月間75万から1,500万PVに急成長。「男性向け料理・家事メディア」SEO知識ゼロの担当者が行ったコト
SEOの知識ゼロのメンバーが記事管理やサイト運営を行っていた、男性向け料理・家事サイト「オリーブオイルをひとまわし」では、ツールを活用した施策で月間75万PVが、1年7か月で1,500万PVにまで成長。
運営元の株式会社ディライトクリエイションでは、メディアオープン当初、コンテンツを全て外注していたという。しかし、そこからインハウス化に舵を切った。どのように実現したのか。また、メディアとしての停滞期をどのように脱したのか。
同社プロデューサーの寺窪正昭氏、SEO担当の志水亮太氏、法人営業担当の長野貴恵氏、そして施策をサポートしたFaber Companyの渡邊雅俊とともに、通称「オリひと」成功の秘密と今後の展望を伺った。(以下、発話は敬称略)
- 競合の強いレシピジャンルでも、切り口を変えた企画で成果
- ペルソナである男性の「食への知識欲求」ニーズとSEOの相性が良い
- インハウスだからこその独自性と専門性が拡散の原動力に
働くお父さんを応援する男性のための「食×知識」メディア
――メディア概要と、立ち上げた理由を教えてください。
寺窪: 弊社はECを展開していましたが、新規事業としてメディアを運営し、単体でマネタイズしていくという構想から、「オリーブオイルをひとまわし(通称:「オリひと」)」という料理・家事メディアを2016年12月に立ち上げました。
「知識で広がる男の暮らし」をコンセプトに、主に30代~40代の働く男性をターゲットとして、食や家事に関する情報を提供しています。もともとは「働くお父さんを応援できる方法はないか」というところから企画が始まりました。リサーチを重ねていく中で、「料理をする男性が増えている」ということがわかったのです。
男性は興味のあるものを見つけたとき、「何でこうなっているんだろう」と、仕組みや知識の部分を気にする傾向にあります。しかし食の分野では、男性向けメディアはあまりないことに気がつきました。そこで、家族のために料理をするお父さんをターゲットに「食×知識」のメディアを立ち上げたのです。
――新しい切り口を狙ったのですね。収益モデルは?
寺窪: 主にはバナー広告とタイアップ広告の2軸です。バナー広告はPVがダイレクトに反映されるところなので、アクセス数が増えれば増えるほど、収益も伸びていきます。多くの人に読まれ、支持されるメディアになるにはオーガニックからの流入を増やすSEOの視点が欠かせません。ROIも管理しながら記事制作を進めていっているところです。
SEO知見ゼロからの出発
――メディア立ち上げの際、どんなお悩みをお持ちでしたか?
寺窪: 立ち上げ当初、メンバー全員がSEOに関する知見はゼロ。どのように記事制作するべきか困っていました。そこで当初はすべて外部委託でしたが、やはり自分たちで記事を作らないとSEOナレッジを蓄積できません。また「制作単価を抑えるためにも社内で作ったほうがいい」と考え、内製を助けてくれるミエルカを導入したのです。
――渡邊さんは最初、どのようなサポートから行いましたか。
渡邊: ゼロベースからの出発でしたので、コンセプトの作り方、どのようにキーワードを設計し、構成に落としてコンテンツ化していくのか、といった基本的な部分からサポートさせていただきました。
――SEOのディレクションを担当している志水さんは、元々SEO担当でいらっしゃったのでしょうか。
志水: いえ、最初は私も知識がなく、「とりあえず本を読もう」みたいな感じでした(笑)。本もWebサイトも読みましたが、何が正解なのかわからない。結局のところ手探りで進めていって自分たちで正解を見つけるしかないのかなと思いました。そんな中で、我々が頼るべき軸足として、渡邊さんのサポートはとても心強かったです。
ツール導入で、「ユーザーが知りたいこと」をより意識するようになれた
――導入前はどのように記事制作をしていましたか?
