DODA Recruiters」というダイレクト・ソーシング※のサービスを立ち上げました。当時は「企業や人事担当者から人材を探してアプローチする」という採用手法がまだまだ日本では認知されていなくて。そこで情報を発信するために立ち上げたのが、「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」です。
※企業の経営者や人事・採用担当者が、その企業にマッチした人材を自ら探し、直接アプローチする採用手法
――お2人の役割について教えてください。
齋藤: 私は「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」の企画・運営と編集を担当しています。
塚本裕美氏(以下、塚本): 私はSEO担当です。既存記事の流入を改善したり、新規記事を作る際の構成を考えたり、「検索流入をどう増やすか」を考えています。
齋藤: オウンドメディアの目的は、本来、サービスへのリード獲得だと思います。ですが、弊社のサイトでは当初「ダイレクト・ソーシング」という手法と「DODA Recruiters」というサービスを認知してもらうことを目的に運営を行っていました。
ですので、前任から引き継いだ当時、コンバージョンを追わずにPV(ページビュー)やUU(ユニークユーザー)などを見て、とにかく流入を増やすことが目標でしたが、SEOで行き詰まっていました。
――SEOで抱えていた課題について、詳しく教えてください。
齋藤: 「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」で掲載されている記事は、大きく分けると2種類あります。
- インタビュー記事
- 人事・採用担当者のニーズに応える解説記事
検索流入が全然増えなくて、途方に暮れていました。
――解説記事はどのように作っていたのですか?
齋藤: 「Googleのキーワードプランナー」と「自分の勘」を頼りに記事作りをしていました。
塚本: そんなとき、Web担で他社さんが「MIERUCA(ミエルカ)」というツールを使って成果を上げている事例を見て、「これは良いかもしれない!」と思い、使ってみることにしました。
塚本: でもツールを入れてみたものの、最初は使い方が全然わからなくて(笑)。さらに私はSEOも初心者だったので、齋藤と2人でFaber Companyさんが開催する「ミエルカ大学」に参加しました。
未経験のスタートで助けになったのは「ミエルカ大学」
大森和博(以下、大森/Faber Company): お2人のご相談を受けてサイトをチェックしたところ、やはりユーザーの検索意図をうまく汲み取れていないところがありました。
そこで、ツールの使い方やユーザー意図の汲み取り方をミエルカ大学で学んでもらったところ、受講直後から「構成案を添削してください」と次々メールをいただきました。
そのたびに「前回お教えしたことがもう反映されている! しかも独自の視点もしっかり入れてくださっている」とお2人の成長ぶりに驚きました。
齋藤: SEOは本で読んで勉強していたので、タイトルやタグにキーワードを入れるとか、そういうテクニックは知っていました。しかし、「これを突き詰めていくとだいたい似た記事になってしまうのではないか」「後発のわれわれが他社と似た記事を作るのか…?」という迷いがあったのです。ミエルカ大学で独自性の大切さを学び、「パーソルキャリアが幅広く人材サービスを扱っている強みを生かして、人事・採用担当者に役立つ知見を入れてオリジナリティを出していこう」という方針を決められました。
最初に取り組んだ「人材紹介 料金」の記事でいきなり検索結果1位獲得!
――ミエルカ大学に参加したあと、最初に取り組んだ記事は何でしょう?
塚本: 「人材紹介会社と契約する際、知っておきたい手数料の相場・返金規定について」という記事を作りました。「人材紹介 料金」というキーワードで公開後まもなくして、検索順位で1位になりました(2019年3月現在)。
――加藤さんはカスタマーサクセス担当としてどのようなアドバイスをしたのですか?