寺窪: ほぼ外注に頼っていました。メディアのコンセプトに則って、見よう見まねで「このキーワードがいいかも?」「SNSでバズるには」「トレンド的には」といった視点で企画・発注していましたが、ライターさんから納品された原稿が良いのか悪いのか判断できないんですよ。やはり自分たちのレベルを上げないと、納品物の管理もできないと思い知りました。
ツールを導入したことで、ユーザーの視点での原稿チェックができるようになりました。ミエルカはツールだけでなく、ツール活用を勉強する「ミエルカ大学」や「ユーザー会」、渡邊さんからのサポートなどを通じて、「読み手の意図と求めている情報」を知る方法をいろんな角度から学べます。そういった体験から、「ユーザー視点」に立ち戻れるんです。
たとえば、先日家でアスパラガスを料理しようと思ったのですが、最初に茹でたほうがいいのか、切ってから茹でたほうがいいのか…。結局「アスパラガス 下処理」と検索して知りたい情報にたどり着けました。こうした経験も踏まえてツールの分析結果を見ると、本当にユーザーの意図に寄り添った見出しや構成になっているかを意識できるようになりましたね。
――原稿を見る評価ポイントも変わりますよね。
志水: この検索キーワードで来ている人の知りたい情報が、見出しを含めてしっかり入っているかといった技術的なところ以外にも、自分がユーザーの立場になって、このキーワードで調べる時に生まれるストーリー、その時に出てくる疑問などを想像するように意識して原稿チェックするようにしています。
「ウンチクを語りたい」男性目線にこだわる理由
――ユーザーになり代わって考えることは大事ですよね。
寺窪: ターゲットである男性がどのように料理に向き合うのかをすごくイメージしますね。男性は食のウンチクを語りたかったり、酵素・ビタミン・栄養成分…など知識面に関心があったりする場合が多いです。そこに応える記事がメディアの価値の一つですし、他のメディアにはあまりない独自性だと思っています。変にSNSウケを狙うのではなく、きちんと正しい知識を伝えるという強みは大事にしていきたいところですね。
「ハンバーグのつなぎ」で見えてきた踊り場からの脱却
――男性ターゲットの料理コンテンツ、どんなものがヒットしたのですか?
寺窪: 最初の頃は1年ほど「食材」を軸に検索ボリュームのあるキーワードを狙ってきました。たとえば、「りんご×栄養」や「じゃがいも×保存」などです。検索意図に応える形でどんどん成長を続けていたのですが、9か月くらいでアクセスはちょっと“踊り場”に差しかかってしまいました。主要な食材系のテーマはすでに書き尽くしてしまって。
そこで次の一手として「料理名」に関するキーワードを狙っていこうとなりました。「からあげ」「ハンバーグ」「カレー」など男性の好きな料理は押さえたい。しかし「ハンバーグ」の単一キーワードで取ろうとすると、月間検索回数50万回くらいのビッグキーワードですし、他の強いレシピサイトや女性向け料理メディアの競合が上位にひしめいています。うちのメディアに合うテーマは? とつきつめて考えた結果、少し離れたニッチなキーワード「ハンバーグ つなぎ」で記事を作ってみました。
記事を公開して1か月くらいで、そのキーワードで検索10位以内に入り、2か月経たずに1位、2位まで上がりました。想定を大きく上回るスピードでした。
――それまでの記事と何が違ったのでしょうか。
寺窪: そもそも「つなぎ」って何? という知識面の解説から入る点が特徴的だったかもしれません。サイトの専門性が評価されてきたタイミングだったことも功を奏したのでしょう。
「料理名」に関するキーワードで上位表示ができた成功体験のおかげで、後発メディアでも、ビッグキーワード領域で戦っていけるんだとわかりました。その後、「ハンバーグ 作り方」「ハンバーグ 保存」「ハンバーグ 起源」「ハンバーグ ソース」などいろいろなバリエーションを増やした結果、「ハンバーグ」単一でも検索順位が上がってきたのです。競合ひしめく料理名のキーワードにアクセルを踏むきっかけになりました。
競合サイトの強み・弱みを比較する機能は使える!