加藤絵里(以下、加藤/Faber Company): 初めてサイトを見たとき、おもしろいインタビュー記事が豊富にあるなと感じました。ただ問題は、すでに完成されたインタビュー記事に、無理やり検索キーワードをあてるのが難しいことです。
そんな不自然なことをするより、新規でユーザーの疑問や悩みに応えられる良質なコンテンツを作った方が効果的です。そこで、関連のあるキーワードを分析した結果、「人材紹介 料金」が検索ボリュームもあったので、このキーワードで検索上位が取れるように、記事を作ってみることをおすすめしました。
加藤/Faber Company: 「人材紹介 料金」というキーワードの検索意図をミエルカで分析すると、人材紹介サービスを使ったことがないけど、「金額の相場」や「手戻り率がどれくらいなのか」といった金銭面について知りたいのではないかと、推測されました。
もちろん、競合他社も「人材紹介サービスを使ったことがない人」向けの記事を作っていますが、その多くが「人材紹介会社と派遣会社の違い」という切り口でした。
塚本: 加藤さんからのお話を聞いて、さっそく「雇用した人が退職した場合はどれくらいお金が戻ってくるのか」といった内容を盛り込みました。実は記事の構成案作りは、ミエルカ大学のワークショップで習った手順を忠実に再現して作ったんです。
――「人材紹介会社と契約する際、知っておきたい手数料の相場・返金規定について」の記事は、どれくらいで効果が現れましたか?
塚本: 記事を公開した月からそこそこのPVがあり、次月はその4倍、さらに次の月はその倍という感じで。右肩上がりに伸びていきました。
既存記事を修正するなかで「SEOってこういうことなんだ」とハラオチした
――新規記事の制作以外に取り組んだことはありますか。
齋藤: 過去記事のリライトですね。進め方としては、塚本がミエルカを使って対象キーワードのユーザーの検索意図を再確認し、リライト案やタイトル変更案を作り直して、記事に反映するといった具合です。
――具体的にどんな記事をリライトしたのでしょう?
塚本: たとえば「採用基準」に関する記事のタイトルを次のようにリライトしました。
- Before: 採用基準の項目を、働く上での基本姿勢から考える方法
- After: 採用基準を設定する際、まず何から考えるべきか?【よくある失敗例付】
ミエルカを使って、サジェストキーワードを確認すると、「採用基準とは」「採用基準 例」などのキーワードが出てきました。そこから、検索者は「どんな人を採用したらいいのか、その基準はどのように定めるのか」という「採用基準の定め方」が知りたいのだと推測できました。また、その検索の背景には「失敗したくない」というニーズも隠れているのだと思い、【よくある失敗例付】という言葉を付けました。
――リライトする記事は、どのように選ぶといいのでしょうか?
加藤/Faber Company: もともと一定のPV数があり、対象キーワードの検索結果が2位~10位くらいの記事のタイトルを優先的にリライトするのがおすすめです。
元から高い検索順位を取れているということは、ユーザーの検索意図に対して適切な答えが記事で書かれていると言えます。後は「ユーザーが知りたいこと・自社のオリジナル情報をタイトルに追加・変更しましょう」と提案しました。
すでに一定の成果が出ている記事タイトルを直すだけなら、少ない工数で結果が出る可能性が高いですね。
齋藤: その説明を受けて、「そうだ、迷っている人が検索するんだ」「検索するのは人間だ」と、当たり前のことに気づかされました。
塚本: 以前はSEOって「指定したタグやキーワードをHTMLに追加したら順位が上がる」といった、すごくテクニカルな話だと思っていました。それは昔のSEOで、今通用するものではありません。「ユーザーの知りたいことに応えると検索順位が上がる」という基本的なことを教えてもらって、はじめて私の中でSEOがハラオチしたのです。
齋藤: 私も同様です。「ユーザーのニーズに応える」という方針が固まってからはどんどん記事を編集して、順位が上がったら2人で喜び合いました(笑)。「採用基準」のコンテンツも、タイトルとディスクリプションの改善だけで流入が130%と改善しました。
塚本: ただ、キーワードを入れるだけではダメです。検索結果に表示されてもクリックされて読まれなければ意味がないということも、繰り返し加藤さんに教えていただきました。
社内のノウハウを盛り込めばオリジナリティのある記事を作れる
――先ほどおっしゃっていた「記事のオリジナリティ」はどのように意識していますか?
齋藤: 私は元から、弊社サービスならではの情報を発信したいという気持ちがベースにありました。だからミエルカを使い始める前は「こういうノウハウを発信したい」と思ったら、SEOをあまり意識せず社内にインタビューして記事を作っていました。ミエルカを使うようになってからは、「このインタビューでは、このキーワードを意識して取材しよう」と記事の目的を意識できるようになりました。
塚本: 私は何本か記事を作っているうちに「この作り方をすると検索上位記事の内容が全部一緒になってしまうのではないか」と考え込んでしまいました。そのとき、ユーザーが検索している背景を踏まえたうえで「検索結果の一覧から選んでもらうにはどうしたらいいのだろう」と突き詰めることが重要だと気づきました。そこに社内のノウハウを盛り込めばオリジナル性の高い記事になり、同時にユーザーの役にも立つようになると考えています。
――なるほど。では、具体的なコンテンツ制作手順を教えてください。
塚本: 細かい話になりますが、ざっくり言うと、
- キーワードの検索ボリュームと検索ニーズを調査
- 見出し(h2、h3など)を整理
- 構成案をExcelで作る
- 取材依頼やライターさんへの執筆依頼
- そして上がってきた記事を編集視点で確認して、検索意図の抜けや漏れをチェック
- 公開する
という流れです。公開後も記事の様子を見て、効果が出ないようであればリライトを行います。その中でも一番時間をかけているのは、検索上位サイトや競合サイトの調査・分析ですね。
- サジェストキーワードのボリュームを確認する
- それらのサジェストキーワードを知りたいことのカタマリ毎にグルーピングし、ユーザーの検索意図と背景を調査する
- 主キーワードを決めたら、そのキーワードで実際に検索し、検索上位サイトの内容を一通り分析。どの内容を、どの程度の詳しさで書くのかを決定
- インテンショングルーピング(下図)で、分類や構成が合っているか確認する
- 共起語分析機能で抜け漏れをチェックする
- 構成案を作成する
- 執筆or取材依頼を行う
- 編集部で重要なテーマやトピックの抜け漏れをチェックする
- 記事公開
- 定期の検索順位モニタリングで、パフォーマンスの悪いものはリライト
加藤/Faber Company: 競合サイトの調査はとても大事ですね。検索上位のサイトの内容を確認して、ユーザーの知りたいことをある程度網羅したうえで、自分たちのオリジナリティをどう出すのかを考えていくのに有用です。
――取材やライティングなど、社内の協力はどう仰いでいますか?
齋藤: ライティングは、ライターさんか私です。ライターさんも増やしているのですが、社内のインタビューの場合は、私が務めることが多いです。ライターさんも元社員など人材系の知見がある人にお願いしています。そもそも業界に詳しくない人にお願いすると、その後の修正作業がとても多くなってしまうからです。社内の人に取材依頼をする場合は、「こういうお客さんにこういうことを伝えるためにこういう情報が必要で、だからあなたにお話を聞きたい」ということをきちんと伝えています。
社内プレゼンスを高めるために取組の成果を他部署のキーマンに共有する
――半年間でサイトの流入がどんどん増えていったことで、社内の反応に変化はありますか?
齋藤: 社内外から反応や問い合わせをいただく機会が増えました。「お客さまを取材してほしい」とか「ぜひ記事に出させてほしい」とか。「この記事がバズっています」とか「流入がこう伸びました」という資料を作って、社内のキーマンに共有しているのです。「お客さまはこういうことで悩んでいる」というニーズを営業などの他部署にも知ってほしいという気持ちもあります。
塚本: 弊社は営業職などSEOについては専門外の職種の人も多いのですが、どの職種の人が見ても「何をしてどういう結果が出たのか」がわかる資料を作ることを心がけています。あとは、その資料を興味がありそうな人を狙って共有するのもポイントです。せっかく私たちの取り組みで成果が出たのですから、ぜひ他部署でも同じ手法を試してみてほしいです。
――社内向けの資料を作るときのコツはありますか?