――コンテンツ企画制作において「これは使える!」というミエルカの機能はありますか。
寺窪: 最近では、「インテンション・グルーピング」の機能がすごいなと思っています。「つなぎ」の記事で使った例がこちらです。
この機能はサジェストキーワードから、近い意味を持つユーザーニーズをカタマリで可視化してくれます。自分たちがユーザーに応えられているテーマ・トピックだけでなく、競合が取れているものも一覧で確認できるので、自社メディアの強み・弱みがはっきりわかり、次の対策を自然と考えられるようになりました。最近では記事のリライトにも活用しています。
――渡邊さんは、なぜこの機能の提案をされたのでしょうか。
渡邊: 「ユーザーの1意図に対して、コンテンツは1本」が基本。キーワードネットワークは「検索意図とは何か」を理解するための初歩的な機能としてよく使われますが、テーマ・トピックの全体感しかわかりません。
その点、グルーピング機能を使えば、このテーマには何本の記事が必要か? どんなトピックを詳しく書けばユーザーに喜ばれ、競合に勝てるか? といった作戦会議が、初心者の方でもしやすいからです。
独自性・信頼性がテレビ紹介につながりPV1,000倍に
――テレビ番組のネタにも「オリひと」が使われたそうですね。
寺窪: はい。「薄力粉と中力粉の違い」といったテーマで、クイズの出典として利用したいという内容でした。オリひとは、知識を切り口にしているので、クイズに使いやすいようです。東京農業大学の前橋 健二教授や管理栄養士などの食の専門家の監修、また入江誠シェフなど日本を代表する一流シェフに考案レシピを提供していただいている「信頼性」も評価されているポイントだと思います。
――テレビは影響力がありそうですね。
志水: 「モロヘイヤの茎に毒がある」という記事がバズった時は驚きました。テレビでそのネタが紹介された結果、記事がすごい勢いで検索され、普段の1,000倍近くのPVに跳ね上がったことがあります。
うちのメディアの記事がみんなの「知りたいニーズ」に適って、リアルタイムで数千人が見ている!という体験がとても感動的だったという記憶があります。
男性向け料理メディアを広告主も待っていた
――長野様は法人営業のご担当ですが、クライアント側の反応はいかがでしょうか。
長野: これまでの食品業界のマーケティングは、ほとんどがF1層やF2層をターゲットとして行われきました。また既存の他メディアも、食や料理の分野では、女性をターゲットとしたものが大半を占めています。
一方で、男性も女性も働く社会の中で、日常的に料理をする男性の割合は大きく増加しています。直近の調査では、8割近くの男性が週1回以上料理をしていることがわかっています。このように社会が大きく変わる中で、国内最大級の“男性”向け料理・家事メディアとして、多くのクライアント様から、ご相談をいただく機会が増えています。
知識を切り口としたタイアップ記事を中心に、インフルエンサーであるリュウジ氏を活用したプランでは5,000を超えるリツイートが生まれ、ユーザー巻き込み型のSNSキャンペーンでは約250万人にリーチできるなど、ご好評いただいています。
ミエルカ導入後1年7か月で月間75万→1,500万PV
――広告を提案する際にPVも大きな指標になると思います。現在、どのような状況ですか?
寺窪: 「オリひと」のアクセスは、ミエルカを導入する以前は月間75万PV程度だったのですが、現在は1,500万PV程度ですね。導入から1年7か月くらいです。料理好きな男性を中心に、リピーターやSNSファンも増えています。
――すごい伸びですね。それを聞いて伴走してきた渡邊さんはどう感じられますか。
渡邊: 非常にうれしいですね。まだまだ伸ばせると思っています。先日、寺窪さんと「メディアとしてのコンセプトはぶらさず、その中でユーザーに寄り添ったままカテゴリーの幅を広げていきましょう」というお話をさせていただいたところです。
寺窪: そうですね。食や家事に加え、子育ての領域までカテゴリーを広げました。今後も、カテゴリーを広げていく予定です。
人間の作業をよりシステマティックに行う仕組みづくり
――制作体制についてもう少し詳しく教えてください。
寺窪: 月間900本程度の記事を投稿する中でディレクターの基礎教育はミエルカ大学を利用して、コストをかけずにできています。50人ほどいるライターさんの管理で、丸1日使う日もあります。質問が細かい方に対しても、丁寧に全部返しています。最初の2、3か月は結構しんどいのですが、やはりライターさんを育てることは大切。手は抜けません。
――依頼の方法は?
志水: オリジナルの構成案を渡しています。今後は量産体制を整えたいと思っていて、構成を作るのもクラウドサービスで厳選したライターさんに依頼し始めました。
コンテンツの土台となる構成案(本で言うところの目次のようなもの)を制作する前に「①そのキーワードで検索するユーザーがどんな内容なら読みたくなるかを考えてください」「②検索上位サイトに出てくるものを全部読んでください」「③読んだものからユーザーニーズを考えてください」といった手順を踏んでもらった上でサジェストキーワードも活用する。すると実際執筆する別のライターさんに明確な指示が出せるようになります。
検索エンジンもキーワードの意図を理解するようになってきているので、人間がちゃんといいものだと思えるものをいかにシステマティックに分析、把握できるかがとても大事だと思います。
渡邊: ミエルカ大学でも、ただツールを使って構成を作るのではなく、自社ならではの切り口で内容を考え、生の声など一次情報を得た上で、「上位サイトをしっかりと読み込むことも大切だ」とお伝えしていますね。
――ライターさんに指示を伝える際に、ミエルカのデータがあるのとないのとでは、違いがありますか。
寺窪: 違いはありますね。やはり、ライターさんからの質問があっても、根拠となるデータを互いに共有できていれば、論理的に答えを返すことができるので非常に生産的ですね。
渡邊: ミエルカには「検索順位モニタリング機能」が備わっているのですが、そこでライターさん単位で対応キーワード群をグルーピングできます。ライターさんごとの成果が見える化できてしまうのですが(笑)。パフォーマンスが落ちているライターさんへのフォローに注力できるので、限られたリソースを有効活用するためには必要な分析だと思います。
メディアの成功により、新規事業が立ち上がる
――これだけ伸びてきていると、会社からの期待も大きいと思います。
寺窪: そうですね。このメディアが伸びた結果、嗜好品がテーマのメディア「LOOHCS(ルークス)」も立ち上げました。新規メディアを任されたことは、「オリひと」への一つの評価かなと思います。
メインユーザーは「オリひと」の知見を活かし、男性です。去年7月末にリリースをして、システムを整えながら9月にプレスリリースを打ち、現在は月間300万PVに届きそうなステータスです。
メディアを軸に各事業が有機的につながる形が理想
――これからの展望をお聞かせください。
志水: まずはメディア事業の収益最大化を目指しています。今後は、男性をターゲットにした「オリひと」「ルークス」のメディアをリンクさせて、何かできればおもしろいな、と考えています。また弊社はもともと、ペットメディア「docdog(ドックドッグ)」も運営しているので、それぞれのサービスを有機的に連携させながらビジネスを横展開させていくという形をとっていきたいです。
寺窪: 企業様とのタイアップもより増やしていきたいですね。「知識」を切り口としているメディアなので、モノやサービスを深く理解してもらうことができ、実際購入に繋がっている例も多くあります。なので、食品や日用消費材のメーカー様の商品をPRするお手伝いがしたいです。
また、「オリひと」を運営する上で得た、SEOの知見や、記事制作体制、メディア運営の方法など、我々のやり方を広めていきたいですね。良いコンテンツを作り、男性が料理や家事をするのが当たり前な社会にしたいです。
志水: メディアとEC、それぞれの特性を活かしながら、有機的に連係させるためには、「集客の次の展開」をきちんと考えていくことがすごく大事だと実感しています。その視点を持ってこれからもマーケティング活動を頑張っていきたいなと思います。
――貴重なお話、ありがとうございました。
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