塚本: 施策に取り組んだときに「いつ、何をしたのか」メモを残しておくことです。同時にいろいろな施策をしていると「あれはいつやったんだっけ」ということがわからなくなってしまいます。Excelで管理しようとしても入力するのを忘れてしまいがちなので、私はGoogleアナリティクスにメモを残すようにしています。
齋藤: Googleアナリティクスは私と塚本が共通で見ています。いつ、どの施策を始めたのかをメモしておかなければ、ビフォーアフターを比較できません。単純なことではありますが、振り返って成果を示す資料を作るためにも大事なことです。
7か月で流入が8倍に! サイトパワーが上がってきたことを実感
――7か月の取り組みで、どれくらいの成果が出ていますか?
齋藤: 検索からの自然流入数でいうと、7か月で8倍にアップしました。流入が増えたことで、次にサイトの最終的な成果としてコンバージョン(CV)も見るようになってきました。CVポイントは主に3つあります。
- サービスサイトの送客は1.08倍改善
- セミナーへの誘致は1.43倍
- 問い合わせ数は5倍
最近は解説記事だけでなくインタビュー記事の検索順位も上がっていて、サイト自体のパワーが上がってきていると感じています。
塚本: いろいろな記事の順位が上がってきていますよね。それが本当に楽しくて、会社にきて最初の会話は検索順位から始まります(笑)。
齋藤: 「今日は何位ですよ!」があいさつ代わりで(笑)。
――楽しそうですね。逆につらかったことはありますか?
塚本: 効果が上がるまでじっと待つことでしょうか。新しく作った記事のすべてが最初からすぐに伸びるわけではありません。ですから、1か月くらい辛抱強く、信じて待つ。するとだんだん上がってくるんです。
「思い込み」を正して本当のインサイトを見つけなければ成果は出ない
――SEO施策に取り組むにあたってのミエルカ導入のメリットはどこにありましたか?
塚本: 私は未経験からのスタートでしたから、「SEOとは何か」という考え方が自分に定着して、「検索流入を得るにはどうすべきか?」ということを自力で考えられるようになってきたことが一番大きなメリットです。ツールって、導入したのはいいけれど誰も使わない……ということがよくあります。ミエルカはカスタマーサクセスのみなさんが、自力で日常的に使えるようになるまで支えてくれたので、とても助かりました。
大森/Faber Company: お2人は、ユーザーニーズを押さえつつ、自社ならではのオリジナリティも追求される、お手本のような編集体制を構築されています。あと、本当に楽しそうに取り組んでいらっしゃる、こちらも嬉しいです。
塚本: 最初はキーワードを調べるのに1週間かかっていましたが、今は半日~1日でできるようになりました。もしミエルカがなかったら、もっと時間がかかっていると思います。キーワード選定が時短できるから、企画のほうに時間を割けるんですよね。
齋藤: 記事の構成案を作るときって、最初に編集者の「こうだろう」という思いがあります。それだけで記事を作ればスピードは速いかもしれないですが、本当に効果が出る記事を作るなら、うわべや想像だけではないインサイトがわからないといけない。ミエルカは「こうだろう」という思い込みを正してくれるツールだと思っています。
大切なのはまじめにユーザーのニーズに向き合うこと。今後はメディアとリアルイベントの融合も
――今後やりたいことや目指していることはありますか。
齋藤: 「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」の認知が上がってきているので、これまできちんとできていなかったリード獲得への活用に本気で取り組んだり、メディアとしてお客さまに価値を提供したりと、次のステージに進みたいと考えています。セミナーなどリアルイベントの場でも「ダイレクト・ソーシング ジャーナル読みました」と言ってもらえることもあり、リアルとメディアの融合のようなこともしていきたいです。
――貴重なお話ありがとうございました。
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